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夫婦で会社を設立する

この記事の結論
  • 株主総会の特別決議は総株主の議決権の過半数を有する株主が出席し、出席株主の議決権の3分の2以上の賛成が必要(会社法309条1項・2項)
  • 取締役の選任・解任は原則、議決権の過半数を有する株主が出席し、出席株主の議決権の過半数の賛成で決議する(会社法341条)
  • 出資した金額の負担者と株式の名義人が異なると、名義人が実質的に贈与を受けたとみなされる可能性がある(株主等の判定は実質)
  • 同族会社は株主等の3人以下とその同族関係者が発行済株式等の50%を超えて保有する会社をいう(法人税法2条10号)
  • 同族会社の使用人でも、所属する株主グループの持株割合が10%超、かつ本人(配偶者等含む)の持株割合が5%超で、上位株主グループの持株合計が50%超に達する範囲に入っており、実際に経営に従事している場合は税務上「役員」とみなされる(法人税法施行令7条2号)
  • 贈与税の暦年課税の基礎控除は年110万円(相続税法21条の5、租税特別措置法70条の2の4)
この記事の内容
  1. 結論:役員構成と出資比率は別の問題
  2. 出資比率が決めるもの:株主総会の議決権
  3. 出資額は「誰の金か」で決める:名義株のリスク
  4. 配偶者を役員以外にしても「みなし役員」になることがある
  5. 出資比率と議決権を計算する【計算例】
  6. 決める前に確かめるチェックリスト
  7. 司法書士・税理士に相談する文例
  8. 次にやること

この記事は、夫婦で会社を作ろうとしていて、「どちらが代表になるか」「出資額をどう分けるか」で手が止まっている人に向けて書いています。 結論から言うと、役員構成(誰が経営に加わるか)と出資比率(誰が何%の株式・持分を持つか)は別の論点で、それぞれ決め方の物差しが違います。役員は「誰が実務を担うか」で決めればいいのに対して、出資比率は会社法上の議決権のルールと、税務上のリスクの2つを見て決める必要があります。以下、それぞれの決め方と、見落としやすい落とし穴を具体的な数字で整理します。

こんな状態ではありませんか
  • 夫婦2人で会社を作るとき、出資額を半分ずつにするか、片方に寄せるか決められない
  • 出資比率によって会社の意思決定にどんな差が出るのか分かっていない
  • 配偶者を「手伝ってもらうだけ」のつもりで従業員扱いにしていたが、税務上の扱いが違うと聞いて不安になった

結論:役員構成と出資比率は別の問題

夫婦で会社を作るとき、多くの人がまず考えるのは「代表取締役は誰にするか」ですが、それと同じくらい重要なのが「出資比率をどう分けるか」です。役員は会社の業務執行を担う立場、出資比率(株式会社なら持株比率、合同会社なら出資割合)は株主総会・社員総会での議決権の大きさを決めるものです。この2つは連動している必要はなく、たとえば夫が単独出資して代表取締役になり、妻は出資せず取締役や従業員として関わる、という組み合わせも成立します。逆に、出資は半分ずつにしても代表は片方だけ、という組み合わせも可能です。まずこの2つを切り分けて考えることが出発点になります。

出資比率が決めるもの:株主総会の議決権

株式会社の場合、出資比率(持株比率)はそのまま株主総会での議決権の大きさになります。株主総会の決議には主に2種類あり、必要な賛成の割合が異なります。

決議の種類 主な対象事項 必要な議決権割合 根拠
普通決議 取締役・監査役の選任・解任、役員報酬の総額決定など 議決権の過半数を有する株主が出席し、出席株主の議決権の過半数の賛成 会社法341条(役員選解任)、会社法309条1項
特別決議 定款変更、増資・減資、事業譲渡、組織変更など 総株主の議決権の過半数を有する株主が出席し、出席株主の議決権の3分の2以上の賛成 会社法309条2項

普通決議・特別決議のどちらも「出席した株主の議決権」に対する割合であることに注意が必要です。夫婦2人だけの会社であれば、通常は2人とも出席するため、実質的には夫婦間の持株比率がそのまま議決権の比率になります。片方が持株比率2/3(66.7%)以上を持っていれば、もう一方が反対しても特別決議まで単独で可決できるということになります。逆に、ちょうど50%ずつに分けた場合は、意見が割れると普通決議すら通せない状態になり得ます。合同会社の場合は原則として社員(出資者)の頭数で議決する定めが基本形ですが(会社法590条2項)、定款で出資比率に応じた議決権を定めることもできるため、設立時にどちらの方式にするかを決めておく必要があります。

出資額は「誰の金か」で決める:名義株のリスク

出資比率を決めるとき、見落とされがちなのが「誰の名義で出資するか」と「実際に誰の金を出したか」を一致させる、という点です。株主等の判定は、株主名簿上の名義ではなく実質的な権利者(実際に出資した者)で行われるのが原則です。つまり、資本金の全額を夫の口座から出しているのに、株主名簿上は夫50%・妻50%として登記した場合、妻の持分は「名義株」とみなされ、後から税務調査で夫から妻への贈与と扱われるリスクが生じます。

ここが要点

夫婦間で財産をやり取りする場合、贈与税の暦年課税には年110万円の基礎控除があります(相続税法21条の5は本来60万円と定めるが、租税特別措置法70条の2の4が110万円に引き上げて適用されている)。出資額の名義と実際の資金負担がずれる金額がこの範囲に収まるかどうかは、個々の資金移動の経緯によって判断が分かれるため、資本金額が大きい場合や、どちらか一方の口座からまとめて出資する場合は、事前に税理士へ確認しておくと安全です。

夫婦それぞれが自分名義の預金口座から出資し、その口座残高の由来(給与・貯蓄など)を説明できる状態にしておけば、名義株の問題は基本的に生じません。逆に、片方の口座から出資額をまとめて振り込み、株主名簿だけ2人の名前に分ける、というやり方は避けたほうが安全です。

配偶者を役員以外にしても「みなし役員」になることがある

「配偶者は登記上の役員にせず、従業員として給与を払う」という形を選ぶ夫婦もいます。ただし、夫婦2人だけで持株の大半を占める会社は税法上の「同族会社」に該当します。同族会社とは、株主等の3人以下とその同族関係者が発行済株式等の総数の50%を超えて保有する会社をいいます(法人税法2条10号)。夫婦2人だけの会社は、通常この定義にそのまま当てはまります。

同族会社の場合、登記上は役員でなくても、次の3つの要件をすべて満たし、かつ実際に経営に従事していると、税務上は「役員」とみなされます(法人税法施行令7条2号、いわゆる「みなし役員」)。

  • その人が属する株主グループが、持株割合の大きい順に第1位から第3位までの範囲で合計して初めて50%を超えるグループに入っている(法人税法施行令7条2号・71条1項5号イ)
  • その人が属する株主グループの持株割合が10%を超えている(同号ロ)
  • その人自身(配偶者や、本人・配偶者が過半数を持つ他の会社の持株を含む)の持株割合が5%を超えている(同号ハ)

みなし役員に該当すると、その人への給与は税務上「役員給与」として扱われます。役員給与は、毎月同額を支払う「定期同額給与」など一定の要件を満たさないと会社の経費(損金)に算入できません。従業員のつもりで賞与を随時払っていた場合、その分が経費として認められない、という結果になり得ます。配偶者に出資させるかどうかを決める段階で、この判定にも影響することを踏まえておく必要があります。

出資比率と議決権を計算する【計算例】

具体的な数字を仮置きして、出資比率がどう影響するかを計算してみます。

前提

  • 株式会社を設立、資本金300万円
  • 夫が200万円、妻が100万円をそれぞれ自分名義の口座から出資(株数は出資額に比例して割り当て)
  • 夫が代表取締役、妻も取締役に就任(2人とも登記上の役員)

計算

  1. 持株比率:夫 200万円÷300万円=66.7%(正確には3分の2ちょうど)、妻 100万円÷300万円=33.3%(正確には3分の1ちょうど)
  2. 特別決議(会社法309条2項、必要議決権:出席株主の議決権の3分の2以上)の要件は2/3以上。夫の持株比率は正確に2/3のため、この出資額・持株数のままなら要件を満たし、夫単独で特別決議を可決できる。ただし2/3ちょうどは要件のぎりぎり境界であり、増資や株式の一部譲渡、端数処理などで比率がわずかでも下回ると可決できなくなる
  3. 安全マージンを取りたい場合、たとえば夫の出資額を210万円(70%)、妻を90万円(30%)にしておけば、夫の持株比率は2/3を明確に上回り、多少の比率変動があっても夫単独で特別決議を可決できる状態を維持しやすい
  4. 普通決議(会社法341条、必要議決権:出席株主の議決権の過半数)は、上記いずれの配分でも夫単独で可決できる(50%を超えているため)
  5. 妻の持株比率は33.3%(または30%)のため、単独では特別決議はもちろん普通決議も否決できない(特別決議を単独で阻止する拒否権を持つのは、3分の1を超える持株、目安としておよそ33.34%以上を持つ場合)

この計算例のように、2/3ちょうどという比率は要件は満たすものの境界線上で不安定になりやすく、経営権を明確にどちらかに集中させたい場合は、2/3をわずかに超える比率(例:70%)にしておくと、株主総会の決議で意見が割れた場合の帰結がはっきりします。逆に、対等な意思決定を重視するなら50%ずつという選択もありますが、その場合は意見が割れたときに何も決められなくなるリスクを、あらかじめ夫婦間で話し合っておく必要があります。

決める前に確かめるチェックリスト

  • □ 出資額を、実際にどちらの口座から出すか(資金の出どころ)を確認したか
  • □ 出資額の名義と、実際に資金を負担した人が一致しているか
  • □ 経営権をどちらかに集中させたいか、対等にしたいかを話し合ったか
  • □ 集中させたい場合、持株比率が2/3(特別決議の要件)を明確に超えているか
  • □ 配偶者を登記上の役員にしない場合、みなし役員の3要件(株主グループの範囲・10%超・5%超)に該当しないか確認したか
  • □ 出資比率と役員構成(誰が代表か・誰が取締役か)を別々の紙に書き出して整理したか

司法書士・税理士に相談する文例

出資比率と役員構成の両方を見てもらえる専門家に、設立前の段階で相談する際の文例です。

お世話になっております。
[氏名]と申します。

夫婦2人で株式会社の設立を検討しております。
資本金は[資本金額]、出資割合は
夫[◯%]・妻[◯%]を予定しております。

つきましては、以下についてご相談・ご依頼が可能かご案内いただけますでしょうか。

・出資比率と株主総会の議決権(特別決議・普通決議)への影響
・出資額の資金の出どころに関する留意点(名義株・贈与税リスク)
・配偶者を役員にしない場合の「みなし役員」への該当可否

お忙しいところ恐れ入りますが、
費用の目安とあわせてご返信いただけますと幸いです。

次にやること

まず、夫婦それぞれの出資額を「実際にどちらの口座から出すか」を先に決めてください。 出資比率は、経営権を集中させたいかどうかという意思決定の問題であると同時に、資金の出どころという事実の問題でもあります。この2つを分けて整理したうえで、比率が2/3付近など境界線に近い場合や、配偶者を役員にしない予定の場合は、設立前に税理士・司法書士へ相談することをおすすめします。

なお、この記事は制度の調査に基づいて書いています。筆者本人は2026年に会社を退職しており、夫婦で会社を設立した実体験はありません。


※本記事は2026年9月時点で確認した内容に基づく一般的な情報整理です。出資比率・役員構成の判断は、資金状況や事業内容によって最適解が変わるため、実際の設立前には司法書士・税理士にご相談ください。

出典 - 会社法309条1項・2項(株主総会の決議) - 会社法341条(役員の選任及び解任の株主総会の決議) - 会社法590条2項(合同会社の業務執行の決定、社員の頭数による過半数原則) - 法人税法2条10号(同族会社の定義) - 法人税法施行令7条2号(みなし役員の要件) - 相続税法21条の5、租税特別措置法70条の2の4(贈与税の基礎控除。相続税法本則は60万円だが、租税特別措置法により110万円に引き上げ)

出典(2026年9月9日調査) - e-Gov法令検索「会社法」 https://laws.e-gov.go.jp/law/417AC0000000086(309条1項・2項の議決権要件、341条の役員選解任の議決権要件を条文で確認。本文の記述と一致) - 国税庁「2 同族会社」 https://www.nta.go.jp/law/joho-zeikaishaku/hojin/070313/03.htm(同族会社の定義=株主等3人以下とその同族関係者が発行済株式総数の50%超を保有、を確認。本文の記述と一致) - 国税庁タックスアンサーNo.5200「役員の範囲」 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hojin/5200.htm(みなし役員の3要件=株主グループの順位・持株割合10%超・本人5%超、を確認。本文の記述と一致) - 国税庁タックスアンサーNo.4402「贈与税がかかる場合」 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/zoyo/4402.htm(暦年課税の基礎控除110万円と根拠法令(相続税法21条の5、租税特別措置法70条の2の4)を確認。本文の記述と一致)

当サイト運営者

会社を辞めて、会社をつくる準備をしている当事者です

執行役員として6年、会社の管理部門を統括する立場にいました。2026年に退職し、いまは求職活動と並行して、会社を立ち上げる準備を検討している段階です。まだ登記はしていません。調べて確かめたことだけを書き、済んでいない手続きは「これから」と正直に書きます。体験のふりをしません。

この記事の作り方: 下書きにAIを使い、法令の条文と官公庁の公式ページに照らして事実確認したうえで公開しています。確認の取れない記述が残る記事は公開せず、一次資料が見つからない箇所は本文にそう書いています。確認の手順を見る →

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