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外注契約書の最低限

この記事の結論
  • 契約は口頭の合意でも成立する(民法第522条第2項、契約方式の自由の原則)ため、業務委託契約書は法律上作成が義務づけられているわけではない
  • ただし2024年11月1日に施行されたフリーランス新法(特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律)は、一定の要件を満たす発注者(特定業務委託事業者)に対し、給付内容・報酬額・支払期日等を書面又は電磁的方法で明示する義務を課している(同法第3条第1項)
  • 発注者が個人または役員1名かつ従業員を使用しない法人(いわゆる一人社長)である場合、フリーランス新法上の「特定業務委託事業者」の要件に当たらず義務の対象外になりうる(同法の定義規定。要件の当てはめは個別確認が必要、2026年9月確認)
  • 業務委託は民法上「請負」(仕事の完成を約する、民法第632条)と「委任・準委任」(法律行為または事務の遂行を約する、民法第643条・第656条)のどちらかに分類され、どちらに当たるかで完成責任の有無が変わる
  • 請負契約における契約不適合の責任追及には、注文者が不適合を知った時から1年以内という期間制限がある(民法第637条第1項)
  • 外注先が制作した成果物の著作権は、契約で譲渡を定めない限り原則として制作した外注先に帰属する(著作権法上、著作物の創作者に著作権が原始的に帰属する原則)
  • 著作権を譲渡する契約であっても、翻案権・二次的著作物の利用権(著作権法第27条・第28条)は、譲渡契約の中で特にこれらを含むと明記(特掲)しない限り、譲渡した側に留保されたものと推定される(著作権法第61条第2項)
この記事の内容
  1. 結論:契約書がなくても契約は成立する。だから揉める
  2. 業務委託は「請負」か「委任」かで責任が変わる
  3. 最低限入れる条項は5つ
  4. 報酬と支払期日|フリーランス新法で変わったこと
  5. 検収基準|「いつ・誰が・何を基準に」を先に決める
  6. 著作権の帰属|作った人のものが原則
  7. 秘密保持と契約解除の条件
  8. 実体験について、正直に書きます
  9. 次にやること

この記事は、一人会社(または一人社長)がフリーランス・外注先に仕事を頼むことになったが、契約書に何を書けばいいのか分からない人に向けて書いています。 結論から言うと、契約書がなくても口約束で契約自体は成立します。ただし「成立する」ことと「揉めたときに困らない」ことは別問題です。この記事では、最低限入れておくべき条項と、それぞれの根拠になる条文を整理します。

こんな状態ではありませんか
  • 外注先に見積もりだけ取って、契約書を作らずに仕事を発注してしまいそう
  • ネットのひな形をそのまま使っていいのか、何を自社用に直せばいいのか分からない
  • 著作権や秘密保持といった言葉は知っているが、具体的に何を書けばいいのか分からない

結論:契約書がなくても契約は成立する。だから揉める

契約は、当事者の意思表示が合致すれば原則として成立し、契約書という書面を作ることは法律上の要件ではありません(民法第522条第2項、契約方式の自由の原則)。つまり「見積もりをメールで送って、相手が『お願いします』と返信した」だけでも、業務委託契約は成立します。

問題は、契約が成立していることと、揉めたときに立証できることは別だという点です。 「どこまでが納品範囲か」「いつまでに直してもらえるのか」「作った画像やコードは誰のものか」といった認識のズレは、口頭やメールのやり取りだけでは後から確認しづらく、契約書があればそもそも起きなかった揉め事の多くが、書面を作らなかったことで発生します。

業務委託は「請負」か「委任」かで責任が変わる

「業務委託」という言葉自体は法律用語ではなく、民法上は主に次の2種類のどちらかに分類されます。

契約類型 民法の定義 責任の性質
請負 仕事の完成を約し、結果に対して報酬を支払う(民法第632条) 成果物を完成させる義務がある(結果責任)
委任・準委任 法律行為(委任)または事務(準委任)の遂行を約する(民法第643条・第656条) 決められた行為を誠実に行えばよい(手段債務)

Webサイト制作・デザイン・記事執筆のように「完成物」を納品してもらう外注は請負に近く、コンサルティングやアドバイザリーのように「継続的な稼働」を依頼する外注は委任・準委任に近いという整理が一般的です。ただし実際の契約が請負か委任かは、契約書のタイトルではなく中身(成果物の完成を約束しているか、稼働時間や工数を約束しているか)で判断されます。

請負契約の場合、成果物に契約内容と異なる不備(契約不適合)があれば、注文者は追完請求・報酬減額請求・損害賠償請求・契約解除ができますが、注文者が不適合を知った時から1年以内に通知しなければ、これらの権利を失います(民法第637条第1項)。「後で気づいたから直してほしい」が通用する期間には限りがあるということです。

最低限入れる条項は5つ

契約類型がどちらであっても、外注契約書に最低限入れておきたい条項は次の5つです。

# 条項 決めておくこと
1 委託業務の内容 何を・どの範囲まで・いつまでに納品するか
2 報酬と支払期日 金額、消費税の扱い、支払方法、支払期日
3 検収基準 誰が・何を基準に・いつまでに合格/不合格を判定するか
4 著作権等の権利帰属 成果物の著作権をどちらが持つか
5 秘密保持と契約解除 業務上知った情報の扱い、どうなったら契約を終了できるか

このうち1〜3は次の見出しで、4と5はその後の見出しで、それぞれ根拠とあわせて確認します。

報酬と支払期日|フリーランス新法で変わったこと

報酬額そのものは契約自由の範囲ですが、支払期日の決め方には法律上のルールが新しく加わっています。 2024年11月1日に施行された「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律」(通称フリーランス新法)は、一定の要件を満たす発注者(特定業務委託事業者)に対して、給付の内容・報酬額・支払期日などを書面または電磁的方法で明示する義務を課しています(フリーランス新法第3条第1項)。

ただし、この法律の義務は発注者側の規模によって適用が分かれます。 発注者が個人であっても従業員を使っていない場合や、法人であっても役員が1名だけで従業員を使っていない場合(いわゆる一人社長の会社)は、フリーランス新法上の「特定業務委託事業者」の定義に当たらず、書面明示義務の対象外になる可能性があります(同法の定義規定に基づく整理。自社が具体的にどちらに当たるかは、事業の実態に照らして個別に確認する必要がある。2026年9月確認)。

法律上の義務の有無にかかわらず、支払期日を契約書に明記しておくこと自体はどの発注者にとっても有効です。 「検収完了日の翌月末払い」のように、起算点(いつから数えるか)とセットで決めておくと、双方の認識がずれません。

検収基準|「いつ・誰が・何を基準に」を先に決める

検収(納品物を受け取って合格・不合格を判定する手続き)でもめる典型的な原因は、基準を決めないまま「なんとなく」で進めてしまうことです。 最低限、次の3点を契約書に書いておく必要があります。

  • 検収の基準:何がそろっていれば合格とするか(仕様書・デザインカンプなど、判定材料になる文書を先に合意しておく)
  • 検収の期間:納品後、何営業日以内に合否を通知するか(期間内に連絡がなければ検収完了とみなす、という「みなし検収」の規定を入れる方法もある)
  • 修正の回数と範囲:報酬に含まれる修正は何回までか、それを超える修正は追加料金になるのか

これらは民法に個別の定めがあるわけではなく、契約自由の範囲で当事者が決める事項です。決めていないと、「検収基準がない」こと自体が揉め事の火種になります。

著作権の帰属|作った人のものが原則

デザイン・記事・コードなど、著作物にあたる成果物を外注した場合、発注者が報酬を払ったからといって、著作権が自動的に発注者に移るわけではありません。 著作権は、原則として実際にその著作物を創作した者に原始的に帰属します。雇用関係にある従業員が職務上作成した著作物であれば発注者(使用者)側に帰属する場合がありますが(著作権法第15条、職務著作)、雇用関係のない外注先との間ではこの規定は適用されません。

つまり、外注先が作った成果物を自社のものとして自由に使いたいのであれば、契約書に著作権の譲渡を明記する必要があります。 さらに注意が必要なのは、著作権を譲渡する契約を結んでも、翻案権(改変する権利)や二次的著作物の利用に関する権利(著作権法第27条・第28条)は、契約書の中でこれらを譲渡の対象に含むと明示(特掲)しない限り、譲渡した側(外注先)に留保されたものと推定されるという点です(著作権法第61条第2項)。「著作権を譲渡する」とだけ書いた契約書では、後から成果物を改変・二次利用する場面で権利関係が不明確になりかねません。

ここが要点

ロゴやキャラクターなど「後から改変する可能性がある」成果物を外注する場合は、「著作権法第27条及び第28条に定める権利を含む」という一文を契約書に入れておくと、この推定規定によるすれ違いを避けられます。

秘密保持と契約解除の条件

外注先に自社の顧客情報や未公開の事業計画を共有する場合、秘密保持義務を契約書に明記していなければ、外注先がそれをどう扱うかは外注先の判断に委ねられてしまいます。 秘密保持条項には、最低限「何を秘密情報とするか」「目的外利用を禁止する」「契約終了後も一定期間は義務が続く」の3点を入れておく必要があります。

契約解除についても、「相手方が契約に違反した場合」「一定期間、業務が履行されない場合」など、どのような事態になれば契約を打ち切れるのかを事前に決めておくことで、トラブル発生時に「解除できるのか、できないのか」で揉めることを防げます。

実体験について、正直に書きます

私の場合

正直に書きます。私自身は2026年に前職を退職し、法人設立の準備を進めている当事者ですが、この記事を書いている時点ではまだ外注先に業務委託契約書を交わして仕事を発注した実務経験はありません。この記事は、実際に外注する場面が来たときに自分でも使えるように、民法・著作権法・フリーランス新法の条文を自分で調べて整理したものです。実際に外注契約を結ぶ段階になったら、うまくいった点・直した点を一次情報として追記する予定です。

次にやること

まず、これから外注する業務が「完成物を納品してもらう請負型」なのか「継続的な稼働を依頼する委任型」なのかを自分の中で整理してください。 そのうえで、委託業務の内容・報酬と支払期日・検収基準・著作権の帰属・秘密保持と契約解除という5条項が入ったひな形を用意し、著作権を自社に譲渡してもらう必要がある成果物については「著作権法第27条及び第28条の権利を含む」という一文を忘れずに入れてください。自社がフリーランス新法上の義務対象に当たるかどうかは、事業の実態(従業員の有無・役員数)を踏まえて個別に確認が必要です。


※本記事は2026年9月7日時点で調査した民法・著作権法・フリーランス新法(特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律)の条文と、筆者個人の状況に基づくものです。フリーランス新法の適用要件の当てはめ、個別の契約書の内容については、実際の手続きに際して弁護士にご確認ください。

出典 - 民法第522条第2項(契約の成立、方式の自由) — e-Gov法令検索 民法 - 民法第632条(請負) — e-Gov法令検索 民法 - 民法第643条(委任)、第656条(準委任) — e-Gov法令検索 民法 - 民法第637条第1項(契約不適合責任の期間の制限) — e-Gov法令検索 民法 - 著作権法第15条(職務上作成する著作物の著作者) — e-Gov法令検索 著作権法 - 著作権法第27条・第28条(翻案権等、二次的著作物の利用に関する原著作者の権利) — e-Gov法令検索 著作権法 - 著作権法第61条第2項(著作権の譲渡における第27条・第28条の権利の留保推定) — e-Gov法令検索 著作権法 - 特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律(フリーランス新法)第3条第1項(書面等による取引条件の明示)、2024年11月1日施行、および「特定業務委託事業者」の定義(従業員を使用する個人事業主、または役員が2人以上いるか従業員を使用する法人) — 公正取引委員会・中小企業庁 説明資料

当サイト運営者

会社を辞めて、会社をつくる準備をしている当事者です

執行役員として6年、会社の管理部門を統括する立場にいました。2026年に退職し、いまは求職活動と並行して、会社を立ち上げる準備を検討している段階です。まだ登記はしていません。調べて確かめたことだけを書き、済んでいない手続きは「これから」と正直に書きます。体験のふりをしません。

この記事の作り方: 下書きにAIを使い、法令の条文と官公庁の公式ページに照らして事実確認したうえで公開しています。確認の取れない記述が残る記事は公開せず、一次資料が見つからない箇所は本文にそう書いています。確認の手順を見る →

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