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初めて人を雇うときの手続き一覧

この記事の結論
  • 労働条件の明示は口頭ではなく書面(電子含む)での交付が原則で、労働基準法15条1項・同法施行規則5条に絶対的明示事項が定められている
  • 労働保険の保険関係成立届は、労働者を雇い入れた日(保険関係が成立した日)から10日以内に労働基準監督署へ提出する義務がある(労働保険徴収法4条の2第1項)
  • 概算保険料申告書は保険関係成立日から50日以内に提出・納付する(労働保険徴収法15条2項)
  • 雇用保険適用事業所設置届は10日以内、被保険者資格取得届は雇い入れた日の属する月の翌月10日までにハローワークへ提出する(雇用保険法施行規則6条ほか)
  • 健康保険・厚生年金保険の被保険者資格取得届は、対象者を雇い入れた日から5日以内に提出する(健康保険法48条、厚生年金保険法27条)
この記事の内容
  1. 結論:手続きは3系統・期限は5日〜50日でバラバラ
  2. 雇う前にやること:労働条件通知書の交付
  3. 労災保険の手続き:保険関係成立届と概算保険料申告書
  4. 雇用保険の手続き:適用事業所設置届と資格取得届
  5. 社会保険の手続き:従業員分の資格取得届
  6. 個人事業主の場合は加入義務の範囲が変わる
  7. 毎年続く事務も1つだけ覚えておく
  8. 実体験について、正直に書きます
  9. 次にやること

この記事は、会社または個人事業で初めて従業員を雇うことになり、何をいつまでにどこへ届け出ればいいのか分からない経営者に向けて書いています。 結論から言うと、初めて人を雇うときに発生する手続きは、大きく分けて「労働条件の明示」「労働保険(労災保険・雇用保険)」「社会保険(健康保険・厚生年金保険)」の3系統です。それぞれ提出先も期限もバラバラなので、以下、期限が短いものから順に整理します。

こんな状態ではありませんか
  • 初めて従業員を雇うことになったが、何から手をつければいいのか分からない
  • 労働保険と社会保険の違いがあいまいで、両方必要なのか一方でいいのか判断できない
  • 提出期限が書類ごとに違うと聞いて、うっかり過ぎてしまわないか不安

結論:手続きは3系統・期限は5日〜50日でバラバラ

初めて従業員を雇うときに必要な手続きを、期限が短い順に一覧にします。

手続き 提出先 期限 根拠
労働条件通知書の交付 (提出先なし。本人へ交付) 雇い入れ時(契約締結時) 労働基準法15条1項
健康保険・厚生年金保険 被保険者資格取得届 年金事務所 雇い入れた日から5日以内 健康保険法48条、厚生年金保険法27条
労働保険 保険関係成立届 労働基準監督署 保険関係が成立した日から10日以内 労働保険徴収法4条の2第1項
雇用保険 適用事業所設置届 ハローワーク 設置の日の翌日から10日以内 雇用保険法施行規則第141条
労働保険 概算保険料申告書 労働基準監督署・労働局・金融機関 保険関係が成立した日から50日以内 労働保険徴収法15条2項
雇用保険 被保険者資格取得届 ハローワーク 雇い入れた日の属する月の翌月10日まで 雇用保険法施行規則6条

一番期限が短いのは社会保険の資格取得届(5日以内)、次いで労働保険の保険関係成立届と雇用保険の適用事業所設置届(どちらも10日以内)です。 「まず何をすればいいか分からない」状態のまま数日が過ぎると、この2つの期限をあっさり超えます。以下、それぞれの中身を順番に説明します。

雇う前にやること:労働条件通知書の交付

保険の届出より先に発生するのが、労働条件の明示です。使用者は労働契約を結ぶ際、賃金・労働時間などの労働条件を労働者に明示しなければならないと労働基準法15条1項に定められており、同法施行規則5条は「絶対的明示事項」として、労働契約の期間、就業の場所・従事する業務の内容、始業・終業の時刻、賃金の決定・計算・支払方法などを列挙しています。

明示は口頭ではなく、書面(労働者が希望すればFAXやメール、SNSメッセージ等の電子的方法も可)での交付が原則です。決まった様式はなく、労働条件通知書という名称でなくても、必要事項が満たされていれば雇用契約書と兼ねる形でも構いません。

ここが要点

これは保険の手続きより先、雇用契約を結ぶ時点でやることです。「保険の届出は入社後でいい」と後回しにする人はいませんが、労働条件通知書は「口約束で働き始めてもらい、後で書面を作る」という順番になりがちです。義務違反になるため、契約前に準備しておいてください。

労災保険の手続き:保険関係成立届と概算保険料申告書

労働者を1人でも使用する事業は、業種や規模を問わず、原則として労災保険の適用事業になります(労働者災害補償保険法3条1項)。農林水産業の一部で個人経営・常時労働者5人未満の場合など、暫定任意適用事業として扱われる例外はありますが、一般的な事業であれば「労働者を雇った時点で強制加入」と考えて差し支えありません。

必要な届出は2つです。

  1. 保険関係成立届:労働者を雇い入れて保険関係が成立した日から10日以内に、労働基準監督署へ提出(労働保険徴収法4条の2第1項)
  2. 概算保険料申告書:保険関係が成立した日から50日以内に、その年度に支払う見込みの賃金総額をもとに概算した保険料を申告・納付(労働保険徴収法15条2項)

保険関係成立届を出さないまま50日が経過すると、概算保険料申告書の期限も同時に過ぎることになります。実務上は、保険関係成立届を先に出してから概算保険料申告書に進む流れが一般的です。

雇用保険の手続き:適用事業所設置届と資格取得届

雇用保険も、労働者を1人でも雇用する事業は原則として適用事業になります(雇用保険法5条1項)。労災保険と同様、農林水産業の一部に暫定任意適用の例外はありますが、一般的な事業では労働者を雇った時点で加入対象です。

必要な届出は2つです。

  1. 雇用保険適用事業所設置届:事業所が雇用保険の適用を受けることになった日の翌日から10日以内に、ハローワークへ提出(雇用保険法施行規則第141条)
  2. 雇用保険被保険者資格取得届:雇い入れた日の属する月の翌月10日までに、ハローワークへ提出(雇用保険法施行規則6条)

適用事業所設置届は事業所そのものの登録、資格取得届は個々の従業員を被保険者として登録する届出という違いがあります。初めて人を雇うときは両方が必要ですが、2人目以降を雇うときは資格取得届だけで済みます。

ここが要点

週の所定労働時間が20時間未満などの短時間労働者は、雇用保険の加入対象外になる場合があります。パート・アルバイトを雇う場合は、資格取得届を出す前に加入要件(所定労働時間・雇用見込み期間)を確認してください。

社会保険の手続き:従業員分の資格取得届

法人の事業所は、代表者一人だけであっても健康保険・厚生年金保険の強制適用事業所です(厚生年金保険法6条1項2号)。この点は会社設立後の社会保険手続き|一人社長でも加入は義務で扱った通りで、法人であれば会社を設立した時点で、すでに新規適用届と代表者自身の資格取得届は済んでいるはずです。

今回、従業員を新たに雇う場合に必要なのは、その従業員分の被保険者資格取得届です。雇い入れた日から5日以内に、管轄の年金事務所へ提出します(健康保険法48条、厚生年金保険法27条)。代表者一人の会社が初めて従業員を雇うケースでは、「事業所としての新規適用」はすでに終わっているので、「従業員個人を被保険者として追加登録する」届出だけが新たに発生する、と理解しておくと混乱しません。

パート・アルバイトの場合は、労働時間・労働日数が正社員の4分の3以上あるかどうかなどの基準で加入要否が変わります。この判定は個別の雇用条件によって変わるため、対象者ごとに年金事務所またはハローワークの案内で確認することをおすすめします。

個人事業主の場合は加入義務の範囲が変わる

ここまでの労働保険(労災保険・雇用保険)は、法人・個人事業を問わず、労働者を1人でも雇えば原則として加入義務が発生します。一方、社会保険(健康保険・厚生年金保険)は個人事業主の場合に扱いが変わります。

労働保険(労災・雇用保険) 社会保険(健康保険・厚生年金)
法人 従業員1人でも加入義務 代表者1人でも強制適用
個人事業主 従業員1人でも加入義務(暫定任意適用の例外あり) 常時従業員5人以上、かつ強制適用業種(下記)に該当する場合に強制適用。5人未満または非該当業種は任意加入

個人事業で従業員が5人未満の場合、または農林漁業・飲食店・旅館業・理美容業などの一部サービス業(非該当業種)にあたる場合は、社会保険への加入は強制ではありません。ただし労働保険は業種を問わず加入義務が発生する点は法人と同じなので、「個人事業だから保険関係の届出は要らない」と考えるのは誤りです。

注意が必要なのは士業です。 弁護士・税理士・社会保険労務士・行政書士・司法書士などの個人事務所は、かつては非該当業種でしたが、2022年10月1日の法改正で強制適用業種に追加されました(厚生年金保険法6条1項2号、日本年金機構「健康保険・厚生年金保険の適用事業所における適用業種(士業)の追加」)。士業の個人事務所で常時5人以上を雇用している場合は、他の非該当業種とは違い、社会保険への加入が強制になります。

毎年続く事務も1つだけ覚えておく

初めて人を雇った年に提出する概算保険料申告書は、その年限りの手続きではありません。労働保険は毎年6月1日から7月10日の間に、前年度の確定保険料を精算しつつ、新年度の概算保険料を申告・納付する「年度更新」という事務が続きます。初年度の手続きが終わったら、「来年も7月10日が来る」ということだけ、この段階で頭に入れておいてください。

実体験について、正直に書きます

私の場合

正直に書きます。私自身は2026年に前職を退職し、合同会社の設立準備を進めている当事者ですが、この記事を書いている時点ではまだ従業員を雇っておらず、代表者一人の状態です。そのため、この記事の内容は実際に届出を出した記録ではなく、法令とハローワーク・日本年金機構等の公式案内をもとにした「調査した範囲では」の整理です。

実際に人を雇う段階になったら、保険関係成立届から資格取得届まで実際にかかった日数や、窓口・電子申請どちらを選んだかを、この記事に実体験として追記します。

次にやること

まず、雇用契約を結ぶ前に労働条件通知書を用意してください。 そのうえで、雇い入れた日を起点に「5日以内(社会保険の資格取得届)」「10日以内(労働保険の保険関係成立届・雇用保険の適用事業所設置届)」の2つの期限をカレンダーに書き込んでおくと、あとから慌てずに済みます。概算保険料申告書(50日以内)と雇用保険の資格取得届(翌月10日まで)は、先の2つを片付けたあとに進めれば十分間に合います。判断に迷う項目(加入対象かどうかの判定など)は、労働基準監督署・ハローワーク・年金事務所の窓口、または社会保険労務士に事前に確認してください。


※本記事は2026年9月2日時点で調査した内容に基づくものです。加入要否・提出書類・手続き方法は個別の雇用条件や業種、制度改正により変わることがあるため、実際の手続き前には必ず管轄の労働基準監督署・ハローワーク・年金事務所に最新情報を確認してください。

出典 - 労働基準法第15条第1項、同法施行規則第5条(労働条件の明示) - 労働者災害補償保険法第3条第1項(労災保険の適用事業) - 労働保険の保険料の徴収等に関する法律第4条の2第1項(保険関係成立届・10日以内) - 労働保険の保険料の徴収等に関する法律第15条第2項(概算保険料の申告・納付・50日以内) - 雇用保険法第5条第1項(雇用保険の適用事業) - 雇用保険法施行規則第6条(被保険者資格取得届・翌月10日まで) - 雇用保険法施行規則第141条(適用事業所設置届・設置の日の翌日から10日以内) - 健康保険法第48条、厚生年金保険法第27条(被保険者資格取得届・5日以内) - 厚生年金保険法第6条第1項第2号(強制適用事業所)、日本年金機構「適用事業所と被保険者」「任意適用申請の手続き」(個人事業主の強制適用要件) - 日本年金機構「健康保険・厚生年金保険の適用事業所における適用業種(士業)の追加」(令和4年10月1日施行・士業の強制適用業種への追加)

当サイト運営者

会社を辞めて、会社をつくる準備をしている当事者です

執行役員として6年、会社の管理部門を統括する立場にいました。2026年に退職し、いまは求職活動と並行して、会社を立ち上げる準備を検討している段階です。まだ登記はしていません。調べて確かめたことだけを書き、済んでいない手続きは「これから」と正直に書きます。体験のふりをしません。

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