会社名(商号)の決め方
- 商号(会社名)は自由に決められるのが原則(商号自由の原則、会社法上も明文の一般規制は限定的)
- 使える文字はひらがな・カタカナ・漢字・ローマ字・アラビア数字と、&・'・,・-・.・中点の6種類の符号のみ(法務省、平成14年11月1日施行)
- 符号は語句を区切る用途に限られ、原則として商号の先頭・末尾には使えない(法務省)
- 会社の種類を示す文字(株式会社・合同会社等)を商号中に用いる義務がある(会社法6条2項)
- 2006年の会社法施行で類似商号規制は撤廃されたが、同一の所在場所での同一商号は商業登記法27条により今も禁止
- 同一商号・同一本店かどうかは「オンライン登記情報検索サービス」で無料調査できる(法務省)
- 同一本店でなくても、不正の目的で他社と誤認されるおそれのある商号を使うと会社法8条に基づく差止め請求を受け得る
- 有名企業名に類似した商号は、不正競争防止法の著名表示冒用行為・混同惹起行為に該当するリスクがある
- 商号調査と商標調査は別制度で、ブランド展開を予定するならJ-PlatPatでの商標調査も必要
この記事の内容
この記事は、これから会社を作ろうとしていて「会社名は好きに決めていいのか」「同じ名前の会社が既にあったらどうなるのか」が分からず止まっている人に向けて書いています。 結論から言うと、会社名(商号)は原則として自由に決められます。ただし、使える文字の種類、会社の種類を示す文字を入れる義務、同一住所での同一商号の禁止という、外せない制約が3つあります。以下、決める前に確認すべき順に整理します。
- 会社名は好きなアルファベットや記号を自由に使えるのか分からない
- 同じ名前の会社が既にあったとき、登記できるのか・訴えられるのか区別できていない
- 商号調査を何で、どこまでやればいいのか手順が分からない
結論:商号は自由。ただし3つの制約がある
会社名のことを法律上は「商号」と呼びます。商号は何を名乗るか会社が自由に決められるのが原則で、これを「商号自由の原則」と呼びます。とはいえ完全に無制限ではなく、実務上ぶつかる制約は次の3つに整理できます。
- 使える文字・符号の種類が決まっている(法務省の告示)
- 会社の種類を示す文字(株式会社・合同会社等)を商号中に入れる義務がある(会社法6条2項)
- 同一の所在場所で同一の商号は登記できない(商業登記法27条)
これに加えて、登記自体は通っても、他社と誤認されるおそれのある商号を不正の目的で使うと差止め請求を受け得る、という4つ目の注意点があります。順番に見ていきます。
使える文字と符号|先頭・末尾に置けない符号がある
商号に使える文字は、平成14年(2002年)11月1日施行の法務省告示により定められています。使えるのは次の3種類です(法務省)。
| 種類 | 内容 |
|---|---|
| 日本文字 | ひらがな・カタカナ・漢字 |
| ローマ字 | 大文字・小文字とも可 |
| アラビア数字 | 0〜9 |
| 符号(6種類) | アンパサンド(&)、アポストロフィー(’)、コンマ(,)、ハイフン(-)、ピリオド(.)、中点(・) |
この6種類の符号には、位置の制限があります。 符号は「字句を区切る際の符号として使用する場合に限り」用いることができ、原則として商号の先頭または末尾には使えません(法務省)。例外はピリオドで、省略を表す用法として末尾に置くことが認められています。また、ローマ字で複数の単語を表記する場合に限り、単語の間をスペース(空白)で区切ることができます(法務省)。
(カッコ)やローマ数字(ⅡやⅢなど)は使えません。 「株式会社ABC(Japan)」のような表記は登記できないということです。ロゴやブランド表示ではよく見かける装飾でも、登記上の商号には使えない点に注意してください。
会社の種類を示す文字は必ず入れる
商号を自由に決められるとはいえ、必ず入れなければならない部分があります。会社は、株式会社・合名会社・合資会社・合同会社という会社の種類に応じて、それぞれその文字を商号中に用いなければならないと会社法6条2項で定められています。 「株式会社ABC」「ABC合同会社」のように、先頭か末尾のどちらかに置くのが一般的です。
この文字は日本語の正式表記でなければならず、ひらがなの「かぶしきがいしゃ」やカタカナの「ゴウドウガイシャ」に置き換えることはできません。逆に言えば、会社の種類を示す部分を除いた本体の名称部分は、前の見出しで説明した文字・符号の範囲内であれば自由に組み立てられます。
「株式会社」を頭に置くか、末尾に置くかは会社が選べます。頭に置くと検索や五十音順の一覧で先頭に出やすく、末尾に置くと固有名詞の部分が名刺やロゴで前に出やすい、という実務上の傾向はありますが、法律上どちらが有利という規定はありません。
同一商号・同一本店は登記できない
2006年の会社法施行前は、同一市区町村内で同一の営業のために似た商号を使うことを禁止する「類似商号規制」がありました。この規制は会社法施行で撤廃されており、現在は同じ市区町村内であっても、似たような商号を使うこと自体は原則として登記の可否には影響しません。
ただし、撤廃されていない規制が1つあります。商業登記法27条により、既に登記されている商号と同一であり、かつ本店の所在場所も同一である場合は、登記をすることができません(商業登記法27条)。ここでいう「同一の場所」は、住所の表記が多少違っていても、実際の場所が同じであれば同一と判断されます。逆に、商号が完全に同じでも本店の所在地が異なれば、この条文だけを理由に登記が拒否されることはありません。
同一商号かどうかの判断は、「株式会社」「合同会社」などの会社の種類を示す表記も含めた全体の表記で行われます。登記官は、登記情報システムのコンピュータ検索機能を使ってこの審査をしています。
同一本店でなくても訴えられることがある
商業登記法27条をクリアして登記できたとしても、それで法的リスクがゼロになるわけではありません。 会社法8条1項は、不正の目的をもって、他の会社と誤認されるおそれのある名称・商号を使用することを禁止しています。この規定に違反すると、営業上の利益を侵害された会社から、侵害行為の差止めを請求される可能性があります(会社法8条2項)。
さらに、不正競争防止法の観点からのリスクもあります。他人の著名な商号と同一・類似の商号を使う行為は「著名表示冒用行為」(不正競争防止法2条1項2号)として、著名とまではいえなくても、ある地域で広く知られた商号と同一・類似の商号を使って混同を生じさせる行為は「混同惹起行為」(不正競争防止法2条1項1号)として、それぞれ差止め・損害賠償請求の対象になり得ます。
つまり、「法務局で登記が通った」ことと「その名前を安全に使い続けられる」ことは、別の話だということです。有名企業の名前に似せた商号、業界で既に広く知られたブランド名に似た商号は、登記が通ったあとにトラブルになる典型パターンとして紹介されています。
商号調査のやり方|同一性調査と商標調査は別
決めた商号が使えるかどうかは、性質の違う2つの調査で確認します。目的が違うため、片方だけで済ませないようにしてください。
| 調査 | 目的 | 方法 |
|---|---|---|
| 商号(同一性)調査 | 同一住所・同一商号がないかを確認する(商業登記法27条対策) | オンライン登記情報検索サービス、または法務局窓口 |
| 商標調査 | 商標権の侵害にならないかを確認する | 特許情報プラットフォーム(J-PlatPat) |
商号調査は「オンライン登記情報検索サービス」で無料でできます(法務省)。登記・供託オンライン申請システムでIDとパスワードを取得(無料)したうえでログインし、「かんたん証明書請求」から商業・法人登記情報の検索を選び、商号と本店所在地を入力して検索する、という手順です。検索結果を確認したら、その先の操作(証明書請求など)に進まずログアウトすれば、調査だけであれば費用はかかりません。
商号調査は本店を置く場所での同一商号の有無しか教えてくれません。商品名やサービス名、ロゴとしてその名前を使う予定があるなら、別に商標調査が必要です。 商号として登記できることと、商標権を侵害していないことは別の制度なので、この2つを混同すると、登記は通ったのに看板やロゴを出した途端に商標権者から警告を受ける、という事態になりかねません。ブランド展開を予定している場合は、商号調査に加えてJ-PlatPatでの商標調査も行っておくべきだと、複数の司法書士事務所・法律事務所が解説しています。
商号調査で「同一」と出なくても、安心はできません。同一本店でなければ商業登記法27条はクリアしますが、有名企業名に似ている場合は前の見出しで説明した会社法8条・不正競争防止法のリスクが残ります。念のため、決めた商号をそのまま検索エンジンで検索し、同業で似た名前の会社がすでに広く知られていないかも確認しておくと安全です。
実体験について、正直に書きます
正直に書きます。私自身は2026年に前職を退職し、合同会社の設立準備を進めている当事者ですが、この記事を書いている時点ではまだ設立登記が完了しておらず、実際にオンライン登記情報検索サービスで商号調査を行った経験はありません。社名の候補は複数考えていますが、この記事は自分の調査記録ではなく、会社法・商業登記法・不正競争防止法の条文と、法務省の公式ページ、複数の司法書士事務所・法律事務所の公開情報をもとにした「調査した範囲では」の整理です。
将来、実際に商号調査・商標調査を行って社名を確定させた段階で、実際に使った検索画面や、調べてみて分かった実感を、この記事に実体験として追記します。
次にやること
まず、候補の会社名を、前の見出しで説明した文字・符号のルール(ひらがな・カタカナ・漢字・ローマ字・アラビア数字と6種類の符号のみ、符号は先頭・末尾不可、カッコ不可)に当てはめて、そのまま登記に使える表記かを確認してください。 そのうえで会社の種類を示す文字(株式会社・合同会社等)を先頭か末尾のどちらに置くかを決めます。
候補が固まったら、オンライン登記情報検索サービスで同一商号・同一本店に該当しないかを確認し、ブランドとして展開する予定があるならJ-PlatPatでの商標調査も行ってください。同一本店でなくても、有名企業名や業界で広く知られた名前に似ていないかは、検索エンジンでの確認も合わせて行っておくことをおすすめします。
※本記事は2026年9月時点で確認できた法務省の公式ページ、会社法・商業登記法・不正競争防止法の条文、および複数の司法書士事務所・法律事務所の解説記事、筆者個人の状況に基づく調査整理です。商号として使える表記の最終確認、同一商号・同一本店の判定は、実際の登記申請前に必ず法務局または司法書士に確認してください。この記事は一般的な整理であり、個別の法律相談の代わりにはなりません。
出典 - 会社法第6条(商号) - 会社法第8条(他の会社と誤認されるおそれのある名称等の使用禁止) - 商業登記法第27条(同一の所在場所における同一の商号の登記の禁止) - 不正競争防止法第2条第1項第1号(混同惹起行為)・第2号(著名表示冒用行為) - 商号にローマ字等を用いることについて|法務省(使える文字・符号の種類、符号の位置制限を確認) - オンライン登記情報検索サービスを利用した商号調査について|法務省(商号調査の方法・無料である旨を確認) - オンライン登記情報検索サービスを利用した商号調査について|山形地方法務局(具体的な操作手順を確認) - 商業登記(会社変更登記)の商号に使用できる文字や英数字、記号、住所記載方法などのルール|AI-CON登記(使える文字・符号の整理を確認) - 会社名は被ってもいい?同一商号・同一本店の禁止について解説|GVA 法人登記(商業登記法27条・類似商号規制撤廃の経緯を確認) - 会社、法人における同一商号・同一本店の禁止と商号調査をする方法|RSM汐留パートナーズ司法書士法人(同一性の判断基準を確認) - 株式会社、合同会社、一般社団法人の商号(名称)の法的なルール|RSM汐留パートナーズ司法書士法人(会社法6条2項、会社の種類を示す文字の義務を確認) - 【会社法6条・7条・8条】商号・誤認名称・不正目的使用|条文の要点と実務ポイント|アイシア法律事務所(会社法8条の差止め請求規定を確認) - 類似商号・登録商標等の調査は必要か?!|あなたのまちの司法書士事務所グループ(不正競争防止法上のリスク、商号調査と商標調査が別制度である旨を確認)