法人の確定申告(法人税申告)の流れ
- 法人税の確定申告書は、各事業年度終了の日の翌日から2ヶ月以内に、税務署長に提出しなければならない(法人税法第74条)
- 定款で決算日から2ヶ月以内に定時株主総会が招集されない等の事情があれば、届出により申告期限を1ヶ月延長できる(法人税法第75条の2)。ただし納付期限は延長されず、延長した期間分の利子税がかかる
- 申告期限を過ぎると無申告加算税(国税通則法第66条)、納付が遅れると延滞税(同法第60条)の対象になりうる
- 資本金の額が1億円を超える大法人等は電子申告(e-Tax)が義務(法人税法第75条の4、令和2年4月1日以後開始事業年度から適用)。資本金1億円以下の中小法人は義務ではない
- 中小企業向けの税理士顧問料・決算申告料の相場は、複数の税理士紹介サイトの公開情報では月額顧問料1.5万〜10万円、決算申告料は顧問料の4〜6ヶ月分が目安とされる(公的な統一データではなく、業者サイトの相場情報。2026年9月確認)
この記事の内容
この記事は、初めて決算・法人税申告を迎える一人社長に向けて書いています。 結論から言うと、法人税の確定申告は決算日の翌日から2ヶ月以内という期限が動かない土台で、そこに向けて「決算書を固める→申告書を作る→税務署・都道府県・市区町村へ提出する→納付する」という順番が決まっています。以下、期限・提出書類・自分でやる場合と税理士に頼む場合の費用差を順番に整理します。
- 初めての決算が近づいてきたが、いつまでに何をすればいいか分からない
- 自分で申告書を作れるのか、税理士に頼むべきなのか判断がつかない
- 税理士に頼むといくらかかるのか、相場が分からない
結論:決算日の翌日から2ヶ月以内
法人税法第74条は、内国法人は各事業年度終了の日の翌日から2ヶ月以内に、確定した決算に基づいて所得金額や法人税額などを記載した申告書を、納税地の所轄税務署長に提出しなければならないと定めています。たとえば決算日(事業年度終了日)が3月31日の会社なら、申告・納付の期限は5月31日です。
この「2ヶ月」は、決算書を作り終える期限ではなく、申告書を提出し、税額を納付し終える期限です。 決算の作業自体は決算日の翌日からすぐに始めないと、2ヶ月という期間はあっという間に過ぎます。
法人の確定申告、全体の流れ
決算日から申告・納付までの流れを、順番に並べます。
| 順番 | やること | 目安の時期 |
|---|---|---|
| 1 | 決算整理(未払費用・前払費用・減価償却などの調整) | 決算日直後〜 |
| 2 | 決算書の確定(貸借対照表・損益計算書・株主資本等変動計算書など) | 決算日から2〜3週間 |
| 3 | 法人税申告書の作成(別表一、別表四、別表五など) | 決算書確定後 |
| 4 | 地方税(法人住民税・法人事業税)の申告書作成 | 法人税申告書と並行 |
| 5 | 消費税の申告書作成(課税事業者の場合) | 法人税申告書と並行 |
| 6 | 税務署・都道府県・市区町村への提出 | 決算日の翌日から2ヶ月以内 |
| 7 | 法人税・地方税・消費税の納付 | 申告と同時期 |
株式会社の場合はこれに加えて、決算書を承認する定時株主総会を開く必要があります。合同会社には株主総会にあたる「社員総会」の制度自体が会社法上定められていないため、この工程は不要です(定款で任意に定めた場合を除く)。
一人社長で株式会社の場合、株主総会は自分一人で開いて議事録を作れば足ります。ただし「開いた」という記録(議事録)は残しておく必要があります。
提出する書類は何か
税務署へ提出する法人税の申告書一式には、主に次のものが含まれます。
- 法人税申告書(別表一・別表四・別表五(一)(二)など、該当する別表)
- 決算書(貸借対照表・損益計算書・株主資本等変動計算書・個別注記表)
- 法人事業概況説明書(事業内容や従業員数などを記載する国税庁指定の様式)
- 勘定科目内訳明細書(預金・売掛金・買掛金などの内訳)
これに加えて、都道府県・市区町村へは地方税の申告書(法人住民税・法人事業税)を、消費税の課税事業者であれば消費税及び地方消費税の申告書を、それぞれ別途提出します。提出先が国税(税務署)と地方税(都道府県・市区町村)で分かれている点は、初めて申告する人がつまずきやすいポイントです。
法人税だけではない|住民税・事業税・消費税も同時期
「決算申告」とひとくくりに呼ばれますが、実際には次の申告が同じ期限(決算日の翌日から2ヶ月以内)に並行して発生します。
| 税目 | 提出先 | 赤字でもかかるか |
|---|---|---|
| 法人税 | 税務署 | かからない(所得がなければ原則0円) |
| 法人住民税 | 都道府県・市区町村 | 均等割部分は赤字でもかかる |
| 法人事業税 | 都道府県 | かからない(所得がなければ原則0円) |
| 消費税 | 税務署 | 課税事業者なら申告義務あり(納税額は取引による) |
法人住民税の均等割は、資本金額や従業員数によって金額が変わり、赤字でも一定額を納める義務があります。これは別記事(032:法人住民税の均等割|赤字でも年7万円かかる仕組み)で扱っているので、そちらもあわせて確認してください。
期限に間に合わないとどうなるか
決算日の翌日から2ヶ月という期限に、定款の定めや特別の事情で定時株主総会が間に合わない場合は、届出により申告期限を1ヶ月延長できます(法人税法第75条の2)。ただしこの延長は申告書の提出期限だけが対象で、納付期限は延長されません。 延長した期間分については利子税がかかります。
期限に間に合わず、届出も出さないまま申告が遅れた場合は「期限後申告」となり、次のペナルティの対象になりえます。
- 無申告加算税(国税通則法第66条):申告が遅れたことに対する加算税
- 延滞税(国税通則法第60条):納付が遅れたことに対する利息にあたる税
いずれも税率は状況によって変わるため、この記事では断定的な税率を書きません。申告が遅れそうだと分かった時点で、税務署または税理士に早めに相談することが、金額を膨らませない唯一の対処です。
自分でやるか、税理士に頼むか|費用の目安
一人社長が決算・申告を自分でやるか、税理士に頼むかは、事業の複雑さと自分の時間のどちらを優先するかで決まります。
自分でやる場合の実費は、会計ソフトの利用料(freeeやマネーフォワードなどのクラウド会計ソフトで年数万円程度)とe-Tax利用にかかる時間だけで、税理士報酬は発生しません。ただし別表の書き方や税務調整(会計上の利益と税務上の所得のズレの調整)を自力で理解する必要があり、初めての決算では相応の時間がかかります。
税理士に頼む場合の費用は、税理士会が会員に対して定めていた「税理士業務報酬規定」(旧・税理士報酬規定)が税理士法改正により平成14年4月1日付けで廃止され、報酬額が自由化されていることもあり、事務所によって幅があります。税理士紹介センター(ビスカス)、および会計ソフト「弥生」の公式サイトが公開している相場情報を確認した範囲では、次のような目安が示されています(公的な統一データではなく、税理士紹介事業者・会計ソフトメーカーが独自に公開している相場情報。2026年9月確認)。
| 項目 | 目安 |
|---|---|
| 月額顧問料(年商1,000万円未満) | 1万円程度〜 |
| 月額顧問料(年商1,000万〜3,000万円) | 1.5万〜2万円程度〜 |
| 月額顧問料(年商3,000万〜1億円) | 2万〜3万円程度〜 |
| 決算申告料(顧問契約あり) | 月額顧問料の4〜6ヶ月分が目安 |
| 決算申告のみ(顧問契約なしのスポット依頼) | 15万〜25万円程度 |
| 記帳代行(仕訳数に応じて加算) | 月1.5万〜3.5万円程度 |
たとえば月額顧問料が2.5万円、決算申告料が10万円という組み合わせなら、年間の税理士費用はおよそ40万円になる計算です。これは税理士紹介事業者・会計ソフトメーカーが公開している目安であり、公的な統計ではありません。 実際の見積もりは事務所ごとに大きく異なるため、複数の税理士から見積もりを取って比較することをおすすめします。
決算申告だけをスポットで依頼する(顧問契約なし)という選択肢もあります。この場合は月額顧問料がかからない分、決算申告料単体の相場(事務所によって数万円〜数十万円と幅がある)を確認しておくと比較しやすくなります。
実体験について、正直に書きます
正直に書きます。私自身は2026年に前職を退職し、合同会社の設立準備を進めている当事者ですが、この記事を書いている時点ではまだ設立登記自体が完了しておらず、決算・法人税申告を実際に経験していません。そのため、この記事は自分の申告記録ではなく、法人税法・国税通則法の条文と、国税庁・複数の税理士紹介サイトの公開情報をもとにした「調査した範囲では」の整理です。
実際に初めての決算・申告を迎えたら、自分でどこまでやったか、税理士に何を頼んでいくらかかったかを、この記事に実体験として追記します。
次にやること
まず、自社の決算日を確認し、そこから2ヶ月後の日付をカレンダーに入れてください。 これが法人税・地方税・消費税すべてに共通する動かない締切です。そのうえで、決算整理から申告書作成までを自分で行うか、税理士に依頼するかを、事業の複雑さ(取引の量・在庫の有無・従業員の有無など)と自分にかけられる時間で判断してください。税理士に依頼する場合は、1社だけでなく複数の事務所から見積もりを取り、顧問契約の有無・記帳代行の有無で金額がどう変わるかを比較したうえで決めることをおすすめします。
※本記事は2026年9月2日時点で調査した内容に基づくものです。税理士報酬はこの記事内で示した以外の要因でも変動し、条文の解釈や適用は個別の事情により変わることがあるため、実際の申告前に税務署または税理士へ最新情報を確認することをおすすめします。
出典 - 法人税法第74条(確定申告) - 法人税法第75条の2(確定申告書の提出期限の延長の特例) - 法人税法第75条の4(電子情報処理組織による申告の特例、大法人等の電子申告義務、令和2年4月1日以後開始事業年度から適用) - 国税通則法第60条(延滞税)、第66条(無申告加算税) - 国税庁 e-Tax「大法人の電子申告の義務化について」 - 会社法(合同会社に社員総会が法定されていない点、定款変更に総社員の同意を要する会社法第637条) - 税理士法改正(平成14年4月1日施行、税理士会が定めていた「税理士業務報酬規定」の廃止) - 税理士紹介センター ビスカス「税理士顧問料・報酬・料金・価格の相場」(https://www.all-senmonka.jp/kakaku/)、弥生株式会社「税理士報酬の相場はいくら?」(https://www.yayoi-kk.co.jp/zeirishi/oyakudachi/zeirishi_estimation/)(いずれも2026年9月確認。公的統計ではない事業者公開情報)