法人事業税とは
- 法人事業税は都道府県が課す地方税で、課税標準は所得(地方税法第72条の24の7)
- 資本金1億円以下の普通法人は所得に対する所得割のみで、所得がマイナス(欠損)なら課税標準がゼロになり原則納税額もゼロ
- 資本金1億円以下の普通法人の所得割標準税率は年400万円以下3.5%・400万円超800万円以下5.3%・800万円超7.0%(地方税法第72条の24の7)
- 資本金1億円超の普通法人は外形標準課税の対象で、赤字でも資本割は必ず発生する(総務省「法人事業税における外形標準課税」)
- 同じ地方税でも法人住民税の均等割は所得に関係なく赤字でも課税される(最低額の目安は約7万円)ため、法人事業税と混同しないこと
- 繰越欠損金は資本金1億円以下の中小法人なら所得の100%まで控除でき、最大10年間繰り越せる(法人税法第57条、財務省資料)
この記事の内容
この記事は、会社を設立したばかりで「法人事業税」という名前を初めて見て、法人住民税や法人税とどう違うのか分からない人に向けて書いています。 結論から言うと、法人事業税は都道府県が法人の所得に対して課す地方税で、資本金1億円以下の普通法人であれば、その年が赤字(欠損)なら原則として納税額はゼロになります。以下、法人事業税の仕組み、税率、赤字なら払わない理由、資本金1億円超との違い、法人住民税との混同ポイントの順に整理します。
- 決算が赤字だったのに、税金の通知がいくつも届いて何が対象なのか分からない
- 法人事業税・法人住民税・法人税の違いが分からず、赤字なら全部かからないと思っていた
- 資本金1億円を超えると税金の扱いが変わると聞いたが、何が変わるのか分からない
結論:所得割は赤字ならゼロ、住民税の均等割は別
法人事業税は、都道府県が法人の事業活動に対して課す地方税です(地方税法第72条の2)。資本金1億円以下の普通法人(一人社長の合同会社・株式会社の多くがここに該当します)の場合、課税標準は法人税の計算をもとにした「所得」であり、税率をかけて税額を出します(地方税法第72条の24の7)。
その事業年度の所得がマイナス、つまり赤字(欠損)であれば、課税標準そのものがゼロになるため、法人事業税(所得割)の納税額も原則ゼロです。
「法人事業税がゼロ」であっても、「税金の負担がゼロ」ではありません。 法人住民税の均等割は所得に関係なく赤字でも課税されます。この2つを混同すると、赤字なのに届いた納付書に驚くことになります。違いはj6で説明します。
法人事業税とは何か
法人事業税は、法人が都道府県内で事業を行っていることに対して課される地方税です(地方税法第72条の2)。道路・警察・消防といった行政サービスの経費を、その提供から利益を受ける事業者にも負担してもらう「応益課税」の考え方に基づく税金だと説明されることが一般的です(この説明自体は条文に直接書かれているものではなく、税務解説で広く使われている考え方。2026年9月確認)。
申告と納付は、原則として法人税の確定申告と同じタイミングで、事業年度終了の日の翌日から2か月以内に行います。申告先は税務署ではなく、本店所在地を管轄する都道府県税事務所です。国税である法人税、市町村・都道府県が課す法人住民税とは、それぞれ申告書も納付先も別になります。
資本金1億円以下の普通法人の場合、課税標準になるのは「所得割」、つまり法人税の所得計算をベースにした所得金額です。資本金1億円超の普通法人にはこれに加えて「付加価値割」「資本割」も課される仕組みになっていますが、この違いはj5で扱います。
税率はいくらか
資本金1億円以下の普通法人(軽減税率が適用される法人)の所得割の標準税率は、所得金額に応じて3段階に分かれています(地方税法第72条の24の7)。
| 年所得の区分 | 標準税率 |
|---|---|
| 年400万円以下の部分 | 3.5% |
| 年400万円超800万円以下の部分 | 5.3% |
| 年800万円超の部分 | 7.0% |
たとえば年所得500万円の場合、400万円分に3.5%、残り100万円分に5.3%をかけて合算する計算になります。
ここでいう「標準税率」は国が示す基準であり、実際の税率は都道府県ごとの条例で上乗せ(超過税率)されている場合があります。 自社が本店を置く都道府県税事務所または顧問税理士に、適用される実際の税率を確認してください。
なお、法人事業税とあわせて「特別法人事業税」という国税(ただし都道府県を通じて申告・納付)も課されます。これは法人事業税の所得割額を基準に計算される別の税目で、税率や仕組みの詳細はここでは扱いません。実際の納税額を試算する際は、法人事業税の所得割だけでなく特別法人事業税も含めて確認する必要があります。
赤字なら払わない理由
法人事業税の所得割は、課税標準が「所得」だからこそ、所得がマイナス(欠損)であればかけ算の元がゼロ以下になり、税額もゼロになります。法人税と同じ構造です。
これは特別な軽減措置ではなく、税率をかける対象そのものが存在しないという単純な理屈です。逆に言えば、所得割以外の課税標準を持つ税金(消費税、法人住民税の均等割など)は、赤字かどうかに関係なくかかる可能性があるということでもあります。「法人の税金は赤字なら全部かからない」という理解のまま設立すると、法人住民税の均等割の通知を見て慌てることになるため、j6で違いを整理します。
資本金1億円超は話が変わる|外形標準課税
資本金1億円超の普通法人には、所得割に加えて「外形標準課税」が適用されます。これは、報酬給与額や純支払利子・純支払賃借料などをもとにした「付加価値割」と、資本金等の額をもとにした「資本割」の2つが課税標準に加わる仕組みです(総務省「法人事業税における外形標準課税」)。
赤字の法人であっても、この付加価値割・資本割は発生し得ます。付加価値がマイナスであれば付加価値割は生じませんが、資本割は資本金等の額を基準にするため、赤字の規模がどれだけ大きくても課税されます。 「大きな会社ほど赤字でも一定の税負担を求められる」仕組みだと理解しておくとよい部分です。
一人社長の合同会社・株式会社であれば、資本金を1億円超に設定するケースはまず考えにくいため、通常は外形標準課税を気にする必要はありません。なお令和6年度税制改正では、いったん外形標準課税の対象になった法人が資本金を1億円以下に減らしても、資本金と資本剰余金を合わせた額が10億円超であれば引き続き対象とする規定が追加されました(株主への払い戻しを伴わない形式的な減資による課税逃れへの対応)。これは既に対象になっている法人の「逃れ」を防ぐための改正であり、これから資本金を1億円超に増やす場合は、従来どおり増資した時点で外形標準課税の対象になるかどうかを確認すれば足ります。
法人住民税の均等割と混同しない
法人事業税と名前が似ていて混同しやすいのが法人住民税です。法人住民税は「法人税割」と「均等割」の2つで構成されており、このうち法人税割は法人税額を基準にするため赤字なら原則ゼロですが、均等割は資本金額と従業員数に応じて定額で決まり、所得に関係なく赤字でも課税されます。
| 税目 | 課税標準 | 赤字の場合 |
|---|---|---|
| 法人事業税(所得割) | 所得 | 原則ゼロ |
| 法人住民税(法人税割) | 法人税額 | 原則ゼロ |
| 法人住民税(均等割) | 資本金額・従業員数(定額) | 赤字でも課税される |
均等割の最低額の目安や具体的な仕組みは、別記事「法人住民税の均等割|赤字でも年7万円かかる仕組み」で扱っています。ここで押さえておきたいのは、「法人事業税がゼロ」と「法人の税負担がゼロ」はイコールではないという一点です。
繰越欠損金で翌年以降の税額も抑えられる
赤字を出した年の欠損金は、青色申告の承認を受けていれば翌年度以降に繰り越すことができます(法人税法第57条)。資本金1億円以下の中小法人であれば、繰越控除をする事業年度の所得金額の100%まで繰越欠損金を控除でき、繰越期間は最大10年間です(財務省「欠損金繰越控除制度の概要」)。過去の繰越欠損金が十分にあれば、黒字になった年の課税所得をゼロまで圧縮できる可能性があるということです。
法人事業税の所得割は法人税の所得計算を土台にしているため、この繰越欠損金の考え方は法人事業税の課税所得にも影響します。設立初期に赤字が出た場合は、その年の税負担が軽いというだけでなく、「翌年以降の税負担を抑える材料を持っている」と捉えておくと、資金繰り計画が立てやすくなります。
なお、資本金1億円超の大法人は繰越控除の限度額が所得金額の50%までに制限されているため、この100%控除は中小法人ならではの扱いです。
実体験について、正直に書きます
正直に書きます。私自身は2026年に前職を退職し、合同会社の設立準備を進めている当事者ですが、この記事を書いている時点ではまだ登記が完了しておらず、事業年度も始まっていません。したがって、法人事業税の申告書や納付書が実際に届いた経験はまだありません。この記事は総務省・東京都主税局などが公開している一次情報をもとに調べて整理したものであり、自分自身の納税実務の経験を書いているわけではないことを断っておきます。実際に事業年度が終わり申告を行った段階で、届いた通知や実際の税額について追記します。
次にやること
まず、直近の決算(または今期の着地見込み)が黒字か赤字かを確認してください。 赤字であれば法人事業税(所得割)は原則ゼロですが、法人住民税の均等割は資本金額・従業員数に応じて別途かかります。資本金1億円超であれば外形標準課税の対象になり、赤字でも資本割が発生する可能性があるため、その場合は顧問税理士に試算を依頼してください。資本金1億円以下の一人社長であれば、法人事業税より先に法人住民税の均等割の金額を確認しておくほうが、実際の資金繰りには役立ちます。
※本記事は2026年9月5日時点で調査した内容と、筆者個人の状況に基づくものです。法人事業税の税率は都道府県の条例によって標準税率から上乗せされている場合があり、実際の税額計算は個々の事業者の状況によって変わるため、申告前に税理士または都道府県税事務所にご確認ください。
出典 - 地方税法 第72条の2(事業税の納税義務者等)、第72条の24の7(法人の事業税の標準税率等) - 法人税法 第57条(青色申告書を提出した事業年度の欠損金の繰越し) - 法人事業税における外形標準課税|総務省(2026年9月6日確認。付加価値割・資本割の課税標準、資本金1億円超が対象であること、令和6年度改正の減資対応を確認) - 法人事業税・法人都民税|東京都主税局(2026年9月6日確認。申告先・申告期限・課税標準の区分を確認) - 欠損金繰越控除制度の概要|財務省(2026年9月6日確認。中小法人の控除限度額100%、繰越期間10年、大法人の限度額50%を確認) - No.5762 青色申告書を提出した事業年度の欠損金の繰越控除|国税庁(2026年9月6日確認)