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資本金を1,000万円未満にする理由

この記事の結論
  • 資本金1,000万円未満なら、設立1期目・2期目は原則として消費税の納税義務が免除される(消費税法第12条の2第1項、国税庁公表)
  • 東京23区の場合、法人住民税の均等割は資本金1,000万円以下・従業者50人以下で年7万円、1,000万円を超えると年18万円に上がる(都道府県民税均等割2万円+市町村民税均等割5万円/5万円+13万円)
  • 資本金1億円以下が基準になる制度(法人税の軽減税率など)は1,000万円とは別の境目なので混同しないこと
  • 登録免許税は資本金×0.7%(最低15万円)で、資本金を上げるほど設立時のコストも増える
この記事の内容
  1. 結論:資本金1,000万円未満が境目になる理由
  2. 比較表:資本金でこう変わる税金の境目一覧
  3. 消費税:設立1期目・2期目が免税になる条件
  4. 法人住民税均等割:1,000万円を超えると税額が上がる
  5. 混同注意:資本金1億円が境目になる制度もある
  6. 資本金を低くするデメリット:信用・融資への影響
  7. 実体験について、正直に書きます
  8. 次にやること

この記事は、これから会社を設立する人で、資本金をいくらにするか決めかねている人に向けて書いています。 結論から言うと、資本金を1,000万円未満にする人が多いのは、この金額を境目に「消費税」と「法人住民税の均等割」という2つの税金の扱いが変わるからです。逆に、資本金を1億円以下にとどめる理由は別の制度(法人税の軽減税率など)にあり、1,000万円の話と混同すると誤った判断をしてしまいます。

こんな状態ではありませんか
  • 資本金をいくらにするか、周りが「1,000万円未満がいい」と言うが理由が分からない
  • 消費税の免税と資本金の関係を、正確な条文レベルで知りたい
  • 資本金1,000万円と1億円、どちらの基準が自分に関係するのか整理できていない

結論:資本金1,000万円未満が境目になる理由

会社を設立するとき、資本金の額は1円からでも法律上は可能です。それでも「1,000万円未満にする」というアドバイスが定番になっているのは、次の2つの税金が、資本金1,000万円という金額をまたぐかどうかで変わるためです。

  1. 消費税:資本金1,000万円未満なら、設立1期目・2期目は原則として納税義務が免除される(消費税法第12条の2第1項)
  2. 法人住民税の均等割:資本金(正確には資本金等の額)が1,000万円を超えると、赤字でも払う均等割の税率区分が1段階上がる(地方税法第52条・第312条)

どちらも「絶対に1,000万円未満にすべき」という話ではなく、事業の資金需要・信用力とのトレードオフです。まずは何が変わるのかを正確に把握したうえで、自社に当てはめて判断する必要があります。

比較表:資本金でこう変わる税金の境目一覧

資本金の額によって扱いが変わる制度を、境目ごとに一覧にしました。

資本金の境目 変わる制度 1,000万円未満・以下の場合 超える場合
1,000万円 消費税の納税義務(設立1期目・2期目) 原則、免税事業者になれる 設立1期目から課税事業者になる
1,000万円 法人住民税の均等割(東京23区・従業者50人以下の例) 年7万円 年18万円
1億円 法人税の軽減税率(年800万円以下の所得部分) 15%(本則19%) 適用なし(原則19%)
1億円 外形標準課税(法人事業税) 対象外 対象(所得に関係なく課税される部分が生じる)

このように、「1,000万円」と「1億円」という2つの境目がまったく別の制度を指している点が、資本金を検討するときに一番混同しやすいところです。次の見出しから、それぞれの制度を条文レベルで確認していきます。

消費税:設立1期目・2期目が免税になる条件

消費税は本来、前々事業年度(基準期間)の課税売上高が1,000万円を超えると納税義務が発生します。しかし設立したばかりの会社には「前々事業年度」自体が存在しないため、原則として設立1期目・2期目は基準期間がない状態になります。

ここで問題になるのが、資本金の額です。国税庁の解説によれば、設立1期目・2期目それぞれの期首における資本金の額(または出資の金額)が1,000万円未満であれば、原則として免税事業者になれます(消費税法第12条の2第1項「新設法人の納税義務の免除の特例」)。逆に言えば、資本金1,000万円以上で会社を設立すると、この特例により設立1期目から消費税の課税事業者になります。

ここが要点

ただし例外があります。「特定新規設立法人」に該当する場合は、資本金が1,000万円未満でも免税になりません。これは、①他の事業者から発行済株式の50%超を直接・間接に保有されているなど「支配されている」関係にあり、②その支配元(または特殊関係にある法人)の売上高が5億円を超えている場合に適用される特例です(消費税法第12条の3、平成26年4月1日以後に設立された法人が対象、国税庁「特定新規設立法人の納税義務免除の特例」)。さらに2024年10月1日以後に開始する課税期間からは、②の基準に加えて、グループ全体の売上金額等の合計が50億円を超える場合も特定新規設立法人に該当することになりました(国税庁「特定新規設立法人の納税義務免除の特例」で確認。2026年9月6日確認)。親会社や大株主がいる形で会社を設立する場合は、資本金だけでなく出資関係も確認する必要があります。

また、2023年10月に始まったインボイス制度により、免税事業者のままだと適格請求書(インボイス)を発行できず、取引先(課税事業者)が仕入税額控除を受けられなくなります。BtoBの取引が中心の事業では、免税の恩恵より「インボイスを発行できない不利」の方が大きくなるケースもあるため、資本金だけで判断せず、主な取引先が課税事業者かどうかも合わせて検討する必要があります。この点の損得は業種・取引先構成によって変わるため、税理士に個別相談することを勧めます。

法人住民税均等割:1,000万円を超えると税額が上がる

法人住民税には「均等割」という部分があり、これは会社が赤字であっても、資本金等の額と従業者数の区分に応じて必ず発生します(地方税法第52条・第312条)。

東京23区(特別区)の場合、資本金等の額が1,000万円以下・従業者数50人以下の区分では、均等割は年7万円(道府県民税相当分2万円+市町村民税相当分5万円)です。これが資本金等の額1,000万円超・1億円以下の区分になると、年18万円(5万円+13万円)に上がります(総務省「地方税制度|法人住民税」の均等割税率表で内訳・金額を確認。2026年9月6日確認)。

つまり、資本金を1,000万円ちょうどではなく1,000万円未満に抑えると、設立初年度から均等割を年11万円抑えられる計算になります。均等割は自治体ごとに条例で定める部分があるため、東京23区以外に本店を置く場合は、金額が変わる可能性があります。実際の税額は、本店所在地の都道府県税事務所・市区町村役場(または管轄の都税事務所)に確認してください。

混同注意:資本金1億円が境目になる制度もある

資本金を検討する場面で、しばしば「1,000万円」と「1億円」の話が混ざって伝わっているのを見かけます。この2つはまったく別の制度の境目です。

  • 法人税の軽減税率:資本金1億円以下の中小法人は、年800万円以下の所得部分に対して15%(本則19%)の軽減税率が適用されます(租税特別措置法第42条の3の2。この時限措置は2027年3月31日までに開始する事業年度まで延長されています)。
  • 外形標準課税(法人事業税):原則として資本金1億円超の法人が対象で、所得の有無にかかわらず、資本金や付加価値額に応じた税負担が生じます(地方税法第72条の2)。資本金1億円以下の中小法人は原則としてこの対象外です。ただし令和6年度(2024年度)税制改正により、令和8年4月1日(2026年4月)以後開始事業年度からは、払込資本(資本金+資本剰余金)の合計額が50億円を超える法人の100%子会社等で、その子会社自身の払込資本の合計額が2億円を超える場合も、資本金が1億円以下でも対象に追加されます(東京都主税局「外形標準課税の対象法人の見直し及び中間申告義務判定に関する改正について」で確認。2026年9月6日確認)。これは主に大企業のグループ会社を対象にした改正で、新規設立したばかりの中小企業には通常当てはまりません。

国税庁「会社標本調査」(令和6年度分)によれば、資本金1,000万円以下の法人が全法人の87.5%を占めています(新規設立に限った内訳ではなく、全法人の資本金階級別集計です)。新規に設立する会社の多くもこの範囲に収まるため、この「1億円の境目」を意識する場面は当面ありません。ただし、「なぜ大企業の資本金は1億円以下に設定されていることが多いのか」という話を聞いたことがある人は、それがこの制度によるものだと理解しておくと、資本金1,000万円の話と混同せずに済みます。

資本金を低くするデメリット:信用・融資への影響

税金だけを見れば資本金は低いほど有利に見えますが、デメリットもあります。

  • 登録免許税は資本金に比例する:株式会社設立の登録免許税は「資本金×0.7%(最低15万円)」です(登録免許税法別表第一。法務省「株式会社の設立手続(発起設立)について」で条文根拠と金額を確認。2026年9月6日確認)。資本金が低いほど、この最低額15万円に近づくため、設立コスト自体は資本金を上げても大きくは変わりません(資本金が約2,143万円を超えたあたりから、0.7%の計算額が15万円を上回り始めます)。なお、市区町村が策定し国の認定を受けた「創業支援等事業計画」に基づく「特定創業支援等事業」による継続的な支援(経営・財務・人材育成・販路開拓等について1か月以上・4回以上など)を受け、市区町村から証明書の発行を受けた創業者は、この税率が0.35%、最低額が7万5,000円に軽減される制度もあります(産業競争力強化法に基づく証明制度、軽減の根拠は租税特別措置法第80条、適用期限は2027年3月31日まで。川崎市「特定創業支援等事業について」で確認)。
  • 資本金は対外的な信用力の目安に使われる:金融機関の融資審査や、取引先の与信判断、公共入札の資格審査などで、資本金の額が会社の体力を示す指標として見られる場面があります。資本金1円や10万円といった極端に低い金額では、税金面の得より、信用面での不利が上回ることがあります。
  • 資本金は運転資金そのものでもある:設立後すぐに使える現金として、資本金は事業の初期費用や当面の運転資金に充てられます。税金の節約だけを目的に資本金を過度に低くすると、事業に必要な資金が不足するおそれがあります。

税金の境目だけでなく、事業に必要な運転資金の額、想定する取引先の与信基準を合わせて考えたうえで、資本金を決めることを勧めます。

実体験について、正直に書きます

私の場合

正直に書きます。私自身は2026年に前職を退職し、起業準備を進めている当事者ですが、この記事を書いている時点では、まだ会社の設立登記を完了しておらず、実際に資本金の額を決定した経験はありません。そのため、この記事は国税庁・地方税法など公的な情報源を調査した範囲での整理であり、自分が資本金を決めた際の判断の記録ではありません。この点は正直に書いておきます。実際に資本金を決定し、会社を設立した段階で、その判断の理由を一次情報として別記事にまとめる予定です。

次にやること

まず、自分の会社が設立1期目・2期目に免税事業者になれる資本金額(1,000万円未満)に収まっているかを確認してください。 そのうえで、主な取引先がインボイスを求める課税事業者かどうか、本店所在地の均等割区分がいくらになるか(自治体に確認)、そして事業に必要な運転資金がいくらかを並べて比較すれば、税金だけでなく実態に合った資本金額を決められます。判断に迷う場合は、設立登記の前に税理士へ相談することを勧めます。


※本記事は2026年9月時点の国税庁・地方税法等の公表情報の調査整理と、筆者個人の状況に基づくものです。税額・制度は法改正で変わることがあるため、実際の設立前には税理士または管轄の税務署・都道府県税事務所・市区町村役場に必ず確認してください。

出典 - 国税庁:No.6503 基準期間がない法人の納税義務の免除の特例公式サイト(設立1期目・2期目の期首資本金が1,000万円未満なら原則免税事業者になれることを確認。2026年9月1日確認) - 国税庁:特定新規設立法人の納税義務免除の特例公式サイト(資本金1,000万円未満でも、支配関係と売上高5億円超の条件に該当すると免税にならない特例を確認。2026年9月1日確認) - 国税庁:No.6531 新規開業又は法人の新規設立のとき公式サイト(新設法人の消費税納税義務の基本的な考え方を確認。2026年9月1日確認) - 東京都主税局:法人事業税・法人都民税|仕事と税金公式サイト(法人住民税均等割の資本金区分による税額を調査。2026年9月1日確認) - 財務省:中小法人に対する課税に関する資料公式サイト(資本金1億円以下の中小法人向け軽減税率の制度趣旨を確認。2026年9月1日確認) - 中小企業庁:法人税率の軽減公式サイト(資本金1億円以下・所得800万円以下の部分に15%の軽減税率が適用されることを確認。2026年9月1日確認) - 法務省:株式会社の設立手続(発起設立)について公式サイト(株式会社設立の登録免許税が「資本金×0.7%、計算額が15万円に満たないときは15万円」で、根拠が登録免許税法別表第一第24号(1)イであることを確認。2026年9月6日確認) - 国税庁:No.5759 法人税の税率公式サイト(資本金1億円以下の中小法人の年800万円以下の所得部分について、本則税率19%・軽減税率15%であることを確認。2026年9月6日確認) - 東京都主税局:外形標準課税の対象法人の見直し及び中間申告義務判定に関する改正について公式サイト(令和6年度税制改正による外形標準課税の対象法人見直しの施行時期と、資本金1億円以下でも対象になる子会社の要件(親会社の払込資本50億円超・子会社の払込資本2億円超)を確認。2026年9月6日確認) - 国税庁:会社標本調査(令和6年度分)調査結果報告公式サイト(資本金1,000万円以下の法人が全法人の87.5%を占めることを確認。2026年9月6日確認) - 特定創業支援等事業による登録免許税軽減(0.35%・最低7万5,000円、適用期限2027年3月31日まで)は、産業競争力強化法に基づく市区町村の証明制度と、軽減の根拠となる租税特別措置法第80条の組み合わせであることを川崎市:特定創業支援等事業について公式サイトで確認しました(2026年9月5日確認)。中小法人の軽減税率(租税特別措置法第42条の3の2)の適用期限が令和9年3月31日(2027年3月31日)まで延長されていることは、令和7年度税制改正の解説および国税庁:第42条の3の2《中小企業者等の法人税率の特例》関係公式サイトで条文の実在を確認しています。登録免許税法・租税特別措置法とも、e-Gov法令検索の条文原文そのものへは今回の調査手段では到達できておらず、法務省・国税庁による公式解説ページでの確認にとどまります(2026年9月6日確認)。 - 法人住民税均等割の具体的な金額(東京23区・資本金1,000万円以下かつ従業者50人以下=年7万円、1,000万円超1億円以下=年18万円)は、総務省:地方税制度|法人住民税公式サイトの均等割税率表で、道府県民税均等割(2万円→5万円)・市町村民税均等割(5万円→13万円)の内訳を含めて確認しました(2026年9月6日確認)。

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会社を辞めて、会社をつくる準備をしている当事者です

執行役員として6年、会社の管理部門を統括する立場にいました。2026年に退職し、いまは求職活動と並行して、会社を立ち上げる準備を検討している段階です。まだ登記はしていません。調べて確かめたことだけを書き、済んでいない手続きは「これから」と正直に書きます。体験のふりをしません。

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