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少額減価償却資産の特例

この記事の結論
  • 青色申告書を提出する中小企業者等(従業員数500人以下、資本金1億円以下等)は、取得価額30万円未満の減価償却資産を、事業の用に供した事業年度に全額損金算入できる(租税特別措置法第28条の2)
  • 年間の合計限度額は300万円(国税庁No.5408)
  • 2026年4月1日以降に取得した資産は上限が40万円未満に引き上げられ、適用期限も令和11年3月31日まで延長された(令和8年度税制改正、所得税法等の一部を改正する法律・令和8年法律第12号、2026年3月31日成立)
  • 国税庁の公式解説ページ(No.5408)は2026年9月1日時点で「30万円未満」のまま、40万円への言及がない(2026年9月1日確認)
この記事の内容
  1. 結論:買った年度に全額経費にできる。ただし2026年4月から基準が変わった
  2. 比較表:10万円・20万円・30万円(40万円)の壁でどの制度を使うか
  3. 対象になる法人の要件
  4. 年300万円の上限とその考え方
  5. 2026年度税制改正で何が変わったか
  6. 手続き:明細書の添付を忘れると使えない
  7. 実体験について、正直に書きます
  8. 次にやること

この記事は、決算前後にパソコンや什器などの備品を買う予定があり、「いくらまでなら一括で経費にできるか」を知りたい一人社長・法人代表に向けて書いています。 結論から言うと、青色申告をしている中小企業者等であれば、取得価額30万円未満の減価償却資産は買った事業年度に全額を経費(損金)にできます(租税特別措置法第67条の5)。ただし2026年4月1日以降に取得した資産については、この上限が40万円未満に引き上げられていて、まだこの改正を反映していない解説記事も出回っています。この記事では旧基準と新基準を分けて整理します。

こんな状態ではありませんか
  • パソコンや事務機器を買うとき、いくらまでなら一括で経費にできるか知りたい
  • 「少額減価償却資産」「一括償却資産」の違いがよく分からない
  • 30万円未満と聞いていたが、40万円という数字も見かけて混乱している

結論:買った年度に全額経費にできる。ただし2026年4月から基準が変わった

正式名称は「中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例」です(租税特別措置法第67条の5、国税庁No.5408)。通常、パソコンや什器などの固定資産は耐用年数に応じて数年に分けて減価償却しますが、この特例を使えば、対象となる資産の取得価額を、事業の用に供した事業年度に全額まとめて損金算入できます。なお、青色申告をしている個人事業主にも同じ内容の特例(租税特別措置法第28条の2)があり、この記事で説明する30万円→40万円の基準や年300万円の上限は個人事業主にも共通しますが、以下は法人を前提に整理します。

対象になる取得価額の上限は、2026年3月31日までに取得した資産は30万円未満、2026年4月1日以降に取得した資産は40万円未満です(国税庁No.5408、および令和8年度税制改正)。「30万円未満」という数字はこの制度の通称としてよく使われますが、今すでに40万円未満まで引き上げられている点は後の見出しで詳しく説明します。

比較表:10万円・20万円・30万円(40万円)の壁でどの制度を使うか

減価償却資産の取得価額には3つの「壁」があり、金額帯ごとに使える制度が違います。

取得価額 制度 償却方法 対象法人 根拠
10万円未満 少額の減価償却資産 取得した事業年度に全額損金算入 すべての法人・個人事業主 法人税法施行令第133条(法人)・所得税法施行令第138条(個人事業主)
10万円以上20万円未満 一括償却資産 3年間で均等に損金算入(取得時期にかかわらず1年分ずつ計上) すべての法人・個人事業主 法人税法施行令第133条の2(法人)・所得税法施行令第139条(個人事業主)
20万円以上30万円未満(2026年4月以降は20万円以上40万円未満) 中小企業者等の少額減価償却資産の特例 取得した事業年度に全額損金算入。年300万円が上限 青色申告をしている中小企業者等(法人・個人事業主) 租税特別措置法第67条の5(法人)・第28条の2(個人事業主)
30万円以上(2026年4月以降は40万円以上) 通常の減価償却 耐用年数に応じて複数年で償却 すべての法人・個人事業主 法人税法第31条(法人)・所得税法第49条(個人事業主)ほか

一括償却資産と少額減価償却資産の特例は、金額帯が重なる部分(10万円以上20万円未満)があり、どちらを使ってもよい場合があります。両者には次の違いがあるため、単純に「全額を早く経費にできるほうがいい」とは言い切れません。

  • 一括償却資産は白色申告でも使えるが、少額減価償却資産の特例は青色申告をしている中小企業者等(法人・個人事業主)に限られる
  • 一括償却資産は原則として償却資産税(固定資産税の一種)の申告対象にならないが、少額減価償却資産の特例(即時償却)を受けた資産は対象になる(横浜市の公式解説で確認。ただし一括償却資産でも税務会計上固定資産勘定に資産計上した場合は申告対象になる)
  • 一括償却資産は年間の上限額がないが、少額減価償却資産の特例は年300万円が上限

償却資産税の対象になるかどうかは資産の保有数量によっては無視できない差になるため、10万円以上20万円未満の資産をまとめて買う予定がある場合は、あらかじめこの違いを踏まえて選ぶ制度を決めておくとよいでしょう。

対象になる法人の要件

この特例を使えるのは、次の条件をすべて満たす法人です(国税庁No.5408)。

  • 青色申告書を提出していること
  • 中小企業者等に該当すること(資本金または出資金の額が1億円以下で、大規模法人に発行済株式の2分の1以上を保有されていない等の要件を満たす法人、または農業協同組合等)
  • 常時使用する従業員の数が500人以下であること。ただし、資本金または出資金の額が1億円を超える法人、通算法人、保険業法上の相互会社、投資法人、特定目的会社のいずれかに該当する「特定法人」は300人以下に厳格化されます(国税庁No.5408)。2026年4月1日以降に取得する資産については、除外対象となる従業員数が400人超に引き下げられます(次の見出しで説明)。特定法人については、改正後も「常時使用する従業員の数が300人以下」という別枠の基準が維持されています(改正反映後の租税特別措置法施行令39条の28の現行条文に「常時使用する従業員の数が四百人以下の法人」と「常時使用する従業員の数が三百人以下の特定法人」が並記されていることをe-Gov法令検索で確認。2026年9月6日確認)

原則として資本金1億円超の法人はこの特例(租税特別措置法第67条の5)の対象外です(ただし通算法人など一定の要件に該当する「特定法人」は、資本金額にかかわらず従業員数300人以下という別枠の要件で対象になり得ます)。青色申告をしている個人事業主は対象外にはならず、租税特別措置法第28条の2にもとづく同内容の特例を使えます。白色申告の個人事業主や、この特例の要件を満たさない場合は、一括償却資産(20万円未満)か通常の減価償却を使うことになります。

年300万円の上限とその考え方

この特例を使って全額損金算入できる金額には上限があり、適用を受ける事業年度における対象資産の取得価額の合計額が300万円を超える場合、300万円に達するまでの部分しか対象になりません(国税庁No.5408)。事業年度が1年に満たない場合は、300万円を12で割って月数を掛けた金額が上限になります。

例えば、決算前に一人社長がノートパソコン(25万円)と複合機(20万円)と応接セット(28万円)を買った場合、合計73万円は300万円の枠内に収まるため全額を損金算入できます。一方、同じ事業年度中に他の高額な備品もまとめて買い、合計が300万円を超えた場合は、超えた部分は通常の減価償却に回すことになります。

2026年度税制改正で何が変わったか

この記事を書いている2026年9月1日時点で、次の改正がすでに施行されています。

ここが要点

令和8年度税制改正(所得税法等の一部を改正する法律・令和8年法律第12号、2026年3月31日成立、2026年4月1日施行)により、2026年4月1日以降に取得した資産については次のとおり変わりました。

  • 対象となる取得価額の上限が30万円未満から40万円未満に引き上げ
  • 制度の適用期限が令和11年3月31日(2029年3月31日)まで3年延長
  • 対象から除外される法人の従業員数基準が500人超から400人超に引き下げ(=従業員401人以上の法人は使えなくなった)
  • 年間の合計限度額(300万円)は変更なし

これは財務省が公表した「令和8年度税制改正の大綱」に加え、国税庁が公表した「令和8年度法人税関係法令の改正の概要」(法令根拠:措法67の5①、改正法附則65、措令39の28①一、改正措令附則20)でも確認できる内容です。ただし国税庁の公式解説ページ(No.5408)は、2026年9月1日に確認した時点でも「30万円未満」「令和8年3月31日まで」という改正前の記載のままで、40万円への言及は見当たりませんでした。 ページの更新が改正の施行に追いついていない状態と考えられます。実務上は、2026年3月31日までに取得した資産は30万円未満基準、2026年4月1日以降に取得した資産は40万円未満基準、という取得日ベースの切り替えになる点を押さえておいてください。

税制改正大綱は例年12月に与党が公表し、翌年の通常国会で法案が成立し4月1日に施行される、というサイクルを繰り返しています。この特例自体は、複数の税理士法人の解説記事によれば平成15年度税制改正で創設され(当初の適用期間は平成15年4月1日から平成18年3月31日まで)、平成18年度税制改正で年300万円の合計限度額が設けられたとされています。ただしこの沿革そのものは国税庁・財務省の一次ページに公式にまとまった記載が見当たらず、直接確認できていません。 次の見直し時期が近づいたら、その時点の国税庁の公式ページと財務省の税制改正の大綱を突き合わせて確認することを勧めます。

手続き:明細書の添付を忘れると使えない

この特例を使うには、確定申告書等に、少額減価償却資産の取得価額に関する明細書(別表十六(七))を添付して申告する必要があります(国税庁No.5408)。会計ソフトで固定資産台帳を作成していても、この明細書を別表として申告書に添付し忘れると特例が適用されない、という実務上の失敗が起こり得ます。決算・申告を税理士に依頼している場合でも、対象資産があることを事前に伝えておくと確実です。

実体験について、正直に書きます

私の場合

正直に書きます。私自身は2026年に前職を退職し、起業準備を進めている当事者ですが、この記事を書いている時点ではまだ会社の設立登記を完了しておらず、実際にこの特例を使って自社の申告書に明細書を添付した経験はありません。ここに書いた内容は、自分が判断した記録ではなく、国税庁・財務省の公表情報を調査した範囲での整理です。特に2026年度税制改正の40万円への引き上げは、複数の税理士事務所の解説記事では説明されている一方、国税庁の公式Q&Aページ自体はまだ改正前の表記のままだった、という食い違いを実際に確認しました。この点は自分でも意外だったので、正直に書いておきます。実際に法人を設立し、備品を購入して初めての申告を経験した段階で、別記事として一次情報をまとめる予定です。

次にやること

まず、これから買う予定の備品を金額別に分け、10万円未満・20万円未満・30万円未満(2026年4月以降の取得なら40万円未満)のどの区分に入るかを確認してください。 中小企業者等の少額減価償却資産の特例を使う場合は、その事業年度に他の対象資産と合わせて300万円を超えないかも合わせて確認し、確定申告書に別表十六(七)を添付することを忘れないようにしてください。金額が大きい判断や、自社が中小企業者等の要件(資本金・従業員数)を満たすかどうかの判定に迷う場合は、実行前に顧問税理士に確認することを勧めます。


※本記事は2026年9月時点の国税庁・財務省の公表情報の調査整理と、筆者個人の状況に基づくものです。税額・制度は法改正で変わることがあるため、実際に対策を実行する前には税理士または管轄の税務署に必ず確認してください。

出典 - 国税庁:No.5408 中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例公式サイト(対象法人の要件・取得価額30万円未満・年300万円上限・「令和8年3月31日まで」の適用期限・別表十六(七)の添付を確認。2026年9月1日確認。このページには2026年9月1日時点で「40万円」「令和8年4月1日」「令和11年3月31日」の記載は無い) - 国税庁:No.5403 少額の減価償却資産になるかどうかの判定の例示公式サイト(取得価額10万円未満の少額の減価償却資産、20万円未満の一括償却資産(3年均等)、根拠法令が法人税法施行令第133条・第133条の2であることを確認。2026年9月1日確認) - 財務省:令和8年度税制改正の大綱(3/9)公式サイト(中小企業者等の少額減価償却資産の特例について、取得価額40万円未満への引き上げ・適用期限3年延長・従業員数400人超の法人を除外する改正内容を確認。2026年9月1日確認) - 国税庁:令和8年度法人税関係法令の改正の概要(PDF)公式サイト(17ページ「中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例及び中小企業経営強化税制の見直し」で、取得価額基準の30万円未満から40万円未満への引き上げ・適用期限3年延長・除外対象となる従業員数の500人超から400人超への引き下げ・年300万円の上限が変更されないこと・根拠条文が租税特別措置法第67条の5であることを確認。同資料の略語表(1/25ページ)で、改正法の名称が「所得税法等の一部を改正する法律(令和8年法律第12号)」であることも確認。2026年9月6日確認) - 令和8年度税制改正法(所得税法等の一部を改正する法律・令和8年法律第12号)という名称・号数は、上記の国税庁公式資料で確認しました。この法律が2026年3月31日に成立し、原則2026年4月1日に施行されたという日付については、税務専門紙「税のしるべ」電子版など複数の専門メディアで確認しました。施行日(令和8年4月1日)は国税庁「令和8年度法人税関係法令の改正の概要」本文の「令和8年4月1日(施行日)」の記載で、改正が現に施行済みであることはe-Gov法令検索の租税特別措置法67条の5の現行条文(2026年9月6日時点で「四十万円未満」「令和十一年三月三十一日まで」に改正反映済み)で、それぞれ一次資料により確認しています。一方、成立日(2026年3月31日)そのものの官報・国会資料の原文は、無償で確認できるWeb上の公式資料に見当たりませんでした。 - 少額減価償却資産の特例の法的根拠は、法人については租税特別措置法第67条の5、個人事業主については租税特別措置法第28条の2であることを、国税庁の法令解釈通達ページ(67条の5関係)国税庁の法令解釈通達ページ(28条の2関係)および税研の法令データベースで確認しました(2026年9月6日確認)。一括償却資産・少額の減価償却資産の法的根拠(法人は法人税法施行令第133条・第133条の2、個人事業主は所得税法施行令第138条・第139条)は国税庁No.5403(上記)および税研の法令データベースで、それぞれ条文番号を確認しました。 - 横浜市:租税特別措置法の特例(即時償却)を受ける減価償却資産の固定資産税(償却資産)における取扱い公式サイト(租税特別措置法の特例(即時償却)を受けた資産は償却資産税の申告対象になること、一括償却資産は原則申告対象から除かれるが固定資産勘定に資産計上した場合は対象になることを確認。2026年9月5日確認) - 対象法人の要件のうち「特定法人」(資本金1億円超、通算法人、保険業法上の相互会社、投資法人、特定目的会社)に該当する場合は従業員数300人以下に厳格化される点は、国税庁No.5408(上記)で確認しました(2026年9月5日確認)。改正後もこの300人基準が維持されていることは、租税特別措置法施行令|e-Gov法令検索第39条の28の現行条文(「常時使用する従業員の数が四百人以下の法人」「常時使用する従業員の数が三百人以下の特定法人」の並記)で確認しました(2026年9月6日確認)。 - この特例が平成15年度税制改正で創設され平成18年度税制改正で年300万円の上限が設けられた沿革は、複数の税理士法人の解説記事で確認しましたが、国税庁・財務省の一次ページには公式にまとまった記載が見当たらず、直接確認には至っていません。

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会社を辞めて、会社をつくる準備をしている当事者です

執行役員として6年、会社の管理部門を統括する立場にいました。2026年に退職し、いまは求職活動と並行して、会社を立ち上げる準備を検討している段階です。まだ登記はしていません。調べて確かめたことだけを書き、済んでいない手続きは「これから」と正直に書きます。体験のふりをしません。

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