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売上の計上時期と期ズレ

この記事の結論
  • 売上の計上時期は、資産の引渡し又は役務の提供の日の属する事業年度で決まるのが原則で、入金日や請求書の発行日では決まらない(法人税法22条の2第1項)
  • 棚卸資産の引渡しの日は、出荷日・検収日等のうち法人が継続して収益計上に用いている日によるとされ、期末だけ基準を変えることは認められない(法人税基本通達2-1-2)
  • 請負契約は原則として引渡し等の日の属する事業年度に収益計上するが、一般に公正妥当と認められる会計処理の基準に従い、引渡しの日に近接する日の属する事業年度の確定決算で収益経理した場合はその事業年度の益金算入が認められる(法人税法22条の2第2項)
  • 履行義務が一定期間にわたり充足される取引(保守契約等)は、その期間の各日が役務の提供の日に該当し、期間に応じて収益を分けて計上する(法人税基本通達2-1-21の2)
この記事の内容
  1. 結論:売上を計上する事業年度は何で決まるか
  2. 「入金日」でも「請求書の日付」でもない、という前提
  3. 物を売る仕事の計上時期|引渡しの日をどう決めるか
  4. 請負・受託業務の計上時期|原則は引渡し等の日
  5. 具体例で確認する|3月納品・4月請求・5月入金のケース
  6. 例外:継続的な役務提供は期間で按分する
  7. 計上時期を間違えたまま決算・申告してしまったら
  8. 実体験について、正直に書きます
  9. 次にやること

この記事は、納品・請求・入金の日付が決算をまたいでずれる仕事をしていて、売上をどちらの事業年度に計上すればいいのか分からない一人社長・小規模法人の経営者に向けて書いています。 結論を先に言うと、売上を計上する事業年度は「入金があった日」でも「請求書を発行した日」でもなく、原則として「資産の引渡しの日」または「役務の提供が完了した日」で決まります(法人税法22条の2第1項)。3月に納品したのに入金は5月、というだけでは翌期の売上にはなりません。以下、順に整理します。

こんな状態ではありませんか
  • 3月末に納品した仕事の入金が4月や5月にずれた場合、どちらの期の売上にすればいいのか分からない
  • 請求書を発行した日と、実際に仕事を終えた日がずれているとき、どちらを基準にすればいいのか分からない
  • 保守契約やサブスク型の継続的な仕事の売上を、月ごとにどう区切って計上すればいいのか分からない

結論:売上を計上する事業年度は何で決まるか

法人の売上(益金)は、資産の販売等に係る目的物の引渡しの日、または役務の提供の日の属する事業年度に計上するのが原則です(法人税法22条の2第1項)。これは「権利確定主義」と呼ばれる考え方で、お金が実際に動いたかどうかではなく、仕事そのものが完了したかどうかで計上時期を判定します。

ここが要点

「入金があったかどうか」は、売上を計上する事業年度の判定材料にはなりません。 3月末までに納品・引渡しが終わっていれば、入金が翌期の4月や5月であっても、売上は3月を含む期(前期)に計上します。逆に、入金だけ3月末までにあっても、引渡しが翌期にずれ込んでいれば、売上は翌期の計上になります。

「入金日」でも「請求書の日付」でもない、という前提

一人社長で経理を自分でやっている場合、通帳に入金があった日をそのまま売上として記帳してしまいがちです。しかし法人税法上の売上計上基準は、現金の動きではなく、資産の引渡しまたは役務提供という「仕事の完了」を基準にしています(法人税法22条の2第1項)。

同様に、請求書の発行日も直接の基準にはなりません。請求書は「いくら請求するか」を相手に伝える書類であって、いつの事業年度の売上かを決める書類ではありません。実務上、請求書の発行日と納品・完了の日が近いことが多いため混同されやすいですが、この2つは本来別のものです。

物を売る仕事の計上時期|引渡しの日をどう決めるか

商品や製品など、棚卸資産を販売する仕事の場合、売上はその資産の引渡しがあった日の属する事業年度に計上します(法人税法22条の2第1項)。ただし「引渡しの日」がいつを指すかは、取引の内容によって複数の解釈があり得ます。

国税庁の通達では、出荷した日、船積みをした日、相手方に着荷した日、相手方が検収した日、相手方において使用収益できることとなった日など、その資産の種類・性質や契約内容に応じて引渡しの日として合理的と認められる日のうち、法人が継続して収益計上に用いている日によるものとされています(法人税基本通達2-1-2)。

ここが要点

重要なのは、どの基準を選ぶかではなく、選んだ基準を継続して使い続けることです。 出荷基準を採用している場合、期中の取引はすべて出荷基準で計上している以上、決算をまたぐ期末の取引だけ検収基準に切り替えて計上時期を後ろにずらす、といった扱いは認められません(法人税基本通達2-1-2)。

請負・受託業務の計上時期|原則は引渡し等の日

Web制作・システム開発・コンサルティングなど、成果物や役務の完了をもって報酬が発生する請負契約についても、原則として引渡し等の日の属する事業年度に収益を計上します(法人税法22条の2第1項)。これは物販の場合と同じ「仕事が完了した日」を基準にする考え方です。

一方で、一般に公正妥当と認められる会計処理の基準に従い、契約の効力が生じる日など、引渡しの日に近接する日の属する事業年度の確定した決算において収益として経理した場合には、その近接する日の属する事業年度の益金の額に算入することも認められています(法人税法22条の2第2項)。これは、検収の連絡を待つより前に、出荷や作業完了などの近い日付で継続的に計上している場合に、その計上方法を認める特例であって、逆に検収を先延ばしにして計上時期を遅らせてよいという意味ではありません。

仕事の完了に関わる日付 売上計上の基準になるか
資産の引渡しの日・役務提供が完了した日 なる(原則。法人税法22条の2第1項)
引渡しの日に近接する日(出荷日等、継続適用が前提) なる場合がある(特例。法人税法22条の2第2項)
請求書の発行日 ならない
入金があった日 ならない

具体例で確認する|3月納品・4月請求・5月入金のケース

3月決算の法人で、次のようなスケジュールの仕事があったとします。

  1. 3月28日に成果物を納品し、相手方の検収も同日に完了した
  2. 請求書は4月5日に発行した
  3. 入金は5月10日にあった

この場合、仕事が完了した日(引渡し・検収の日)は3月28日であり、3月を含む事業年度の売上として計上します(法人税法22条の2第1項)。請求書の発行日が4月、入金が5月であっても、それらは売上計上の事業年度を左右しません。

逆に、次のように完了そのものが翌期にずれ込むケースもあります。

  1. 3月20日に作業を開始し、3月末時点ではまだ制作途中だった
  2. 最終的な検収・引渡しが4月10日に完了した
  3. 請求書は4月中に発行し、入金も4月中にあった

このケースでは、仕事の完了(引渡し・検収)が4月であるため、売上は翌期(4月を含む事業年度)の計上になります。3月中に前倒しで売上計上することはできません。

例外:継続的な役務提供は期間で按分する

保守契約やサブスクリプション型のサービスなど、履行義務が一定の期間にわたって果たされていく取引については、話が変わります。この種の取引では、履行に着手した日から引渡し等の日までの期間において、履行義務が充足されていくそれぞれの日が役務の提供の日に該当し、その期間の経過に応じて収益をそれぞれの事業年度に分けて計上します(法人税基本通達2-1-21の2)。

たとえば、4月から翌年3月までの12か月分のサーバー保守契約を3月に一括で受注・請求した場合、契約金額の全額を3月を含む事業年度の売上にするのではなく、実際にサービスを提供した期間に応じて各月の売上として按分するのが原則的な扱いです。一括受注型の契約を扱っている場合、この按分計算を後回しにしていると、決算のタイミングで一気に修正作業が発生しやすくなります。

計上時期を間違えたまま決算・申告してしまったら

売上の計上時期を誤ったまま申告してしまうと、正しくは前期の売上であるべきものを当期に計上していた(またはその逆)という形で、事業年度間の益金の配分が実態とずれた状態になります。気づいた時点でどう是正するかは、誤りの内容・金額・気づいた時期によって扱いが変わるため、この記事では一般論以上のことは書きません。計上時期の誤りに気づいた場合は、顧問税理士に個別に相談することをお勧めします。

実体験について、正直に書きます

私の場合

正直に書きます。私自身は2026年に前職を退職し、合同会社の設立準備を進めている当事者ですが、この記事を書いている時点ではまだ登記が完了しておらず、決算をまたぐ仕事の売上計上を自分の会社で実際に判断した経験はありません。そのため、この記事は自分が判断を経験した記録ではなく、法人税法22条の2・同基本通達の一次情報を調査して整理したものです。事業を開始し、決算月をまたぐ仕事が実際に発生した段階で、どの日を基準に計上したか、迷った点があればこの記事に追記します。

次にやること

まず、決算をまたぐ可能性がある進行中の仕事について、「納品・検収がいつ完了する予定か」を一覧にしてください。 完了日が決算日以前であれば当期の売上、決算日より後であれば翌期の売上になるのが原則です。請求書の発行日や入金予定日は、この判定には使いません。保守契約やサブスク型のように期間で提供する仕事がある場合は、契約金額を一括計上せず、提供期間に応じて按分する必要がないかを確認してください。判断に迷う取引がある場合は、顧問税理士に個別の日付と契約内容を示して確認することをお勧めします。


※本記事は2026年9月6日時点で確認した法令・通達・国税庁公式情報と、筆者個人の状況に基づくものです。売上の計上時期の判定は、取引の内容・契約形態・会計処理の継続状況によって個別に変わるため、実際の判断は顧問税理士にご確認ください。

出典 - 法人税法 第22条の2 第1項(資産の販売等に係る収益の額を、その目的物の引渡し又は役務の提供の日の属する事業年度の益金の額に算入する旨) - 法人税法 第22条の2 第2項(一般に公正妥当と認められる会計処理の基準に従い、引渡し等の日に近接する日の属する事業年度の確定した決算において収益として経理した場合の益金算入の特例) - 法人税基本通達 2-1-2|国税庁(棚卸資産の引渡しの日の判定。出荷日・検収日等のうち継続して収益計上に用いている日による旨) - 法人税基本通達 2-1-21の2|国税庁(履行義務が一定の期間にわたり充足されるものに係る収益の帰属の時期) - 「収益認識に関する会計基準」への対応について|国税庁(平成30年5月)

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会社を辞めて、会社をつくる準備をしている当事者です

執行役員として6年、会社の管理部門を統括する立場にいました。2026年に退職し、いまは求職活動と並行して、会社を立ち上げる準備を検討している段階です。まだ登記はしていません。調べて確かめたことだけを書き、済んでいない手続きは「これから」と正直に書きます。体験のふりをしません。

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