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定款に書く本店所在地

この記事の結論
  • 会社法第27条は、株式会社の定款に「本店の所在地」を記載しなければならないと定める絶対的記載事項の1つ(目的・商号・本店の所在地・出資財産の価額又は最低額・発起人の氏名等)
  • 条文に「番地まで書け」とは書かれておらず、実務上は市区町村(東京23区は区、政令指定都市は市)までの記載で受理される運用が定着している(最小行政区画)
  • 定款は「本店の所在地」、登記簿は「本店の所在場所」(番地まで)を記載する、という役割分担がある
  • 本店所在地を番地まで定款に書くと、同じ市区町村内の移転であっても定款変更(株主総会の特別決議、会社法466条・309条2項11号)が必要になる
  • 市区町村までの記載にとどめていれば、同一市区町村内の移転は定款変更が不要で、取締役会(非設置会社では取締役の過半数の一致)の決定で足りる、という整理が実務解説で広く案内されている
  • 登記事項としての「本店及び支店の所在場所」(会社法911条3項3号)は番地まで必要で、これは定款の記載レベルとは別
この記事の内容
  1. 結論:本店所在地は市区町村までの記載で足りる
  2. 根拠:会社法27条3号「本店の所在地」は絶対的記載事項
  3. 「本店の所在地」と「本店の所在場所」は別物
  4. なぜ市区町村までにとどめるのか|同一区内の移転は定款変更が不要になる
  5. 番地まで書いてしまうとどうなるか
  6. 東京23区・政令指定都市の場合の注意点
  7. 定款の記載例
  8. 比較:記載レベル別・移転時に必要な手続き
  9. 実体験について、正直に書きます
  10. 次にやること

この記事は、これから定款を作る人で、「本店所在地」の欄に番地まで書くべきか迷っている人に向けて書いています。 結論から言うと、定款の本店所在地は番地まで書く義務はなく、市区町村(東京23区は区、政令指定都市は市)までの記載で足ります。ここを番地まで書いてしまうと、将来同じ区内で引っ越すだけでも株主総会を開いて定款を変更する手間が発生します。今のうちに直しておける小さな選択なので、順番に整理します。

こんな状態ではありませんか
  • 定款の「本店の所在地」欄に、番地まで書くべきかどうか迷っている
  • 将来オフィスを移転する可能性があるが、そのときどんな手続きが必要になるか分からない
  • 司法書士や行政書士のひな形に「東京都〇〇区」までしか書いていないのを見て、それで登記できるのか不安

結論:本店所在地は市区町村までの記載で足りる

株式会社の定款には「本店の所在地」を必ず書かなければなりません(会社法第27条3号)。ただし条文自体には「番地まで書け」とは定められていません。実務上は、市区町村(東京23区は区、政令指定都市は市)までの記載で公証人の認証・法務局の登記のいずれも通る運用が定着しており、多くの司法書士・行政書士のひな形もこの書き方を採用しています。

理由は単純で、番地まで定款に書いてしまうと、将来オフィスを引っ越すたびに株主総会を開いて定款を変更しなければならなくなるからです。市区町村までの記載にとどめておけば、同じ市区町村内の移転は取締役会(または取締役)の決定だけで済みます。まだ定款を作成していない、または作成中の段階であれば、この一点だけ確認しておくと後の手間が減ります。

根拠:会社法27条3号「本店の所在地」は絶対的記載事項

会社法第27条は、株式会社の定款に必ず記載しなければならない事項(絶対的記載事項)として、次の5つを定めています。

  1. 目的
  2. 商号
  3. 本店の所在地
  4. 設立に際して出資される財産の価額又はその最低額
  5. 発起人の氏名又は名称及び住所

「本店の所在地」はこのうちの1つで、1つでも欠けると定款自体が無効になる項目です。ただしこの条文は「本店の所在地」を書けとしか定めておらず、どこまで詳しく書くかは条文に規定がありません。この「どこまで書くか」の判断が、この記事のテーマです。

「本店の所在地」と「本店の所在場所」は別物

ここで紛らわしいのが、定款に書く「本店の所在地」と、登記簿に記載される「本店の所在場所」が同じレベルの情報ではない、という点です。

  • 定款の「本店の所在地」:市区町村(最小行政区画)までで足りる
  • 登記簿の「本店及び支店の所在場所」(会社法911条3項3号):番地まで必要

つまり、定款には「東京都渋谷区に置く」とだけ書き、登記の申請時に初めて「東京都渋谷区〇〇一丁目1番1号」という具体的な番地を届け出る、という役割分担が成り立っています。定款と登記簿とで求められる詳しさが違う、という点を知らずに定款に番地まで書き込んでしまうケースが実務上よく見られるようです。

なぜ市区町村までにとどめるのか|同一区内の移転は定款変更が不要になる

定款の変更は株主総会の特別決議(議決権の過半数を有する株主が出席し、その議決権の3分の2以上の賛成)によって行います(会社法466条、309条2項11号)。この決議には株主総会の招集手続きが必要で、株主が1人の会社であっても議事録の作成は必要になります。

定款に本店所在地を「市区町村まで」しか定めていない場合、同一市区町村内での移転は「本店所在地」の記載自体を変える必要がないため、定款変更(株主総会決議)が不要になります。この場合の移転先の決定は、本店移転が「重要な業務執行の決定」に当たるとして、取締役会設置会社であれば取締役会の決議(会社法362条4項)、取締役会を置かない会社であれば取締役の過半数の一致(会社法348条2項)で行う、という整理が司法書士事務所の実務解説で広く案内されています。

一方、定款に番地まで書いてしまっている場合は、同じ区内・同じビル内での移転であっても「本店の所在地」の記載内容そのものが変わるため、株主総会の特別決議による定款変更が必要になります。

番地まで書いてしまうとどうなるか

「番地まで書いておいた方が正確で丁寧では」と考えたくなりますが、実務上はデメリットの方が大きいとされています。

  • 同じ市区町村内での移転でも、定款変更(株主総会の特別決議)が必要になる
  • 株主が複数いる会社では、招集手続き・議事録作成の手間が毎回発生する
  • 移転のたびに変更後の定款を作り直す必要が出てくる

これから事業が育っていく過程で、オフィスを1回も移転しない前提で会社を作る人は多くありません。移転の可能性がゼロでない限り、定款の本店所在地は市区町村までにとどめておいた方が、将来の自分の手間を減らせます。

東京23区・政令指定都市の場合の注意点

「市区町村まで」という表現には、行政区分によって単位が変わる注意点があります。

  • 東京23区:特別区が単位になるため、「東京都渋谷区」のように区までの記載で足ります
  • 政令指定都市(横浜市・大阪市・名古屋市など):行政区は「最小行政区画」に含まれないとされ、「大阪市」のように市までの記載で足り、区(例:大阪市北区)までは書かなくてよいという整理が実務解説で案内されています
  • 上記以外の市区町村:通常の市区町村名までの記載で足ります

政令指定都市の区まで書いてしまっても定款そのものが無効になるわけではありませんが、区まで書いてしまうと、同じ市内でも区をまたぐ移転では定款変更が必要になり、市までの記載より一段窮屈になります。迷ったら、行政区(〇〇市〇〇区)ではなく市区町村の単位までにとどめておくのが無難です。

定款の記載例

一般的な株式会社の定款で使われている書き方はこの形です。

第〇条(本店の所在地) 当会社は、本店を東京都渋谷区に置く。

番地まで書いてしまっている例(避けた方がよい書き方)はこの形です。

第〇条(本店の所在地) 当会社は、本店を東京都渋谷区〇〇一丁目1番1号に置く。

ここが要点

定款の条文自体はどちらの書き方でも文法的には成立してしまうため、公証人の認証時に必ず指摘されるとは限りません。行政書士・司法書士に定款作成を依頼する場合は、市区町村までの記載になっているかを自分でも一度確認しておくと安心です。

比較:記載レベル別・移転時に必要な手続き

定款の記載レベル 同一市区町村内の移転 市区町村をまたぐ移転
市区町村まで(例:東京都渋谷区) 定款変更不要。取締役会(または取締役の過半数)の決定で足りる 定款変更(株主総会の特別決議)が必要
番地まで(例:東京都渋谷区〇〇一丁目1番1号) 定款変更(株主総会の特別決議)が必要 定款変更(株主総会の特別決議)が必要

いずれの場合も、法務局への本店移転登記(会社法911条3項3号の登記事項の変更)は別途必要です。定款変更の要否と、登記の要否は別の話である点は分けて考える必要があります。

実体験について、正直に書きます

私の場合

正直に書きます。この記事を書いている2026年9月4日時点で、私自身はまだ定款を作成しておらず、実際に自分の定款の本店所在地欄をどう書いたかという記録はありません。前の記事(092 会社設立の登記完了までの日数)の時点からも状況は変わっていません。

そのため、この記事も自分の定款作成の結果ではなく、会社法の条文と実務解説をもとにした「調べた範囲では」の整理です。実際に定款を作成する段階になったら、本店所在地の欄をどう書いたか、迷った点も含めて追記します。

次にやること

これから定款を作る場合は、「本店の所在地」の欄が市区町村(東京23区は区、政令指定都市は市)までの記載になっているかを確認してください。 番地まで書かれているひな形を使っている場合は、市区町村までの記載に直せないか、作成を依頼している行政書士・司法書士に一言確認しておくと、将来の移転時に株主総会を開く手間を1つ減らせます。


※本記事は2026年9月時点で確認できた会社法の条文構成、および複数の司法書士・行政書士事務所による実務解説、筆者個人の状況に基づく調査整理です。個別の定款の文言や、政令指定都市・特別区の扱いの細部は、実際の作成前に公証役場または司法書士・行政書士に確認してください。この記事は一般的な整理であり、個別の法律相談の代わりにはなりません。

出典 - Wikibooks「会社法第27条」(定款の絶対的記載事項として目的・商号・本店の所在地・出資財産の価額又は最低額・発起人の氏名等の5号が定められている旨を確認。2026年9月4日確認) - RSM汐留パートナーズ司法書士法人「定款の本店所在地の記載について」(本店所在地は最小行政区画までの記載で足りる旨、番地まで書くと同一建物内の移転でも株主総会決議が必要になる旨を確認。2026年9月4日確認) - GVA 法人登記「本店移転時に定款変更は必要?」(定款に最小行政区画までしか本店所在地を定めていない場合、同一区内の移転は定款変更が不要で取締役会での決定・議事録の提出で足りること、区をまたぐ移転や番地まで定款に定めている場合は定款変更が必要になる旨を確認。2026年9月4日確認) - まちたま司法書士法人「定款に定める本店所在地はどこまで記載すればいいですか?」(政令指定都市の場合は区名を除いた市までの記載で足りる旨(例:神奈川県相模原市)、東京23区の場合は区までの記載で足りる旨を確認。2026年9月4日確認) - Vector Venture Support「定款の本店所在地の記載を最小行政区画(市区町村まで)で止めるメリット・デメリット」(最小行政区画には全国の市町村・東京23区・政令指定都市15市が含まれ、政令指定都市の「区」は行政区画に当たらず市までの記載で足りる旨を確認。2026年9月4日確認) - 会社法309条2項・466条・911条3項3号・362条4項・348条2項の条文内容はWikibooks各条文ページ等で確認(2026年9月4日確認) - 自サイト内記事(045 定款の変更手続き、fact_check済み)で確認済みの、定款変更は株主総会の特別決議による(会社法466条、309条2項11号)旨を踏襲

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会社を辞めて、会社をつくる準備をしている当事者です

執行役員として6年、会社の管理部門を統括する立場にいました。2026年に退職し、いまは求職活動と並行して、会社を立ち上げる準備を検討している段階です。まだ登記はしていません。調べて確かめたことだけを書き、済んでいない手続きは「これから」と正直に書きます。体験のふりをしません。

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