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消費税課税事業者選択届出書

この記事の内容
  1. 消費税課税事業者選択届出書とは何のための届出か
  2. なぜあえて課税事業者を選ぶのか|免税のままだと損をする場面
  3. 提出期限はいつか|原則と事業を開始した課税期間の特例
  4. 計算例|輸出中心の事業者が還付を受けられる金額
  5. 提出すると2年間はやめられない(2年縛り)
  6. 設備投資をするとさらに3年に延びる
  7. インボイス登録だけでは目的を果たせないのか
  8. 2割特例は使えるか
  9. 課税事業者を選ぶ前のチェックリスト
  10. 次にやること

基準期間の課税売上高が1,000万円以下で、本来は消費税の免税事業者に当たる会社・個人事業主が、あえて「消費税課税事業者選択届出書」を出して課税事業者になる場面がある。輸出取引が中心の事業者や、大きな設備投資をした期には、免税のままでいるより消費税の還付を受けられる課税事業者の方が有利になることがあるためだ。この記事は、いつ出せば効力が生じるか、出すとどんな制約がつくかを、条文の数字と計算例で示す。

消費税課税事業者選択届出書とは何のための届出か

基準期間(原則として前々事業年度)の課税売上高が1,000万円以下の事業者は、適格請求書発行事業者(インボイス登録をした事業者)を除き、消費税の納税義務が免除される(消費税法9条1項、e-Govの条文で2026年9月確認)。この「消費税課税事業者選択届出書」は、免除の対象になる免税事業者が、自分の意思でこの免除を受けない、つまり課税事業者になることを選ぶための届出書である(消費税法9条4項)。

課税事業者になると、売上にかかる消費税から仕入れにかかった消費税を差し引いて納税額を計算する義務(と権利)が生じる。差し引いた結果がマイナスになれば、その分の還付を受けられる(消費税法52条1項、仕入れに係る消費税額の控除不足額の還付。還付を受けるためだけの申告は同法46条1項)。免税事業者のままだと申告義務そのものがないため、仕入れで払った消費税を取り戻す手段がない。

なぜあえて課税事業者を選ぶのか|免税のままだと損をする場面

免税事業者のままの方が納税額はゼロで有利に見えるが、次の2つの場面では逆転する。

場面 免税のままだと起きること 課税事業者を選ぶと
輸出取引が中心 売上は輸出免税(消費税法7条、輸出免税等)でもともと消費税がかからない一方、国内の仕入れ・経費には消費税を払っている。免税事業者は申告しないため、この払った分を取り戻せない 申告により、仕入れにかかった消費税の還付を受けられる
多額の設備投資をした期 仕入れにかかった消費税の方が売上にかかる消費税より大きくても、免税事業者は還付を受けられない 差額の還付を受けられる可能性がある

どちらの場合も、還付を受けられるのは本則課税(一般課税)を選んでいる場合に限られる。 簡易課税制度(消費税法37条)を選択していると、実際の仕入れの金額に関係なく、売上高から概算で控除額を計算する方式になるため、還付は生じない。簡易課税と本則課税のどちらを選ぶかの判断は「消費税の簡易課税と本則課税|一人法人の選び方」で扱っている。

提出期限はいつか|原則と事業を開始した課税期間の特例

原則は、課税事業者になりたい課税期間の初日の前日までに届出書を提出する(消費税法9条4項)。3月決算の会社が翌期(4月開始)から課税事業者になりたい場合、前期の末日である3月31日までに提出する必要がある。

ただし例外がある。その課税期間が「事業を開始した日の属する課税期間」に当たる場合は、期首前の提出でなくても、その課税期間の末日までに提出すればその課税期間から適用される(消費税法9条4項、消費税法施行令20条1号。国税庁タックスアンサーNo.6501)。新規に開業・設立した初年度から課税事業者になりたい場合は、この特例を使えば期の途中の提出でも間に合う。

計算例|輸出中心の事業者が還付を受けられる金額

前提を1つ仮置きする。基準期間の課税売上高が800万円で本来は免税事業者、売上は海外向けの輸出取引が中心という個人事業主の場合。

  • 年間の課税仕入れ(材料費・広告費等、消費税込み):880万円
  • 仕入れにかかる消費税額:880万円 × 10/110 = 80万円
  • 売上はすべて輸出免税売上のため、売上にかかる消費税額:0円

免税事業者のまま:申告義務がなく、仕入れで払った80万円は戻ってこない。

消費税課税事業者選択届出書を提出し、本則課税を選んで確定申告した場合: - 差引 = 売上にかかる消費税0円 − 仕入れにかかる消費税80万円 = ▲80万円 - 申告により80万円が還付される(消費税法46条1項の還付申告、52条1項の還付)

このケースでは、課税事業者を選ぶことで80万円分の差が生まれる計算になる。輸出免税は、輸出したことを財務省令で定める書類で証明できないと適用されない(消費税法7条2項)。実際の還付額は仕入れの内訳や証明書類の有無によって変わるため、この試算はあくまで目安として使う。

提出すると2年間はやめられない(2年縛り)

課税事業者選択届出書には後戻りの制約がある。一度提出して課税事業者になると、選択の効力が生じた課税期間の初日から2年を経過する日の属する課税期間の初日以後でなければ、「消費税課税事業者選択不適用届出書」を提出して免税事業者に戻ることができない(消費税法9条6項)。

つまり最低2期(2年間)は、その期の売上が1,000万円以下に落ち込んでも課税事業者のままになる。還付が受けられる期だけを狙って単年度で出し入れすることはできない設計になっている。

設備投資をするとさらに3年に延びる

2年縛りの期間中に(簡易課税を適用する課税期間を除く)調整対象固定資産(建物・機械・車両・工具器具備品など棚卸資産以外の資産で、一取引単位の税抜価額が100万円以上のもの。消費税法2条1項16号、消費税法施行令5条)の課税仕入れを行うと、不適用届出書を提出できる時期がさらに後ろにずれる。 具体的には、その調整対象固定資産の仕入れ等を行った日の属する課税期間の初日から3年を経過する日の属する課税期間の初日以後でなければ、免税事業者に戻る届出ができなくなる(消費税法9条7項)。

課税事業者選択届出書を出す動機自体が「大きな設備投資の還付を受けたい」であることも多いため、動機と制約が同時に発生しやすい点に注意する。

インボイス登録だけでは目的を果たせないのか

適格請求書発行事業者(インボイス発行事業者)の登録は、原則として課税事業者選択届出書を出して課税事業者になってから受ける。ただし、令和5年10月1日から令和11年9月30日までの日の属する課税期間中に登録を受ける免税事業者は、登録申請書に登録希望日を書けば、その日から課税事業者になり、課税事業者選択届出書を別途出す必要はない(国税庁インボイス制度Q&A問7、令和8年4月改訂)。取引先への請求書にインボイスとしての適格性を持たせたい、というのが目的なら登録だけで足りる。なお、この経過措置で登録した日の属する課税期間が令和5年10月1日を含まない場合は、その翌課税期間から登録日以後2年を経過する日の属する課税期間まで免税事業者に戻れない(同Q&A)。

一方で、この記事で扱っている「還付を受けたい」という目的だけなら、インボイスの発行自体は必須ではない場面がある。たとえば輸出取引の相手が海外の顧客で、そもそも日本のインボイス番号が要らない場合には、インボイス登録をせずに課税事業者選択届出書だけを提出して課税事業者になる、という選び方もできる。何を目的に課税事業者になるかで、登録すべきものが変わる。

2割特例は使えるか

「2割特例」(納める消費税を売上にかかる消費税額の2割にできる負担軽減措置)は、インボイス発行事業者になった免税事業者向けの制度で、課税事業者選択届出書を出して課税事業者になった免税事業者も、インボイス発行事業者になれば対象に含まれる(国税庁インボイス制度Q&A問115)。つまり、届出書を出しただけでインボイス登録をしないなら、2割特例は使えない。

ただし、この記事の目的である還付とは両立しない。2割特例は、仕入れにかかった消費税の実額ではなく、売上にかかる消費税額の80%を仕入税額控除とみなして納める税額を計算する(平成28年改正法附則51条の2、国税庁「2割特例の概要」)。この輸出中心の例のように売上にかかる消費税額が0円なら、控除額も0円になり、還付は出ない。還付を狙うなら本則課税を選ぶ。

適用できる期間は、令和5年10月1日から令和8年9月30日までの日の属する各課税期間に限られる(同Q&A問115)。2026年9月19日時点では、期限の直前にあたる。

このほか、選択届出書を出して課税事業者になった後の2年以内に調整対象固定資産(100万円以上)の課税仕入れを本則課税で行い、免税事業者に戻れない課税期間は対象外になる(同Q&A問115⑥)。令和5年10月1日より前から届出書で課税事業者だった期間を含む課税期間も対象外である(同Q&A問116)。個人事業者は、令和9年分・令和10年分について「3割特例」が新設された(国税庁「令和8年度税制改正特集」。法人は対象外)。2割特例そのものの仕組みは「消費税の2割特例|インボイス登録した新設法人の負担軽減」で扱っている。

課税事業者を選ぶ前のチェックリスト

  • □ 本則課税(一般課税)を選ぶ前提になっているか(簡易課税では還付が生じない)
  • □ 還付を見込む仕入れ・設備投資の金額と、実際にかかる消費税額を試算したか
  • □ 提出期限(原則は前課税期間の末日まで、事業開始年度は当該課税期間の末日まで)を確認したか
  • □ 提出後2年間、還付が出ない期になっても課税事業者のままでいる前提で資金計画を組めているか
  • □ 調整対象固定資産(100万円以上)を取得する予定がある場合、3年縛りになる可能性を織り込んだか
  • □ インボイス登録が必要な取引か、還付だけが目的かを整理したか
  • □ 2割特例を使う前提を置いていないか(インボイス登録が前提で、期限は令和8年9月30日までの日の属する課税期間。使うと還付は出ない)

次にやること

まず、還付を見込んでいる仕入れ・設備投資の金額と、その期の売上にかかる消費税額を紙に書き出し、実際に還付が出る計算になるかを確認する。還付が出る見込みが立ったら、本則課税を選ぶ前提で、提出期限(原則は課税期間開始前、事業開始年度は当該課税期間中)を税理士とすり合わせたうえで届出書を提出する。

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会社を辞めて、会社をつくる準備をしている当事者です

執行役員として6年、会社の管理部門を統括する立場にいました。2026年に退職し、いまは求職活動と並行して、会社を立ち上げる準備を検討している段階です。まだ登記はしていません。調べて確かめたことだけを書き、済んでいない手続きは「これから」と正直に書きます。体験のふりをしません。

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