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設立前に使ったお金の扱い

この記事の結論
  • 会社成立(設立登記完了)までに支出した費用が「創立費」、成立後から事業を開始するまでに支出した費用が「開業費」で、呼び名は違うが税務上の扱いはほぼ同じ(法人税法施行令14条1項1号・2号)
  • 創立費の具体例は定款作成費用・公証人手数料・収入印紙代・登録免許税・発起人報酬・設立事務所賃借料など
  • 開業費の具体例は市場調査費・広告宣伝費・名刺や印刷物の作成費・研修費など(「開業準備のために特別に支出する費用」に限られ、家賃や水道光熱費のような経常的な費用は原則含まれない)
  • 創立費・開業費は会社計算規則上の繰延資産として計上でき、会計上は成立・開業のときから5年以内に定額法で償却するのが原則(実務対応報告第19号)
  • 税務上は「任意償却」が認められており、いつ・いくら償却するかを法人が自由に決められる(法人税法施行令64条1項1号)。下限が無いため、支出年度に全額償却してもゼロでもよい
  • 設立前は会社の銀行口座がまだ無いため、発起人や代表者個人が立て替えて支払うのが通常の流れ。立て替えた領収書を保管し、会社成立後に「創立費/未払金(または役員借入金)」で計上して精算する
この記事の内容
  1. 結論:会社成立の前後で呼び名が変わる。どちらも任意償却できる
  2. 創立費とは何か|会社が生まれる前の費用
  3. 開業費とは何か|生まれてから事業を始めるまでの費用
  4. 創立費と開業費の違い(一覧表)
  5. 繰延資産として計上する|会計は5年償却、税務は任意償却
  6. 個人が立て替えた分は、あとから会社の経費にする
  7. 実体験について、正直に書きます
  8. 次にやること

この記事は、会社の設立準備を進めていて「会社の口座がまだ無いのに、自分のお金で払った定款代や登録免許税はどうなるのか」が分からず止まっている人に向けて書いています。 結論から言うと、設立準備のために個人が立て替えた支出は、あとから会社の経費として計上できます。会社が生まれる前に払ったものは「創立費」、生まれてから事業を始めるまでに払ったものは「開業費」と呼び名が変わりますが、税務上の扱いはほとんど同じです。以下、何が創立費・開業費にあたるか、どう会計処理するかを順番に整理します。

こんな状態ではありませんか
  • 会社の口座を作る前に自分の財布から払ったお金が、経費になるのか分からない
  • 「創立費」と「開業費」という2つの呼び名の違いが分からない
  • いつ、いくら経費にできるのか(償却のルール)が分からない

結論:会社成立の前後で呼び名が変わる。どちらも任意償却できる

会社を作る過程では、法人の銀行口座がまだ無い段階から、定款作成や登記のためにお金が出ていきます。このお金は消えてなくなるわけではなく、次の2つのどちらかとして会社の帳簿に計上できます。

  1. 創立費:会社が成立する(設立登記が完了する)までに支出した費用(法人税法施行令14条1項1号)
  2. 開業費:会社が成立してから、実際に事業を開始するまでに支出した費用(同条項2号)

どちらも会社計算規則上の「繰延資産」という扱いになり、会計上は5年以内に少しずつ費用にしていくのが原則ですが、税務上は「任意償却」といって、いつ・いくら費用にするかを会社が自由に決められます(法人税法施行令64条1項1号)。順番に見ていきます。

創立費とは何か|会社が生まれる前の費用

法人税法施行令14条1項1号は、創立費を「発起人に支払う報酬、設立登記のために支出する登録免許税その他法人の設立のために支出する費用で、当該法人の負担に帰すべきもの」と定めています(e-Gov法令検索で条文を確認)。かみ砕くと、発起人が会社を作るために動いた分の費用のうち、会社が最終的に負担すべきものという意味です。

具体的には、次のようなものが創立費にあたるとされています(複数の税理士事務所の解説より整理)。

  • 定款の作成費用(公証人役場での認証手数料、紙の定款にかかる収入印紙代)
  • 設立登記のための登録免許税
  • 発起人への報酬(定款への記載が必要)
  • 設立事務所の賃借料、設立準備にあたった人の給与
  • 株式を募集するための広告費、株式申込証・目論見書の印刷費
  • 証券会社など金融機関への取扱手数料

これらはすべて、会社がまだこの世に存在していない時点で発生する支出です。だからこそ、発起人や代表予定者が個人のお金で立て替えて支払うことになります。

開業費とは何か|生まれてから事業を始めるまでの費用

法人税法施行令14条1項2号は、開業費を「法人の設立後事業を開始するまでの間に開業準備のために特別に支出する費用」と定めています。会社は既に成立している(設立登記は終わっている)が、まだ実際の営業(売上が立つ活動)が始まっていない期間の費用です。

具体例としてよく挙げられるのは次のようなものです。

  • 市場調査費
  • 広告宣伝費(開業を知らせるためのもの)
  • 名刺・チラシなど印刷物の作成費
  • 研修費、コンサルタント料

ここで注意したいのは、条文が「開業準備のために特別に支出する費用」と限定している点です。家賃や水道光熱費、通信費のように、事業を始めた後も毎月かかり続ける経常的な費用は、開業費には含めないのが一般的とされています。これらは通常の経費(地代家賃、水道光熱費など)として、発生した期の費用にするのが実務上の扱いです。開業準備のために一時的・特別に発生した支出かどうかが、開業費に入れてよいかの分かれ目になります。

創立費と開業費の違い(一覧表)

項目 創立費 開業費
発生する時期 発起人が設立準備を始めてから、会社成立(設立登記完了)まで 会社成立後から、実際に事業を開始するまで
根拠条文 法人税法施行令14条1項1号 法人税法施行令14条1項2号
具体例 定款作成費、認証手数料、収入印紙代、登録免許税、発起人報酬、設立事務所賃借料 市場調査費、広告宣伝費、名刺・印刷物代、研修費
支払う主体 発起人・代表予定者個人(会社の口座が無いため) 会社(口座が既にある場合が多いが、代表者の立て替えもあり得る)
会計・税務上の扱い 繰延資産として計上、任意償却可 繰延資産として計上、任意償却可

呼び名が違うだけで、繰延資産として計上し、任意償却できるという税務上の扱いは共通です。次の見出しで、この繰延資産・任意償却の仕組みを説明します。

繰延資産として計上する|会計は5年償却、税務は任意償却

会社計算規則74条は、貸借対照表の資産の部を流動資産・固定資産・繰延資産の3つに区分すると定めています(創立費・開業費など個別の項目名は74条には出てきません)。創立費・開業費・開発費・株式交付費・社債等発行費の5種類を繰延資産として計上できること、それぞれの償却期間は、企業会計基準委員会の実務対応報告第19号「繰延資産の会計処理に関する当面の取扱い」に定められています。

会計上の原則は、創立費であれば会社成立のとき、開業費であれば開業のときから、それぞれ5年以内の効果が及ぶ期間にわたって定額法で償却するというものです(実務対応報告第19号)。

一方で税務上は、法人税法施行令64条1項1号により「任意償却」が認められています。 同条1項2号により均等償却(月割りでの機械的な計算)が義務づけられている一部の繰延資産(公共的施設の負担金など、法人税法施行令14条1項6号に列挙されたもの)とは異なり、創立費・開業費(同条項1号・2号)は、その事業年度にいくら償却するかを法人が自由に決められます。下限が設けられていないため、次のようなことが可能です。

  • 設立初年度に赤字が見込まれるなら、その年は償却せず、繰延資産としてそのまま残しておく
  • 事業が軌道に乗って黒字になった年に、まとめて償却して費用にする
  • 支出した年に全額を償却してもよい
ここが要点

「任意償却」は、繰延資産に計上した金額の範囲内でしか使えません。実際に支出していない金額を償却することはできませんし、赤字を作るために架空の繰延資産を計上することもできません。あくまで「いつ費用にするか」のタイミングを選べる、という制度です。

個人が立て替えた分は、あとから会社の経費にする

創立費の実務で最初につまずきやすいのが、「会社の口座がまだ無いのに、どうやって会社の経費にするのか」という点です。答えはシンプルで、発起人や代表予定者が個人のお金で立て替えて支払い、会社成立後に会社の帳簿に計上して精算するという流れになります。

実務上は、次のような順番になるとされています。

  1. 定款作成費用・登録免許税などを、発起人が個人のお金で支払う。このとき領収書・振込明細を必ず保管しておく(誰が・何を・いくら払ったか会社成立後に証明する必要があるため)
  2. 会社成立後、会計帳簿に「創立費/未払金」または「創立費/役員借入金」といった仕訳で計上する
  3. 会社の口座から発起人個人へ、立て替えた金額を精算(返金)する

設立登記が完了する前の支出だからといって、記録を後回しにしないことがポイントです。 領収書を紛失すると、あとから金額を証明できず、経費として計上できなくなる可能性があります。

実体験について、正直に書きます

私の場合

正直に書きます。私自身は2026年に前職を退職し、会社設立の準備を進めている当事者ですが、この記事を書いている時点ではまだ設立登記が完了しておらず、実際に自分のお金で定款代や登録免許税を立て替えて支払い、それを創立費として計上した経験はありません。この記事は自分の記帳記録ではなく、法人税法施行令・会社計算規則の条文と、複数の税理士事務所・会計事務所の公開情報をもとにした「調査した範囲では」の整理です。

将来、実際に設立準備でお金を立て替え、会社成立後に創立費・開業費として計上した段階で、実際に使った勘定科目や、領収書の管理でつまずいた点があれば、この記事に実体験として追記します。

次にやること

まず、設立準備のためにこれから支払う予定がある費用(定款認証手数料、収入印紙代、登録免許税など)を、いつ・誰が・いくら払うか一覧にしてください。 そのうえで、支払うたびに領収書・振込明細を必ず保管する習慣をつけておくと、会社成立後の記帳がスムーズになります。

会社が成立したら、立て替えた分を創立費として計上し、税理士(または会計ソフト)に相談したうえで、いつ・いくら償却するかを決めてください。初年度が赤字見込みなら償却を見送り、黒字化してから償却するという選択肢があることも、頭に入れておいてください。


※本記事は2026年9月時点で確認できた法人税法施行令・会社計算規則の条文、複数の税理士事務所・会計事務所の解説記事、および筆者個人の状況に基づく調査整理です。実際の経理処理・償却タイミングの判断は、税理士に確認してください。この記事は一般的な整理であり、個別の税務相談の代わりにはなりません。

出典 - 法人税法施行令第14条1項1号(創立費の定義。「発起人に支払う報酬、設立登記のために支出する登録免許税その他法人の設立のために支出する費用で、当該法人の負担に帰すべきもの」) - 法人税法施行令第14条1項2号(開業費の定義) - 法人税法施行令第64条1項1号(創立費・開業費など第14条1項1号〜5号の繰延資産の償却限度額=繰延資産の額全額。任意償却の根拠) - 法人税法施行令第64条1項2号(第14条1項6号=公共的施設の負担金等の繰延資産について、月数按分での均等償却を定める規定。創立費・開業費とは対象が異なる) - 会社計算規則第74条(資産の部を流動資産・固定資産・繰延資産に区分する規定。創立費・開業費など個別項目名は条文に無い) - 企業会計基準委員会「実務対応報告第19号 繰延資産の会計処理に関する当面の取扱い」(創立費・開業費など5種類の繰延資産と、5年以内定額法償却という会計上の原則の根拠) - 法人税法施行令|e-Gov法令検索(第14条・第64条の条文原文を確認) - 会社計算規則|e-Gov法令検索(第74条の条文原文を確認) - 実務対応報告第19号「繰延資産の会計処理に関する当面の取扱い」|企業会計基準委員会(5年定額償却の会計上の原則を確認) - 創立費として経費計上できる範囲と繰延資産の償却方法とは|マネーフォワード クラウド会社設立(創立費の具体例、開業費との時期区分を確認) - 創立費と開業費の会計処理について|クラウド会計ソフト マネーフォワード(会計上5年定額償却の原則を確認) - 開業費は繰延資産として任意償却できる!仕訳方法を具体例と共に解説|小谷野税理士法人(任意償却の実務上の意味、上限・下限が無い点を確認) - 創立費と開業費などの繰延資産の任意償却~知っておきたい法人節税策の基礎知識⑦【創業者向け】|井上寧税理士事務所(任意償却を使った節税の考え方を確認) - 会社設立前のコストは経費になる?創立費や開業費の仕訳などを税理士が解説|VS group(創立費・開業費の具体例、発起人立て替えの流れを確認)

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会社を辞めて、会社をつくる準備をしている当事者です

執行役員として6年、会社の管理部門を統括する立場にいました。2026年に退職し、いまは求職活動と並行して、会社を立ち上げる準備を検討している段階です。まだ登記はしていません。調べて確かめたことだけを書き、済んでいない手続きは「これから」と正直に書きます。体験のふりをしません。

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