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会社設立後の社会保険手続き

この記事の結論
  • 法人の事業所は、常時従業員を使用する事業所(事業主のみの場合を含む)として厚生年金保険法6条1項1号により強制適用事業所となる(日本年金機構)
  • 新規適用届・被保険者資格取得届は事実発生から5日以内に管轄の年金事務所へ提出する必要があり、法人(商業)登記簿謄本(コピー不可・提出日からさかのぼって90日以内発行)を添付する(日本年金機構「新規適用の手続き」)
  • 厚生年金保険料率は2017年9月以降18.3%で固定され、労使折半のため会社と個人がそれぞれ9.15%ずつ負担する(厚生労働省)
  • 代表取締役など会社の執行権を持つ役員は労働者に該当しないため、労災保険・雇用保険は原則として加入対象外(専門家解説記事。特別加入制度は別途あり)
  • 役員報酬をゼロにした場合は社会保険の被保険者資格が認められないとする解説が複数あるが、個別の資格取得・喪失の判断は年金事務所が行うため一般論としての整理(社会保険労務士等の解説記事)
この記事の内容
  1. 結論:一人社長でも健康保険・厚生年金は加入義務
  2. なぜ一人でも「強制適用事業所」になるのか
  3. 加入する保険・加入しない保険を整理する
  4. 新規適用の手続き:何を・いつまでに・どこへ
  5. 一人社長の社会保険手続きの手順と、5日を過ぎたときの動き
    1. 手続きのあと、最初に出ていく金額の計算例
    2. 手続きをしないと、5日を過ぎるとどうなるか
  6. 保険料はどのくらいかかるか
  7. 役員報酬をゼロにしたらどうなるか
  8. 実体験について、正直に書きます
  9. 次にやること

この記事は、会社を設立したばかりで、従業員は自分一人しかいないのに社会保険の手続きが必要なのか迷っている人に向けて書いています。 結論から言うと、法人を設立した時点で、代表者一人だけの会社であっても健康保険・厚生年金保険への加入は義務です。従業員を雇っているかどうかは関係ありません。以下、なぜ一人でも加入義務があるのか、何をいつまでに届け出るのか、労災保険・雇用保険とはどう違うのかを整理します。

こんな状態ではありませんか
  • 自分一人の会社なのに、社会保険に入る必要が本当にあるのか分からない
  • 「加入義務」と言われても、何をどこに、いつまでに出せばいいのか具体的に分からない
  • 保険料の負担がどのくらい増えるのか、心構えができていない

一人社長の社会保険手続きの答えは、これです。

  • 期限は、法人の登記が完了した日から5日以内
  • 出す先は、会社の所在地を管轄する年金事務所(または事務センター)
  • 出すものは「新規適用届」と、自分の「被保険者資格取得届」の2つ
  • 持っていくものは、登記簿謄本(コピー不可・90日以内発行)と法人番号指定通知書のコピー
  • 出し方は、電子申請・郵送・窓口のどれか

順番どおりの手順は、後ろの「一人社長の社会保険手続きの手順」の節にまとめています。

結論:一人社長でも健康保険・厚生年金は加入義務

法人を設立すると、その事業所は健康保険・厚生年金保険の「強制適用事業所」になります。「強制適用」という言葉の通り、事業主が入りたいかどうかを選べる制度ではありません。 従業員がゼロで、代表者一人が役員報酬を受け取っているだけの会社でも、この扱いは変わりません。

日本年金機構は、強制適用事業所の要件を「法人事業所で常時従業員(事業主のみの場合を含む)を使用するもの」と説明しています(日本年金機構「適用事業所と被保険者」)。「事業主のみの場合を含む」というかっこ書きが、一人社長にも加入義務がある根拠です。個人事業主の場合は、従業員5人未満なら業種を問わず任意加入で、5人以上でも農林漁業や飲食店・旅館・理美容業などの一部サービス業、法律事務所等の士業は任意加入にとどまります(日本年金機構「適用事業所と被保険者」「任意適用申請の手続き」)。法人はこの任意加入の枠組みとは別に扱われます。

なぜ一人でも「強制適用事業所」になるのか

根拠になっているのは厚生年金保険法6条1項2号です。同号は、国・地方公共団体・法人の事業所であって常時従業員を使用するものを強制適用事業所と定めており(1号は特定業種で常時5人以上の個人事業所が対象)、この「常時従業員を使用する」に代表者一人だけの体制も含まれると、日本年金機構が公式に説明しています(日本年金機構「事業所が健康保険・厚生年金保険の適用を受けようとするとき」、e-Gov法令検索「厚生年金保険法」)。健康保険についても同様に、法人の事業所は強制適用の対象として扱われます。

ここが要点

個人事業主との違いはここです。 個人事業主は従業員が5人未満なら国民健康保険・国民年金のままで構いませんが、法人成りした時点でこの前提が変わります。「まだ売上が少ないから」「自分一人だから」は、加入義務を免れる理由にはなりません。

加入する保険・加入しない保険を整理する

社会保険とひとくくりに言っても、一人社長の場合に加入するものと、原則対象外のものに分かれます。

保険の種類 一人社長の扱い 理由・根拠
健康保険 加入義務あり 法人事業所は強制適用事業所(厚生年金保険法6条1項2号、日本年金機構)
厚生年金保険 加入義務あり 同上
労災保険 原則対象外 代表取締役など会社の執行権を持つ役員は「労働者」に該当しないため(専門家解説記事)。中小事業主等の特別加入制度は別途あり
雇用保険 原則対象外 労働者性がないため(専門家解説記事)

加入するのは健康保険・厚生年金保険の2つで、労災保険・雇用保険は代表者本人については原則加入できません。これは「加入しなくていい」というより「労働者ではないので制度の対象に入らない」という整理です。将来、労働者として扱われる従業員を1人でも雇えば、その従業員については労災保険・雇用保険の加入義務が別途発生します。

新規適用の手続き:何を・いつまでに・どこへ

健康保険・厚生年金保険の加入手続きは、次の2点がポイントです。

  • 提出期限:事実発生から5日以内(日本年金機構「新規適用の手続き」)。「事実発生」とは、法人の登記が完了して事業所が成立した日を指します
  • 提出先:事業所の所在地を管轄する年金事務所または事務センター

提出する届出と添付書類は次の通りです。

届出・書類 内容
健康保険・厚生年金保険 新規適用届 事業所そのものを社会保険の適用対象として登録する届出
健康保険・厚生年金保険 被保険者資格取得届 代表者本人を被保険者として登録する届出。新規適用届と同時に提出する
法人(商業)登記簿謄本 コピー不可。提出日からさかのぼって90日以内に発行されたものが必要(日本年金機構)
法人番号指定通知書等のコピー 事業主が法人の場合に添付

提出方法は電子申請・郵送・窓口持参のいずれかです(日本年金機構)。

ここが要点

登記簿謄本は「コピー不可・90日以内発行」の2条件がそろっていないと受理されません。 登記が完了してから日をおかずに取得し、そのまま原本を提出する前提で動くと二度手間になりません。

一人社長の社会保険手続きの手順と、5日を過ぎたときの動き

登記が終わった日から、次の順番で進めます。

  1. 登記完了日を控える。 この日が「事実発生」の日で、5日の期限の起点です
  2. 法務局で登記簿謄本(履歴事項全部証明書など)を取る。 コピー不可で、提出日から90日以内に発行されたものが条件です
  3. 法人番号指定通知書のコピーを用意する。 手元に無いときは、国税庁の法人番号公表サイトの画面印刷でも認められています
  4. 登記上の住所と実際の事務所が違う場合は、賃貸借契約書のコピーなどを足す。 この場合の提出先は、実際の所在地を管轄する年金事務所です
  5. 「新規適用届」と「被保険者資格取得届」を作る。 資格取得届は、代表者自身を被保険者にする届出です
  6. 電子申請・郵送・窓口のどれかで出す。 窓口は予約が要るかどうかが年金事務所ごとに違う可能性があるため、事前に電話で確かめると二度手間になりません

(以上は日本年金機構「新規適用の手続き」の記載にもとづきます。2026年10月9日確認)

出す前に、次の□を上から確かめてください。

  • □ 登記が完了した日を手帳に書いた(そこから5日以内)
  • □ 登記簿謄本の発行日が、提出日から90日以内である
  • □ 登記簿謄本はコピーでなく、発行された原本である
  • □ 法人番号指定通知書のコピー(または画面印刷)がある
  • □ 提出先は、実際の事務所の所在地を管轄する年金事務所である

手続きのあと、最初に出ていく金額の計算例

たとえば、役員報酬が月30万円で、標準報酬月額も30万円の区分に入る人を仮置きします。厚生年金保険料率18.3%を、会社と本人で半分ずつ(9.15%ずつ)負担する前提です(日本年金機構「厚生年金保険の保険料」)。

項目 計算 金額
本人分(月) 30万円 × 9.15% 27,450円
会社分(月) 30万円 × 9.15% 27,450円
一人社長の会社から出る額(月) 27,450円 + 27,450円 54,900円
同(年・12か月) 54,900円 × 12 658,800円

前提:賞与なし、報酬は毎月同額。健康保険料は協会けんぽの都道府県ごとの料率や加入先で変わるため、この表には入れていません。実際の金額は、加入先の保険料額表で足してください。

手続きをしないと、5日を過ぎるとどうなるか

ここで詰まる人が多いはずです。「5日に間に合わなかった。もう受け付けてもらえないのか」という点です。

  • 日本年金機構の「新規適用の手続き」のページには、期限を過ぎた場合の扱いや、5日の数え方(休日を含むか)の記載は見当たりません(2026年10月9日確認)。自己判断で「もう遅い」とあきらめず、気づいた時点で管轄の年金事務所に電話で事情を伝え、出し方を聞くのが現実的です
  • 届出そのものを出さないままにすると、厚生年金保険法102条1項1号により、正当な理由がなくて届出をしなかった事業主は「6月以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金」の対象になります(e-Gov法令検索)。ただし条文の対象は「正当な理由がなくて」届出をしない場合で、期限を数日過ぎたことがただちにこの罰則に当たると読めるわけではありません。個別の判断は年金事務所の領分です
  • 保険料の徴収権は、行使できる時から2年で時効により消滅します(同法92条)。「いつまでも放っておいてよい」という意味ではなく、遅れた分の扱いは年金事務所が決めるため、早く出すほど話が小さく済みます

保険料はどのくらいかかるか

厚生年金保険料率は2017年9月分以降18.3%で固定されており、会社と個人が労使折半で半分ずつ負担するため、それぞれ9.15%ずつの計算になります(日本年金機構「厚生年金保険の保険料」)。健康保険料率は加入する保険者(協会けんぽの場合は都道府県ごと)によって異なるため、この記事では一律の数値は示しません。具体的な保険料は「標準報酬月額」という区分に応じて決まるため、自分の役員報酬額に対応する保険料額は、協会けんぽまたは加入する健康保険組合の保険料額表で個別に確認する必要があります。

一人社長の場合、会社負担分(法定福利費)と個人負担分の両方が、最終的には自分の会社の資金から出ていく点は意識しておく必要があります。会社負担分だけを見て「思ったより安い」と判断すると、個人負担分と合わせた実質負担を見落とします。

役員報酬をゼロにしたらどうなるか

設立初期は資金繰りを優先して、役員報酬を意図的にゼロに設定するケースがあります。日本年金機構は、役員報酬ゼロの場合の被保険者資格の取得・喪失について、統一的な基準を公式ページで公表していません(2026年8月確認)。複数の税理士・社会保険労務士事務所の解説記事では「報酬がゼロだと社会保険料を徴収する対象がなく、資格取得が認められない」という運用を共通して説明していますが、被保険者資格の取得・喪失の判断は個別の実態を見て年金事務所が行うものであり、この記事で一律の結論を示すことはできません。(一次情報は確認できず)

役員報酬を途中でゼロに変更した場合は、資格喪失届の提出が必要になる場合があります。資格を失った場合、健康保険は国民健康保険へ、年金は国民年金への切り替えが一般的な対応先になります。役員報酬の設定を検討している段階であれば、加入の要否を含めて年金事務所または社会保険労務士に事前に相談することをおすすめします。

実体験について、正直に書きます

私の場合

正直に書きます。この記事を書いている2026年8月31日時点で、私自身はまだ合同会社の設立登記が完了しておらず([合同会社設立の全手順]の記事で書いた通りです)、社会保険の新規適用届もこれから提出する段階です。そのため、この記事の内容は実際に手続きを終えた記録ではなく、日本年金機構の公式情報と法令、専門家解説記事を基にした「調査した範囲では」の整理です。

登記が完了して実際に新規適用届を出したら、添付書類をそろえるのにかかった実日数や、窓口・郵送・電子申請のどれを選んだか、実際の保険料額を、この記事に実体験として追記します。

次にやること

まず、法人の登記が完了したら、その日から5日以内という期限を先に手帳に書き込んでください。 登記簿謄本の取得(90日以内発行・コピー不可)を先に済ませておけば、新規適用届と被保険者資格取得届の提出はそのあと1回の手続きで終えられます。保険料の実額は、自分の役員報酬額をもとに協会けんぽ(または加入先)の保険料額表で確認し、資金繰りの計画に組み込んでください。


※本記事は2026年8月時点の法令・日本年金機構公式情報と、筆者個人の状況に基づくものです。社会保険の加入要否・保険料・手続き方法は個別の事情や制度改正により変わることがあるため、実際の手続き前には必ず管轄の年金事務所・社会保険労務士に最新情報を確認してください。役員報酬ゼロの場合の資格取得・喪失の扱いは、日本年金機構の公式ページに統一的な基準の公表が見当たらなかったため(一次情報は確認できず)としています。

出典 - 厚生年金保険法 第6条|e-Gov法令検索(第1項2号:国・地方公共団体・法人の事業所で常時従業員を使用するものが強制適用事業所) - 厚生年金保険法 第92条・第102条|e-Gov法令検索(保険料徴収権の時効2年、届出をしない事業主への罰則。2026年10月9日確認) - 適用事業所と被保険者|日本年金機構 - 事業所が健康保険・厚生年金保険の適用を受けようとするとき|日本年金機構 - 新規適用の手続き|日本年金機構 - 任意適用申請の手続き|日本年金機構 - 厚生年金保険の保険料|日本年金機構(保険料率18.3%固定・平成29年9月分以降、労使折半) - 労災保険・雇用保険における役員の労働者性についての専門家解説記事(個別事案の判断は労働局・年金事務所に確認が必要)

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会社を辞めて、会社をつくる準備をしている当事者です

執行役員として6年、会社の管理部門を統括する立場にいました。2026年に退職し、いまは求職活動と並行して、会社を立ち上げる準備を検討している段階です。まだ登記はしていません。調べて確かめたことだけを書き、済んでいない手続きは「これから」と正直に書きます。体験のふりをしません。

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