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法人の住所変更(本店移転)の手続きと費用

この記事の結論
  • 本店移転は登記事項の変更にあたり、変更の日から2週間以内に変更登記をしなければならない(会社法915条1項)
  • 登録免許税は同一法務局管内なら3万円、管轄が変わる移転なら旧・新それぞれの法務局に申請が必要なため計6万円(登録免許税法別表第一 二十四(一))
  • 健康保険・厚生年金保険の「適用事業所名称/所在地変更(訂正)届」は事実発生から5日以内という登記よりも短い期限がある(健康保険法施行規則30条・厚生年金保険法施行規則23条、日本年金機構)
  • 労働保険(労災・雇用保険)の「名称所在地等変更届」は変更があった日の翌日から10日以内(労働基準監督署・ハローワークそれぞれに提出)
  • 税務署への異動届出書、都道府県税事務所・市区町村への届出には法定の明確な期限は見当たらず、「速やかに」提出するものとされている
この記事の内容
  1. 結論:登記より先に年金事務所の期限(5日)が来る
  2. まず本店移転登記をする(会社法915条・登録免許税)
  3. 年金事務所への届出:事実発生から5日以内
  4. 税務署への届出:異動届出書と給与支払事務所の届出
  5. 都道府県税事務所・市区町村への届出
  6. 労働基準監督署・ハローワークへの届出(従業員がいる場合)
  7. 銀行・取引先・許認可官庁への通知
  8. 比較表:届出先別の期限と提出先
  9. 費用総額の目安
  10. 実体験について、正直に書きます
  11. 次にやること

この記事は、会社の本店を移転することになり、何をどの順番で手続きすればいいのか分からない人に向けて書いています。 結論から言うと、本店移転で必ずやらなければならないのは法務局への変更登記だけではありません。年金事務所・税務署・都道府県税事務所・市区町村・(従業員がいれば)労働基準監督署とハローワークにも、それぞれ別の届出が必要です。中でも年金事務所への届出は「事実発生から5日以内」という、登記の期限(2週間以内)より短い期限があり、ここで出遅れる会社が少なくありません。以下、届出先ごとの期限と費用を整理します。

こんな状態ではありませんか
  • 本店移転で法務局以外にどこへ届出が必要なのか、全体像が分からない
  • 「登記さえ済ませれば終わり」だと思っていたら、あとから別の届出漏れを指摘された
  • どの届出にどれくらいの期限があるのか、順番をつけられない

結論:登記より先に年金事務所の期限(5日)が来る

本店移転の手続きは、時系列で並べると次のようになります。

ここが要点

期限が短い順に並べると、次のとおりです。 1. 年金事務所:事実発生から5日以内(健康保険・厚生年金保険の適用事業所名称/所在地変更届) 2. 労働基準監督署・ハローワーク:変更の翌日から10日以内(従業員がいる場合の労働保険関係) 3. 法務局:変更の日から2週間以内(本店移転の変更登記。会社法915条1項) 4. 税務署:法定の明確な期限はなく、「速やかに」提出するもの。都道府県税事務所・市区町村:期限は自治体の条例による(全国一律ではなく、例えば東京都は10日以内)

「登記を先に済ませてから、落ち着いて他の届出をやろう」と考えると、年金事務所の5日という期限には間に合わない計算になります。

まず本店移転登記をする(会社法915条・登録免許税)

本店の所在地は登記事項であり、変更が生じたときは変更の日から2週間以内に変更登記をしなければなりません(会社法915条1項)。登録免許税は、移転先が同一法務局の管轄内か、管轄が変わるかで金額が変わります。

  • 同一法務局の管轄内での移転:登録免許税3万円
  • 管轄が変わる移転:登録免許税6万円(旧所在地・新所在地それぞれの法務局への申請が必要なため3万円×2)

これは登録免許税法別表第一 二十四(一)に定められた税額です。定款変更の要否(株主総会の特別決議が必要かどうか)や、司法書士報酬の目安を含めた詳しい内訳は「[定款の変更手続き|本店移転・目的追加の費用]」の記事で整理しているため、ここでは登記そのものの説明は最小限にとどめ、登記の後(または並行して)必要になる、法務局以外への届出を中心に見ていきます。

年金事務所への届出:事実発生から5日以内

健康保険・厚生年金保険の適用事業所である会社(役員1人でも報酬を受け取っていれば通常は適用事業所です)は、本店の名称・所在地に変更があったとき、「健康保険・厚生年金保険 適用事業所名称/所在地変更(訂正)届」を提出しなければなりません。

日本年金機構の案内では、この届出の提出期限は事実発生から5日以内とされています(日本年金機構「適用事業所の名称・所在地を変更するとき」の説明による)。届出先は、移転後の住所を管轄する年金事務所です。移転によって管轄する年金事務所が変わるかどうかで届出書の様式(管轄内用・管轄外用)が異なり、いずれの場合も添付書類として登記事項証明書が必要です。

ここが要点

5日という期限は、登記の完了を待っていては間に合わないほど短いものです。実務上は、本店移転の効力発生日(株主総会または取締役会で移転を決議し、その効力が生じた日)を起点に、登記申請の準備と並行して年金事務所への届出書を用意しておく必要があります。根拠条文は健康保険法施行規則第30条と厚生年金保険法施行規則第23条で、いずれも事業所の名称・所在地等に変更があったときは「五日以内」に届書を提出しなければならないと定めています(e-Gov法令検索で条文原文を確認。2026年9月6日確認)。日本年金機構の公式案内ページの「事実発生から5日以内」という記載とも一致します。

税務署への届出:異動届出書と給与支払事務所の届出

税務署には、本店移転により納税地が変わったことを知らせる「異動届出書」を提出します。すでに所轄税務署に届け出ている内容(本店所在地=納税地)に変更が生じた場合に提出する書類で、本店移転は当然この「納税地の異動」にあたります。従業員や役員に給与を支払っている場合は、「給与支払事務所等の開設・移転・廃止届出書」もあわせて提出します。

提出期限について、法律で「◯日以内」と明確に定めた規定は調べた範囲では見当たりませんでした。複数の税理士事務所・法人登記代行サービスの解説では、「異動等後速やかに」提出するものとされています。移転前と移転後で所轄税務署が異なる場合は、それぞれの税務署への提出が必要です(旧所在地の税務署へ提出すれば新所在地の税務署にも情報が引き継がれる運用を案内しているサイトもありますが、この点は税理士や所轄税務署に個別に確認するのが確実です)。

都道府県税事務所・市区町村への届出

法人事業税・法人住民税の異動届出書を、都道府県税事務所と(法人住民税の均等割・法人税割の対象となる)市区町村のそれぞれに提出します。国税(税務署)とは別の届出先であり、税務署への異動届出書を出したからといって自動的に地方税側へ情報が伝わるわけではありません。

提出期限は全国一律ではなく、自治体ごとに条例で定められています(地方税法第317条の2は異動届出書の様式・提出義務の根拠規定ですが、期限日数そのものは各自治体の条例に委ねられています)。たとえば東京都主税局は「廃止又は変更の日から10日以内に、異動届出書を所管の都税事務所に提出してください」と案内しています(東京都主税局の公式ページで確認)。他の道府県・市区町村については個別に提出先の案内を確認してください。

労働基準監督署・ハローワークへの届出(従業員がいる場合)

従業員を雇用しており労働保険(労災保険・雇用保険)に加入している場合は、次の2つの届出が必要です。

  • 労働基準監督署:「労働保険名称・所在地等変更届」を、変更があった日の翌日から10日以内に提出(労働保険の保険料の徴収等に関する法律施行規則第5条第2項「変更を生じた日の翌日から起算して十日以内に、…届書を所轄労働基準監督署長又は所轄公共職業安定所長に提出することによつて行わなければならない」。e-Gov法令検索で条文原文を確認、2026年9月6日確認)
  • ハローワーク:「雇用保険事業主事業所各種変更届」を提出(登記事項証明書の添付が必要)。こちらも変更があった日の翌日から10日以内に提出しなければなりません(雇用保険法施行規則第142条「その変更があつた日の翌日から起算して十日以内に、その事業所の所在地を管轄する公共職業安定所の長に提出しなければならない」)

提出先は、いずれも移転の事業所を管轄する労働基準監督署・ハローワークです。役員1人だけの会社で従業員を雇用していない場合、労働保険への加入自体がないため、この届出は不要です。

銀行・取引先・許認可官庁への通知

法定の届出ではありませんが、実務上忘れやすいものとして次があります。

  • 取引銀行への住所変更届(法人口座の登録住所)
  • 取引先への移転通知
  • 許認可を受けて事業を行っている場合、その許認可官庁への住所変更届(許認可の種類ごとに提出先・期限が異なるため、業種ごとに個別確認が必要)
  • 会社のウェブサイト・名刺・請求書フォーマットなどの住所表記の更新

これらは法律上の期限があるものではありませんが、放置すると郵便物の未達や取引先からの信用への影響につながるため、登記完了後すみやかに着手するのが実務上の対応です。

比較表:届出先別の期限と提出先

届出先 届出内容 期限 提出先の管轄
年金事務所 適用事業所名称/所在地変更(訂正)届 事実発生から5日以内 移転後の住所を管轄する年金事務所
労働基準監督署 労働保険名称・所在地等変更届(従業員がいる場合) 変更の翌日から10日以内 移転後の事業所を管轄する労基署
ハローワーク 雇用保険事業主事業所各種変更届(従業員がいる場合) 変更の翌日から10日以内 移転後の事業所を管轄するハローワーク
法務局 本店移転の変更登記 変更の日から2週間以内(会社法915条1項) 移転前・移転後の管轄法務局(管轄が変わる場合は両方)
税務署 異動届出書・給与支払事務所等の届出書 法定の明確な期限なし(「速やかに」) 移転前・移転後の所轄税務署
都道府県税事務所・市区町村 異動届出書 自治体の条例による(全国一律ではない。例:東京都は10日以内) 移転前・移転後の管轄自治体

費用総額の目安

本店移転にかかる費用は、法務局への登録免許税が中心で、年金事務所・税務署・都道府県税事務所・労働基準監督署・ハローワークへの届出そのものに手数料はかかりません。

  • 登録免許税:管轄内3万円、管轄外6万円(登録免許税法別表第一 二十四(一))
  • 司法書士に登記を依頼する場合の報酬:日本司法書士会連合会の報酬アンケート結果(2018年1月実施)によると、全体の平均額は47,466円(低額者10%の平均26,647円〜高額者10%の平均84,181円)。このアンケートに管轄内外による金額の区別はありません(※2026年9月時点の調査。実際の報酬は事務所により幅があります)
  • 登記事項証明書の取得費用:1通600円(登記事項証明書等手数料令。書面請求の場合。令和7年4月1日以降の金額。オンライン請求・受取方法により金額は異なります)。年金事務所・労基署・ハローワークへの届出でそれぞれ添付書類として必要になるため、複数通取得しておくと動きやすくなります

税理士・社会保険労務士に税務署・年金事務所・労基署への届出をまとめて依頼する場合は、これに加えて別途の報酬が発生します。金額は事務所により幅があるため、依頼する場合は見積もりを確認してください。

実体験について、正直に書きます

私の場合

正直に書きます。この記事を書いている2026年9月1日時点で、私自身はまだ合同会社の設立登記も完了しておらず、本店移転を実際に経験したことはありません。

そのため、この記事の内容は自分で手続きした記録ではなく、会社法・登録免許税法の条文と、日本年金機構の公式案内、複数の社会保険労務士・税理士事務所・法人登記代行サービスが公開している情報を突き合わせて整理したものです。特に年金事務所の「5日以内」という期限は、登記より先に到来する短い期限であるにもかかわらず見落とされやすいという指摘が複数のサイトで共通していた点を重視して書いています。実際に本店を移転する段階になったら、どの届出をどの順番で出したか、実際にかかった日数をこの記事に追記します。

次にやること

まず、本店移転の効力発生日(株主総会または取締役会で決議した移転日)を確定させ、その日から5日以内に年金事務所への届出書を用意できるかを最初に確認してください。 登記だけを先にやろうとすると、年金事務所の期限に間に合わなくなります。そのうえで、法務局・税務署・都道府県税事務所・市区町村・(従業員がいれば)労働基準監督署とハローワークへの届出を、上の比較表の期限順にリストアップし、それぞれに必要な登記事項証明書の通数を早めに取得しておいてください。

freee会社設立


※本記事は2026年9月時点の会社法・登録免許税法の条文、日本年金機構の公式案内、健康保険法施行規則・厚生年金保険法施行規則・労働保険の保険料の徴収等に関する法律施行規則・雇用保険法施行規則の条文、および社会保険労務士・税理士事務所・法人登記代行サービスの公開情報に基づく情報整理です。実際の手続き前には、管轄の年金事務所・税務署・労働基準監督署・ハローワーク、または司法書士・社会保険労務士・税理士に最新の様式と期限を確認してください。

出典 - 会社法915条1項(登記事項に変更が生じたときは2週間以内に変更登記) - 登録免許税法別表第一 二十四(一)(本店又は主たる事務所の移転の登記の税額 1件につき3万円) - 日本年金機構「適用事業所の名称・所在地を変更するとき(管轄内の場合)の手続き」 https://www.nenkin.go.jp/service/kounen/tekiyo/jigyosho/20150320.html (2026年9月1日確認。事実発生から5日以内との記載を確認。根拠条文は健康保険法施行規則第30条・厚生年金保険法施行規則第23条〈いずれも「五日以内」に届書を提出〉であることをe-Gov法令検索の条文原文で確認、2026年9月6日確認) - 日本年金機構「適用事業所の名称・所在地を変更するとき(管轄外の場合)の手続き」 https://www.nenkin.go.jp/service/kounen/tekiyo/jigyosho/20141205.html (2026年9月1日確認) - SATO社会保険労務士法人「労働保険名称所在地等変更届とは?添付書類や書き方の注意点を解説」 https://www.sato-magazine.com/roudouhoken-henkou (2026年9月1日確認。変更の翌日から10日以内との記載を確認) - GVA法人登記「会社の住所変更に伴う手続き一覧【期限チェックリスト付き】」 https://corporate.ai-con.lawyer/articles/company-transfer/23 (2026年9月1日確認) - GVA法人登記「本店移転後の労働基準監督署への手続きについて解説」 https://corporate.ai-con.lawyer/articles/company-transfer/92 (2026年9月1日確認) - GVA法人登記「本店移転(法人の住所変更)後の税務署への異動届について解説」 https://corporate.ai-con.lawyer/articles/company-transfer/24 (2026年9月1日確認) - GVA法人登記「本店を移転した場合の地方税の税務申告書の提出先はどこ?」 https://corporate.ai-con.lawyer/articles/company-transfer/91 (2026年9月1日確認) - vs-group「法人の本店移転時の異動届出書の書き方とは?」 https://vs-group.jp/startup/establishment/23442.html (2026年9月1日確認) - 厚生労働省 三重労働局「雇用保険事業主事業所各種変更届」様式案内 https://jsite.mhlw.go.jp/mie-roudoukyoku/content/contents/001418690.pdf (2026年9月5日確認。「変更のあった日の翌日から起算して10日以内に提出してください」との記載を確認) - 雇用保険法施行規則第142条「その変更があつた日の翌日から起算して十日以内に、その事業所の所在地を管轄する公共職業安定所の長に提出しなければならない」(法令データベース「労働新聞社」で条文原文を確認。2026年9月6日確認) - 労働保険の保険料の徴収等に関する法律施行規則第5条(名称、所在地等の変更の届出):第2項の「変更を生じた日の翌日から起算して十日以内に、…届書を所轄労働基準監督署長又は所轄公共職業安定所長に提出することによつて行わなければならない」をe-Gov法令検索の条文原文で確認(2026年9月6日確認) - 法務省「登記手数料について」 https://www.moj.go.jp/MINJI/TESURYO/ (2026年9月5日確認。登記事項証明書(謄抄本)書面請求は令和7年4月1日以降1通600円との記載を確認) - GVA法人登記「本店移転(法人の住所変更)登記を司法書士に依頼した場合の費用(司法書士報酬)を解説」 https://corporate.ai-con.lawyer/articles/company-transfer/25 (2026年9月6日確認。日本司法書士会連合会の報酬アンケート結果(2018年1月実施)を引用し、全体平均47,466円・低額者10%平均26,647円・高額者10%平均84,181円と紹介していることを確認。管轄内外による金額の区別はなく、法定の統一金額でもないため実際の依頼時は見積もりが必要) - 国税庁「C1-8 異動事項に関する届出」 https://www.nta.go.jp/taxes/tetsuzuki/shinsei/annai/hojin/annai/1554_5.htm (2026年9月6日確認。異動届出書の提出について、提出期限を「◯日以内」のように定めた記載はないことを確認) - 東京都主税局「法人事業税・法人都民税|仕事と税金」 https://www.tax.metro.tokyo.lg.jp/shitsumon/work/a1 (2026年9月6日確認。「廃止又は変更の日から10日以内に、異動届出書を所管の都税事務所に提出してください」との記載を確認) - 都道府県税事務所・市区町村への異動届出書の提出期限:地方税法第317条の2は届出義務の根拠規定だが、期限日数は各自治体の条例に委ねられており全国一律の答えは存在しない。東京都以外の自治体の期限は個別確認が必要

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会社を辞めて、会社をつくる準備をしている当事者です

執行役員として6年、会社の管理部門を統括する立場にいました。2026年に退職し、いまは求職活動と並行して、会社を立ち上げる準備を検討している段階です。まだ登記はしていません。調べて確かめたことだけを書き、済んでいない手続きは「これから」と正直に書きます。体験のふりをしません。

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