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家族に給与を払って所得分散

この記事の結論
  • 個人事業(青色申告)は「青色事業専従者給与に関する届出書」を出せば、相当額を給与として全額必要経費にできる(所得税法57条・国税庁タックスアンサーNo.2075)
  • 白色申告は届出不要だが、事業専従者控除は配偶者86万円・その他親族50万円が上限で、かつ事業所得を専従者数+1で割った金額とのいずれか低い方(同上)
  • 法人が家族を役員にする場合は役員報酬の損金算入ルール(法人税法34条:定期同額給与・事前確定届出給与)に従う必要があり、経営に関与している親族は使用人でも「みなし役員」(法人税法施行令7条)とされ得る点が個人事業と大きく違う
この記事の内容
  1. 結論:個人事業は専従者、法人は役員報酬という別制度
  2. 比較表:専従者給与・事業専従者控除・役員報酬
  3. 個人事業主の場合:青色事業専従者給与
  4. 個人事業主の場合:白色申告の事業専従者控除
  5. 法人の場合:役員報酬として払う
  6. 注意点:家族を役員にすると「みなし役員」になることがある
  7. 実体験について、正直に書きます
  8. 次にやること

この記事は、配偶者や親族に事業を手伝ってもらっていて、給与を払うことで所得を分散し、世帯全体の税負担を抑えられないかと考えている個人事業主・一人社長に向けて書いています。 結論から言うと、家族への給与は「個人事業(青色申告・白色申告)」と「法人(役員報酬)」で制度がまったく別で、必要な届出も、認められる金額の考え方も違います。個人事業では「青色事業専従者給与」か「事業専従者控除」のどちらかを使い、法人では役員報酬の損金算入ルールと「みなし役員」の規定に注意する必要があります。

こんな状態ではありませんか
  • 家族に給与を払えば節税になると聞いたが、個人事業と法人で何が違うのか分からない
  • 「専従者給与」と「役員報酬」という言葉が両方出てきて、自分がどちらの制度を使うのか整理できていない
  • 家族を役員にすると税務上「役員」扱いされて、思わぬルールに縛られると聞いて不安

結論:個人事業は専従者、法人は役員報酬という別制度

家族(生計を一にする配偶者やその他の親族)に事業を手伝ってもらい給与を払う場合、事業の形態によって使う制度が変わります。

  • 個人事業主(青色申告): 「青色事業専従者給与に関する届出書」を税務署に出せば、届け出た範囲内で、支払った給与のうち相当と認められる金額を全額必要経費にできます(所得税法57条1項、国税庁タックスアンサーNo.2075)。
  • 個人事業主(白色申告): 届出は不要ですが、必要経費にできる金額に上限があります(事業専従者控除)。配偶者は最高86万円、その他の親族は1人最高50万円までで、かつ事業所得の金額によってはさらに低い金額に抑えられます(同上)。
  • 法人: 家族を役員にして役員報酬を払う場合は、法人税法34条の役員給与の損金算入ルール(定期同額給与・事前確定届出給与など)に従う必要があります。個人事業の「専従者」という枠組みはなく、家族であっても税務上は他の役員と同じ土俵で判定されます。

家族であることを理由に有利な扱いを受けられるのは個人事業の専従者給与制度だけで、法人では家族かどうかにかかわらず役員給与のルールがそのまま適用される、というのが両者の一番大きな違いです。

比較表:専従者給与・事業専従者控除・役員報酬

青色事業専従者給与 事業専従者控除(白色) 役員報酬(法人)
対象事業形態 個人事業主(青色申告) 個人事業主(白色申告) 法人
事前の届出 必要(青色事業専従者給与に関する届出書) 不要 事前確定届出給与を使う場合のみ必要
必要経費(損金)にできる金額 届け出た金額の範囲内で、相当と認められる額の全額 配偶者86万円・その他親族50万円が上限、かつ事業所得等の金額を(専従者の数+1)で割った額とのいずれか低い方 定期同額給与・事前確定届出給与等の要件を満たす部分。不相当に高額な部分は損金不算入(法人税法34条2項)
専従者側の課税 給与所得として課税(給与所得控除あり) 控除額がそのまま専従者本人の所得とみなされる 給与所得として課税(給与所得控除あり)
配偶者控除・扶養控除との関係 専従者給与を受け取る配偶者・親族は、その年は配偶者控除・扶養控除の対象にできない(所得税法2条1項33号・34号) 同左 給与額が扶養控除等の所得要件を超えれば対象外になる(専従者特有のルールではなく通常の扶養判定)

配偶者控除・扶養控除が使えなくなる点は、青色事業専従者給与・事業専従者控除のどちらでも共通です。給与額を決めるときは、この控除を失う分も含めて世帯全体の手取りで比較する必要があります。

個人事業主の場合:青色事業専従者給与

青色事業専従者給与を必要経費にするには、次の要件をすべて満たす必要があります(国税庁タックスアンサーNo.2075)。

  • 青色申告者と生計を一にする配偶者その他の親族への給与であること
  • その年の12月31日現在で15歳未満でないこと
  • その年を通じて6か月を超える期間、その事業に専ら従事していること
  • 「青色事業専従者給与に関する届出書」を税務署に提出していること
  • 届け出た金額の範囲内で支払われ、かつ労務の対価として相当な金額であること

届出書の提出期限は、青色事業専従者給与を必要経費にしようとする年の3月15日までです。ただしその年の1月16日以後に開業した人や、年の途中で新たに専従者ができた人は、開業の日・専従者ができた日から2か月以内に提出すれば間に合います(国税庁A1-10 青色事業専従者給与に関する届出手続)。給与の金額を変更する場合は「青色事業専従者給与に関する変更届出書」を別途提出します(国税庁A1-11)。

ここが要点

届出書に書いた金額は「上限」です。届出額を超えて支払った分は必要経費にできません。当初は控えめな金額で届け出て、あとから増やしたい場合は変更届出書を出す、という運用が実務では一般的です。

個人事業主の場合:白色申告の事業専従者控除

白色申告の場合は届出が不要な代わりに、必要経費にできる金額に上限があります。事業専従者控除額は、次の2つのうち低い方です(国税庁タックスアンサーNo.2075)。

  1. 事業専従者が配偶者であれば86万円、配偶者でなければ1人につき50万円
  2. この控除をする前の事業所得等の金額 ÷ (事業専従者の数 + 1)

例えば事業所得800万円で配偶者1人が専従者の場合、①は86万円、②は800万円÷2=400万円となり、低い方の86万円が控除額になります。事業所得がもっと小さい事業者ほど②の式で頭打ちになりやすく、白色申告の事業専従者控除は「事業の規模が小さいほど不利になりやすい」制度だと理解しておく必要があります。

事業専従者の要件(生計を一にする配偶者その他の親族、15歳以上、年間6か月超の専従)は青色事業専従者給与と同じです。

法人の場合:役員報酬として払う

法人が家族を役員にして報酬を払う場合、個人事業の「専従者」に相当する優遇制度はありません。役員報酬は、法人税法34条が定める次のいずれかの形でなければ、損金(経費)に算入できません。

  • 定期同額給与: 支給時期が1か月以下の一定期間ごとで、その事業年度中は原則として金額が同額であるもの(法人税法34条1項1号)
  • 事前確定届出給与: あらかじめ支給する時期と金額を定め、税務署に届け出たとおりに支給するもの(同項2号)。ボーナスのような臨時の支給を損金にしたい場合はこちらを使います
  • 業績連動給与: 非同族会社が利益に連動して支給するもの(同項3号)。同族会社は原則対象外ですが、非同族の法人に完全支配されている同族会社(大企業の完全子会社など)は例外的に対象になります。オーナー一族が株式を持つ中小企業・一人会社は、この例外に当たらないため実質的に対象外です

事前確定届出給与を使う場合、届け出た金額と実際の支給額が1円でも違うと、その支給額の全額が損金不算入になる点に注意が必要です(国税庁:事前確定届出給与に関する届出書を提出している法人が届出書の記載額と異なる支給をした場合の取扱い)。また、いずれの給与形態であっても、職務内容や利益状況に照らして不相当に高額と判断された部分の金額は損金に算入されません(法人税法34条2項)。

注意点:家族を役員にすると「みなし役員」になることがある

法人特有の注意点として、「みなし役員」の規定があります。登記上は役員でなくても、次の要件をすべて満たす同族会社の使用人は、税務上は役員として扱われます(法人税法施行令7条2号。同施行令71条1項5号イ〜ハの「役員」を「使用人」に読み替えて判定します)。

  • 同族会社の使用人であること
  • 次の株式保有割合の要件をすべて満たしていること(法人税法施行令71条1項5号)
    • 上位1〜3位までの株主グループの所有割合を順に合計していき、はじめて50%を超えるいずれかの株主グループに所属していること
    • その使用人が属する株主グループの所有割合が10%を超えていること
    • その使用人本人(と一定の親族等)の所有割合が5%を超えていること
  • 会社の経営に従事していること

一人社長が経営する法人で、配偶者が経理・営業などの実務に深く関与し、株式も一定割合を持っている場合、肩書が「従業員」であっても税務上はみなし役員と判定され、通常の給与ではなく役員給与のルール(定期同額給与等)が適用されることがあります。この判定は形式(肩書・雇用契約書)だけでなく、実際の経営への関与度合いで見られる点に注意してください。

ここが要点

「従業員として給与を払っているつもりが、税務調査でみなし役員と指摘され、定期同額給与の要件を満たしていない部分が損金不算入になった」というケースは、同族会社の税務調査でしばしば論点になります。家族に経営の重要な意思決定を任せている場合は、届出や支給方法をあらかじめ役員給与のルールに合わせておくほうが安全です。

実体験について、正直に書きます

私の場合

正直に書きます。私自身は2026年に前職を退職し、法人設立を準備検討している段階で、まだ登記を完了していません。そのため、家族に専従者給与や役員報酬を実際に支払った経験はなく、この記事は国税庁公式サイト(タックスアンサー・法令解釈通達)の調査に基づく整理です。制度の要件・届出期限・計算式は公式情報で確認していますが、実際に自分の事業でどの制度を選び、いくらの金額に落ち着いたかという一次情報は、まだ持ち合わせていません。設立後、実際に届出を出し支給を始めた段階で、具体的な金額とあわせて別記事にまとめる予定です。

次にやること

まず、自分の事業が個人事業のままか、法人にする予定かを確認してください。 個人事業で青色申告なら、給与を経費にしたい年の3月15日(または開業・専従者発生から2か月以内)までに「青色事業専従者給与に関する届出書」を税務署に提出する必要があります。白色申告のままなら届出は不要ですが、控除額は86万円・50万円と事業所得による按分のいずれか低い方に制限される点を前提に金額を考えてください。法人の場合は、役員報酬にするなら定期同額給与か事前確定届出給与のどちらの形にするかを事業年度開始前に決め、家族が経営に深く関与するならみなし役員に該当しないかもあわせて確認してください。


※本記事は2026年9月時点の国税庁公式サイト(タックスアンサー・法令解釈通達)の調査整理と、筆者個人の状況に基づくものです。制度は改正されることがあるため、実際に適用する際は最新の国税庁情報および税理士への確認をおすすめします。

出典 - 国税庁タックスアンサーNo.2075:青色事業専従者給与と事業専従者控除公式サイト(青色事業専従者給与の要件、事業専従者控除の上限額(配偶者86万円・その他親族50万円)と計算方法を確認。2026年9月1日確認) - 国税庁A1-10:青色事業専従者給与に関する届出手続公式サイト(届出書の提出期限(原則3月15日、開業等の場合は2か月以内)を確認。2026年9月1日確認) - 国税庁A1-11:青色事業専従者給与に関する変更届出手続公式サイト(給与額変更時の変更届出書の存在を確認。2026年9月1日確認) - 国税庁:事前確定届出給与に関する届出書を提出している法人が届出書の記載額と異なる支給をした場合の取扱い公式サイト(届出額と実際の支給額が異なる場合、全額が損金不算入になることを確認。2026年9月1日確認) - 法人税法施行令第7条(役員の範囲):ぜんぶ税研 法令集(条文原文抜粋で、2号が「同族会社の使用人のうち、第71条第1項第5号イからハまでの規定中『役員』を『使用人』と読み替えた場合に同号イからハまでの要件のすべてを満たしている者で、その会社の経営に従事しているもの」とみなし役員を定義していることを確認。2026年9月5日確認) - 法人税法施行令第71条(使用人兼務役員とされない役員):ぜんぶ税研 法令集(条文原文抜粋で、株式保有割合要件(上位株主グループ合計で50%超・所属グループ10%超・本人5%超)を確認。2026年9月5日確認) - 法人税法34条(役員給与の損金不算入):ぜんぶ税研 法令集で条文構成を確認。1項1号(定期同額給与)・2号(事前確定届出給与)・3号(業績連動給与、同族会社は完全支配関係がある法人に限定)、2項(不相当に高額な部分の損金不算入)であることを確認(2026年9月5日確認)

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会社を辞めて、会社をつくる準備をしている当事者です

執行役員として6年、会社の管理部門を統括する立場にいました。2026年に退職し、いまは求職活動と並行して、会社を立ち上げる準備を検討している段階です。まだ登記はしていません。調べて確かめたことだけを書き、済んでいない手続きは「これから」と正直に書きます。体験のふりをしません。

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