償却資産税の申告
- 償却資産税は土地・家屋以外の事業用資産(構築物・機械装置・車両運搬具・工具器具備品等)を対象に、毎年1月1日時点の所有状況を1月31日までに資産所在地の市区町村(東京23区は都税事務所)へ申告する地方税(地方税法383条・359条)
- 課税標準額の合計が150万円未満なら課税されないが免税点未満でも申告義務は残る(同351条)
- 取得価額10万円未満で一時損金算入・20万円未満で3年一括償却した資産は申告対象外だが、個別に減価償却している資産や中小企業者の少額減価償却資産特例(取得価額40万円未満、2026年3月31日以前の取得は30万円未満)を適用した資産は対象
- 免税点の150万円から180万円への引き上げは「地方税法等の一部を改正する法律」(令和8年3月31日法律第2号)として成立・公布済みで、令和9年度以後の年度分の固定資産税から適用される(総務省・国立国会図書館日本法令索引で確認)
この記事の内容
この記事は、法人または個人事業主として事業用の設備・備品を持っている人で、「償却資産税」という言葉を初めて聞いた、または申告が必要かどうか分からず不安な人に向けて書いています。 結論を先に言うと、償却資産税は決算とは別に、毎年1月31日までに事業用資産の所在する市区町村へ申告する義務がある税金です。法人税・所得税の申告スケジュールに気を取られていると、1月末の期限を見落としやすい制度です。
- 「償却資産税」という通知や案内が来たが、法人税や消費税とは別に何かを申告しないといけないのか分からない
- パソコンや棚、機械などの備品をどこまで申告すればいいのか、対象の線引きが分からない
- 資産が少ないから申告しなくていいと思っていたが、それで合っているのか不安になる
結論:償却資産税とは何か
償却資産税は、正式には「固定資産税(償却資産)」といい、土地・家屋以外の事業用資産にかかる地方税です。毎年1月1日時点(賦課期日、地方税法359条)で事業用の償却資産を所有している法人・個人事業主は、原則としてその年の1月31日までに、資産が所在する市区町村へ申告する義務があります(地方税法383条)。1月31日が土曜・日曜・祝日にあたる年は、翌開庁日が期限になります(地方税法20条の5)。東京23区内に資産がある場合は、区ごとの都税事務所が窓口になります。
固定資産税というと土地・家屋を思い浮かべる人が多いと思いますが、償却資産税はそれとは別枠で、事業に使っている機械や備品などを対象に、毎年1月に申告するという点がこの制度の要点です。
対象になる資産・ならない資産
対象になるのは、「土地・家屋以外の事業用資産で、減価償却額または減価償却費が法人税法・所得税法上の所得計算で損金または必要経費に算入されるもの」です。
| 分類 | 対象になる例 | 対象にならない例 |
|---|---|---|
| 資産の種類 | 構築物(フェンス・駐車場舗装等)、機械及び装置、船舶、航空機、工具・器具及び備品(パソコン・什器等) | 土地、家屋(建物本体) |
| 車両 | 大型特殊自動車など自動車税・軽自動車税の対象にならない車両 | 自動車税・軽自動車税の対象になる自動車・軽自動車 |
| 無形資産 | (対象外) | ソフトウェア等の無形固定資産、繰延資産 |
自動車・軽自動車は別の税金(自動車税・軽自動車税)がすでに課されているため、償却資産税の対象からは外れます。「事業のために使っている物で、税務上減価償却しているもの」がまず対象候補になり、そこから自動車と無形資産を除く、という順番で考えると整理しやすくなります。
免税点150万円のしくみ|課税されなくても申告は必要
同一市区町村内に所有する償却資産の課税標準額の合計が150万円未満の場合、固定資産税(償却資産)は課税されません(地方税法351条・免税点)。
ここで見落としやすいのが、免税点未満でも申告そのものは必要という点です。「資産の合計額が少ないから申告しなくていい」という理解は誤りで、資産がゼロに近い場合でも、市区町村から申告書が送られてきた事業者は原則として申告する必要があります。免税点はあくまで「課税されるかどうか」の基準であり、「申告するかどうか」の基準ではありません。
「うちは資産が少ないから対象外」と思い込んで申告自体を怠ると、後日市区町村から問い合わせが来ることがあります。金額の大小にかかわらず、まず申告書を提出するという姿勢で臨む方が安全です。
少額資産の扱いで間違えやすい点
少額の資産については、税務上の処理方法によって申告対象かどうかが変わります。ここが最も間違えやすいポイントです。
| 資産の処理方法 | 償却資産税の申告対象 |
|---|---|
| 取得価額10万円未満で、法人税法・所得税法上「一時の損金・必要経費」として処理したもの | 対象外 |
| 取得価額20万円未満で「3年一括償却」を選択したもの | 対象外 |
| 取得価額20万円未満のリース資産 | 対象外 |
| 中小企業者の少額減価償却資産特例(40万円未満〈2026年3月31日以前の取得は30万円未満〉を一括で費用計上できる制度)を適用したもの | 対象になる |
| 取得価額10万円以上・20万円以上で、通常どおり個別に減価償却しているもの | 対象になる |
中小企業の少額減価償却資産特例(40万円未満〈2026年3月31日以前の取得は30万円未満〉を全額費用にできる制度)を使った資産は、法人税・所得税の計算上は経費として落としていても、償却資産税の申告対象からは外れません。 ここを取得価額の基準だけで判断して申告漏れにするケースがあるため、経理処理の方法とセットで確認する必要があります。
なお、リース資産(平成20年4月1日以後契約の所有権移転外ファイナンスリースで取得価額20万円未満のもの)が申告対象外になるのは、そもそも償却資産税ではリース会社(貸し手)側が法的な所有者として申告義務を負うためです。借り手側が税務上その資産を減価償却していても、償却資産税の申告義務者にはなりません。
申告の期限と提出先
申告期限は原則として毎年1月31日で、1月31日が土曜・日曜・祝日にあたる年は翌開庁日が期限になります(地方税法20条の5)。たとえば東京都主税局が公表している令和8年度分の提出期限は令和8年2月2日(月)です。提出先は、その資産が実際に所在する市区町村(東京23区は資産の所在区を管轄する都税事務所)で、事業所の登記地ではなく資産の設置場所が基準になる点に注意してください。複数の市区町村に事業所や設備がある場合は、資産が所在する市区町村それぞれに申告する必要があります。
申告書は、前年に申告済みの事業者には市区町村から用紙が送付されるのが一般的です。新たに事業を始めた場合や、これまで申告していなかった場合は、資産所在地の市区町村の資産税(固定資産税)担当窓口に問い合わせて申告書を取り寄せる必要があります。
令和9年度分から免税点が180万円に引き上げ
償却資産の免税点は、現行の150万円から180万円に引き上げられることが決まっています。令和7年12月の令和8年度税制改正大綱に盛り込まれたのち、「地方税法等の一部を改正する法律」(令和8年3月31日法律第2号)として成立・公布済みで、令和9年度以後の年度分の固定資産税から適用されます。
つまり、2026年1月に申告する分(令和8年度分)までは免税点150万円のままで、2027年1月に申告する分(令和9年度分)から180万円に切り替わります。案内書類に記載された免税点の金額を、申告する年度に応じて確認してください。
実体験について、正直に書きます
正直に書きます。私自身は2026年に前職を退職し、法人設立の準備を進めている段階で、この記事を書いている時点ではまだ事業用の償却資産を取得した実績がありません。そのため償却資産税の申告を自分自身が経験したという体験談ではなく、総務省・地方自治体の公式情報を調査して整理した記事です。この点は正直に書いておきます。実際に事業用資産を取得し、1月に申告を経験した段階で、一次情報として別記事にまとめる予定です。
次にやること
まず、事業のために使っている構築物・機械装置・車両(自動車を除く)・工具器具備品を一覧にして、それぞれの取得価額と経理処理の方法(即時償却・一括償却・少額減価償却資産特例・通常償却のいずれか)を確認してください。 そのうえで、合計の課税標準額が150万円未満かどうか、申告書が資産所在地の市区町村からすでに送られてきているかどうかを確認し、届いていなければ市区町村の資産税担当窓口に問い合わせて、翌年1月31日(土日祝にあたる場合は翌開庁日)までに申告してください。判断に迷う資産があれば、顧問税理士に一度まとめて確認することをお勧めします。
※本記事は2026年9月時点で確認できた総務省・地方自治体の公式情報の調査整理と、筆者個人の状況に基づくものです。免税点や制度の詳細は法改正・自治体ごとの運用により変わることがあるため、実際の判断は顧問税理士または資産所在地の市区町村の資産税担当窓口にご確認ください。
出典 - 償却資産の概要|船橋市公式ホームページ(申告期限1月31日・賦課期日1月1日・対象資産の定義・地方税法383条・少額資産の申告不要基準と「個別に減価償却しているものは対象」「租税特別措置法を適用して損金算入した資産も対象」の例外を確認、2026年9月1日確認) - 固定資産税(償却資産)|東京都主税局(申告期限が原則1月31日であること・複数区に資産がある場合は区ごとの都税事務所へ提出することを確認。令和8年度分の提出期限が令和8年2月2日(月)であることは同局公表の「令和8年度固定資産税(償却資産)申告の手引き」(https://www.tax.metro.tokyo.lg.jp/documents/d/tax/R8_shinkokutebiki_mihiraki)で直接確認、2026年9月1日確認) - 固定資産税の概要|総務省(償却資産の免税点が現行150万円であること、令和9年度以降は180万円に変更されることを所管官庁の公式ページで確認、2026年9月1日確認) - 地方税法第351条(固定資産税の免税点)|税務研究会法令集(償却資産の免税点150万円を確認、2026年9月1日確認) - 地方税法第359条(固定資産税の賦課期日)|税務研究会法令集(賦課期日が毎年1月1日であることを確認、2026年9月1日確認) - 地方税法第20条の5(期間の計算及び期限の特例)|Lawzilla(申告期限が日曜・土曜・祝日・年末年始にあたるときは翌日を期限とみなす旨を確認、2026年9月1日確認) - 地方税法等の一部を改正する法律 令和8年3月31日法律第2号|日本法令索引(国立国会図書館)(償却資産の免税点180万円への引き上げが大綱段階でなく成立済みの法律であることを確認。改正内容(150万円→180万円、令和9年度以後の年度分から適用)は上記の総務省公式ページ、および複数の税理士事務所の解説記事でも法律番号・数字・適用時期が一致することをあわせて確認、2026年9月1日確認) - 租税特別措置法|e-Gov法令検索(第67条の5:少額減価償却資産の特例の取得価額基準が「四十万円未満」であることを現行条文で確認。40万円未満への拡大は2026年4月1日以後に取得する資産から適用され、2026年3月31日以前の取得分は30万円未満、2026年9月6日確認) - リース資産の申告(償却資産税の手引き)|大阪市(所有権移転外ファイナンスリースで取得価額20万円未満の資産が申告対象外になること、申告義務者はリース会社(貸し手)側であることを確認、2026年9月1日確認)