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代表取締役の住所非表示制度

この記事の結論
  • 代表取締役等住所非表示措置は2024年10月1日に施行された制度で、根拠は商業登記規則等の一部を改正する省令(令和6年法務省令第28号、令和6年4月16日公布)である
  • 対象は株式会社の代表取締役・代表執行役・代表清算人に限られ、合同会社の代表社員は対象外である(法務省の説明による)
  • 非表示にできるのは番地・建物名までで、市区町村(東京23区は特別区、政令指定都市は区)までは登記事項証明書に表示され続ける(完全な非公開ではない)
  • 申出は単独ではできず、設立登記や代表取締役の就任・重任・住所移転による変更登記など、住所が登記事項となる登記の申請と同時にする場合に限られる(法務省の説明による)
  • 非上場会社は「本店実在性を証する書面」「代表取締役等の本人確認書面」「実質的支配者特定事項の証明書面」の3区分の添付書類が必要で、上場会社は上場を証する書面のみで足りる(法務省の説明による)
  • 非表示にすると融資審査や取引先との契約で不利に働く可能性、トラブル発生時に内容証明郵便での責任追及が届きにくくなる可能性が指摘されている
  • 法律上の利害関係を有する者は、法務局で「住所非表示措置申出等書類つづり込み帳」の閲覧を請求すれば住所を確認できる(商業登記法11条の2)
  • 取引先の与信判断への影響は東京商工リサーチが2024年10月1〜8日に実施したアンケート調査(回答5,390社)で確認でき、住所非公開を「マイナス評価」とする回答は合計19.7%(「ややマイナス」16.7%+「大いにマイナス」2.9%)、「影響なし」が68.0%だった
この記事の内容
  1. 結論:2024年10月開始、対象は株式会社の代表者住所のみ
  2. そもそもどんな制度か|根拠と施行日
  3. 対象になるのは株式会社だけ|合同会社は対象外
  4. 非表示にできる範囲|完全に消えるわけではない
  5. 申出のタイミング|あとから単独では申請できない
  6. 非上場会社が用意する添付書類
  7. 非表示にするデメリット|融資・取引・トラブル対応
  8. 利害関係人は住所を確認できる
  9. 実体験について、正直に書きます
  10. 次にやること

この記事は、株式会社の設立を控えている人、そしてすでに代表取締役として自宅住所が登記事項証明書に載ることに抵抗を感じている一人社長に向けて書いています。 結論から言うと、2024年10月から「代表取締役等住所非表示措置」という制度が始まり、一定の条件を満たせば代表者住所の番地・建物名を登記事項証明書から隠せるようになりました。ただし対象は株式会社だけで、市区町村までは表示され続け、あとから単独で申請することもできません。以下、対象範囲・非表示になる範囲・申出のタイミング・必要書類・デメリットの順に整理します。

こんな状態ではありませんか
  • 株式会社を作ろうと思っているが、自宅住所が誰でも見られる登記事項証明書に載ることに抵抗がある
  • 「住所を隠せる制度ができた」と聞いたが、自分の会社にも使えるのか分からない
  • 非表示にした場合、融資や取引で不利になったりしないか不安

結論:2024年10月開始、対象は株式会社の代表者住所のみ

代表取締役等住所非表示措置は、2024年(令和6年)10月1日から始まった制度です。要点は次の4つです。

  • 対象は株式会社の代表取締役・代表執行役・代表清算人に限られる(合同会社の代表社員は対象外)
  • 非表示にできるのは番地・建物名までで、市区町村までは表示され続ける
  • 単独では申請できず、設立登記や住所変更登記など、住所が登記される登記と同時にしか申出できない
  • 非上場会社は3区分の添付書類が必要で、上場会社より手続きの手間が大きい

「自宅住所を完全に消せる制度」ではなく、「番地まで見えていた状態を、市区町村までの表示にとどめる制度」という理解が実態に近いです。

そもそもどんな制度か|根拠と施行日

この制度の根拠は、2024年4月16日に公布された「商業登記規則等の一部を改正する省令(令和6年法務省令第28号)」です。施行日は同年10月1日で、法務省が制度の概要を公表しています(法務省「代表取締役等住所非表示措置について」、2026年9月6日確認)。

制度ができた背景には、会社の代表者の自宅住所が登記事項証明書や登記情報提供サービスを通じて誰でも確認できる状態になっており、個人情報保護やプライバシーの観点から問題視されてきたことがあります。特に一人で会社を経営する場合、本店所在地=自宅住所になっているケースも多く、住所公開への抵抗感が起業のハードルの一つになっているという指摘がありました(法務省・複数の司法書士事務所の解説記事による。2026年9月6日確認)。

対象になるのは株式会社だけ|合同会社は対象外

この制度の対象は株式会社に限られます。 具体的には次の3つの役職が対象です。

役職 対象
株式会社の代表取締役 対象
株式会社の代表執行役(指名委員会等設置会社) 対象
株式会社の代表清算人 対象
合同会社の代表社員 対象外
その他の持分会社(合名会社・合資会社)の代表者 対象外

法務省の説明でも、対象法人は株式会社のみとされており、合同会社の代表社員の住所はこの措置の対象にならないと整理されています(法務省「代表取締役等住所非表示措置について」、2026年9月6日確認)。合同会社での設立を検討している場合、この制度自体を使う場面が来ない、という点はあらかじめ押さえておく必要があります。

ここが要点

株式会社にするか合同会社にするかを、住所非表示制度の有無だけで決めるのは早計です。 意思決定の速さ・社会的信用・上場可能性など、他の判断軸のほうが会社の形態選びでは重みが大きいのが実情です。

非表示にできる範囲|完全に消えるわけではない

非表示措置を受けた場合、登記事項証明書や登記情報提供サービスに表示される住所は、最小行政区画までにとどまります。具体的には、市区町村(東京23区は特別区、政令指定都市は区)までは表示され、番地・建物名は表示されません(法務省「代表取締役等住所非表示措置について」、2026年9月6日確認)。

例えば「東京都渋谷区○○一丁目2番3号 ○○マンション101号室」という住所であれば、非表示措置後は「東京都渋谷区」までしか登記事項証明書に載らない、という整理になります。完全な匿名化ではなく、詳細な特定を避けるための措置という位置づけです。

申出のタイミング|あとから単独では申請できない

この措置は、思い立ったときにいつでも単独で申請できるものではありません。法務省の説明によれば、申出ができるのは次のような、住所が登記事項となる登記の申請と同時にする場合に限られます(法務省「代表取締役等住所非表示措置について」、2026年9月6日確認)。

  • 会社設立の登記
  • 代表取締役等の就任・重任の登記
  • 代表取締役等の住所移転による変更登記

つまり、すでに住所が公開された状態で登記されている会社が非表示措置だけを申請することはできず、次に何らかの理由で代表者の住所が登記事項として動くタイミング(重任や住所変更など)まで待つ必要がある、という制約になります。設立時から非表示にしたい場合は、設立登記の申請と同時に申出をするのが唯一のタイミングです。

非上場会社が用意する添付書類

添付書類は、上場会社か非上場会社かで大きく異なります。

会社の種類 必要な添付書類
上場会社 上場されていることを証する書面(金融商品取引所のホームページの写しなど)
非上場会社 下記の3区分すべて

非上場会社が用意する3区分の書類は、法務省の説明では次のように整理されています(法務省「代表取締役等住所非表示措置について」、2026年9月6日確認)。

  1. 本店実在性を証する書面:配達証明郵便の受領証(本店所在地宛てに送付したことを証するもの)、または資格者代理人(司法書士など)による実在性確認書面
  2. 代表取締役等の本人確認書面:住民票の写し、戸籍の附票、印鑑証明書など、市町村長等が発行する証明書
  3. 実質的支配者に関する事項の証明書面:司法書士による確認記録の写し、または公証人による実質的支配者の申告に関する認証書類

一人で会社を作る場合でも、これから設立するタイミングでは「本店実在性」の証明(配達証明郵便など)を事前に段取りしておく必要がある点は、スケジュールに影響します。非上場会社は上場会社より用意する書類が明確に多い、という前提で準備期間を見ておくと安心です(具体的な必要書類の組み合わせは個々のケースによって異なるため、実際の申出前に法務局または司法書士に確認してください)。

非表示にするデメリット|融資・取引・トラブル対応

非表示措置には、次のようなデメリットも指摘されています(複数の法律事務所・司法書士事務所の解説記事による。2026年9月6日確認)。

  • 金融機関からの融資審査で、代表者の住所情報が確認しにくくなり、追加の資料提出を求められる可能性がある
  • 取引先との契約や商談で、代表者の住所が分からないことが信頼関係の面で不利に働く可能性がある
  • 会社が問題を起こした際、代表取締役個人へ内容証明郵便を送るなどの責任追及の手段が取りにくくなり、対応が遅れる可能性がある

これらはいずれも「必ず起きる」という話ではなく、起こり得るリスクとして複数の専門家が挙げている点です。実際の与信判断への影響について、東京商工リサーチが2024年10月1〜8日に実施したアンケート調査(回答5,390社)では、取引先の代表者住所が非公開になった場合「与信判断に影響はない」が68.0%と最多だった一方、「マイナス評価」とする回答は合計19.7%(「ややマイナス」16.7%+「大いにマイナス」2.9%)でした(東京商工リサーチ「代表者の一部住所の非公開がスタート」、2026年9月6日確認)。プライバシーを守れるメリットと、対外的な信用面での不利益を天秤にかけて判断する、という位置づけになります。

ここが要点

住所非表示措置は一度申出をすれば終わり、という制度ではありません。 融資や取引で住所確認を求められた場合は、その都度、印鑑証明書や住民票など別の方法で本人確認に応じる必要が出てくる可能性がある点は、事前に理解しておく価値があります。

利害関係人は住所を確認できる

非表示措置を受けても、住所の情報自体が法務局から完全に消えるわけではありません。法律上の利害関係を有する者(債権者など)は、法務局が備える「住所非表示措置申出等書類つづり込み帳」の閲覧を請求することで、代表者の住所を確認できる仕組みが用意されています(商業登記法11条の2に基づく附属書類閲覧請求の枠組み。複数の司法書士事務所の解説記事による。2026年9月6日確認)。

つまり、匿名の相手と取引しているように見えても、正当な利害関係を疎明できれば相手方が住所を調べる手段は残っている、という整理です。悪意のある第三者からの閲覧を無条件に防げるわけではない点は、過度な期待をしないほうがよいところです。

実体験について、正直に書きます

私の場合

正直に書きます。私自身は2026年に前職を退職し、法人設立の準備を進めている当事者ですが、検討しているのは株式会社ではなく合同会社です。この記事を調べて分かったのは、代表取締役等住所非表示措置はそもそも合同会社には適用されないという事実でした。自宅を本店所在地にする予定があり、住所が誰でも見られる状態になることへの抵抗感自体は実際に持っていましたが、この制度で解決できる立場ではないと分かった、というのが正直なところです。同じように自宅住所を法人登記に使うことに迷いがある人は、株式会社にする予定があるかどうかで、この制度が使えるかどうかが先に決まる、という点を押さえておくと調べる手間が省けると思います。

次にやること

まず、自分が設立(または経営)しているのが株式会社かどうかを確認してください。 株式会社であれば、次に住所が登記事項として動くタイミング(設立登記・代表取締役の就任や重任・住所変更のいずれか)を確認し、そのタイミングに合わせて必要な添付書類(本店実在性・本人確認・実質的支配者の証明)を法務局または司法書士に相談しながら準備してください。合同会社を選んでいる、または選ぶ予定の場合は、この制度は使えないため、住所公開への不安があるなら、バーチャルオフィスの活用など別の対策を検討する必要があります。


※本記事は2026年9月6日時点で調査した内容と、筆者個人の状況に基づくものです。制度の適用可否や必要書類は個々の状況によって異なるため、実際の申出に際しては法務局または司法書士に確認してください。

出典 - 商業登記規則等の一部を改正する省令(令和6年法務省令第28号、令和6年4月16日公布) - 法務省:代表取締役等住所非表示措置について(2026年9月6日確認。施行日・対象法人・申出のタイミング・非表示になる範囲・非上場会社の添付書類3区分を確認) - 代表取締役等住所非表示措置とは?申出に必要な添付書類を解説|GVA法人登記(2026年9月6日確認。添付書類の具体例を確認) - 代表取締役住所の非表示措置の是非|あなたのまちの司法書士事務所グループ(2026年9月6日確認。合同会社が対象外である点、利害関係人による閲覧の仕組みを確認) - 代表取締役等住所非表示措置に関する実務上の留意点|森・濱田松本法律事務所(2026年9月6日にアクセス試行するも403エラーで本文未確認。デメリット記述は下記GVA法人登記・プロスパイア法律事務所の解説記事で同内容を確認) - 代表取締役等住所非表示措置のデメリット・注意点とは?|GVA法人登記(2026年9月6日確認。融資審査・取引先の信頼度低下・責任追及の困難さの3点を確認) - 東京商工リサーチ:代表者の一部住所の非公開がスタート、選択するか「わからない」が半数 与信上「マイナス評価」が約2割(2026年9月6日確認。2024年10月1〜8日実施・回答5,390社のアンケート調査結果を確認。与信判断への影響の数字はこの調査による) - 融資審査そのものへの影響度を定量化した公的統計・調査は見当たらない(2026年9月6日確認。本記事では専門家解説記事が指摘するリスクの一般論として記載)

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会社を辞めて、会社をつくる準備をしている当事者です

執行役員として6年、会社の管理部門を統括する立場にいました。2026年に退職し、いまは求職活動と並行して、会社を立ち上げる準備を検討している段階です。まだ登記はしていません。調べて確かめたことだけを書き、済んでいない手続きは「これから」と正直に書きます。体験のふりをしません。

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