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赤字の繰越控除

この記事の結論
  • 青色申告書を提出した事業年度に生じた欠損金額は、各事業年度開始の日前10年以内に開始した事業年度分まで繰り越して損金算入できる(法人税法第57条第1項、平成30年4月1日以後開始事業年度が対象。それより前に生じた欠損金は9年)
  • 中小法人等(資本金1億円以下等)は繰越控除前の所得金額の全額まで控除できるが、それ以外の法人は所得金額の50%が上限(同条第1項ただし書・第11項第1号、国税庁No.5762)
  • 繰越控除には、欠損金が生じた事業年度に青色申告書を提出し、その後も連続して確定申告書を提出していることが条件(国税庁No.5762)
  • 資本金1億円以下の中小法人等は、赤字を前1年以内の黒字期に繰り戻して法人税の還付を受ける制度も選べる(法人税法第80条、国税庁No.5763)
この記事の内容
  1. 結論:青色申告なら赤字は10年繰り越して黒字と相殺できる
  2. 比較表:中小法人とそれ以外で控除できる割合が違う
  3. なぜ「10年」なのか:9年から10年に延びた経緯
  4. 中小法人等とはどの法人を指すか
  5. 繰越控除を受けるための条件
  6. 赤字を繰り戻して還付を受ける選択肢もある
  7. 実体験について、正直に書きます
  8. 次にやること

この記事は、初年度や創業期に赤字(欠損金)が出た法人代表・これから法人を設立する人に向けて書いています。 結論から言うと、青色申告書を提出していれば、その事業年度に生じた赤字は最大10年間繰り越して、翌年度以降に出た黒字と相殺できます(法人税法第57条)。ただし「10年」も「相殺できる金額」も無条件ではなく、繰越期間には過去の改正による切り替わりが、相殺できる金額には法人の規模による上限があります。この記事ではその中身を条文の項番号まで確認して整理します。

こんな状態ではありませんか
  • 初年度が赤字だったが、この赤字は将来の黒字と相殺できるのか知りたい
  • 「10年繰り越せる」と聞いたが、以前は9年だったという話も見かけて混乱している
  • 赤字を全額相殺できるのか、一部しか相殺できないのか分からない

結論:青色申告なら赤字は10年繰り越して黒字と相殺できる

法人税は、その事業年度の所得(≒黒字)に対してかかります。逆に言えば、その事業年度が赤字(欠損金額)であれば、その年度の法人税はもともとかかりません。問題は「この赤字を、翌年度以降の黒字が出たときにどう扱うか」です。

青色申告書を提出した事業年度に生じた欠損金額は、確定申告書を提出する法人の各事業年度開始の日前10年以内に開始した事業年度分まで繰り越して、その事業年度の所得の金額の計算上、損金の額に算入できます(法人税法第57条第1項、国税庁No.5762)。つまり、初年度に100万円の赤字が出て、翌年度に150万円の黒字が出た場合、150万円からその100万円を差し引いた50万円だけに法人税がかかる、という仕組みです。

この10年という期間は無条件に全法人に適用されるわけではなく、次の見出しで説明する経過措置と、控除できる金額の上限が絡みます。

比較表:中小法人とそれ以外で控除できる割合が違う

赤字を繰り越せる年数は10年で共通ですが、1年あたりに相殺できる金額の上限は、法人の規模によって違います(法人税法第57条第1項ただし書・第11項第1号、国税庁No.5762)。

法人区分 繰越控除できる金額の上限 根拠
中小法人等(資本金1億円以下等) 繰越控除前の所得金額の全額 法人税法第57条第11項第1号
中小法人等以外の法人(資本金1億円超等) 繰越控除前の所得金額の100分の50(50%) 法人税法第57条第1項ただし書

例えば、繰越欠損金が300万円ある法人が、ある事業年度に200万円の所得を出したとします。中小法人等であればこの200万円全額を欠損金と相殺でき、その事業年度の法人税はゼロになります。一方、中小法人等以外の法人は所得の50%(100万円)までしか相殺できないため、残り100万円には法人税がかかります(相殺しきれなかった欠損金200万円は、期限内であれば翌年度以降にさらに繰り越せます)。

一人社長や創業期の中小企業の多くは資本金1億円以下の「中小法人等」に該当するため、実務上はこの上限を意識せずに済むケースが大半です。ただし増資などで資本金が1億円を超えた場合は、この50%上限に切り替わる点に注意が必要です。

なぜ「10年」なのか:9年から10年に延びた経緯

ここが要点

「10年」が適用されるのは、平成30年4月1日以後に開始した事業年度に生じた欠損金額です。それより前(平成30年4月1日前)に開始した事業年度に生じた欠損金額は、9年間の繰越となります(国税庁No.5762)。

この制度は過去に何度か見直されており、繰越期間は平成13年4月1日前に開始した事業年度分は5年、平成13年4月1日以後平成20年4月1日前に終了した事業年度分は7年、平成20年4月1日以後平成30年4月1日前に開始した事業年度分は9年と段階的に延長されてきました(国税庁No.5762)。現在の「10年」への延長自体は平成27年度税制改正で決まりましたが、施行時期は平成28年度税制改正でいったん平成29年4月以後から平成30年4月以後に後ろ倒しされ、現在の形になっています。控除限度額の割合も同じ経緯をたどっており、平成27年度税制改正で80%からの段階的な引き下げが決まった後、平成28年度税制改正で引き下げペースが調整され、65%→60%→55%を経て、平成30年4月1日以後開始事業年度からは所得金額の100分の50(50%)になっています(国税庁No.5762、法人税法第57条第1項ただし書)。制度の枠組み自体は改正の対象になり得るため、10年以上前の赤字を持っている法人は、その赤字がどの改正時点のルールに基づくか確認しておく必要があります。

中小法人等とはどの法人を指すか

この記事で何度も出てきた「中小法人等」は、普通法人(投資法人、特定目的会社および受託法人を除く)のうち、次のいずれかに該当する法人を指します(国税庁No.5762)。

  • 各事業年度終了の時において、資本金の額もしくは出資金の額が1億円以下であるもの(ただし、資本金5億円以上の法人による100%子法人等、および大通算法人を除く)
  • 資本もしくは出資を有しない法人
  • 公益法人等、協同組合等、人格のない社団等

多くの一人社長・中小企業はこの1番目の「資本金1億円以下」に該当します。設立時の資本金を1億円以下に設定するのが一般的な理由の一つには、この繰越控除の上限だけでなく、法人税の軽減税率や外形標準課税の対象外など、複数の税制上の扱いが1億円を境に変わることが挙げられます。

繰越控除を受けるための条件

赤字を10年繰り越せるのは自動的な話ではなく、次の条件を満たしていることが前提です(国税庁No.5762)。

  • 欠損金額が生じた事業年度において、青色申告書である確定申告書を提出していること
  • その後の各事業年度について、連続して確定申告書を提出していること(欠損金が生じた年度が青色申告であれば、その後の年度は白色申告に変わっても繰越控除自体は適用される)

つまり、赤字が出た年度に青色申告の承認を受けていなかった場合、原則としてこの10年繰越の対象にはなりません。法人を設立したら、赤字か黒字かにかかわらず、早い段階で青色申告の承認申請書を提出しておくことが前提条件になります。

赤字を繰り戻して還付を受ける選択肢もある

繰越控除は「将来の黒字と相殺する」制度ですが、これとは別に、資本金1億円以下の中小企業者等であれば、赤字を過去の黒字期に繰り戻して、その年度に納めた法人税の還付を受ける制度もあります(法人税法第80条、国税庁No.5763)。

対象になるのは、欠損事業年度開始の日前1年以内に開始した事業年度です。例えば、前期が黒字で法人税を納めていて、当期が赤字になった場合、当期の赤字を前期に繰り戻して、前期に納めた法人税の還付を請求できます(会社が解散した場合や災害による損失の場合は、繰り戻せる期間の扱いが別途定められています)。

繰越控除は将来の税負担を減らす効果、繰戻し還付は過去に納めた税金を取り戻す効果と、資金繰りへの効き方が異なります。どちらを選ぶか、あるいは両方を組み合わせるかは、直近の資金繰りの状況によって判断が変わるため、税理士に相談した上で決めることを勧めます。

実体験について、正直に書きます

私の場合

正直に書きます。私自身は2026年に前職を退職し、現在は起業準備を進めている段階で、この記事を書いている時点ではまだ法人の設立登記を完了していません。したがって、実際に自社の申告書で欠損金を繰り越した経験も、繰戻し還付を請求した経験もありません。ここに書いた内容は、自分が体験した記録ではなく、国税庁の公式解説(No.5762・No.5763)と法人税法の条文を確認した範囲での整理です。特に控除限度額の割合が過去に何度か改正されてきた点は、調べる前は「昔からずっと50%だろう」と思い込んでいたので、80%から段階的に引き下げられてきた経緯を知って意外でした。実際に法人を設立し、初年度の申告を終えた段階で、自分の申告がどちらの扱いになったかを別記事でまとめる予定です。

次にやること

赤字が出た事業年度がある場合は、まず自社の資本金額を確認し、「中小法人等」に該当するかどうかを確かめてください。該当する場合は所得の全額まで、該当しない場合は所得の50%までしか相殺できません。そのうえで、その赤字が生じた事業年度に青色申告書を提出していたか、その後の申告が途切れていないかを確認し、不明な点があれば顧問税理士、または最寄りの税務署に相談してください。

当サイト運営者

会社を辞めて、会社をつくる準備をしている当事者です

執行役員として6年、会社の管理部門を統括する立場にいました。2026年に退職し、いまは求職活動と並行して、会社を立ち上げる準備を検討している段階です。まだ登記はしていません。調べて確かめたことだけを書き、済んでいない手続きは「これから」と正直に書きます。体験のふりをしません。

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