合同会社設立の全手順
- 合同会社の設立登記にかかる登録免許税は資本金の0.7%か6万円の高い方(登録免許税法別表第一)
- 合同会社は株式会社と違い、定款の公証人認証が不要(会社法30条1項は株式会社の設立に関する規定で、持分会社である合同会社には適用されない)
- 資本金の払込みは定款作成日以降に社員になろうとする者の個人口座へ行い、通帳の写しを登記申請書類として添付するのが実務上の一般的な運用
- 代表者印(会社実印)の登記所への届出は2021年2月15日の商業登記規則改正で任意化されている(法務省)が、法人口座開設で実印と印鑑証明書を求められるため多くの場合は届け出る
この記事の内容
この記事は、合同会社を自分で設立しようとしていて、何から手を付ければいいのか流れが見えず不安な人に向けて書いています。 結論から言うと、合同会社の設立は「基本事項を決める」「定款を作る」「資本金を払い込む」「登記書類をそろえる」「法務局に申請する」「登記後の届出をする」の6ステップです。株式会社と違って公証人による定款認証が不要な分、手順自体は少ないのが特徴です。以下、各ステップで実際に何をするかと、その根拠になっている法律を並べます。
- 合同会社を作りたいが、何をどの順番でやればいいのか全体像がつかめない
- 「定款」「登記」という言葉は聞くが、具体的に何を作って、どこに何を出すのかわからない
- 自分で手続きを進めた場合、どこでつまずきやすいのか事前に知っておきたい
結論:合同会社の設立は6ステップ
合同会社の設立手続きは、大きく分けると次の6ステップで進みます。
- 会社の基本事項を決める:商号・事業目的・本店所在地・資本金・代表社員・決算期
- 定款を作成する:合同会社は公証人による認証が不要
- 資本金を払い込む:代表社員個人の口座に振り込む
- 登記申請書類をそろえる:定款・払込証明書・印鑑届書など
- 法務局へ登記を申請する:申請日が会社の設立日になる
- 登記完了後にやること:登記簿謄本の取得、税務署などへの届出
株式会社との最大の違いは、2番目の「定款認証」が無いことです。 株式会社は定款作成後に公証役場で認証を受ける必要がありますが(会社法30条1項)、合同会社を含む持分会社にはこの規定が適用されません。認証にかかる手数料(株式会社の場合、発起人全員が自然人で3人以下・定款に発起人が設立時発行株式の全部を引き受ける旨の記載あり・取締役会を置く旨の記載なし、の3条件を満たせば資本金100万円未満で1万5,000円。満たさない場合は原則3万円。いずれも2024年12月1日改正・日本公証人連合会)と、公証役場に出向く手間の両方が省ける分、合同会社は株式会社より手順が少なくなります。
ステップ1:会社の基本事項を決める
定款を作る前に、次の項目を先に決めておく必要があります。あとから変更すると、変更登記の手数料(登録免許税法別表第一)が別途かかるため、最初にまとめて決めておくのが無駄がありません。
- 商号:会社名。「合同会社」の文字を前か後ろに入れる必要がある(会社法6条2項)
- 事業目的:定款に記載した事業以外は原則として行えない。将来やる可能性がある事業も含めて書いておく
- 本店所在地:登記簿に載る住所。自宅・レンタルオフィス・バーチャルオフィスのいずれか
- 資本金:会社法上は1円から設立できるが、金融機関の審査や取引先の見え方に影響する
- 代表社員:合同会社の代表者の呼び方は「代表取締役」ではなく「代表社員」(会社法599条)
- 決算期:設立日から決められる。繁忙期を避けるなど任意で選べる
ステップ2:定款を作成する(合同会社は認証不要)
定款は、会社の基本ルールを定めた文書です。持分会社を設立するには、社員になろうとする者が定款を作成し、その全員が署名または記名押印する必要があります(会社法575条1項)。
株式会社の場合はここで公証役場に行き、公証人の認証を受ける必要がありますが(会社法30条1項)、合同会社にはこの認証の規定が適用されません。 定款を作成した時点で、社員間の合意としては成立します。
定款には紙の定款と電子定款があります。紙の定款には収入印紙4万円が必要(印紙税法別表第一)ですが、電子定款であれば課税文書に当たらないため印紙代はかかりません。ただし電子定款の作成にはICカードリーダーや電子署名の環境が必要になるため、自分で用意する場合の手間と、代行サービスを使う場合の費用を比べる必要があります。この比較は電子定款についての別記事で詳しく扱う予定です。
ステップ3:資本金を払い込む
定款を作成したら、資本金を払い込みます。法務省が公表している合同会社設立手続の解説には「社員になろうとする者は、定款の作成後、合同会社の設立の登記をする時までに、その出資に係る金銭の全額を払い込み(中略)なければならない」と明記されており、払込みの時期は「定款作成後・登記申請前」に限られます(法務省「合同会社の設立手続について」)。また同解説では、株式会社のように払込取扱機関(銀行)での払込みが義務付けられているわけではなく、代表社員が作成した出資金領収書等でも差し支えないとされています。実務では銀行振込を選び、社員になろうとする者個人の銀行口座に、定款作成日以降の日付で振り込む運用が一般的です(この口座名義の細部は複数の司法書士事務所の解説記事による実務紹介で、法務省の公式解説には明記がありません)。振込後、通帳の表紙・見開き・振込が記帳されたページをコピーし、代表社員が作成した払込みを証する書面とあわせて、登記申請書類の一部として使います。
振込のタイミングは「定款作成日より後」である必要があります。定款作成日より前に口座に入っていたお金をそのまま資本金として計上することはできない、という点は見落としやすいところです。なお株式会社については、2022年6月13日法務省民商第286号により定款作成日より前の払込みも一定条件下で認められるようになりましたが、この緩和は合同会社には適用されません。合同会社は従前どおり「定款作成後」の払込みが必要です(出典:法務省「合同会社の設立手続について」)。
ステップ4:登記申請書類をそろえる
法務局に登記を申請する際は、主に次の書類が必要になります。
- 合同会社設立登記申請書
- 定款
- 代表社員の就任承諾書
- 払込みがあったことを証する書面(通帳の写し等)
- 資本金の額の計上に関する証明書
- 印鑑届書(代表者印を登記所に届け出る場合)
代表者印(会社実印)の登記所への届出は、2021年2月15日の商業登記規則改正により、オンラインで登記申請する場合は任意化されています(法務省)。 書面で登記申請する場合は、従来どおり印鑑届書による届出が必要です。オンライン申請で届け出なくても登記申請自体は可能ですが、法人口座の開設や各種契約で実印と印鑑証明書の提出を求められる場面が多いため、実務上は届け出るケースが大半です。
ステップ5:法務局へ登記を申請する
書類がそろったら、本店所在地を管轄する法務局に登記を申請します。合同会社は持分会社であり、その本店の所在地において設立の登記をすることによって成立します(会社法579条)。つまり、申請した日が会社の設立日になります。 特定の日に設立したい場合(縁起の良い日、決算月の都合など)は、その日に窓口が開いているかを事前に確認しておく必要があります。
登記申請時に必ずかかる法定費用は登録免許税で、資本金の0.7%か6万円のいずれか高い方です(登録免許税法別表第一)。定款認証手数料がかからない分、株式会社より初期費用を抑えられる点は、別記事[合同会社と株式会社どちらにするか]でも整理しています。
登記完了までの審査期間について、全国共通の標準処理日数を定めた公式統計は見当たりません。法務省・各地方法務局の公式サイトには法務局ごとに「登記完了予定日」のページがあり(例:東京法務局、大阪法務局、横浜地方法務局など)、申請日ごとの完了予定日がそれぞれ個別に更新・公表されています。実務上は申請から1〜2週間程度とされることが多いものの、法務局や時期(決算期集中月など)によって差があるため、正確な見込みは申請する本店所在地を管轄する法務局の「登記完了予定日」ページで直接確認してください。【一次情報なし:全国共通の標準処理日数は公表されておらず、法務局ごとに個別公表されています】
ステップ6:登記完了後にやること
登記が完了したら、それで終わりではありません。次の対応が必要です。
- 登記簿謄本(履歴事項全部証明書)の取得:法人口座の開設や各種契約で提出を求められる
- 印鑑証明書の取得:代表者印を届け出た場合、登記所で発行できる
- 税務署・都道府県税事務所・市区町村への届出:法人設立届出書など、期限が決まっている書類が複数ある
- 年金事務所への届出:代表社員一人の会社でも、社会保険への加入は義務になる
これらの届出は書類ごとに提出期限が異なり、期限を過ぎると不利益が生じるものもあります。届出の一覧と期限は、設立後の届出をまとめた別記事で整理する予定です。
比較表:6ステップで何をするか一覧
| ステップ | やること | 主な根拠・法定費用 |
|---|---|---|
| 1. 基本事項を決める | 商号・目的・所在地・資本金・代表社員・決算期を決定 | 会社法6条2項、599条 |
| 2. 定款を作成する | 定款を作成し社員全員が署名・記名押印(認証は不要) | 会社法575条1項、30条1項(株式会社のみ適用) |
| 3. 資本金を払い込む | 代表社員個人の口座に定款作成日以降で振込 | 実務上の一般的運用 |
| 4. 登記申請書類をそろえる | 申請書・定款・払込証明書・印鑑届書等を準備 | 商業登記規則(印鑑届出はオンライン申請の場合2021年2月15日改正で任意化。書面申請は引き続き必要) |
| 5. 法務局へ登記を申請する | 本店所在地を管轄する法務局に申請 | 会社法579条、登録免許税法別表第一 |
| 6. 登記完了後にやること | 謄本取得、税務署等への届出、社会保険加入 | 各種届出は別記事で整理予定 |
出典:会社法6条2項・30条1項・575条1項・579条・599条、登録免許税法別表第一、印紙税法別表第一、日本公証人連合会「定款手数料の改定」(2024年12月1日施行分)、法務省(印鑑届出の任意化、2021年2月15日施行)、法務省「合同会社の設立手続について」(出資の履行時期)、法務局各庁「登記完了予定日」
実体験について、正直に書きます
正直に書きます。この記事のタイトルには「実記録」とありますが、この記事を書いている2026年8月31日時点で、私自身はまだ合同会社の登記を完了していません。定款の作成にも着手していない段階です。別記事[合同会社と株式会社どちらにするか]でも書いた通り、現時点では合同会社に傾いていますが、まだ最終確定はしていません。
そのため、この記事の6ステップは、私自身が実際にたどった記録ではなく、会社法・登録免許税法などの法令と実務解説を基にした一般的な流れの整理です。「調査した範囲では」という前提で読んでください。実際に登記まで進めた段階で、どのステップにどれくらい時間がかかったか、想定外だった点は何かを、実額と日数つきでこの記事に追記するか、別記事にまとめます。
次にやること
まず、ステップ1の「会社の基本事項」を紙に書き出してください。 商号・事業目的・本店所在地・資本金・代表社員・決算期の6項目が決まれば、定款作成に進めます。定款を紙で作るか電子で作るかで初期費用が変わるため、次は電子定款についての記事を読んで、印紙代4万円を節約できるかどうかを確認してください。
freee会社設立
※本記事は2026年8月時点の法令に基づく情報整理と、筆者個人の状況に基づくものです。合同会社の設立手続きは今後の法改正や個別の事情により変わることがあるため、実際の申請前には必ず法務局・専門家(司法書士・行政書士)に最新情報を確認してください。登記完了までの標準処理期間は全国共通の公式統計が存在しないためとしています(法務局ごとに「登記完了予定日」を個別公表)。
出典 - 会社法 第6条2項(商号)、第30条1項(株式会社の定款認証)、第575条1項(持分会社の定款の作成)、第579条(持分会社の成立)、第599条(合同会社の代表社員) - 登録免許税法 別表第一(合同会社の設立登記にかかる登録免許税) - 印紙税法 別表第一(定款の課税・電子定款の非課税) - 日本公証人連合会 公式サイト「会社の定款手数料の改定」(2024年12月1日施行分・確認日2026年8月31日)。資本金100万円未満で1万5,000円となるのは、発起人全員が自然人で3人以下・株式全部引受の記載あり・取締役会非設置の3条件を満たす場合のみ - 法務省(代表者印の登記所への届出の任意化、商業登記規則等の改正・2021年2月15日施行。オンライン申請の場合に限る) - 法務省「合同会社の設立手続について」(https://www.moj.go.jp/MINJI/minji06_00141.html、確認日2026年8月31日)。出資の払込みは「定款の作成後、設立の登記をする時までに」行う必要があると明記 - 法務局各地方法務局公式サイト「登記完了予定日」(例:東京法務局・大阪法務局・横浜地方法務局、確認日2026年8月31日)