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株主総会と議事録

この記事の結論
  • 株式会社は毎事業年度の終了後、一定の時期に定時株主総会を招集する義務がある(会社法第296条第1項)。実務では決算日から3か月以内に開催されることが多いが、これは議決権行使の基準日の効力を3か月とする第124条第2項に起因する実務上の目安である
  • 招集手続きは、書面投票・電子投票を採用していない限り、株主全員の同意があれば省略できる(会社法第300条)。一人会社であれば自分1人の同意で足りる
  • 取締役または株主が議題を提案し、議決権を行使できる株主全員が書面または電磁的記録で同意すれば、総会を開かずに決議があったものとみなされる(書面決議・みなし決議、会社法第319条第1項)。一人株主であれば自分1人の同意書への署名で成立する
  • 招集を省略しても、みなし決議によっても、株主総会の議事録を作成する義務は消えない(会社法第318条第1項)。議事録は本店に10年間備え置き、写しを支店に5年間備え置く(同条第2項・第3項)
  • 通常開催の議事録の記載事項は日時・場所、議事の経過の要領及び結果、出席役員の氏名、議長の氏名、作成者の氏名などである(会社法施行規則第72条第3項)。みなし決議の場合は決議事項の内容・提案者の氏名・決議があったとみなされた日・作成者の氏名を記載する(同条第4項第1号)
  • みなし決議の同意書面等も、決議があったとみなされた日から10年間、本店に備え置く義務がある(会社法第319条第2項)
  • 議事録を作成しなかった、記載すべき事項を欠いた、虚偽の記載をした、または備え置かなかった場合、取締役等は100万円以下の過料に処される(会社法第976条第7号・第8号、ウィキブックス「会社法第976条」の条文整理による)
  • 招集手続きや決議方法そのものが法令・定款に違反していた場合は、過料ではなく株主総会決議取消しの訴えの対象になり、決議の日から3か月以内に提起される必要がある(会社法第831条第1項第1号)
  • 合同会社には株主総会という機関自体がなく、業務執行の意思決定は原則として総社員の過半数で決める(会社法第590条第2項)。この点は株式会社と合同会社で明確に異なる
この記事の内容
  1. 結論:一人会社でも開催義務は残る。省略できるのは手続きだけ
  2. 定時株主総会は年1回、招集する義務がある
  3. 招集手続きは株主全員の同意があれば省略できる
  4. 総会を開かずに決議する方法|書面決議(みなし決議)
  5. それでも議事録は必ず作る|記載事項と保存期間
  6. 作らなかったら・備え置かなかったらどうなるか
  7. 合同会社なら株主総会という機関自体がない
  8. 実体験について、正直に書きます
  9. 次にやること

この記事は、株式会社を1人(または少人数)で設立した、あるいはこれから設立しようとしている人に向けて書いています。 結論から言うと、株主が自分1人だけの「一人会社」であっても、株主総会を毎年開く義務そのものはなくなりません。ただし、招集の手続きや決議の進め方は自分1人の同意で大きく省略できます。省略できないのは議事録だけです。 総会を開いたことにしても、書面だけで済ませても、議事録を作らないという選択肢はありません。この記事では、何を省略でき、何を省略できないのかを条文に沿って整理します。

こんな状態ではありませんか
  • 一人で株式会社を作ったが、株主総会を毎年開かないといけないのか分からない
  • 「みなし決議」や「書面決議」という言葉を聞いたが、それでも議事録が要るのか分からない
  • 議事録を作らないとどうなるのか、実際のリスクが分からない

結論:一人会社でも開催義務は残る。省略できるのは手続きだけ

「一人会社」という言葉は会社法に定義があるわけではなく、株主が実質1人しかいない株式会社を指す通称として使われています。この「一人会社」であっても、株式会社である以上、毎年の定時株主総会を招集する義務はなくなりません(会社法第296条第1項)。

一方で、株主が自分1人であれば、次の2つの手続きを大きく簡略化できます。

  • 招集通知そのものを省略できる(会社法第300条)
  • 総会を実際に開かずに、書面への同意だけで決議を成立させられる(会社法第319条第1項、書面決議・みなし決議)

ただし、どちらの方法をとっても、株主総会の議事録を作成する義務だけは残ります(会社法第318条第1項)。「一人だから議事録はいらない」という判断は誤りです。

定時株主総会は年1回、招集する義務がある

株式会社は、毎事業年度の終了後、一定の時期に定時株主総会を招集しなければなりません(会社法第296条第1項)。条文自体には「決算後何か月以内」という期限は書かれていませんが、実務上は決算日から3か月以内に開催されることが多くなっています。これは、株主総会で議決権を行使できる株主を確定する「基準日」の効力が、基準日から3か月以内に限られるためです(会社法第124条第2項)。決算日を基準日にした場合、その効力が切れる前に総会を終える必要がある、という実務上の制約が理由です。

ここが要点

定時株主総会は「開かなくてよい」わけではありません。開くこと自体は義務のままで、簡略化できるのは招集の手続きと、実際に集まって議論するかどうかの部分です。

招集手続きは株主全員の同意があれば省略できる

株主総会を招集する際は、原則として一定の期間(取締役会非設置会社なら原則1週間前、定款でさらに短縮可能)までに株主へ招集通知を出す必要があります。しかし、書面投票・電子投票を採用していない会社であれば、株主全員の同意があるときは、この招集手続き自体を省略できます(会社法第300条)。

株主が自分1人の一人会社であれば、この「株主全員の同意」は自分1人の同意で足ります。つまり、招集通知を自分宛に出す必要すらなく、「今日、株主総会を開く」と自分で決めて始めれば、それだけで招集手続きの要件を満たせることになります。

総会を開かずに決議する方法|書面決議(みなし決議)

さらに一歩進んだ方法として、そもそも総会を「開催」せずに決議を成立させる方法があります。取締役または株主が株主総会の目的である事項(議題)を提案し、その事項について議決権を行使できる株主の全員が、書面または電磁的記録によって同意の意思表示をしたときは、その提案を可決する株主総会の決議があったものとみなされます(会社法第319条第1項)。これを一般に「書面決議」または「みなし決議」と呼びます。

一人株主であれば、この「株主全員の同意」も自分1人分の同意書に署名するだけで足ります。次の表は、3つの進め方の違いを整理したものです。

進め方 実際に集まるか 招集通知 根拠条文
通常の開催 集まる(一人会社なら自分だけ) 原則必要(定款で短縮可) 会社法第298条・第299条
招集手続きの省略 集まる(自分だけ) 株主全員の同意で省略可 会社法第300条
書面決議(みなし決議) 集まらない 招集そのものが不要 会社法第319条第1項
ここが要点

みなし決議は「総会を開いたことにする」制度ではなく、法律上、総会を開かずに決議が成立したと扱う制度です。実際に集まる必要がない分だけ簡便ですが、後述するとおり議事録の作成義務は別に発生します。

それでも議事録は必ず作る|記載事項と保存期間

招集手続きを省略しても、みなし決議によっても、株主総会の議事録を作成する義務は一切変わりません(会社法第318条第1項)。作成した議事録は、株主総会の日から10年間は本店に、その写しは5年間は支店に、それぞれ備え置く必要があります(同条第2項・第3項)。

通常開催の議事録に記載すべき事項は、会社法施行規則第72条第3項で次のように定められています。

  • 株主総会が開催された日時及び場所
  • 議事の経過の要領及びその結果
  • 会社法上の規定に基づいて述べられた意見や発言の内容の概要
  • 出席した取締役・執行役・会計参与・監査役・会計監査人の氏名
  • 議長がいる場合は議長の氏名
  • 議事録の作成に係る職務を行った取締役の氏名

一方、みなし決議によった場合の議事録は、会議を開いていないため記載事項も異なります。会社法施行規則第72条第4項第1号により、次の4点を記載すれば足ります。

  • 決議があったものとみなされた事項の内容
  • 提案をした者の氏名または名称
  • 決議があったものとみなされた日
  • 議事録の作成に係る職務を行った取締役の氏名

みなし決議の場合、この同意を示す書面(または電磁的記録)自体も、決議があったとみなされた日から10年間、本店に備え置く義務があります(会社法第319条第2項)。議事録と同意書面の両方を保存しておく必要がある、という点は見落としやすいので注意してください。

作らなかったら・備え置かなかったらどうなるか

株主総会の議事録を作成しなかった場合、記載すべき事項を欠いた場合、虚偽の記載をした場合、または作成した議事録を備え置かなかった場合は、取締役等が100万円以下の過料に処されます(会社法第976条第7号・第8号)。過料は刑罰(前科)ではありませんが、法令上の金銭的な制裁である点は変わりません。

これとは別に、招集手続きや決議の方法そのものが法令・定款に違反していた場合(たとえば、株主全員の同意を得ずに招集手続きを省略してしまった場合など)は、過料の問題ではなく、株主総会決議取消しの訴えの対象になり得ます(会社法第831条第1項第1号)。この訴えは、決議の日から3か月以内に提起される必要があります。

ここが要点

一人会社では、招集手続きの瑕疵が問題になる場面はほとんどありません(同意すべき株主が自分1人しかいないため)。実務上つまずきやすいのは、決議の方法ではなく「議事録を作り忘れる」ことのほうです。 みなし決議で済ませた年ほど、書類を作った実感が薄く、後回しにされがちです。

合同会社なら株主総会という機関自体がない

ここまでは株式会社を前提にした話です。もし合同会社を選んでいれば、この記事のテーマである株主総会自体が存在しません。合同会社には株主も株主総会もなく、業務執行に関する意思決定は、原則として社員(出資者)の過半数で決めることになっています(会社法第590条第2項。定款で別段の定めを置くことも可能です)。

「株主総会と議事録が面倒だから合同会社にする」という判断は、理由としては成り立ちます。 ただし、一人会社であれば招集手続きも決議もほぼ自分1人の同意で完結するため、負担の差は「議事録を1通作るかどうか」程度に収まることが多い、という点も踏まえて判断してください。株式会社と合同会社のどちらにするかを迷っている場合は、この議事録の手間だけでなく、社会的な信用度や将来の株式による資金調達の予定なども合わせて検討する必要があります。

実体験について、正直に書きます

私の場合

正直に書きます。私自身は2026年に前職を退職し、法人設立の準備を進めている当事者ですが、現時点で検討しているのは合同会社での設立であり、株式会社の株主総会を実際に招集・開催した経験はありません。この記事は、株式会社を選んだ場合に何が義務として残り、何を省略できるのかを、会社法の条文に基づいて事前に調べて整理したものです。合同会社と株式会社のどちらで始めるかを決めるにあたって、「毎年の書類仕事がどれだけ増えるか」を具体的な条文レベルで比較できたことは、自分にとって判断材料の一つになりました。

次にやること

まず、自分の会社が株式会社か合同会社かを確認してください。 株式会社であれば、定時株主総会を年1回招集する義務があることを前提に、招集手続きを省略するか(会社法第300条)、書面決議(みなし決議)で済ませるか(会社法第319条第1項)を決めます。どちらを選んでも、議事録は必ず作成し、本店に10年間備え置いてください。まだ議事録のひな形がない場合は、通常開催用とみなし決議用の2種類を用意しておくと、その年の決議方法に応じて迷わず作成できます。


※本記事は2026年9月6日時点で調査した会社法・会社法施行規則の条文と、筆者個人の状況に基づくものです。会社の機関設計(取締役会の設置有無など)によって招集手続きの詳細は変わるため、実際の運用に際しては司法書士・弁護士にご確認ください。

出典 - 会社法第296条第1項(定時株主総会の招集)、第124条第2項(基準日の効力) - 会社法第300条(招集手続の省略) - 会社法第318条第1項〜第3項(議事録の作成・備置)、第319条第1項・第2項(株主総会の決議の省略) - 会社法施行規則第72条第3項・第4項第1号(株主総会議事録の記載事項) - 会社法第976条第7号・第8号(過料に処すべき行為)、第831条第1項第1号(株主総会等の決議の取消しの訴え) - 会社法第590条第2項(合同会社の業務執行の決定) - クレアール司法書士講座:第319条【株主総会の決議の省略】(2026年9月6日確認。みなし決議の要件・記載事項を確認) - RSM汐留パートナーズ司法書士法人:株主総会の書面決議、みなし決議に関するよくあるご質問(2026年9月6日確認。書面決議でも議事録が必要である点を確認) - Otolio(旧スマート書記):株主総会議事録の書き方(2026年9月6日確認。備置期間・記載事項を確認) - Wikibooks:会社法第976条(2026年9月6日確認。過料の対象となる号を確認) - 過料の対象となる号の分類、実務上の運用の細部は依頼先(司法書士・弁護士)や個別の事情によって異なる場合があるため、条文原本での確認を推奨する

当サイト運営者

会社を辞めて、会社をつくる準備をしている当事者です

執行役員として6年、会社の管理部門を統括する立場にいました。2026年に退職し、いまは求職活動と並行して、会社を立ち上げる準備を検討している段階です。まだ登記はしていません。調べて確かめたことだけを書き、済んでいない手続きは「これから」と正直に書きます。体験のふりをしません。

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