会社の書類の保存期間
- 法人税に関する帳簿書類は、確定申告書の提出期限の翌日から原則7年間保存する(法人税法施行規則59条・67条、国税庁No.5930)
- 欠損金額が生じた事業年度の帳簿書類は10年間保存する(法人税法57条、国税庁No.5930)
- 会計帳簿は閉鎖の時から10年間、計算書類は作成した時から10年間保存する(会社法432条2項、435条4項)
- 労働者名簿・賃金台帳・出勤簿は5年間保存が原則だが、当分の間は経過措置で3年間とされている(労働基準法109条、143条1項)
- 雇用保険の被保険者に関する書類は4年間、それ以外の雇用保険関係書類は2年間保存する(雇用保険法施行規則143条)
- 健康保険・厚生年金保険に関する書類は2年間保存する(健康保険法施行規則34条、厚生年金保険法施行規則28条)
この記事の内容
この記事は、会社を設立したあと、契約書や請求書、帳簿、労務関係の書類をいつまで残せばいいか分からない一人社長・中小企業の経営者に向けて書いています。 結論から言うと、保存期間は書類の種類ごとに法律が別々に定めていて、短いもので2年、長いもので10年とバラバラです。以下、税務・会社法・労務の3つに分けて、何を何年残すかと、実務ではどう管理すればいいかを整理します。
- 会社の書類はいつまで保管すればいいのか、まとめて分かる場所がない
- 契約書・請求書・帳簿・労務書類で保存期間が違うと聞いたが、具体的に何年か分からない
- 古い書類を捨てていいタイミングが分からず、とりあえず全部残している
結論:書類の種類ごとに保存期間が違う
会社の書類の保存期間は、1つの法律でまとめて決まっているわけではありません。税務、会社法、労働・社会保険のそれぞれの法律が、別々の目的で保存期間を定めています。まず全体像を一覧にします。
| 区分 | 対象書類の例 | 保存期間 | 根拠 |
|---|---|---|---|
| 税務(法人税) | 総勘定元帳、仕訳帳、請求書、領収書、契約書など | 原則7年(欠損金がある事業年度は10年) | 法人税法施行規則59条・67条(7年)、同26条の3(10年)、国税庁No.5930 |
| 会社法(帳簿) | 会計帳簿、その事業に関する重要な資料 | 閉鎖の時から10年 | 会社法432条2項 |
| 会社法(計算書類) | 貸借対照表、損益計算書などの計算書類・附属明細書 | 作成の時から10年 | 会社法435条4項 |
| 労働基準法 | 労働者名簿、賃金台帳、出勤簿など | 原則5年(当分の間は経過措置で3年) | 労働基準法109条、143条1項 |
| 雇用保険 | 被保険者資格の取得・喪失に関する書類 | 4年 | 雇用保険法施行規則143条 |
| 雇用保険 | 上記以外の雇用保険関係書類 | 2年 | 雇用保険法施行規則143条 |
| 健康保険・厚生年金保険 | 資格取得確認通知書、標準報酬決定通知書など | 2年 | 健康保険法施行規則34条、厚生年金保険法施行規則28条 |
一番短いのが健康保険・厚生年金保険関係の2年、一番長いのが会社法上の帳簿・計算書類の10年です。同じ契約書1枚でも、どの法律の視点で見るかによって求められる年数が変わります。
税務関係の書類|原則7年、欠損金があれば10年
法人は、帳簿とその事業に関して作成・受領した書類を、その事業年度の確定申告書の提出期限の翌日から7年間保存しなければなりません(法人税法施行規則59条・67条、国税庁No.5930)。対象になる帳簿は総勘定元帳、仕訳帳、現金出納帳、売掛金元帳、買掛金元帳、固定資産台帳、売上帳、仕入帳など、対象になる書類は棚卸表、貸借対照表、損益計算書、注文書、契約書、領収書などです(国税庁No.5930)。
ただし例外があります。欠損金額が生じた事業年度は、帳簿書類の保存期間が10年間になります(法人税法施行規則26条の3、国税庁No.5930)。これは、欠損金を翌事業年度以降に繰り越して控除する制度(青色欠損金の繰越控除、法人税法57条1項)があり、繰り越した年数分だけ根拠となる帳簿書類を提示できる必要があるためです。設立初期は赤字になりやすく、この10年ルールに該当する可能性が高いことに注意してください。
会社法上の帳簿・計算書類|10年
税務とは別に、会社法にも保存義務の規定があります。株式会社は、会計帳簿の閉鎖の時から10年間、その会計帳簿及びその事業に関する重要な資料を保存しなければなりません(会社法432条2項)。また、計算書類(貸借対照表・損益計算書など)及びその附属明細書は、作成した時から10年間保存する必要があります(会社法435条4項)。
起算日が違う点に注意してください。会計帳簿は「閉鎖の時から」、計算書類は「作成した時から」です。会計帳簿はその帳簿を使い終えた(締めた)タイミングが起点になり、計算書類はその書類を作った日が起点になります(会社法432条2項、435条4項)。
合同会社についても、会社法上、会計帳簿・計算書類に関する同様の規定が置かれています。株式会社・合同会社のどちらを選ぶかの判断基準そのものは、合同会社と株式会社どちらにするか|一人起業なら判断は3点だけで扱っています。
労務・社会保険関係の書類|2〜5年
従業員を雇う場合、労働・社会保険に関する書類の保存義務も発生します。年数は書類の種類によって2年から5年までばらつきがあります。
労働者名簿、賃金台帳、出勤簿などの労働関係書類は、労働基準法109条により原則5年間の保存が求められています。ただし現時点では、当分の間は経過措置により3年間とされています(労働基準法143条1項)。この経過措置がいつまで続くかは法律上「当分の間」としか定められていないため、実務では将来5年に統一される前提で残しておくのが安全です。
雇用保険に関する書類は、雇用保険法施行規則143条により、被保険者に関する書類(資格の取得・喪失に関する届出書類など)は4年間、それ以外の雇用保険関係書類は2年間の保存が求められています。健康保険・厚生年金保険に関する書類(資格取得確認通知書、被保険者標準報酬決定通知書など)は、健康保険法施行規則34条・厚生年金保険法施行規則28条により2年間の保存が必要です。
一人社長で従業員を雇わない場合、労務関係の書類自体が発生しないため、この区分は関係しません。従業員を雇うタイミングで初めて意識すればよい区分です。役員自身の社会保険については会社設立後の社会保険手続き|一人社長でも加入は義務で扱っています。
契約書はどの区分に入るか
質問として多いのが「契約書は何年残せばいいか」です。契約書は税務・会社法のどちらの区分にも関係する書類で、単一の答えがあるわけではありません。
税務の側面では、契約書は法人税法上の「取引に関して作成・受領した書類」に当たり、原則7年(欠損金がある事業年度は10年)の保存対象です(国税庁No.5930)。会社法の側面では、契約書は「その事業に関する重要な資料」に含まれると解されており、会計帳簿と同じく10年間保存すべき対象として扱われます(会社法432条2項)。
つまり契約書は、税務側で7年、会社法側で10年という2つの年数が同時にかかってくる書類です。この場合にどちらを基準にするかは次の項で整理します。
実務では「一番長い年数」に合わせる
ここまでの区分ごとの年数を見ると、同じ会社の中で2年・4年・7年・10年という異なる保存期間の書類が混在することになります。実務上、書類の種類ごとに保存期限を個別管理するのは手間がかかるため、多くの税理士事務所・社労士事務所が「区分ごとに管理できないなら、関係する法律のうち一番長い年数に合わせて残す」という考え方を紹介しています(法律上の義務ではなく、複数の専門家サイトで共通して見られる実務上の目安。2026年9月確認)。
たとえば契約書であれば、税務の7年ではなく会社法の10年に合わせて残す、という判断です。これは義務ではなく、書類の取り違えや期限管理ミスを防ぐための運用上の工夫として紹介されているものです。何年残すべきかの最終判断に迷う場合は、顧問税理士・社労士に確認してください。
起算日を間違えると期限を誤る
保存期間の年数だけでなく、起算日(いつから数えるか)を間違えると、実際には期限が来ていない書類を誤って廃棄してしまう可能性があります。区分ごとの起算日を改めて整理します。
| 区分 | 起算日 |
|---|---|
| 税務関係の帳簿書類 | 確定申告書の提出期限の翌日 |
| 会社法上の会計帳簿 | 帳簿の閉鎖の時 |
| 会社法上の計算書類 | 計算書類を作成した時 |
| 労働基準法関係の書類 | 書類ごとに定められた起算日(労働者名簿は労働者の死亡・退職等の日など) |
| 雇用保険・健康保険・厚生年金保険関係の書類 | その完結の日 |
「完結の日」「閉鎖の時」「作成した時」は、いずれも書類を作った日ではなく、その書類の役割が終わった日を指す点が共通しています。単純に発行日から数えると、期限を早く見積もりすぎてしまう場合があるため注意してください。
実体験について、正直に書きます
正直に書きます。私自身は2026年に前職を退職し、合同会社の設立準備を進めている当事者ですが、この記事を書いている時点ではまだ会社を登記しておらず、実際に何年も書類を保存し続けた経験はありません。設立後、最初の確定申告や決算を終えたタイミングで、どの書類をどう区分して管理しているかは、経験した段階でこの記事に追記する予定です。
次にやること
まず、いま手元にある会社関係の書類を「税務」「会社法」「労務」の3区分に仕分けし、区分ごとの保存期間が分かるように控えておいてください。 契約書のようにどちらの区分にも当たる書類は、一番長い年数(会社法の10年)に合わせて残すかどうかを、顧問税理士・社労士と一緒に判断してください。設立後に税務署へ出す書類そのものの一覧は、設立後に税務署へ出す書類一覧|期限順チェックリストで整理しています。
※本記事は2026年9月2日時点で調査した内容に基づくものです。契約書の保存期間の実務上の目安(区分ごとに管理できない場合は一番長い年数に合わせる)は法律上の義務ではなく専門家サイトで紹介されている運用上の工夫であり、個別の判断は顧問税理士・社労士にご確認ください。
出典 - 法人税法施行規則 第59条・第67条(帳簿書類の整理保存/整理保存等) - 法人税法施行規則 第26条の3(欠損金に係る帳簿書類の保存/10年保存の根拠) - 法人税法 第57条第1項(青色申告書を提出した事業年度の欠損金の繰越し) - No.5930 帳簿書類等の保存期間|国税庁(保存期間7年・欠損金がある場合10年、対象帳簿・書類の種類を確認) - 会社法 第432条第2項(会計帳簿の保存) - 会社法 第435条第4項(計算書類等の保存) - 労働基準法 第109条(記録の保存)、第143条第1項(経過措置) - 雇用保険法施行規則 第143条(書類の保管義務) - 健康保険法施行規則 第34条(書類の保存) - 厚生年金保険法施行規則 第28条(書類の保存)