会社設立を司法書士・行政書士・代行サービスのどこに頼むか
- 登記の申請代理は司法書士法で司法書士だけに認められた独占業務で、行政書士は法務局への登記申請代理ができない(司法書士法、複数の専門家サイトで内容の一致を確認)
- 行政書士は定款作成と公証役場での定款認証手続きの代理はできる(複数の専門家・行政書士事務所サイトで内容の一致を確認)
- 行政書士が会社設立の代行を一括で請け負う場合、登記部分は提携する司法書士に委託する仕組みが一般的(同上)
- 司法書士報酬の平均は10万7,887円、行政書士の会社設立手続き報酬の平均は10万6,371円(いずれも008記事で確認済みの統計を再掲。日本司法書士会連合会2024年3月実施・日本行政書士会連合会令和7年度実施)
この記事の内容
この記事は、会社設立の手続きを自分でやらずに専門家か代行サービスに頼もうとしていて、司法書士・行政書士・クラウドサービスの「代行プラン」のどれに頼めばいいのか、そもそも何が違うのか分からない人に向けて書いています。 結論から言うと、この3つ(+税理士事務所の「0円設立」)は「頼める業務の範囲」が法律で明確に分かれています。登記の申請代理ができるのは司法書士だけで、行政書士は定款の作成・認証代理はできても登記申請の代理はできません。この違いを知らずに依頼先を選ぶと、「行政書士に頼んだのに登記だけ自分でやることになった」というような想定外が起きます。この記事では、依頼先ごとに「頼めること・頼めないこと」を整理し、何を基準に選べばいいかを示します。
- 司法書士と行政書士、会社設立はどちらに頼めばいいのか分からない
- 「代行サービス」と名乗るところが結局どの専門家に依頼を回しているのか見えない
- 費用の違いだけでなく、頼める業務の範囲の違いを知りたい
結論:登記まで任せるなら司法書士、行政書士は登記申請の代理ができない
会社設立の手続きを代行に頼む場合、まず押さえておくべきなのは、法務局への登記申請の代理ができるのは司法書士だけという点です。これは司法書士法第3条第1項第1号で定められた司法書士の独占業務で、司法書士でない者がこの部分を代理すると同法第73条・第78条により禁止・処罰されます(e-Gov法令検索で条文原文を確認、確認日2026年9月6日)。一方、行政書士は行政書士法第1条の3・第1条の4第1項第3号に基づき、定款の作成や、公証役場での定款認証手続きの代理を行うことができます(e-Gov法令検索での条文確認、および公証実務での取り扱いは複数の行政書士事務所公式サイトで内容の一致を確認、確認日2026年9月6日)。つまり「定款を作って認証を受けるまで」は行政書士に頼めても、「法務局に登記を申請する」部分は司法書士でなければ代理できません。行政書士事務所が会社設立の代行を一括で請け負っている場合、実務では登記部分を提携する司法書士に委託していることが一般的です(複数の専門家事務所公式サイトで内容の一致を確認、確認日2026年9月6日)。税理士事務所の「0円設立」やクラウドサービスの登記代行プランも同じ構造で、突き詰めると登記の実務は司法書士が担っています。「誰に相談するか」より先に、「登記の代理は司法書士にしかできない」という事実を押さえておくと、依頼先選びの見通しがよくなります。
行政書士に依頼した=登記まで任せられる、とは限りません。 行政書士単独では登記申請の代理ができないため、登記部分をどう処理するか(提携司法書士に依頼するのか、自分で法務局に行くのか)を、依頼前に必ず確認してください。
依頼先ごとに「頼めること」を整理する
会社設立の代行を頼める先は、大きく分けると次の4パターンです。
- 司法書士:定款作成から法務局への登記申請の代理まで、一括で依頼できる唯一の専門家です。登記申請だけを依頼することもできます
- 行政書士:定款の作成と、公証役場での定款認証手続きの代理が中心です。法務局への登記申請の代理はできないため、提携する司法書士に依頼するか、自分で登記申請を行う必要があります
- 税理士事務所の「0円設立」:代行報酬を無料にする代わりに、設立後の顧問契約(月額の会計・税務サポート契約)を条件にする仕組みです。実務では提携する司法書士・行政書士に手続きが回っている場合が多いとされます(複数の税理士事務所公式サイトで同様の説明を確認、確認日2026年9月6日)
- クラウドサービスの登記代行プラン:freee会社設立やマネーフォワード クラウド会社設立のような書類作成サービスに、提携する司法書士への登記代行がオプションとして付いている形です。freee会社設立の「登記おまかせプラン」は司法書士報酬が通常登記で一律5万円(税込)と公式サイトに明記されており(freee公式サイト、確認日2026年9月6日)、マネーフォワード クラウド会社設立の登記代行プランの料金は40,000円(税込)です(マネーフォワード クラウド会社設立公式サイト、確認日2026年9月6日)
比較表:依頼先別の業務範囲・費用相場・向いている人
※費用は008記事で出典を明記して確認済みの数値で、今回改めて日本司法書士会連合会・日本行政書士会連合会の公式資料原本、freee・マネーフォワード公式サイトを直接確認し、数値の一致を確かめています(確認日2026年9月6日)。実際の報酬は依頼先・依頼内容によって変わるため、必ず個別に見積もりを取ってください。
| 依頼先 | 定款作成 | 定款認証代理 | 登記申請代理 | 報酬相場の目安 | 向いている人 |
|---|---|---|---|---|---|
| 司法書士 | ○ | ○ | ○(独占業務) | 平均10万7,887円(資本金500万円・発起人2名のケース、日本司法書士会連合会 報酬アンケート・2024年3月実施) | 登記まで含めて一括で任せたい人 |
| 行政書士 | ○ | ○ | ×(提携司法書士経由が必要) | 平均10万6,371円(会社設立手続、日本行政書士会連合会 令和7年度報酬額統計調査・2026年1月実施) | 定款まわりや許認可申請も絡めて相談したい人 |
| 税理士事務所の「0円設立」 | ○(提携先経由が多い) | ○(提携先経由が多い) | ×(提携司法書士経由) | 0円(代行報酬のみ、顧問契約が別途条件になることが多い) | 設立後の税務顧問も同時に決めたい人 |
| クラウドサービスの登記代行プラン | ○ | サービスによる | 提携司法書士が代行 | freee:司法書士報酬一律5万円(税込)。マネーフォワード:40,000円(税込) | オンラインで完結させたい人・費用を抑えたい人 |
司法書士にしかできないこと(登記の独占業務)
登記の申請代理は司法書士法第3条第1項第1号で司法書士だけに認められた独占業務で、司法書士会に入会している司法書士・司法書士法人でない者がこれを代理すると同法第73条第1項に違反し、第78条第1項により1年以下の拘禁刑又は100万円以下の罰金の対象になります(e-Gov法令検索で条文原文を確認、確認日2026年9月6日)。会社設立でいえば、法務局に「設立登記申請書」を提出し、会社を法的に成立させる手続きの代理がこれにあたります。行政書士や税理士がこの部分を無資格で代行すると司法書士法違反となり、実際に摘発された事例も報じられています。兵庫県司法書士会は、相続登記の手続に関与していた行政書士を司法書士法違反の疑いで刑事告発し、当該行政書士は起訴されて罰金刑の有罪判決が確定したと2025年11月に会長声明を出しています(兵庫県司法書士会公式サイト、確認日2026年9月6日)。
一方で、司法書士は定款の作成や公証役場での定款認証手続きの代理も行えるため、定款作成から登記完了まで、会社設立の手続き全体を一人の専門家に一括で任せられるという点が、司法書士に依頼する最大の利点になります。
行政書士に頼む場合、登記部分はどうなるか
行政書士は、行政書士法第1条の3(権利義務に関する書類の作成業務)・第1条の4第1項第3号(契約その他に関する書類の代理作成)に基づき、定款の作成および公証役場での定款認証手続きの代理を行うことができます(e-Gov法令検索での条文確認、確認日2026年9月6日。公証役場での代理出頭の実務は複数の行政書士事務所公式サイトで内容の一致を確認)。ただし前述のとおり、法務局への登記申請の代理はできません。そのため、行政書士に会社設立の代行を一括で依頼した場合、実務では次のいずれかの形になります。
- 行政書士事務所が提携している司法書士に登記部分を委託し、依頼者は行政書士とだけやり取りする(窓口が一本化される)
- 定款作成・認証までを行政書士に依頼し、登記申請は依頼者自身が法務局で行う
どちらの形になるかは事務所によって異なるため、行政書士に依頼を検討する場合は、登記申請の部分を誰がどう処理するのかを契約前に必ず確認する必要があります。会社設立以外に許認可申請(飲食店営業許可・古物商許可など)も同時に必要な事業を始める場合は、その申請書類の作成が行政書士の本来の業務範囲であるため、そうしたケースでは行政書士に相談する意味が大きくなります。
「0円設立」やクラウドサービスの代行も、行き着く先は司法書士
税理士事務所の「0円設立」や、freee会社設立・マネーフォワード クラウド会社設立のようなクラウドサービスの登記代行プランも、名乗る主体が違うだけで、登記申請の実務そのものは提携する司法書士が担っています。freee会社設立の「登記おまかせプラン」で司法書士報酬が明記されているのは、その提携司法書士への報酬にあたる部分です(freee公式サイト、確認日2026年9月6日)。
「代行サービス」という言葉の見た目に関わらず、登記申請の実務を担っているのは常に司法書士です。 依頼先を比較するときは、「誰が窓口か」だけでなく「登記の実務を誰がどんな条件で担うか(報酬・対応の速さ・不備があったときの相談先)」まで確認しておくと、あとで想定と違う、ということを避けやすくなります。
依頼先を決める3つの質問
依頼先を選ぶときは、次の3つを自問すると整理しやすくなります。
- 登記申請まで一括で任せたいか、それとも定款まわりだけ頼んで登記は自分でやってもいいか。 一括で任せたいなら司法書士、または司法書士と提携しているクラウドサービス・行政書士事務所を選ぶ
- 許認可申請など、会社設立以外にも行政書士の業務が必要か。 飲食店営業許可・建設業許可など会社設立と同時に必要な許認可があるなら、行政書士に相談する意味が大きくなる
- 設立後の税務顧問も同時に決めたいか。 決めたいなら税理士事務所の「0円設立」も選択肢だが、顧問契約の期間・解約条件を必ず個別に確認する([008]記事で詳しく整理しています)
費用だけを比較すると司法書士と行政書士の報酬相場は大きくは変わらないため([008]記事で確認済み)、最終的な決め手は費用より「何を一括で頼めるか」になることが多いというのが、業務範囲を整理してみての実感です。
実体験について、正直に書きます
正直に書きます。私自身は2026年に前職を退職し、合同会社の設立準備を進めている当事者ですが、この記事を書いている時点で、司法書士・行政書士のいずれにも会社設立の代行を依頼したことはなく、税理士事務所の「0円設立」も利用していません。今のところ、電子定款対応のクラウドサービスを使って自分で進める方向で検討しており、専門家に依頼した場合の実際のやり取り(登記までのスピード感や、不備があったときの対応など)は経験していません。そのため、この記事は各専門家・各サービスの公開情報を整理したものであり、依頼を実際に使った一次情報ではないことを正直に書いておきます。
次にやること
まず、「登記申請まで一括で任せたいか」を自分の中で決めてください。 一括で任せたいなら司法書士、またはfreee会社設立・マネーフォワード クラウド会社設立のようなクラウドサービスの登記代行プランが候補になります。会社設立以外に許認可申請も必要なら行政書士への相談も検討肢に入ります。いずれの場合も、依頼前に「登記申請の部分を誰がどう処理するか」と「報酬に含まれる範囲」を必ず確認してください。設立の基本事項(定款の事業目的や資本金額)をまだ固めていない場合は、freee会社設立のようなサービスで書類作成から進めながら、依頼先を並行して検討する進め方もあります。
※本記事は2026年9月6日時点でe-Gov法令検索の条文原文、日本司法書士会連合会・日本行政書士会連合会の公式資料原本、freee・マネーフォワードの公式サイトを直接確認し、司法書士法・行政書士法に関する複数の専門家サイトの公開情報および会社設立代行に関する各社公開情報を整理したものと、筆者個人の状況に基づくものです。依頼先の選定や契約条件の確認は、必ず個別に依頼先へお問い合わせのうえ判断してください。
出典 - 司法書士法第3条第1項第1号(登記又は供託に関する手続の代理業務)、同法第73条第1項(非司法書士等の取締り)、同法第78条第1項(罰則:1年以下の拘禁刑又は100万円以下の罰金)。e-Gov法令検索で条文原文を確認(確認日2026年9月6日) https://laws.e-gov.go.jp/law/325AC1000000197 - 行政書士法第1条の3(書類作成業務)・第1条の4第1項第3号(契約その他に関する書類の代理作成)。e-Gov法令検索で条文原文を確認(確認日2026年9月6日) https://laws.e-gov.go.jp/law/326AC1000000004 。行政書士が登記申請の代理を行えないこと、公証役場での定款認証手続きの代理を行えることについては、上記条文に加え複数の行政書士事務所・税理士事務所公式サイトでの説明の一致を確認(確認日2026年9月6日) - 非司法書士による登記代理の摘発事例:兵庫県司法書士会「会長声明」(相続登記の手続に関与した行政書士を司法書士法違反の疑いで刑事告発、起訴されて罰金刑の有罪判決が確定、声明発表2025年11月14日、確認日2026年9月6日) https://www.shihohyo.or.jp/seimei/post_5630/ - 日本司法書士会連合会「報酬アンケート結果」(2024年3月実施、有効回答932件・資本金500万円/発起人2名の株式会社設立登記のケース・平均107,887円、確認日2026年9月6日、PDF原文で数値を確認) https://www.shiho-shoshi.or.jp/cms/wp-content/uploads/2024/11/2a2e2c594bc4cd9ff2ca0f6d916db85e.pdf - 日本行政書士会連合会「令和7年度報酬額統計調査の結果」(令和8年1月=2026年1月実施、「440 会社設立手続」有効回答287件・平均106,371円、確認日2026年9月6日、PDF原文で数値を確認) https://www.gyosei.or.jp/about/disclosure/reward - freee株式会社 公式サイト「freee登記おまかせプラン」(司法書士報酬一律5万円・税込、確認日2026年9月6日) https://www.freee.co.jp/launch/full-support/ - マネーフォワード クラウド会社設立 公式サイト「登記代行プラン」(登記代行40,000円・税込、確認日2026年9月6日) https://biz.moneyforward.com/establish/rep/ - 税理士事務所の「0円設立」の仕組み、および行政書士が会社設立代行を一括請負う場合に登記部分を提携司法書士に委託する実務について、複数の税理士事務所・行政書士事務所公式サイトの説明の一致を確認(確認日2026年9月6日)