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試算表の見方

この記事の結論
  • 試算表は総勘定元帳の勘定科目ごとに借方・貸方の残高を集計した書類で、月次試算表は貸借対照表部分と損益計算書部分をひと月単位でまとめたもの
  • 試算表そのものの作成を直接義務付ける法令の規定は見当たらない(2026年9月6日確認)。法律上作成義務があるのは、株式会社が会計帳簿を適時・正確に作成し10年間保存すること(会社法第432条第1項・第2項)、決算書にあたる計算書類を各事業年度ごとに作成すること(会社法第435条第2項)、青色申告法人が帳簿書類を備え付け7年間保存すること(法人税法第126条、法人税法施行規則第59条)であり、試算表は決算書に至る前段階として税理士・会計事務所が実務上作成している内部管理資料という位置づけ
  • 見るべき点は、現金預金残高が通帳と一致しているか、売掛金と買掛金の残高が資金繰りとズレていないか、借入金残高が約定どおり減っているか、役員貸付金・役員借入金が発生して増え続けていないか、損益計算書部分の月次利益が前年同月・予算と比べてどうかの5点
この記事の内容
  1. 結論:試算表は決算の前倒し版、5か所を見れば足りる
  2. 試算表とは何か|総勘定元帳の残高を集めた表
  3. 試算表に法律上の作成義務はあるか
  4. 試算表の中身|貸借対照表部分と損益計算書部分
  5. 見る場所①現金預金|通帳の残高と合っているか
  6. 見る場所②売掛金・買掛金|入金前の数字に振り回されない
  7. 見る場所③借入金残高|約定どおり減っているか
  8. 見る場所④役員貸付金・役員借入金|会社と自分の財布が混ざっていないか
  9. 見る場所⑤損益計算書部分|前年同月・予算と比べる
  10. 試算表と決算書(計算書類)・確定申告書の違い
  11. 実体験について、正直に書きます
  12. 次にやること

この記事は、顧問税理士やクラウド会計ソフトから毎月「試算表」が届くようになったが、どこを見ればいいのか分からないという一人社長・小さな会社の経営者に向けて書いています。 結論から言うと、試算表は貸借対照表部分と損益計算書部分の2つでできていて、毎月チェックすべき場所は現金預金・売掛金と買掛金・借入金・役員貸付金と役員借入金・月次の損益の5つに絞れます。以下、試算表とは何か、法律上の位置づけ、5つの見るべき場所、決算書との違いの順に整理します。

こんな状態ではありませんか
  • 税理士から毎月PDFやクラウド会計の画面で試算表が送られてくるが、数字の羅列にしか見えない
  • 「資産の部」「負債の部」と書いてあっても、どの数字が良くてどの数字が悪いのか分からない
  • 顧問税理士に「見ておいてください」と言われるが、何を質問すればいいのかも分からない

結論:試算表は決算の前倒し版、5か所を見れば足りる

試算表とは、総勘定元帳に記録されている勘定科目ごとの残高を、借方・貸方に分けて一覧にした書類です。月次で作成されるものを月次試算表と呼び、月末時点の資産・負債・純資産の残高(貸借対照表部分)と、その1か月間の収益・費用の集計(損益計算書部分)がひとつの表にまとまっています。決算を待たずに、今月時点で会社がどういう状態にあるかを確認できる「決算の前倒し版」だと考えると位置づけがつかみやすくなります。

毎月すべての数字を細かく追う必要はありません。まず見るべきは次の5か所です。

  • 現金預金の残高が、実際の通帳残高と一致しているか
  • 売掛金・買掛金の残高が、入出金の実感とズレていないか
  • 借入金残高が、返済予定どおり減っているか
  • 役員貸付金・役員借入金が発生していないか、増え続けていないか
  • 損益計算書部分の月次利益が、前年同月や予算と比べてどうか

試算表とは何か|総勘定元帳の残高を集めた表

会社の日々の取引は、まず仕訳帳に記録され、勘定科目ごとの総勘定元帳に転記されます。試算表は、この総勘定元帳に記録されているすべての勘定科目について、借方合計・貸方合計・残高を一覧にまとめたものです。仕訳や転記に誤りがなければ、すべての勘定科目の借方合計と貸方合計は一致するはずなので、試算表には記帳ミスを見つけるための検算表という役割もあります。

税理士やクラウド会計ソフトから毎月届く「月次試算表」は、この試算表を1か月単位で区切ったものです。月末時点の残高が並ぶ貸借対照表部分と、その1か月間の取引の合計が並ぶ損益計算書部分の、両方が同じ書類に収まっている形式が一般的です。

試算表に法律上の作成義務はあるか

試算表という書類そのものの作成を直接義務付けている法令の条文は見当たりません(2026年9月6日、法令検索および税理士・会計ソフト事業者の解説サイトで確認)。法律上、株式会社に義務付けられているのは次の2つです。

  • 会計帳簿の作成・保存:株式会社は、適時に正確な会計帳簿を作成しなければならず、会計帳簿の閉鎖から10年間、会計帳簿と事業に関する重要な資料を保存しなければならない(会社法第432条第1項・第2項)
  • 計算書類(決算書)の作成・保存:株式会社は、各事業年度に係る計算書類(貸借対照表・損益計算書等)及び事業報告並びにこれらの附属明細書を作成しなければならず、作成した時から10年間保存しなければならない(会社法第435条第2項・第4項)

さらに、青色申告の承認を受けている法人は、帳簿書類を備え付けて取引を記録し、7年間保存しなければならないとされています(法人税法第126条、法人税法施行規則第59条)。

なお、会社法第432条・第435条は株式会社に関する規定です。合同会社などの持分会社の場合も、内容はほぼ同じ形で、会計帳簿の作成・10年間保存(会社法第615条第1項・第2項)、各事業年度の計算書類の作成・10年間保存(会社法第617条第2項・第4項)が義務付けられています。

試算表は、この会計帳簿から計算書類(決算書)を作るまでの過程で、税理士・会計事務所が実務上作成している内部管理資料という位置づけです。法定の書類ではないからといって重要度が低いわけではなく、むしろ決算を待たずに経営状態を確認できる、経営者にとって一番実用的な資料だと考えたほうが実態に近いです。

試算表の中身|貸借対照表部分と損益計算書部分

月次試算表は、たいてい次の2つの部分で構成されています。

部分 見ている時点・期間 何が分かるか
貸借対照表部分(B/S) 月末時点(ある瞬間) 現金預金・売掛金・借入金など、会社が今いくら持ち、いくら返す義務があるか
損益計算書部分(P/L) その1か月間(期間) 売上・経費・利益が、その月いくら出たか

貸借対照表部分は「今この瞬間の会社の体力」、損益計算書部分は「その1か月の成績」を表していると考えると区別しやすくなります。前月比・累計・前年同月比の列が併記されている試算表も多く、単月の数字だけでなく、これらの列を横に見比べることで変化の方向がつかめます。

見る場所①現金預金|通帳の残高と合っているか

まず確認したいのは、試算表の現金預金の残高が、実際の預金通帳・ネットバンキングの残高と一致しているかどうかです。ズレている場合、入出金の記帳が漏れている、あるいは記帳の締め日と通帳の記帳日がずれているといった原因が考えられます。試算表は過去の会計データをもとに作られるため、直近数日分の入出金が反映されていないだけのこともありますが、ズレが続くようであれば、記帳のもとになっている資料(通帳のコピー・クラウド会計の口座連携)を税理士に確認してもらうべきポイントです。

見る場所②売掛金・買掛金|入金前の数字に振り回されない

売掛金は、商品やサービスをすでに提供したが、まだ入金されていない代金です。買掛金は逆に、仕入や外注費など、すでに受け取ったがまだ支払っていない代金です。損益計算書部分の売上は、入金の有無にかかわらず、商品・サービスを提供した時点で計上されるのが会計の原則(発生主義)なので、「試算表上は利益が出ているのに、通帳の現金は増えていない」という状態が起こり得ます。この差の主な原因が、売掛金の残高です。

売掛金の残高が前月・前年同月と比べて大きく増えている場合、売上が伸びているのか、それとも回収が遅れているだけなのかを分けて見る必要があります。買掛金についても同様に、支払いを先延ばしにしているだけで、実際の費用は発生していることに変わりはない点に注意してください。

見る場所③借入金残高|約定どおり減っているか

日本政策金融公庫や銀行からの借入がある場合、試算表の負債の部に「長期借入金」「短期借入金」として残高が載ります。毎月の元本返済分だけ、この残高は減っていくはずなので、返済予定表(借入時に金融機関から受け取った償還表)と照らし合わせて、想定どおりのペースで減っているかを確認します。想定より減りが遅い、あるいは残高が動いていない場合は、返済が滞っているか、あるいは追加で借り入れをしていないかを確認する必要があります。

見る場所④役員貸付金・役員借入金|会社と自分の財布が混ざっていないか

役員貸付金は、会社が社長個人にお金を貸している状態、役員借入金は逆に、社長個人が会社にお金を貸している状態を示す勘定科目です。会社の経費で個人的な支出を立て替えた、あるいは逆に生活費を会社の口座から引き出したといった処理が積み重なると、役員貸付金の残高がじわじわと増えていきます。

役員貸付金の残高が試算表に出てきている、しかも毎月増え続けている場合は、会社の口座と個人の財布が実質的に混ざっているサインです。金融機関からの融資審査で、役員貸付金の残高がマイナス評価につながることもあるため、残高が出ている場合は増減の理由を税理士と一緒に確認し、精算のルールを決めておくことをおすすめします。役員退職金や役員報酬の設計を検討する段階になったら、あわせて確認しておきたい項目です([[111-yakuin-taishokukin-hitorishacho|役員退職金という出口]]も参照)。

見る場所⑤損益計算書部分|前年同月・予算と比べる

損益計算書部分では、売上高・売上原価・経費(販売費及び一般管理費)・営業利益・経常利益の並びを、単月の数字だけでなく、前月・前年同月・期首からの累計と比べて見ます。単月の数字だけを見ると、季節要因や単発の大口取引で大きく振れることがあるため、複数の期間を横に並べて傾向を見たほうが実態をつかみやすくなります。

ここが要点

経費のうち、変動がなく毎月ほぼ一定の金額が計上される科目(地代家賃・顧問料・保険料など)に注目してください。 ここが前月と大きく違う場合は、契約内容の変更や計上時期のズレが起きている可能性があり、税理士に確認する価値がある変化です。

試算表と決算書(計算書類)・確定申告書の違い

試算表・決算書(計算書類)・確定申告書は、似た数字が並びますが位置づけが異なります。

書類 作成頻度 法的な位置づけ
試算表 月次・随時 法令上の作成義務規定は見当たらない。内部管理資料
決算書(計算書類) 事業年度に1回 会社法上、株式会社に作成・10年保存が義務付けられている(会社法第435条第2項・第4項)
確定申告書(法人税申告書) 事業年度に1回 法人税法上、税務署への提出が義務付けられている

試算表は、この決算書・確定申告書を作るための土台になる資料でもあります。年度の途中で試算表の段階から数字を追っておくと、決算が近づいてから慌てて売掛金・買掛金・在庫の整理をする、という事態を避けやすくなります。

実体験について、正直に書きます

私の場合

正直に書きます。私自身は2026年に前職を退職し、合同会社の設立準備を進めている当事者ですが、この記事を書いている時点ではまだ登記が完了しておらず、自分の会社について税理士から試算表を受け取った経験はありません。この記事は法令の条文と、税理士・会計ソフト事業者が公開している解説記事を確認して整理したものであり、自分が実際に試算表を読んで経営判断をした経験を書いているわけではないことを断っておきます。設立後、実際に毎月の試算表を受け取るようになったら、どこでつまずいたか、税理士にどう質問したかを追記します。

次にやること

まず、直近で税理士から届いた試算表を1枚手元に出してください。 そのうえで、現金預金の残高を通帳と照合し、売掛金・買掛金・借入金・役員貸付金(または役員借入金)の4つの残高が前月からどう動いたかを確認してください。数字の動きの理由が自分で説明できない項目があれば、それを次回の税理士との打ち合わせで質問する1点に決めておくと、試算表が「見るだけの表」から「経営判断に使う表」に変わっていきます。


※本記事は2026年9月6日時点で調査した内容と、筆者個人の状況に基づくものです。試算表の読み方・会計処理の要否は個々の会社の状況によって判断が分かれるため、実際の経営判断の前に必ず顧問税理士にご確認ください。

出典 - 会社法第432条第1項・第2項(会計帳簿の作成及び保存) - 会社法第435条第2項・第4項(計算書類等の作成及び保存) - 法人税法第126条(青色申告法人の帳簿書類) - 法人税法施行規則第59条(帳簿書類の保存期間) - 会社法第615条第1項・第2項(持分会社の会計帳簿の作成及び保存) - 会社法第617条第2項・第4項(持分会社の計算書類の作成及び保存) - 月次試算表の大切さ|ZEIKEN PRESS(2026年9月6日確認。月次試算表の構成・チェックポイントを確認) - 試算表とは?決算書との違いや種類・見方などを初心者に向けてわかりやすく解説|freee(2026年9月6日確認。試算表の定義・貸借対照表部分と損益計算書部分の区分を確認) - 月次試算表の使い方とは?税理士から貰える試算表の使い方を解説|SMC税理士法人(2026年9月6日確認。税理士が毎月試算表を作成・提供する実務上の位置づけを確認) - 試算表そのものの作成を直接義務付ける法令の条文は、2026年9月6日時点の法令検索および税理士・会計ソフト事業者の解説サイトの確認では見当たらなかった(内部管理資料としての位置づけ)

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会社を辞めて、会社をつくる準備をしている当事者です

執行役員として6年、会社の管理部門を統括する立場にいました。2026年に退職し、いまは求職活動と並行して、会社を立ち上げる準備を検討している段階です。まだ登記はしていません。調べて確かめたことだけを書き、済んでいない手続きは「これから」と正直に書きます。体験のふりをしません。

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