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現物出資とは

この記事の結論
  • 現物出資とは金銭以外の財産で出資する方法で、会社法第28条1号により定款の絶対的記載事項(変態設立事項)の1つ
  • 出資できるのは動産(パソコン・車等)・不動産・有価証券・金銭債権・知的財産権などで、労務や信用は株式会社では出資できない
  • 株式会社は原則として裁判所選任の検査役の調査が必要(会社法33条)だが、①出資財産の総額が500万円以下②市場価格のある有価証券で定款価額が市場価格以下③弁護士・公認会計士・税理士等の証明を受けた場合、のいずれかに該当すれば検査役調査は不要(同条10項)
  • 合同会社などの持分会社には検査役の規定自体が無く、金額を問わず検査役調査は不要
  • 出資財産の価額が会社成立時の実価に著しく不足する場合、発起人と設立時取締役が連帯して不足額を支払う義務を負う(会社法52条)
  • 現物出資した財産は設立時取締役(監査役設置会社は設立時監査役も)が調査し、財産引継書とあわせて調査報告書を作成し登記申請に添付する
  • 車を現物出資する場合はローン残債があると出資できず、出資後に運輸支局で名義変更(移転登録)が必要
  • 個人から法人への現物出資は時価での資産譲渡とみなされ、時価と取得費の差額に個人の譲渡所得課税が生じる場合がある
この記事の内容
  1. 結論:500万円以下なら検査役の調査なしで現物出資できる
  2. 現物出資とは|金銭以外の財産で出資する方法
  3. 現物出資できる財産・できない財産
  4. 検査役の調査が必要なケース・不要なケース
  5. 現物出資の手続きの流れ
  6. パソコンを現物出資する場合の実務
  7. 車を現物出資する場合の実務
  8. 出資財産の価額が不足した場合の責任
  9. 税務上の注意|個人から法人への譲渡とみなされる
  10. 実体験について、正直に書きます
  11. 次にやること

この記事は、これから会社を作る人で、「手元の現金だけでなく、持っているパソコンや車も資本金に組み込めないか」と考えている人に向けて書いています。 結論から言うと、金銭以外の財産で出資する「現物出資」という制度があり、パソコンや自動車も対象になります。ただし株式会社では原則として裁判所が選ぶ検査役の調査が必要で、これを避けられるのは出資財産の総額が500万円以下などの限られた条件のときです。仕組みと手続きの流れを順番に整理します。

こんな状態ではありませんか
  • 開業資金の現金が足りないので、持っているパソコンや車を資本金の一部にできないか知りたい
  • 「現物出資」という言葉は聞いたことがあるが、検査役の調査が要ると聞いて費用が心配になっている
  • 車を現物出資する場合、名義変更やローンの扱いがどうなるのか分からない

結論:500万円以下なら検査役の調査なしで現物出資できる

現物出資とは、会社の設立や増資にあたって、現金の代わりにパソコン・自動車・不動産などの財産を出資する方法です(会社法第28条1号)。開業資金として使う現金が少なくても、すでに持っている事業用の資産を資本金に組み込むことで、登記簿上の資本金額を厚くできます。

株式会社の場合、現物出資には原則として裁判所が選任する検査役の調査が必要になります(会社法第33条)。ただし、出資財産の総額が500万円以下であれば、この検査役調査は不要です(同条10項1号)。パソコンや中古車1台程度の現物出資であれば、多くの場合この500万円以下の条件に収まるため、検査役を使わずに手続きできます。

合同会社などの持分会社には、そもそも検査役の調査という制度自体がありません。金額を問わず検査役は不要で、出資財産の価額が妥当かどうかは業務執行社員の判断に委ねられます。

現物出資とは|金銭以外の財産で出資する方法

会社法第28条は、株式会社の定款に必ず記載しなければならない事項として、次の4つを「変態設立事項」と呼んでいます。

  1. 現物出資をする者の氏名(名称)、出資する財産とその価額、割り当てる設立時発行株式の数(28条1号)
  2. 発起人が受ける財産引受けに関する事項(28条2号)
  3. 発起人が受ける報酬・特別の利益(28条3号)
  4. 会社が負担する設立費用(28条4号)

このうち1号が現物出資の根拠条文です。「変態」という言葉が付いているとおり、通常の金銭出資と違って会社の財産的基礎を歪める危険があるため、定款への記載と価額の適正性チェックが求められています。

出資できるのは発起人に限られます。会社設立時の現物出資は「発起人」だけが行え(会社法34条1項、63条1項)、発起人以外の者(将来の従業員など)が現物出資で株式の割当てを受けることはできません。

現物出資できる財産・できない財産

現物出資の対象になるのは、貸借対照表に資産として計上できる財産です。

区分 具体例
動産 パソコン等のOA機器、自動車、事務用品、商品、原材料、機械設備
不動産 土地、建物、マンション、地上権、賃借権
有価証券 株式、社債券、国債証券、地方債証券
金銭債権 会社への貸付金債権など
知的財産権 特許権、実用新案権、商標権、著作権、営業権

一方、「労務」(将来働くこと自体)や「信用」(保証人になること・人脈があること)は、株式会社では現物出資の対象にできません。これらは金額として客観的に評価できず、会社の財産的基礎を確保するという現物出資の趣旨に合わないためです。

検査役の調査が必要なケース・不要なケース

株式会社が現物出資を行う場合、原則は裁判所が選任した検査役による調査が必要です(会社法33条)。検査役の選任には裁判所への申立てが必要で、時間と費用がかかります。ただし、次のいずれかに該当すれば検査役の調査は不要になります(同条10項)。

検査役調査が不要になる条件 内容
①少額特例 現物出資財産の総額が500万円以下
②市場価格のある有価証券 定款で定めた価額が市場価格を超えない場合
③専門家の証明 弁護士・公認会計士・税理士等の証明を受けた場合(不動産はさらに不動産鑑定士の鑑定評価も必要)

パソコンや車1〜2台を現物出資する程度であれば、多くのケースは①の500万円以下に収まります。この場合、検査役の調査に代えて、設立時取締役(監査役設置会社では設立時取締役および設立時監査役)が自ら財産の内容を調査し、調査報告書を作成する形で手続きを進めます。

ここが要点

合同会社では検査役の制度自体がなく、金額の上限もありません。株式会社より現物出資のハードルが低い一方、価額の妥当性を客観的にチェックする仕組みが無いぶん、出資者・業務執行社員が自分で適正な評価額を見積もる責任を負う点は変わりません。

現物出資の手続きの流れ

株式会社で500万円以下の現物出資を行う場合の一般的な流れです。

  1. 発起人が現物出資する財産と、定款に記載する価額を決める
  2. 定款に現物出資に関する事項(出資者の氏名、財産の内容、価額、割り当てる株式数)を記載する(会社法28条1号)
  3. 公証人の定款認証を受ける
  4. 現物出資財産の給付を受ける(発起人が会社設立中の機関に財産を引き渡す)
  5. 財産を引き渡した記録として財産引継書を作成する
  6. 設立時取締役(必要な場合は設立時監査役も)が現物出資財産の内容を調査し、調査報告書を作成する
  7. 財産引継書・調査報告書を添付書類として、法務局に設立登記を申請する

複数人が現物出資する場合は、出資者ごとに財産引継書を作成します。調査報告書は原則として設立時取締役が作成し、監査役を置く会社では設立時取締役と設立時監査役が共同で作成します。

パソコンを現物出資する場合の実務

パソコンなどのOA機器を現物出資する場合、財産引継書には型番・購入時期・保証書などの情報を参考にして、対象物を特定できる形で記載します。価額は、購入時の金額そのままではなく、出資する時点での中古市場価格や簿価(取得価額から減価償却分を差し引いた金額)を参考に決めるのが一般的です。

パソコン1台〜数台程度であれば金額は数万円〜数十万円にとどまることが多く、単独で500万円を超えることはまず考えにくい財産です。ただし他の現物出資財産(車や什器備品など)と合算した総額で500万円以下かどうかを判定する点には注意してください。

車を現物出資する場合の実務

自動車を現物出資する場合は、車検証の記載内容(車台番号・年式・型式など)を参考に財産引継書へ記載します。価額は中古車の査定価格や簿価を参考に決め、出どころが分かるよう査定書などを残しておくと、後で価額の妥当性を問われたときの根拠になります。

車の現物出資には、パソコンにはない固有の注意点が2つあります。

  • ローンが残っている車は現物出資できない。所有権がローン会社(信販会社)に留保されている状態では、出資者本人の財産として会社に移転できないためです。出資する前にローンを完済しておく必要があります。
  • 出資後に名義変更(移転登録)が必要。会社名義の車庫証明を取得したうえで、運輸支局で自動車の名義変更手続きを行います。この手続きは現物出資の登記手続きとは別に進める必要があります。

出資財産の価額が不足した場合の責任

現物出資した財産の会社成立当時の実際の価値が、定款に定めた価額に著しく不足する場合、発起人と設立時取締役は連帯してその不足額を会社に支払う義務を負います(会社法52条)。

これは、パソコンや車の価額を実際より高く見積もって出資してしまった場合に、資本金額と実際の会社財産の間にできたズレを埋めるための規定です。「少し高めに見積もっておこう」という判断は、この填補責任に直結するリスクがあるため、査定価格や簿価など、根拠を示せる金額で評価しておくことが安全です。

税務上の注意|個人から法人への譲渡とみなされる

現物出資は会社法上の手続きであると同時に、税務上は個人が所有していた財産を時価で法人へ譲渡する取引として扱われます。時価が取得費(簿価)を上回っている場合、その差額が個人側の譲渡所得として課税される可能性があります。定款に記載する価額を時価より高く設定した場合も、時価を超える部分について同様に課税対象になり得ます。逆に、時価が取得費を下回っていれば譲渡損失となり、原則として課税関係は生じません。

車やパソコンのような事業用資産を現物出資する際は、価額を時価(査定価格・簿価)に沿って設定することが、会社法上の填補責任(前項)と税務上のリスクの両方を避ける共通の対策になります。金額が大きい財産を現物出資する場合は、事前に税理士へ確認しておくと安心です。

実体験について、正直に書きます

私の場合

正直に書きます。この記事を書いている2026年9月4日時点で、私自身はまだ会社を設立しておらず、現物出資を実際に行った経験はありません。手持ちのパソコンを資本金に組み込むかどうかも、現時点では検討段階にとどまっています。

そのため、この記事は自分の現物出資の実績ではなく、会社法の条文と複数の司法書士事務所・税理士事務所による実務解説をもとにした「調べた範囲では」の整理です。実際に現物出資を行う段階になったら、選んだ財産と決めた価額、税理士に確認した内容を含めて追記します。

次にやること

現物出資を検討している場合は、出資したい財産(パソコン・車など)の中古市場価格または簿価を先に調べ、他の現物出資財産と合わせた総額が500万円を超えないかを確認してください。 500万円以下であれば検査役の調査は不要になり、設立時取締役の調査報告書と財産引継書の作成だけで手続きが進められます。金額が大きくなりそうな場合、または価額の設定に迷う場合は、登記の手続きに入る前に司法書士・税理士へ相談しておくと、後から不足額の支払い義務(会社法52条)を負うリスクを避けられます。


※本記事は2026年9月時点で確認できた会社法の条文構成、および複数の司法書士・行政書士・税理士事務所による実務解説、筆者個人の状況に基づく調査整理です。個別の現物出資財産の評価額や税務上の取扱いは、実際の手続き前に司法書士・税理士に確認してください。この記事は一般的な整理であり、個別の法律・税務相談の代わりにはなりません。

出典 - RSM汐留パートナーズ司法書士法人「株式会社の設立と現物出資をする方法」(会社法28条1号の変態設立事項、33条の検査役調査、10項の検査役調査が不要になる3条件〈500万円以下・市場価格のある有価証券・専門家の証明〉を確認。2026年9月4日確認) - RSM汐留パートナーズ司法書士法人「合同会社に現物出資をして資本金や資本剰余金を増やす方法」(合同会社などの持分会社には検査役調査の規定がなく、金額を問わず不要である旨を確認。2026年9月4日確認) - 千葉地方法務局「現物出資について」(現物出資の定義、対象財産の範囲を確認。2026年9月4日確認) - 合同会社.JP「調査報告書の作成」(財産引継書・調査報告書の作成主体〈設立時取締役、監査役設置会社は設立時取締役および設立時監査役〉、複数出資者の場合の作成単位を確認。2026年9月4日確認) - 堺みらい税理士事務所「現物出資の具体例」(ローン返済中の車は所有権留保状態にありローン完済・名義変更まで現物出資に適さない旨、車検証で所有者名義を確認する方法を確認。行政書士法人MOYORICの解説ページ〈office-tsuda.net/genbutu-car.html〉は2026年9月6日時点で404となり確認できなかったため、本ページに差し替え。2026年9月6日確認) - 税理士相談Q&A by freee「個人で所有している自動車を現物出資する時の手続き」(ローン残債がある場合は金融機関の承認が必要になり得る旨、時価と帳簿価額の差額により個人側に譲渡所得課税が生じ得る旨を確認〈旧URL advisors-freee.jp から2026年9月6日時点で恒久リダイレクト〉。2026年9月6日確認) - e-Gov法令検索「会社法」第34条・第63条(設立時の現物出資者は発起人に限られる旨〈34条1項・63条1項〉を確認。2026年9月6日確認) - クレアール司法書士講座「会社法第28条」(現物出資できる財産の種類〈動産・不動産・有価証券・金銭債権・知的財産権等〉、労務・信用は現物出資の対象にできない旨を確認。2026年9月4日確認) - 税研情報センター「会社法第52条」(出資財産の価額が実価に著しく不足する場合、発起人と設立時取締役が連帯して不足額を支払う義務を負う旨を確認。2026年9月4日確認)

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会社を辞めて、会社をつくる準備をしている当事者です

執行役員として6年、会社の管理部門を統括する立場にいました。2026年に退職し、いまは求職活動と並行して、会社を立ち上げる準備を検討している段階です。まだ登記はしていません。調べて確かめたことだけを書き、済んでいない手続きは「これから」と正直に書きます。体験のふりをしません。

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