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労働保険の年度更新

この記事の結論
  • 労働保険の年度更新は毎年6月1日から7月10日までの間に、前年度の確定保険料の精算と新年度の概算保険料の申告・納付を同時に行う手続きである
  • 確定保険料の申告・納付は労働保険徴収法第19条、概算保険料の申告・納付は同法第15条に定められている
  • 概算保険料が40万円以上(労災保険・雇用保険のどちらか一方のみの場合は20万円以上)であれば、労働保険徴収法第18条・同法施行規則第27条に基づき3回に分割して納付できる(延納)
  • 申告漏れや申告額の不足が発覚し政府が保険料額を認定決定した場合、不足額の10%が追徴金として徴収される(労働保険徴収法第21条)
  • 建設業などは労災保険と雇用保険の保険関係を分けて申告する「二元適用事業」に区分され、一般の事業(一元適用事業)とは年度更新の進め方が異なる
この記事の内容
  1. 結論:年度更新は「前年度の精算」と「新年度の概算」を同時にやる事務
  2. なぜ確定保険料と概算保険料の両方が必要なのか
  3. 対象になるのは誰か:一元適用事業と二元適用事業
  4. 申告書の中身:賃金総額×保険料率で計算する
  5. 一括で払うか、延納(分割納付)にするか
  6. 期限を過ぎたらどうなるか:認定決定と追徴金
  7. 電子申請でやる場合
  8. 初めて雇うときの手続き(083)との違い
  9. 実体験について、正直に書きます
  10. 次にやること

この記事は、従業員を1人でも雇っている会社・個人事業主に向けて書いています。 「初めて人を雇うときの手続きは終わったが、次に何をすればいいか分からない」「6月頃に労働保険の書類が届いたが、何をどうすればいいか分からない」という人に向けて、結論から言うと、毎年6月1日から7月10日までの間に、前年度の労働保険料の過不足を精算しつつ、新年度分を概算で申告・納付する「年度更新」という事務が発生します。以下、何をいつまでにどうやるかを順番に整理します。

こんな状態ではありませんか
  • 労働保険は雇った年に手続きすれば終わりだと思っていたが、毎年何かやることがあると聞いて不安
  • 「年度更新」という言葉は聞いたことがあるが、確定保険料と概算保険料の違いが分からない
  • 期限(7月10日)を過ぎたらどうなるのか、何が起きるのか分からないまま放置している

結論:年度更新は「前年度の精算」と「新年度の概算」を同時にやる事務

労働保険(労災保険・雇用保険)は、年度の途中で正確な保険料額が確定するわけではなく、年度が始まる前に「今年はこれくらい賃金を払う見込み」という概算額で保険料を先に納めておき、年度が終わったあとに実際に支払った賃金総額をもとに確定額を計算して過不足を精算する仕組みになっています。この「前年度分の確定精算」と「新年度分の概算申告」を、毎年決まった時期にまとめて行うのが年度更新です。

項目 内容 根拠
実施時期 毎年6月1日から7月10日まで 労働保険徴収法第15条・第19条
やること (1)前年度の確定保険料の申告・精算 (2)新年度の概算保険料の申告・納付 同上
提出先 労働基準監督署・労働局・金融機関(電子申請も可) -
対象 労働保険(労災保険・雇用保険)の保険関係が成立している事業すべて -

新年度分の概算保険料申告は、初めて人を雇ったときに保険関係成立から50日以内に提出する概算保険料申告書と同じ労働保険徴収法第15条に基づく手続きです。 ただし年度更新の場合は期限が毎年7月10日という固定の日付になる点が、初回(成立から50日以内)とは異なります。初めて人を雇うときの手続き一覧で触れた通り、初年度の概算保険料申告が終わったら、翌年以降は毎年この時期に年度更新が続くことになります。

なぜ確定保険料と概算保険料の両方が必要なのか

労働保険料は「(前年度に実際に支払った賃金総額)×(保険料率)」で確定額が決まりますが、この賃金総額は年度が終わってみないと確定しません。一方で保険料は先払いが原則のため、年度が始まる時点では「今年はこれくらい賃金を払うだろう」という見込み額(概算保険料)で先に納付しておく必要があります。

そのため、年度更新のタイミングでは次の2つの計算を同時に行います。

  1. 前年度分の確定保険料:前年度に実際に支払った賃金総額をもとに正確な保険料額を計算し、すでに納めた概算保険料との差額を精算する(労働保険徴収法第19条)
  2. 新年度分の概算保険料:今年度に支払う見込みの賃金総額をもとに、あらためて概算額を計算して申告・納付する(労働保険徴収法第15条)

前年度に概算で多く払いすぎていれば新年度分から差し引かれ、少なければ不足分を追加で納付します。賃金総額が前年とほぼ変わらない会社であれば、実務上は「概算=確定」に近い金額になることが多く、精算額もわずかで済むケースが一般的です。

対象になるのは誰か:一元適用事業と二元適用事業

労働保険の保険関係が成立している事業は、原則としてすべて年度更新の対象です。ただし、労災保険と雇用保険をまとめて申告するか、分けて申告するかで、事業は2種類に区分されます。

区分 内容 該当例
一元適用事業 労災保険と雇用保険の保険関係をまとめて1本で申告・納付する 小売業・製造業・サービス業など、一般的な事業の大半
二元適用事業 労災保険と雇用保険の保険関係を別々に申告・納付する 建設業、農林水産業の一部、港湾運送業など

建設業が二元適用事業になっているのは、下請け構造という業態の特殊性が理由です。労災保険は現場(工事)ごとに元請け業者が一括してかける一方、雇用保険は会社単位(本社)で処理するため、2つの保険関係を1本にまとめられません。二元適用事業に該当する場合、年度更新でも労災保険分・雇用保険分をそれぞれ別の様式で申告することになります。

ここが要点

自社がどちらに該当するかは、保険関係成立届を出した際に労働基準監督署・ハローワークから交付された書類(適用事業所番号や保険関係成立届の控え)で確認できます。一元適用事業だと思い込んで一本の申告書だけ提出すると、片方の保険料が未申告のままになるおそれがあるため、初めての年度更新では自社の区分を確認してから進めてください。

申告書の中身:賃金総額×保険料率で計算する

年度更新で提出する「労働保険 概算・確定保険料申告書」の計算式は、基本的には次の通りです。

労働保険料 = 賃金総額 × 労災保険料率・雇用保険料率

賃金総額には、基本給だけでなく残業代・賞与・各種手当など、労働の対価として支払われた金額が広く含まれます(通勤手当や役員報酬の扱いは個別に確認が必要です)。労災保険料率は業種ごとに、雇用保険料率は年度ごとに厚生労働省が定めて公表しており、毎年見直される可能性があるため、申告のたびに最新の料率を確認する必要があります。

ここが要点

料率そのものはこの記事では扱いません。年度ごとの労災保険料率・雇用保険料率は厚生労働省が毎年公表しているため、申告する年度の最新情報を都度確認してください。前年の料率のまま計算すると、確定保険料の精算時にずれが生じます。

一括で払うか、延納(分割納付)にするか

新年度分の概算保険料は、一括で納付するほか、条件を満たせば3回に分けて納付(延納)することもできます。

条件 延納の可否
概算保険料が40万円未満(労災・雇用保険の両方に加入している場合) 延納不可・一括納付
概算保険料が40万円以上(労災・雇用保険の両方に加入している場合) 延納可(3回分割)
概算保険料が20万円以上(労災・雇用保険のいずれか一方のみの場合) 延納可(3回分割)
労働保険事務組合に事務委託している場合 金額にかかわらず延納可

延納する場合は、概算保険料申告書の提出時に延納の申請を行います(労働保険徴収法第18条、同法施行規則第27条)。分割後の各納期限は年度によって多少前後することがあるため、申告のたびに労働局・労働基準監督署の案内で確認してください。資金繰りの都合で一括納付が厳しい場合は、延納の対象になるかどうかを先に確認しておくと選択肢が広がります。

期限を過ぎたらどうなるか:認定決定と追徴金

年度更新の申告を期限内に行わなかった場合、あるいは申告した内容に誤りがあり保険料が不足していた場合、政府(労働局)が調査のうえで正しい保険料額を決定します。これを「認定決定」と呼びます(労働保険徴収法第19条第4項)。

認定決定によって不足額が判明した場合、その不足額に加えて、不足額の10%が追徴金として徴収されます(労働保険徴収法第21条)。ただし、地震・火災・水害など「災害その他やむを得ない理由」による申告の遅れは追徴金の対象外とされており、単なる法改正の見落としや経営状況・資金繰りの都合は、この「やむを得ない理由」には含まれません。

つまり、「うっかり忘れていた」「資金繰りが厳しくて後回しにした」という理由は追徴金の免除にはつながらないということです。期限管理は、初年度の概算保険料申告書の期限(保険関係成立から50日以内)以上に、翌年以降は毎年同じ7月10日というカレンダーの決まった位置にやってくるため、一度仕組み化しておくと見落としにくくなります。

電子申請でやる場合

年度更新の申告は、労働基準監督署の窓口・郵送のほか、e-Govを通じた電子申請でも行えます。資本金等の額が1億円を超える法人など一定の大企業は、社会保険・労働保険の一部の手続きについて電子申請が義務化されていますが、多くの中小企業・個人事業主にとっては現時点では任意です。

窓口に出向く時間を取りにくい一人社長・小規模事業者にとっては、電子申請のほうが手間が少ない場合もあります。ただし、初めて電子申請を行う場合はGビズIDなどの事前準備が必要になるため、GビズIDの取得手順を済ませたうえで進めることをおすすめします。

初めて雇うときの手続き(083)との違い

初めて人を雇うときの手続き一覧で扱った保険関係成立届・概算保険料申告書は、従業員を初めて雇った年に一度だけ発生する手続きです。それに対して年度更新は、保険関係が続く限り毎年繰り返す手続きという違いがあります。初年度の概算保険料申告が終わった時点で、労働保険まわりの事務が完全に終わるわけではなく、翌年の6月頃には年度更新の案内が届く、という前提で覚えておいてください。

実体験について、正直に書きます

私の場合

正直に書きます。私自身は2026年に前職を退職し、合同会社の設立準備を進めている当事者ですが、この記事を書いている時点ではまだ従業員を雇っておらず、労働保険の保険関係も成立していません。そのため、年度更新の申告書を実際に出した経験はなく、この記事の内容は法令と厚生労働省・労働局の公式案内、社会保険労務士の実務解説をもとにした「調査した範囲では」の整理です。

実際に従業員を雇い、初めて年度更新を迎えた段階で、賃金総額の集計にかかった時間や、窓口・電子申請どちらを選んだか、延納を選んだかどうかを、この記事に実体験として追記します。

次にやること

まず、自社が一元適用事業か二元適用事業かを、保険関係成立届の控えで確認してください。 そのうえで、毎年6月1日から7月10日という期間をカレンダーに固定の予定として登録し、前年度に支払った賃金総額を集計できる状態(給与台帳・賃金台帳の整理)を5月末までに整えておくと、期限直前で慌てずに済みます。保険料率の確認や延納の要否など、判断に迷う点があれば、労働基準監督署・労働局の窓口、または社会保険労務士に事前に相談してください。


※本記事は2026年9月7日時点で調査した内容に基づくものです。年度更新の具体的な期日・保険料率・様式は年度ごとに見直されることがあるため、実際の申告前には必ず厚生労働省・管轄の労働基準監督署または労働局の最新情報を確認してください。

出典 - 労働保険の保険料の徴収等に関する法律第15条(概算保険料の申告・納付)・第18条(概算保険料の延納)・第19条(確定保険料の申告・納付、認定決定)・第21条(追徴金) e-Gov法令検索 - 厚生労働省「年度更新 よくある質問」(延納の金額基準:概算保険料40万円以上、労災保険・雇用保険いずれか一方のみの場合は20万円以上) https://www.mhlw.go.jp/bunya/roudoukijun/roudouhoken01/situmon.html - 大阪労働局「二元適用事業の場合」(建設業・農林水産業・港湾運送業等の区分) https://jsite.mhlw.go.jp/osaka-roudoukyoku/hourei_seido_tetsuzuki/roudou_hoken/tetsuzuki/gen/ni.html - 各労働局「令和8年度 労働保険の年度更新について」(実施期間:毎年6月1日から7月10日まで、2026年9月確認)

当サイト運営者

会社を辞めて、会社をつくる準備をしている当事者です

執行役員として6年、会社の管理部門を統括する立場にいました。2026年に退職し、いまは求職活動と並行して、会社を立ち上げる準備を検討している段階です。まだ登記はしていません。調べて確かめたことだけを書き、済んでいない手続きは「これから」と正直に書きます。体験のふりをしません。

この記事の作り方: 下書きにAIを使い、法令の条文と官公庁の公式ページに照らして事実確認したうえで公開しています。確認の取れない記述が残る記事は公開せず、一次資料が見つからない箇所は本文にそう書いています。確認の手順を見る →

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