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法人の帳簿付けの基本

この記事の結論
  • 法人には会計帳簿の作成・保存義務がある(会社法432条・法人税法126条)。保存期間は会社法上10年、法人税法上は原則7年・欠損金が生じた事業年度は10年(国税庁タックスアンサーNo.5930、法人税法施行規則59条ほか)
  • 複式簿記は「1つの取引を借方・貸方の2面で記録する」ルールだが、クラウド会計ソフトの銀行・カード連携を使えば、借方・貸方を意識せず「入出金の内容を選ぶ」だけで記帳が完結する仕組みになっている
  • 自分でやるのは「入力内容の確認・修正」、複式簿記のルールに沿った転記・集計はソフトが行う
  • 最低限知っておくとよい用語は「勘定科目」「仕訳」「試算表」の3つだけ
  • 決算書の複式簿記的な整合性チェックと申告書作成は税務判断が伴うため税理士に任せるのが基本線
この記事の内容
  1. 結論:複式簿記のルールはソフトの中で完結する
  2. そもそも法人はなぜ帳簿を作る義務があるのか
  3. 複式簿記とは何か、最低限だけ説明します
  4. クラウド会計ソフトが複式簿記を肩代わりする仕組み
  5. 自分でやること・ソフトに任せることの線引き
  6. 最低限知っておくといい用語は3つだけ
  7. 帳簿の保存期間と保存方法
  8. 実体験について、正直に書きます
  9. 次にやること

この記事は、法人を設立したばかりで、または設立を控えていて、「複式簿記なんて分からないのに帳簿は付けられるのか」と不安な人に向けて書いています。 結論から言うと、複式簿記のルールを勉強してから記帳を始める必要はありません。 クラウド会計ソフトが借方・貸方の変換を裏側で自動処理してくれるため、自分がやることは「入出金の内容を確認して選ぶ」作業に絞り込めます。この記事では、法人に帳簿付けの義務がある根拠と、複式簿記を理解しなくても回せる理由、そして自分で押さえておくべき最低限の範囲を整理します。

こんな状態ではありませんか
  • 法人を作ったが、複式簿記を勉強したことがなく、帳簿を付けられる気がしない
  • 「借方・貸方」と言われてもピンとこない
  • どこまで自分でやって、どこから専門家に頼めばいいのか分からない

結論:複式簿記のルールはソフトの中で完結する

複式簿記は「1つの取引を、原因と結果の2つの側面から記録する」というルールです。このルール自体は簿記の教科書1冊分の知識量があり、正直、ゼロから覚えるのは時間がかかります。ただし、クラウド会計ソフトに銀行口座・クレジットカードを連携させておけば、複式簿記の変換作業(仕訳)はソフトが自動で行い、自分は「この入出金は何の勘定科目か」を選ぶだけで記帳が完了する仕組みになっています。つまり、法人の帳簿付けで最初につまずきやすい「複式簿記が分からない」という壁は、ソフトの自動化によって実質的に迂回できます。ここから、なぜ帳簿を作る義務があるのか、複式簿記とは何か、自分でやる範囲はどこまでかを順に整理します。

そもそも法人はなぜ帳簿を作る義務があるのか

法人には、会計帳簿を作って保存する義務が法律で定められています。会社法432条は「株式会社は、法務省令で定めるところにより、適時に、正確な会計帳簿を作成しなければならない」と定めており、これは株式会社であれば規模を問わず適用されます。あわせて、青色申告の承認を受けている法人には、法人税法126条により帳簿書類を備え付けて取引を記録し、保存する義務があります。個人の家計簿のように「付けても付けなくてもいい」ものではなく、法律上の義務として帳簿を作ることが会社の存続要件の1つになっている、という点がまず押さえておくべき前提です。

ここが要点

帳簿は「税務署に見せるため」だけのものではありません。会社法432条は税法とは別の条文で、株主・債権者に対して正確な財務状況を示すためのルールです。一人社長の会社でも、この義務は変わりません。

複式簿記とは何か、最低限だけ説明します

複式簿記は、1つの取引を「借方(かりかた)」と「貸方(かしかた)」という2つの欄に、必ず同じ金額で記録するルールです。たとえば「事業用口座から10万円で備品を買った」という取引は、「備品(資産)が10万円増えた」ことと「現金預金(資産)が10万円減った」ことの2つの側面を同時に記録します。この「2面で記録する」ことで、会社の資産・負債・純資産・収益・費用の動きが常に矛盾なくつながり、最終的に決算書(貸借対照表・損益計算書)が作れる、という仕組みです。

この説明を読んで「やっぱり難しそう」と感じるのが自然な反応です。実際、経理の専門知識がない人がこの原理を完全に理解してから記帳を始めようとすると、それだけで数週間〜数か月かかることも珍しくありません。ただし、次の章で説明するとおり、日々の記帳作業ではこの原理を意識する場面がほとんどありません。

クラウド会計ソフトが複式簿記を肩代わりする仕組み

freeeやマネーフォワードクラウド会計といったクラウド会計ソフトは、事業用の銀行口座・クレジットカードを連携させると、入出金データを自動で取り込みます(※2026年9月時点の一般的な機能。具体的な仕様は各社の公式サイトで確認してください)。取り込まれたデータには、過去の仕訳履歴をもとに「これは通信費」「これは旅費交通費」といった勘定科目の候補が自動で提示されます。利用者がやるのは、その候補が合っているかを確認し、違っていれば選び直すことだけです。

このとき、画面上には「〇〇費として3万円」としか表示されず、「借方:通信費3万円 / 貸方:普通預金3万円」という複式簿記の形式は、ソフトの内部で自動的に組み立てられています。利用者が借方・貸方を意識する場面は、標準的な入出金の記帳においては基本的にありません。 これが「複式簿記が分からなくても記帳が回る」と言える理由です。

ここが要点

自動化されるのは「変換作業」であって「判断作業」ではありません。勘定科目の候補が正しいかどうかを確認するのは人の仕事です。ソフトが選んだ科目をそのまま鵜呑みにせず、月に1回はまとめて見直す時間を取るようにしてください。

自分でやること・ソフトに任せることの線引き

線引きの考え方はシンプルです。自動化できるのは「機械的に処理できる部分」、自分でやるべきなのは「判断が必要な部分」です。

作業 誰がやるか 理由
銀行・カードの入出金データ取り込み ソフトが自動 連携設定をすれば機械的に処理できる
勘定科目の仕訳(複式簿記の変換) ソフトが自動 過去の履歴から推測し、自動で借方・貸方を組み立てる
勘定科目候補の確認・修正 自分 業種・取引の実態を知っているのは自分だけ
現金で支払った経費の入力 自分 口座・カードを通らない取引は自動連携の対象外
試算表・決算書の税務上の整合性チェック 税理士 税法の解釈・判断が絡む
申告書の作成 税理士 誤りがあると加算税・延滞税のリスクがある

自分でやる範囲を「確認・修正」と「現金取引の入力」の2つに絞れば、複式簿記の知識がなくても月次の記帳は回せます。一方、試算表を決算書に落とし込む段階、申告書を作る段階は税務上の判断が伴うため、税理士に任せるのが基本線です。

最低限知っておくといい用語は3つだけ

複式簿記の全体像を勉強する必要はありませんが、ソフトの画面を理解するために、次の3つの用語だけは押さえておくと迷いにくくなります。

  • 勘定科目 — 取引の内容を分類するラベル。「通信費」「旅費交通費」「売上高」など。ソフトが提示する候補から選ぶ場面で必ず出てくる
  • 仕訳 — 1つの取引を借方・貸方に記録する行為そのもの。自分で作る必要はないが、ソフトの画面に「仕訳一覧」として表示されるため、名前だけは知っておくと迷わない
  • 試算表 — すべての仕訳を勘定科目ごとに集計した一覧表。月次で試算表を見れば、その月にどの科目にいくら使ったかが一目で分かる

この3つの用語の意味さえ分かっていれば、ソフトの画面で迷うことはほとんどなくなります。

帳簿の保存期間と保存方法

帳簿は作って終わりではなく、一定期間の保存義務があります。会社法432条2項では、会計帳簿およびその事業に関する重要な資料を、帳簿閉鎖の時から10年間保存しなければならないと定められています。あわせて、法人税法上の帳簿書類は、その事業年度の確定申告書の提出期限の翌日から原則7年間の保存が必要です(法人税法126条・150条の2、法人税法施行規則26条の3・59条・66条・67条)。さらに、青色申告書を提出した事業年度で欠損金(赤字)が生じた事業年度は、保存期間が10年間(平成30年4月1日前に開始した事業年度は9年間)に延びます(国税庁タックスアンサーNo.5930)。赤字を翌年度以降に繰り越す年ほど、帳簿の保存期間は長くなると覚えておいてください。

クラウド会計ソフトを使っていれば、データはソフト側にも一定期間残りますが、「ソフトの契約を解約したらデータも消える」ため、保存義務を果たすには自社でのバックアップやエクスポートも別途必要です。証憑(領収書・請求書)についても、電子帳簿保存法により、電子取引でやり取りしたデータは紙に印刷するのではなく電子データのまま保存することが義務化されています(電子帳簿保存法第7条)。保存にあたっては、改ざん防止の措置と検索できる状態の確保が求められますが、システムの整備が間に合わない等の「相当の理由」があると税務署長が認め、かつ税務調査の際に電子データのダウンロードの求めや出力書面の提示に応じられる場合には、これらの要件を満たさない形での保存も認められる猶予措置があります(事前申請は不要。国税庁「電子帳簿保存法一問一答【電子取引関係】」問83)。なお、電子データを紙に出力した書面だけを保存する方法は、令和6年1月1日以後の電子取引では認められません(同・問79)。制度改正が続いている分野のため、実施前に国税庁の最新情報または税理士に確認してください。

実体験について、正直に書きます

私の場合

正直に書きます。私自身は2026年に前職を退職し、起業準備を進めている当事者ですが、この記事を書いている時点では、まだ自分の会社を設立して法人の帳簿付けを実際に回した経験はありません。そのため、この記事は会社法・法人税法などの公式情報と、クラウド会計ソフトの一般的な機能説明をもとに整理した「これから使う仕組みの見取り図」であり、自分が実際に記帳をしてみてどう感じたか、という体験談ではありません。この点は正直に書いておきます。実際に法人を設立し、記帳・決算を一巡させた段階で、一次情報として別記事にまとめる予定です。

次にやること

まず、クラウド会計ソフト(freeeまたはマネーフォワードクラウド会計)に事業用の銀行口座・クレジットカードを連携させ、直近1か月分の入出金に自動で提示される勘定科目の候補を、実際に確認・修正する作業を1回やってみてください。 複式簿記の知識がなくても記帳が回るかどうかは、説明を読むより、この作業を1回試すほうが早く実感できます。


※本記事は2026年9月時点の会社法・法人税法・電子帳簿保存法の公式情報整理と、筆者個人の状況に基づくものです。制度は変更されることがあるため、実際の帳簿付け・保存の前には必ず税理士または所轄の税務署に最新情報を確認してください。

出典 - 会社法432条(会計帳簿の作成及び保存) - 法人税法126条(青色申告法人の帳簿書類) - 電子帳簿保存法第7条(電子取引データの電磁的記録による保存) - 国税庁タックスアンサーNo.5930「帳簿書類等の保存期間及び保存方法」(法人税法上の保存期間は原則7年・青色申告で欠損金が生じた事業年度は10年〈平成30年4月1日前開始事業年度は9年〉であること、根拠が法人税法126条・150条の2、法人税法施行規則26条の3・59条・66条・67条等であることを確認、nta.go.jp、2026年9月6日確認) - 国税庁「電子帳簿保存法一問一答【電子取引関係】」令和7年6月(問79・問83:令和5年度税制改正で設けられた猶予措置〈相当の理由+ダウンロードの求め・出力書面の提示等に応じられれば保存時に満たすべき要件が不要、事前申請不要〉、問89:出力書面の保存は電子帳簿保存法上の保存方法にならないことを原本PDFで確認、nta.go.jp、2026年9月6日確認)

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会社を辞めて、会社をつくる準備をしている当事者です

執行役員として6年、会社の管理部門を統括する立場にいました。2026年に退職し、いまは求職活動と並行して、会社を立ち上げる準備を検討している段階です。まだ登記はしていません。調べて確かめたことだけを書き、済んでいない手続きは「これから」と正直に書きます。体験のふりをしません。

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