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一人社長の福利厚生費

この記事の結論
  • 福利厚生費は「役員だけ・特定の人だけ」を対象にすると給与として扱われるとされ、一人社長は在籍者が1人しかいないため対象者の範囲そのものでは問題になりにくい
  • 健康診断(人間ドック含む)は、一定年齢以上の希望者全員が受診でき、受診者全員の費用を負担する場合は給与課税されないとされる(国税庁 質疑応答事例「人間ドックの費用負担」)
  • 食事の支給は、(1)役員・使用人が食事代の半分以上を負担し、かつ(2)会社負担分が月7,500円(税抜)以下であれば給与課税されないとされる(国税庁タックスアンサーNo.2594)
  • 費用は会社から医療機関・業者へ直接支払う形にし、金額が社会通念上相当な範囲であることが要件として挙げられている
この記事の内容
  1. 結論:対象者の範囲では問題になりにくいが、費用ごとの要件は別にある
  2. なぜ福利厚生費が「給与」に切り替わることがあるのか
  3. 健康診断・人間ドックの費用はどこまで認められるか
  4. 食事代はどこまで認められるか
  5. 一人社長が実務で残しておくべき証憑
  6. 福利厚生費にできるもの・できないものの整理
  7. 調査した範囲について、正直に書きます
  8. 食事代の計算例:会社負担はいくらまでか
  9. 次にやること
  10. 出典(2026年9月9日調査)

この記事は、社員が自分1人しかいない会社の社長で、「健康診断や食事代を福利厚生費として計上したいが、社員が自分だけでも認められるのか」と不安に思っている人に向けて書いています。 結論から言うと、福利厚生費が給与として扱われてしまう境目は「対象者を役員や特定の人だけに絞っているかどうか」であり、在籍者が1人しかいない一人社長の会社では、その1人が全員である以上、対象者の範囲そのものでは問題になりにくいとされています。 ただし、健康診断と食事代にはそれぞれ別の要件があり、そこを外すと給与課税に切り替わります。この記事では、健康診断費用と食事代それぞれの要件、一人社長が実務で残しておくべき証憑を整理します。

こんな状態ではありませんか
  • 社員が自分1人だけなのに、健康診断や食事代を会社の経費(福利厚生費)にしていいのか判断できない
  • 「役員だけの福利厚生は給与になる」という話をどこかで聞いて、自分のケースに当てはまるのか不安
  • 領収書だけ残せば大丈夫なのか、それとも他に必要な手続きがあるのか分からない

結論:対象者の範囲では問題になりにくいが、費用ごとの要件は別にある

福利厚生費が給与として扱われてしまう典型的な理由は、「役員や特定の地位にある人だけを対象にしている」ことだとされています。国税庁の質疑応答事例「人間ドックの費用負担」でも、健康診断が給与課税されない条件として、対象を役員や特定の人だけに絞っていないことが挙げられています(国税庁 質疑応答事例「人間ドックの費用負担」)。

一人社長の会社は、在籍している役員・従業員が社長1人しかいません。その1人に対して費用を出す以上、「全員を対象にしている」状態そのものにはなっている、という考え方ができます。つまり「社員が自分だけだから福利厚生費が使えない」という理屈にはなりません。

ただし、これはあくまで「対象者の範囲」の話です。健康診断には健康診断の要件が、食事代には食事代の要件が別途あり、それぞれを満たさないと給与課税に切り替わります。次の項目から、この2つを個別に見ていきます。

ここが要点

「社員が自分だけだから福利厚生費がそもそも使えない」わけではありません。 ただし「対象者の範囲」の要件をクリアしても、費用ごとの個別要件(負担割合・金額上限・支払い方法など)を満たさなければ給与課税されます。この2段階を分けて考える必要があります。

なぜ福利厚生費が「給与」に切り替わることがあるのか

福利厚生費として損金算入するつもりで支出しても、税務上「これは実質的に役員・従業員個人への給与(現物給与)である」と判断されると、扱いが変わります。給与として扱われると、受け取った本人(一人社長の場合は自分自身)の所得税・住民税の課税対象に加算されるほか、役員の場合はその金額が定期同額給与などの決められた支給方法から外れていると、会社側でも損金不算入になる可能性があります。

この「福利厚生費か、給与か」の線引きの基準になっているのが、(1)対象者を特定の人だけに絞っていないか、(2)会社が費用を直接負担しているか、(3)金額が社会通念上相当な範囲か、という観点です。健康診断・食事代のどちらも、この3つの観点に沿った個別要件が示されています。

健康診断・人間ドックの費用はどこまで認められるか

国税庁の質疑応答事例「人間ドックの費用負担」では、次の場合に給与として課税する必要はないとされています。

  • 一定年齢以上の希望者が全員検診を受けられること、かつ検診を受けた人全員の費用を会社が負担していること
  • 人間ドックの検診内容が、健康管理のために一般的に実施されている程度のものであり、費用として通常必要と認められる範囲内であること

逆に、役員や特定の地位にある人だけを対象に費用を負担する場合は、給与として課税される問題が生じるとされています(国税庁 質疑応答事例「人間ドックの費用負担」)。

一人社長の場合、検診を受ける対象者は社長1人だけです。「一定年齢以上の希望者全員」が受診し、その1人分の費用を会社が負担している、という状態なので、対象者の範囲についてはこの要件を満たしやすい形になります。加えて実務上は、次の点が重要だと解説されています。

  • 費用は会社から医療機関へ直接支払う形にする(本人が立て替えて後日精算する方式だと、給与として扱われるリスクを指摘する解説がある)
  • 検診の内容・金額が、一般的な健康診断・人間ドックとして相当な範囲であること。国税庁の質疑応答事例には検診費用の具体的な上限金額は示されておらず、「一般的に実施されている人間ドック程度」「通常必要と認められる範囲内」という基準のみが挙げられている(2026年9月確認)。複数の税理士事務所の解説記事では、一般的な健康診断は5,000円〜15,000円程度、人間ドックはこれより高額になるという目安が紹介されているが、これは公式な上限額ではなく解説記事間で共通する目安にとどまる
ここが要点

健康診断費用を福利厚生費にするなら、領収書の宛名を会社にし、可能であれば会社から医療機関へ直接振込・支払いをする形を取っておくと、対象者の範囲と支払い方法の両方の要件を説明しやすくなります。

食事代はどこまで認められるか

食事の支給については、国税庁タックスアンサーNo.2594「食事を支給したとき」に要件が示されています。役員や使用人に支給した食事が給与として課税されないためには、次の2つの要件をどちらも満たす必要があるとされています。

  1. 役員や使用人が、食事の価額の半分以上を負担していること
  2. (食事の価額)-(役員や使用人が負担している金額)が、月7,500円(消費税抜き)以下であること

このタックスアンサーに示されている具体例では、月13,000円の食事を従業員が6,000円負担した場合、負担割合が46%となり要件1を満たさず、差額の7,000円が給与として課税されるとされています(国税庁タックスアンサーNo.2594「食事を支給したとき」)。

食事の価額は、弁当を購入している場合は購入金額、社員食堂で調理している場合は材料費などの直接費用の合計とされています(同上)。なお、残業や宿直・日直の際に支給する食事は、無償で提供しても給与として課税しなくてよいとされています(同上)。

一人社長が自分の食事代を会社の経費にする場合も、この2要件が基準になります。「毎日のランチ代を全額会社が払う」という形は、負担割合の要件(本人が半分以上負担)を満たさないため、給与として扱われることになります。福利厚生費として食事代を出すなら、本人負担分をあらかじめ決めておき、会社負担分が月7,500円を超えないように運用する必要があります。

項目 要件
負担割合 役員・従業員が食事代の半分以上を負担していること
会社負担の上限 (食事の価額)-(本人負担額)が月7,500円(税抜)以下
例外 残業・宿直・日直時の食事は無償提供でも課税されない

一人社長が実務で残しておくべき証憑

一人社長の場合、税務調査や決算の確認で「これは本当に福利厚生費なのか、代表者個人の私的な支出ではないか」という視点で見られることがあります。次の記録を残しておくと、要件を満たしていることを説明しやすくなります。

  • 健康診断・人間ドック:受診した年月日・医療機関・金額が分かる領収書または請求書(宛名は会社名)
  • 食事代:本人負担額と会社負担額が分かる記録(社員食堂がない一人社長の会社では、天引きや振込などで本人負担分を明確に区分しておく必要がある)
  • どちらも:福利厚生規程を作成し、対象・金額・支給方法を明文化しておく(規程がなくても要件自体は満たせるが、規程があることで「特定の人だけへの支給ではない」ことを説明しやすくなるとする解説がある)

福利厚生費にできるもの・できないものの整理

一人社長の会社でよく検討される費目について、考え方の整理は次の通りです。

費目 福利厚生費として認められる方向性
健康診断・人間ドック 対象者全員が受診でき、会社が直接医療機関へ支払う場合は給与課税されないとされる
食事代(通常勤務時) 本人が半分以上負担し、会社負担が月7,500円(税抜)以下なら給与課税されないとされる
食事代(残業・宿直・日直時) 無償提供でも給与課税されないとされる
慶弔見舞金・香典など 結婚・出産等の祝金品は所得税基本通達28-5、香典・災害見舞金等は所得税基本通達9-23により、受け取る側の地位や関係に照らして社会通念上相当と認められる金額であれば課税されないとされる

この表はいずれも「一般的にはこう扱われるとされている」という整理であり、実際の計上にあたっては顧問税理士に個別の状況を確認してください。

調査した範囲について、正直に書きます

私の場合

正直に書きます。私自身は2026年に前職を退職して起業準備を進めている当事者ですが、この記事を書いている時点ではまだ自分の会社を設立しておらず、健康診断費用や食事代を実際に自分の会社の福利厚生費として計上した経験はありません。この記事は、国税庁タックスアンサーNo.2594「食事を支給したとき」、国税庁 質疑応答事例「人間ドックの費用負担」、所得税基本通達28-5・9-23という公開情報を2026年9月に確認して整理したものです。

在職中は、会社が用意した健康診断を毎年決まった時期に受けるのが当たり前で、費用のことを自分で意識したことはありませんでした。独立準備を進める中で、こうした当たり前だったものを一人社長の会社としてどう扱うかを、自分で調べて判断する立場になったというのが実感です。健康診断費用の具体的な金額の目安については、税理士事務所の解説記事はあるものの国税庁が数値で示した一次情報は見当たらなかったため、本文にはその旨を明記しました。

食事代の計算例:会社負担はいくらまでか

一人社長が、毎日の食事(弁当や仕出し弁当など)を福利厚生費として出したい場合の考え方を、金額を1つ仮に置いて計算します。使う数字は、この記事の「食事代はどこまで認められるか」で挙げた2つの要件だけです。

項目 仮の設定
食事の価額(1ヶ月分) 20,000円(税抜)
本人負担額 ここから求める

要件1(負担割合): 本人が食事の価額の半分以上を負担する必要があるので、20,000円 × 1/2 = 10,000円以上を本人が負担する必要があります。

要件2(会社負担の上限): (食事の価額)-(本人負担額)が月7,500円以下である必要があるので、20,000円-7,500円 = 12,500円以上を本人が負担しないと、この要件を満たしません。

2つの要件をどちらも満たす必要があるので、本人負担額は大きい方の12,500円以上が必要になります。この前提では、

  • 本人負担:月12,500円以上
  • 会社が福利厚生費として出せる上限:月7,500円

という計算になります。食事の価額が変われば、この2つの数字も変わるので、自分の実際の食事代を当てはめて同じ手順で計算してください。

前提:食事の価額を月20,000円(税抜)と仮定して計算しています。実際の食事代は、弁当業者への支払い額や社員食堂の材料費など、この記事の「食事代はどこまで認められるか」に書いた基準で確認してください。

次にやること

健康診断・食事代を福利厚生費として計上するなら、まず自社の状況にあてはめて、(1)健康診断は会社から医療機関へ直接支払う形になっているか、(2)食事代は本人負担が半分以上かつ会社負担が月7,500円以下になっているか、の2点を確認してください。そのうえで、金額や規程の整備について顧問税理士(または顧問予定の税理士)に一度相談し、自分の会社の運用として問題ないかを確認しておくことをおすすめします。

出典(2026年9月9日調査)

  • 国税庁 質疑応答事例「人間ドックの費用負担」 https://www.nta.go.jp/law/shitsugi/gensen/03/03.htm (健康診断・人間ドックの費用が給与課税されない条件を確認)
  • 国税庁 タックスアンサー No.2594「食事を支給したとき」 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/gensen/2594.htm (食事代の負担割合と会社負担の月7,500円の上限を確認)
  • 国税庁 所得税基本通達 法第28条《給与所得》関係(28-5を含む) https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/shotoku/04/03.htm (結婚・出産等の祝金品が社会通念上相当な金額なら課税されない旨を確認)
  • 国税庁 所得税基本通達 法第9条《非課税所得》関係(9-23を含む) https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/shotoku/02/04.htm (葬祭料・香典・災害見舞金が社会通念上相当な金額なら課税されない旨を確認)

本文の金額・要件はいずれも上記の公式ページの記載と一致しており、修正は発生していません。

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会社を辞めて、会社をつくる準備をしている当事者です

執行役員として6年、会社の管理部門を統括する立場にいました。2026年に退職し、いまは求職活動と並行して、会社を立ち上げる準備を検討している段階です。まだ登記はしていません。調べて確かめたことだけを書き、済んでいない手続きは「これから」と正直に書きます。体験のふりをしません。

この記事の作り方: 下書きにAIを使い、法令の条文と官公庁の公式ページに照らして事実確認したうえで公開しています。確認の取れない記述が残る記事は公開せず、一次資料が見つからない箇所は本文にそう書いています。確認の手順を見る →

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