設立のあとまで分かる会社設立ガイド 決める前の疑問から、設立のあとの手続きまで
ホーム › 源泉所得税の納期の特例

源泉所得税の納期の特例

この記事の結論
  • 納期の特例は給与の支給人員が常時10人未満の源泉徴収義務者が対象(国税庁「源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請」)
  • 対象になるのは給与・退職手当と税理士等の一定の資格を持つ人への報酬・料金の源泉所得税のみで、原稿料・デザイン料・講演料などの源泉所得税は対象外で毎月納付が必要(国税庁)
  • 申請書は給与支払事務所等の所在地の所轄税務署へ提出し、書面またはe-Taxで提出できる(国税庁)
  • 申請書を提出した月の翌月末日までに却下の通知がなければ、その日に承認があったものとみなされ、提出した月の翌月に源泉徴収する所得税から特例の対象になる(国税庁)
  • 特例適用後の納付期限は1月〜6月分が7月10日、7月〜12月分が翌年1月20日(所得税法216条・217条)
この記事の内容
  1. 結論:年2回にできるが、対象になる所得税は限定される
  2. そもそも「源泉所得税の納期の特例」とは何か
  3. 対象になる要件:給与の支給人員が常時10人未満
  4. 対象になる所得税・対象にならない所得税
  5. 申請書の提出先と提出方法
  6. 提出したらいつから適用されるか(みなし承認の仕組み)
  7. 納期はいつか:1月〜6月分と7月〜12月分
  8. 支給人員が10人以上になったらどうするか
  9. 一人社長が申請するタイミング
  10. 調査した範囲について、正直に書きます
  11. 次にやること

この記事は、会社を設立して役員報酬や給与の源泉徴収を始めた(またはこれから始める)人で、「毎月の源泉所得税の納付が面倒だが、年2回にまとめる特例があると聞いた」という人に向けて書いています。 結論から言うと、給与の支給人員が常時10人未満であれば、税務署への申請1本で源泉所得税の納付を年2回にまとめられます。 ただし、この特例がカバーする所得税は限定されていて、対象外の支払いは特例後も毎月納付を続ける必要があります。この記事では、申請の要件、対象になる所得税とならない所得税の違い、申請書の出し方、いつから効力が出るのかを整理します。

こんな状態ではありませんか
  • 毎月の源泉所得税の納付が地味に手間で、年2回にまとめられると聞いたが条件が分からない
  • 申請すればすべての源泉所得税が年2回になると思っていたが、本当にそうなのか不安
  • いつ申請すれば、いつから年2回の扱いになるのか分からない

結論:年2回にできるが、対象になる所得税は限定される

役員報酬や給与から源泉徴収した所得税は、原則として支払った月の翌月10日までに税務署へ納付する義務があります(所得税法183条)。毎月この手続きが発生すると、経理の手間も振込の手間も積み重なります。この負担を軽くする制度が「源泉所得税の納期の特例」で、給与の支給人員が常時10人未満の源泉徴収義務者が税務署に申請すれば、年2回の納付にまとめられます(国税庁「源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請」)。

ただし、ここで誤解しやすい点があります。この特例の対象になるのは、給与・退職手当と、税理士・弁護士・司法書士など一定の資格を持つ人への報酬・料金にかかる源泉所得税だけです(国税庁)。デザイン料や原稿料、講演料など、それ以外の支払いにかかる源泉所得税は特例の対象外で、申請後も毎月10日までの納付が続きます。「申請すれば源泉所得税の納付が全部年2回になる」という理解だと、対象外の支払いで納付を忘れてしまう可能性があるため、まずこの線引きを押さえておく必要があります。

ここが要点

「特例」という名前がついていても、対象は限定的です。 一人社長で役員報酬しか払っていない会社であれば実質的にすべての源泉所得税が年2回になりますが、外部のデザイナーやライターに原稿料・デザイン料を支払っている会社は、その分だけ毎月納付が残る点に注意してください。

そもそも「源泉所得税の納期の特例」とは何か

源泉所得税の納期の特例は、給与や退職手当、一定の報酬・料金について源泉徴収した所得税及び復興特別所得税を、毎月ではなく年2回にまとめて納付できるようにする制度です(国税庁「源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請」)。特例を受けるには、あらかじめ税務署に「源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書」を提出し、承認を受ける必要があります。自動的に適用される制度ではなく、申請してはじめて効力が発生する点が前提になります。

対象になる要件:給与の支給人員が常時10人未満

申請の要件は「給与の支給人員が常時10人未満であること」です(所得税法216条)。ここでいう「常時10人未満」は、給与の支払を受ける者の数が平常の状態で10人未満かどうかで判定します(所得税基本通達216-1)。労働者を日々雇い入れることを常態としない会社であれば、繁忙期に臨時雇用者を含めて一時的に10人を超えても、常時10人未満として扱われます(所得税基本通達216-1(1))。一方、建設業のように日々雇い入れることを常態とする場合は、常雇の人数が10人未満でも、日々雇い入れる者を含めて常時10人未満でなければこの特例は使えません(所得税基本通達216-1(2))。

一人社長の会社や、役員・従業員をあわせても数人規模の会社であれば、この人数要件は通常問題なく満たします。設立したばかりの一人社長がこの特例を検討する場面では、要件面でつまずくことはほとんどないはずです。

対象になる所得税・対象にならない所得税

先に触れたとおり、この特例がカバーする範囲は「給与や退職手当」と「税理士・弁護士・司法書士など一定の資格を持つ人への報酬・料金」に限られます(国税庁)。それ以外の報酬・料金にかかる源泉所得税は、特例の承認を受けていても対象外のままです。

支払いの種類 納期の特例の対象か
役員報酬・従業員給与 対象(年2回の納付でよい)
退職手当 対象(年2回の納付でよい)
税理士・弁護士・司法書士などへの報酬・料金 対象(年2回の納付でよい)
原稿料・デザイン料・講演料などの報酬・料金 対象外(毎月10日までの納付が必要)

原稿料やデザイン料などにかかる源泉所得税は、特例の承認後も、支払った月の翌月10日までに納付する必要があります(国税庁「原稿料や講演料等を支払ったとき」)。外部のライターやデザイナーに継続して発注している会社は、この対象外分の納期だけは別管理にしておく必要があります。一人社長で、自分の役員報酬以外に外部への報酬支払いがない会社であれば、実質的にすべての源泉所得税がこの特例の対象になります。

申請書の提出先と提出方法

申請書の様式は「源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書」で、給与支払事務所等の所在地の所轄税務署へ提出します(国税庁)。提出方法は、書面を税務署の窓口へ持参または郵送するほか、e-Taxソフト(Web版)またはe-Taxソフトを使ったオンライン提出にも対応しています(国税庁)。

会社設立の直後であれば、給与支払事務所等の開設届出書や青色申告承認申請書などとあわせて、同じタイミングで提出しておくと、税務署とのやり取りを1回にまとめられます。

提出したらいつから適用されるか(みなし承認の仕組み)

申請書を提出したからといって、その場で確定するわけではありません。税務署は申請内容を審査し、要件を満たさない場合は却下することがあります。ただし、申請書を提出した月の翌月末日までに承認または却下の通知がなければ、その日に承認があったものとみなされます(国税庁)。この「みなし承認」の仕組みにより、明示的な承認通知を待たなくても手続きが宙に浮くことはありません。

適用が始まるタイミングについては、申請書を提出した月の翌月に源泉徴収する所得税及び復興特別所得税から、特例の対象になります(国税庁)。たとえば4月に申請書を提出した場合、5月に源泉徴収する分から特例の対象になり、その分の納付は次の納期(1月〜6月分であれば7月10日)にまとめて行うことになります。申請から適用開始まで1か月のタイムラグがあるため、「今月分から年2回にしたい」と思って申請しても、その月の分はすでに毎月納付の扱いのまま進む点に注意してください。

納期はいつか:1月〜6月分と7月〜12月分

特例が適用されると、納付のタイミングは年2回になります(所得税法216条・217条)。

  • 1月〜6月分:7月10日までに納付
  • 7月〜12月分:翌年1月20日までに納付

7月〜12月分の納期限は、原則の翌月10日ルールをそのまま当てはめると翌年1月10日になりそうなところ、1月20日まで延びています。複数の税理士による解説では、年末調整の事務が集中する時期への配慮とされていますが、この理由づけそのものを国税庁の公式資料で明記した記述は見当たりません(2026年9月確認)。毎月10日ごとに振込作業が発生していた状態から、年2回、決まった時期にまとめて対応する形に変わるため、資金繰りの管理もこの2つの納期を軸に組み立て直すことになります。

支給人員が10人以上になったらどうするか

採用が進み、給与の支給人員が常時10人以上になった場合は、特例の対象要件から外れます。この場合は「源泉所得税の納期の特例の要件に該当しなくなった場合の届出書」を、該当しなくなった事実が発生した後、遅滞なく提出します(国税庁「源泉所得税の納期の特例の要件に該当しなくなった場合の届出」)。届出後の取り扱いは、提出した日が属する納期の特例の期間内で源泉徴収した税額のうち、提出日が属する月分以前の分は提出日が属する月の翌月10日までに納付し、それより後の分は毎月翌月10日までの通常納付に戻ります(所得税法218条)。

一人社長でスタートした会社が採用を増やしていく計画であれば、特例はいずれ見直しが必要になる制度だと理解しておくとよいでしょう。

一人社長が申請するタイミング

一人社長の会社は、役員報酬を払い始めた時点で「常時10人未満」の要件を当然満たします。実務上は、会社設立後に給与支払事務所等の開設届出書を提出するタイミングで、この申請書もあわせて出しておくのが効率的です。前述のとおり適用開始まで1か月のタイムラグがあるため、役員報酬の支払いを開始する前後のできるだけ早い時期に申請しておくと、毎月納付が発生する期間を短くできます。

外部のデザイナーやライターへの発注を予定している場合は、その分の源泉所得税は特例の対象外で毎月納付が続く点を、経理の運用ルールに組み込んでおく必要があります。

調査した範囲について、正直に書きます

私の場合

正直に書きます。私自身は2026年に前職を退職し、起業準備を進めている当事者ですが、この記事を書いている時点ではまだ自分の会社を設立しておらず、源泉所得税の納期の特例を実際に申請・運用した経験はありません。この記事は、所得税法の該当条文と、国税庁の公式解説・質疑応答事例(「源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請」「源泉所得税及び復興特別所得税の納付期限と納期の特例」「原稿料や講演料等を支払ったとき」「弁護士や税理士等に支払う報酬・料金等」「司法書士等に支払う報酬・料金」「源泉所得税の納期の特例の要件に該当しなくなった場合の届出」「給与等の支払を受ける者が常時10人未満であるかどうかの判定」)を2026年9月に確認し、内容が一致する部分を整理したものです。なお、7月〜12月分の納期限が1月20日である理由については、複数の税理士解説に共通する説明(年末調整の事務が集中する時期への配慮)を紹介していますが、国税庁の公式資料に立法趣旨そのものの明記は見当たりませんでした。

次にやること

自分の会社の給与の支給人員が常時10人未満であれば、給与支払事務所等の開設届出書と同じタイミングで「源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書」を所轄税務署へ提出してください。外部への原稿料・デザイン料などの支払いがある場合は、その分だけ特例の対象外で毎月納付が続く点を、経理の運用ルールに先に組み込んでおいてください。

当サイト運営者

会社を辞めて、会社をつくる準備をしている当事者です

執行役員として6年、会社の管理部門を統括する立場にいました。2026年に退職し、いまは求職活動と並行して、会社を立ち上げる準備を検討している段階です。まだ登記はしていません。調べて確かめたことだけを書き、済んでいない手続きは「これから」と正直に書きます。体験のふりをしません。

この記事の作り方: 下書きにAIを使い、法令の条文と官公庁の公式ページに照らして事実確認したうえで公開しています。確認の取れない記述が残る記事は公開せず、一次資料が見つからない箇所は本文にそう書いています。確認の手順を見る →

あわせて読みたい