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決算公告の義務と現実

この記事の結論
  • 株式会社は、定時株主総会の終結後遅滞なく、貸借対照表(大会社にあっては貸借対照表及び損益計算書)を公告しなければならない(会社法第440条第1項)。大会社とは、最終事業年度の貸借対照表上の資本金が5億円以上、または負債の部の合計額が200億円以上のいずれかに該当する株式会社をいう(会社法第2条第6号)
  • 公告方法は、定款で官報・日刊新聞紙・電子公告のいずれかを定める。定款に定めがない場合は官報に掲載する方法とみなされる(会社法第939条第1項・第4項)
  • 公告方法が官報または日刊新聞紙の会社は、貸借対照表の要旨を公告すれば足りる(会社法第440条第2項)。電子公告を公告方法とする会社はこの要旨特例の対象外となり、貸借対照表の全文を、定時株主総会の終結の日から5年間、継続してインターネット上に掲載し続ける必要がある(会社法第940条第1項第2号)。なお官報・日刊新聞紙を公告方法とする会社も、決算公告に限り要旨に代えて5年間のウェブサイト開示措置を選ぶことができる(会社法第440条第3項)
  • 金融商品取引法にもとづき有価証券報告書を提出しなければならない会社(上場企業等)は、決算公告の義務そのものの適用を受けない(会社法第440条第4項)
  • 公告を怠り、または不正な公告をしたときは、取締役・会計参与・監査役・清算人等が100万円以下の過料に処される(会社法第976条第2号)。過料は会社にではなく個人に科される
  • 合同会社をはじめとする持分会社には、株式会社の第440条に相当する決算公告の規定が置かれておらず、決算公告の義務自体が発生しない
この記事の内容
  1. 結論:株式会社である以上、決算公告の義務はなくならない
  2. 何を、いつ公告するのか
  3. 公告方法は3つ|定款に定めがなければ官報
  4. 官報・新聞なら要旨でよい、電子公告なら全文5年
  5. 上場企業(有価証券報告書提出会社)には義務がない
  6. 合同会社にはこの義務自体が存在しない
  7. 公告しないとどうなるか
  8. 実体験について、正直に書きます
  9. 次にやること

この記事は、株式会社を経営していて「決算公告」という言葉は聞いたことがあるが、自社が実際に何をしなければならないのか分かっていない経営者、またはこれから会社形態を選ぼうとしている人に向けて書いています。 結論を先に言うと、株式会社である以上、決算公告の義務は規模にかかわらず発生します。義務の中身は「何を」「どの方法で」「要旨でよいか全文か」の3点で変わり、合同会社にはこの義務そのものがありません。以下、条文に沿って整理します。

こんな状態ではありませんか
  • 株式会社を経営しているが、決算公告を一度もしたことがなく、罰則があるのか不安
  • 「決算公告」と「決算報告」の違いがよく分からない
  • これから会社を作るにあたって、株式会社と合同会社のどちらにするか、この義務の有無も含めて比較したい

結論:株式会社である以上、決算公告の義務はなくならない

株式会社は、毎事業年度の定時株主総会が終わったあと、遅滞なく貸借対照表(大会社にあっては貸借対照表及び損益計算書)を公告しなければなりません(会社法第440条第1項)。これは会社の規模や、実際に公告をしている会社が多いか少ないかとは関係なく、株式会社である限り課される義務です。

ここが要点

決算公告の義務は、資本金や売上の規模にかかわらず、すべての株式会社に発生します。「非上場の小さな会社だから対象外」ということはありません。義務の中身(要旨でよいか・上場企業かどうか)が変わるだけです。

何を、いつ公告するのか

公告する内容は、原則として貸借対照表です。ただし「大会社」に該当する株式会社は、貸借対照表に加えて損益計算書も公告する必要があります(会社法第440条第1項)。

大会社とは、最終事業年度に係る貸借対照表に資本金として計上した額が5億円以上、または貸借対照表の負債の部に計上した額の合計額が200億円以上のいずれかに該当する株式会社をいいます(会社法第2条第6号)。多くの中小企業はこの基準に該当しないため、公告するのは貸借対照表のみで足ります。

公告のタイミングは「定時株主総会の終結後、遅滞なく」です。定時株主総会の開催時期そのものに会社法上の期限規定はありませんが、基準日株主名簿の効力が基準日から3か月に限られること(会社法第124条第2項)などから、実務上は決算日から2〜3か月後に開かれる会社が多いとされます。この総会が終わったら、間を置かずに手続きを進める必要があります。

公告方法は3つ|定款に定めがなければ官報

会社は、公告方法として次の3つのいずれかを定款で定めることができます(会社法第939条第1項)。

公告方法 内容
官報公告 官報に掲載する
日刊新聞紙公告 時事に関する事項を掲載する日刊新聞紙に掲載する
電子公告 自社のウェブサイト等、インターネット上で公告する

定款に公告方法の定めがない会社は、官報に掲載する方法によるものとみなされます(会社法第939条第4項)。つまり、設立時に公告方法を意識せず定款を作った会社は、自動的に官報公告の扱いになっているということです。自社の定款に公告方法がどう定められているか、まず確認する必要があります。

官報・新聞なら要旨でよい、電子公告なら全文5年

公告方法によって、公告する分量と期間が変わります。

ここが要点

官報または日刊新聞紙を公告方法とする会社は、貸借対照表の要旨を公告すれば足ります(会社法第440条第2項。対象は公告方法を第939条第1項第1号・第2号に定めた会社)。一方、電子公告を公告方法とする会社は、この要旨の特例の対象外となるため原則どおり全文を公告する必要があり、その公告は定時株主総会の終結の日から5年間、継続してインターネット上に掲載しなければなりません(会社法第940条第1項第2号)。

なお、公告方法を官報または日刊新聞紙と定めている会社であっても、決算公告(貸借対照表の内容)についてだけは、要旨公告に代えて、定時株主総会の終結の日から5年間、自社のウェブサイト等で継続して開示する措置を選ぶことができます(会社法第440条第3項)。この措置を選んだ場合、要旨公告の特例(第2項)は適用されなくなり、官報・新聞への掲載自体が不要になります。

官報・新聞への1回掲載で足りる方法と、5年間の継続掲載が求められる方法とでは、負担の性質が異なります。ただし官報・新聞は掲載のたびに掲載料が発生するのに対し、ウェブサイトでの継続開示は自社サイトに掲載し続けるだけで追加費用が発生しにくいという違いもあります。どちらが自社に合うかは、公告の手間・費用・社内の運用体制を踏まえて判断することになります。

上場企業(有価証券報告書提出会社)には義務がない

金融商品取引法にもとづき有価証券報告書を内閣総理大臣に提出しなければならない株式会社は、決算公告の義務そのものの適用を受けません(会社法第440条第4項)。上場企業やこれに準じる会社は、有価証券報告書という形で既に詳細な財務情報を開示しているため、決算公告を重ねて求める必要がない、という位置づけです。

つまり、決算公告の義務が実質的に問題になるのは、有価証券報告書を提出していない、非上場の株式会社ということになります。

合同会社にはこの義務自体が存在しない

決算公告に関する会社法第440条は、会社法のうち株式会社について定めた章に置かれています。合同会社・合名会社・合資会社といった持分会社について定めた章には、これに相当する規定がありません。合同会社には、決算公告の義務そのものが発生しません

これが、この記事のタイトルにある「株式会社だけの宿題」という意味です。会社形態を株式会社にするか合同会社にするか検討する際、対外的な信用力や資金調達のしやすさとあわせて、決算公告という毎年の事務負担の有無も比較材料の一つになります。

なお、合同会社であっても、合併・組織変更・資本金の額の減少などを行う場合には、その都度、別の規定にもとづく公告が必要になります。「持分会社は一切公告をしなくてよい」という意味ではなく、あくまで毎年の決算公告の義務がないという点に限られます。

公告しないとどうなるか

決算公告を怠り、または不正な公告をしたときは、取締役・会計参与・監査役・清算人等が100万円以下の過料に処されます(会社法第976条第2号)。過料は会社にではなく、個人に科される点に注意が必要です。

東京商工リサーチが2022年分の官報掲載を集計した「官報」決算公告調査(2023年6月26日発表)によれば、その年に官報で決算公告を行った株式会社は4万214社にとどまり、国税庁「令和3年度分会社標本調査」から推計した対象企業数(217万9,325社)に対する比率は1.8%だった。同調査では、株式会社の公告方法は官報が83.9%、日刊新聞紙が13.5%、電子公告が2.5%とされている。公告方法を官報と定めている会社のうち、実際に決算公告を行っているのはごく一部にとどまる、という実態がここから読み取れる。

一方で、実際にどの程度の頻度で過料が科されているかを示す公式な統計は見当たらない(2026年9月確認)。実務解説の記事では「過料が実際に科される件数は多くない」という指摘が目立つが、これは統計にもとづく確定的な数字ではなく、実務上の印象論として書かれているものが多い。合併・減資・組織再編など、裁判所が登記を通じて会社の過去の状況を確認する場面で、公告の懈怠が明らかになり過料の通知が届く例があるという指摘もある。「摘発が少ないから対応しなくてよい」と読み替えることはできない。義務があること自体は、頻度の多寡と関係なく変わらない。

実体験について、正直に書きます

私の場合

正直に書きます。私自身は2026年に前職を退職し、合同会社の設立準備を進めている当事者です。合同会社を選ぶ場合、この記事で整理した決算公告の義務自体が発生しないため、私自身が株式会社として決算公告を実際に行った・怠った経験はありません。この記事は自分が体験した記録ではなく、会社法の条文と実務解説記事を調査して整理したものです。株式会社を選んで実際に決算公告を運用している方の実感とは前提が異なる可能性がある点をご了承ください。

次にやること

まず、自社が株式会社であれば、定款を確認し、公告方法が官報・日刊新聞紙・電子公告のどれになっているか(定めがなければ官報とみなされます)を確認してください。 そのうえで、直近の定時株主総会がいつ終結したかを確認し、「遅滞なく」の期間内に貸借対照表(大会社なら損益計算書も)の公告を済ませているかを点検してください。有価証券報告書を提出している会社であれば、この義務自体の対象外です。合同会社であれば、そもそもこの決算公告の義務は発生しません。過去に公告を行っていなかった場合の対応方法や、電子公告への切り替え手続きの詳細は、範囲が別になるため別の記事で扱います。


※本記事は2026年9月6日時点で確認した法令・各種実務解説記事と、筆者個人の状況に基づくものです。実際の公告義務の有無や公告方法の選び方は、会社の状況(上場・非上場、資本金・負債の規模、会社形態)によって変わるため、実際の判断は顧問税理士・司法書士にご確認ください。

出典 - 会社法 第440条 第1項(決算公告の義務。貸借対照表、大会社は損益計算書も) - 会社法 第440条 第2項(公告方法が官報・日刊新聞紙の場合、貸借対照表の要旨で足りる旨) - 会社法 第440条 第3項(官報・日刊新聞紙を公告方法とする会社が、決算公告について要旨に代えてウェブサイト等での5年間継続開示の措置を選べる旨) - 会社法 第440条 第4項(有価証券報告書提出会社に対する決算公告義務の適用除外) - 会社法 第940条 第1項第2号(電子公告により決算公告をする場合、定時株主総会の終結の日から5年間、継続して公告する旨) - 会社法 第2条 第6号(大会社の定義。資本金5億円以上または負債200億円以上) - 会社法 第124条 第2項(基準日株主名簿の効力が基準日から3か月に限られる旨) - 会社法 第939条 第1項(公告方法として官報・日刊新聞紙・電子公告のいずれかを定款で定められる旨) - 会社法 第939条 第4項(定款に公告方法の定めがない場合、官報に掲載する方法とみなす旨) - 会社法 第976条 第2号(公告を怠り、または不正の公告をしたときの100万円以下の過料) - 東京商工リサーチ「2022年『官報』決算公告調査」(2023年6月26日発表。対象:2022年1〜12月の官報掲載分、比較対象は国税庁「令和3年度分会社標本調査」の株式会社数259万5,362社)

当サイト運営者

会社を辞めて、会社をつくる準備をしている当事者です

執行役員として6年、会社の管理部門を統括する立場にいました。2026年に退職し、いまは求職活動と並行して、会社を立ち上げる準備を検討している段階です。まだ登記はしていません。調べて確かめたことだけを書き、済んでいない手続きは「これから」と正直に書きます。体験のふりをしません。

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