ネット銀行で法人口座を開設する
- 金融機関には犯罪による収益の移転防止に関する法律(犯収法)第4条により取引時確認の義務がある
- GMOあおぞらネット銀行は事業内容の「具体性」と「客観性」を重視し、Webサイト・契約書・請求書などの事業実態確認書類の提出で審査がスムーズになるとしている(公式サイト)
- 住信SBIネット銀行は郵送手続きで申込書到着後の審査に1週間程度、取引開始までは2〜3週間程度、オンライン本人確認(eKYC)なら審査完了後最短翌営業日から利用可能(公式サイト)
- 楽天銀行の法人ビジネス口座は履歴事項全部証明書と代表者(管理者)の本人確認書類が必須で、登記住所と事業所住所が異なる場合は追加で連絡先確認資料が必要(公式サイト)
- 固定電話やWebサイトが無いと「事業実態が確認できない」という理由で審査に落ちることがある(オカネコマガジン等の解説記事。個別行の内規は非公開のため一般論)
この記事の内容
この記事は、会社を設立してこれからネット銀行に法人口座を申し込む人、または一度審査に落ちて次にどう動けばいいか分からない人に向けて書いています。 結論から言うと、法人口座の審査は個人口座より厳しく、これはネット銀行に限った話ではなく、犯罪収益移転防止法という法律に基づいて金融機関側に確認義務が課されているためです。以下、審査で何を見られているのか、落ちやすい理由は何か、対策として何ができるかを整理します。
- ネット銀行なら法人口座は簡単に作れると思っていたら、審査で止まってしまった
- 何を確認されて落ちたのか、銀行側からの説明が薄くて分からない
- もう一度申し込むべきか、別の銀行にすべきか判断がつかない
結論:審査があるのは法律上の義務だから
法人口座の開設に審査があるのは、銀行が客を選んでいるからというより、銀行側に法律上の確認義務があるからです。犯罪による収益の移転防止に関する法律(犯収法)第4条(取引時確認等)により、銀行を含む金融機関は口座開設などの取引時に、本人特定事項や取引を行う目的、事業の内容などを確認する義務を負っています(条文本体はe-Gov法令検索、義務の解説は全国銀行協会)。
この義務は、過去に法人口座がマネーロンダリングや反社会的勢力との取引に使われた実例があったことへの対応として設けられているものです。ネット銀行だから審査がゆるい、店舗のある銀行だから厳しい、という単純な話ではなく、どの金融機関も同じ法律の下で審査をしています。 違いが出るのは、各行がその義務をどこまで厳格に運用するか、書類をどこまで求めるかという実務のレベルです。
法人口座の審査で何を見られているか
犯収法に基づく確認義務を踏まえて、各行が実務上チェックしている項目は、公開されている情報から共通して次のようなものが挙がります。
- 事業内容の具体性・客観性:登記事項だけでは分からない具体的な事業内容が確認できるか、第三者が見ても現在の事業活動が把握できる客観性のある書類か(GMOあおぞらネット銀行公式サイト「事業内容確認書類について」)
- 事業実態を裏付ける資料の有無:Webサイト・契約書・請求書・発注書など、事業が実際に動いていることを示す書類があるか(同上)
- 登記情報と申告内容の整合性:履歴事項全部証明書に記載の事業目的と、実際に説明している事業内容が食い違っていないか
- 代表者・取引責任者の本人確認:運転免許証などの本人確認書類(各行共通)
- 登記住所と事業所住所が一致しているか:一致していない場合、公共料金の領収証など追加の連絡先確認資料を求められることがある(楽天銀行公式サイト)
審査に必要な情報の量は、口座を開ける時期によっても変わります。 会社を設立した直後は、まだ請求書や契約書といった「事業が動いている証拠」を1枚も持っていないことが多く、審査側からすると事業実態を確認しづらい状態です。設立からある程度の期間が空いて実績資料を用意できる状態のほうが、審査は通りやすくなる傾向があります(具体的な審査通過率の数値は、GMOあおぞら・ドコモSMTB・楽天銀行いずれの公式サイトにも記載がありません。2026年8月確認)。
審査に落ちやすい理由
審査に落ちる理由として、GMOあおぞらネット銀行の公式解説記事で挙げられているのは次のような点です(各行の個別の審査基準そのものは非公開のため、公式に説明されている一般的な傾向として整理)。
- 固定電話がない:携帯電話番号のみで、固定電話の契約がない場合に「事業所として実態があるか」を疑われることがある
- Webサイトがない、または内容が薄い:事業内容を客観的に確認できる材料が申告書以外に無いと判断されやすい
- 登記住所がバーチャルオフィスのみで、その他の実態確認資料も乏しい:バーチャルオフィス自体が一律にNGというわけではないが、他の確認材料も無いと事業実態の説明が弱くなる
- 登記簿上の事業目的が広すぎる、または申告内容と食い違う:「何をする会社か」が定款の事業目的から読み取りにくい
- 設立直後で登記確認ができないことがある:業歴が浅いスタートアップは、法人登記の手続きから間もないタイミングで銀行側が登記情報を確認できないケースがあり、契約書・請求書といった実績資料もまだ揃っていないことが多い(GMOあおぞらネット銀行公式サイト)
これらはいずれか1つだけで即座に落ちるという単純な話ではなく、複数の項目が重なったときに「事業実態が確認できない」という総合判断になりやすい、という整理です。
主要ネット銀行3行の審査条件を比較する
※以下は2026年8月時点の各行公式サイトの情報です。審査の可否は個別の申込内容によって変わるため、必ず各行の最新情報を確認してください。
| 項目 | GMOあおぞらネット銀行 | ドコモSMTBネット銀行(旧・住信SBIネット銀行) | 楽天銀行(法人ビジネス) |
|---|---|---|---|
| 主な必要書類 | 取引責任者の本人確認書類+事業内容確認書類(1点以上・最大10点まで提出可)。代表者と取引責任者が異なる場合は、権限委任状に加えて代表者本人の本人確認書類、または発行から6か月以内の法人印鑑証明書が必要 | 原則は代表者本人の本人確認書類のみ(オンライン申込は運転免許証。実質的支配者は5名以内・全員日本在住が条件)。代表者以外に担当者を追加登録する場合や、実質的支配者に日本以外の居住者がいる場合は、発行から3か月以内の法人印鑑証明書が追加で必要 | 履歴事項全部証明書(発行から6か月以内の原本)+口座管理者(代表者)の本人確認書類が必須。登記住所と連絡先住所が異なる場合は公共料金の領収書・納税証明書などいずれか1点を追加提出 |
| 審査で重視される点 | 事業内容の「具体性」と「客観性」。登記事項だけでは分からない具体的な事業内容が、第三者にも分かる客観性のある書類(Webサイト・契約書・請求書等)で確認できるかを重視するとしている | 公式サイトに重視点の具体的な記載なし(2026年8月確認) | 記載なし(2026年8月確認)。書類到着後に申込内容と必要書類を確認のうえ審査 |
| 開設完了までの目安 | 記載なし(2026年8月確認) | 郵送申込:審査受付(書類受領)〜審査完了まで2〜3週間程度。オンライン本人確認(eKYC):審査受付〜審査完了まで最短翌日 | 記載なし(2026年8月確認)。口座開設申込から180日以内に書類が到着しない場合は申込を取消 |
| 出典 | GMOあおぞらネット銀行公式サイト(法人銀行口座開設までの流れ/事業内容確認書類について) | ドコモSMTBネット銀行公式サイト(よくあるご質問/本人確認書類について。2026年8月3日付でドコモSMTBネット銀行に商号変更、旧・住信SBIネット銀行) | 楽天銀行法人ビジネス公式サイト(必要書類一覧・口座開設の流れ) |
審査に落ちたときの対策
審査に落ちた、または不安がある場合に、申込内容として整えられる点は次の通りです。
- 事業内容を具体的に書く:「コンサルティング業」のような一言ではなく、誰に何を提供して収益を得るのかまで書く
- Webサイトを用意してから申し込む:簡易なものでも、事業内容が第三者から見て分かる状態にしておく
- 固定電話番号を用意する:携帯電話のみより、固定電話(050番号を含む)がある方が実態確認の材料が増える
- 契約書・発注書・請求書など、事業が動いている証拠を保管しておく:1件でもあれば審査時の提出資料になる
- 登記住所と事業所住所を揃える、揃わない場合は補完書類を用意する:公共料金の領収証書や納税証明書など
落ちた場合に「もう一度同じ銀行にすぐ出し直す」のは、前回と申告内容が変わっていなければ結果も変わりにくいと考えられます。事業実態を示す資料を新たに用意できてから出し直すか、必要書類の条件が違う別の銀行を検討するか、のどちらかが現実的な対策です。
審査がゆるいとされる銀行に頼っていいか
「審査がゆるい銀行」を紹介する記事は多数ありますが、この記事では特定の銀行を「ゆるい」と断定する紹介はしません。理由は、審査基準は各行の非公開の内規に基づくもので、外部から検証できないためです。「ゆるい」という評判だけで選ぶと、実際には事業実態の確認が甘い口座として、後から追加確認や利用制限の対象になるリスクもあります。
選ぶ基準にすべきなのは「審査の厳しさ」ではなく、自分の会社の事業実態を、その銀行が求める書類で説明できるかどうかです。上の比較表で必要書類を確認し、今の自分の会社が用意できる資料と照らし合わせて選ぶことをおすすめします。
実体験について、正直に書きます
正直に書きます。この記事を書いている2026年8月31日時点で、私自身はまだ合同会社の設立登記が完了しておらず([合同会社設立の全手順]の記事で書いた通りです)、法人口座の開設申込はこれから行う段階です。そのため、この記事の内容は実際に審査を受けた記録ではなく、各行の公式サイトと犯収法の公開情報を基にした「調査した範囲では」の整理です。
実際に口座開設を申し込んだら、どの書類を求められたか、審査にかかった実日数、事業内容の説明にどこまで具体性を求められたかを、この記事に実体験として追記します。
次にやること
まず、自分の会社が今すぐ用意できる「事業実態を示す資料」を書き出してください。 Webサイト、契約書、発注書、固定電話番号のいずれかが1つも無い状態なら、申し込む前にそのうち1つでも用意することをおすすめします。そのうえで、上の比較表を見て、自分の会社の状況(代表者と取引責任者が同じか、登記住所と事業所住所が一致しているか)に合わせて必要書類が少ない銀行から検討してください。
freee会社設立
※本記事は2026年8月時点の各行公式サイト・法令に基づく情報整理と、筆者個人の状況に基づくものです。法人口座の審査基準・必要書類・所要日数は金融機関の運用により変わることがあるため、実際の申込前には必ず各行の最新の公式情報を確認してください。個別の審査通過率・内規は各行とも公表しておらず、公開情報から読み取れる一般的な傾向として整理しています。
出典 - 犯罪による収益の移転防止に関する法律(平成十九年法律第二十二号) | e-Gov法令検索(第4条:取引時確認等) - 犯罪収益移転防止法に関するよくある質問・回答 | 全国銀行協会 - 法人口座が審査落ちする原因は?対策まで徹底解説|起業応援ナビ(GMOあおぞらネット銀行) - 法人銀行口座開設までの流れ~必要書類など~ | GMOあおぞらネット銀行 - 事業内容確認書類について | GMOあおぞらネット銀行(「具体性」「客観性」を重視する旨の記載元) - 〔法人口座〕法人口座開設の審査は、どのくらい時間がかかりますか | ドコモSMTBネット銀行(2026年8月3日付で住信SBIネット銀行から商号変更) - ドコモSMTBネット銀行への社名変更について | ドコモSMTBネット銀行(旧 住信SBIネット銀行) - 〔法人口座〕法人口座開設に必要な条件や書面を教えてください | ドコモSMTBネット銀行 - 本人確認書類について(法人のお客さま) | ドコモSMTBネット銀行(印鑑証明書の追加提出条件・有効期限の記載元) - 法人ビジネス口座開設に必要な書類一覧 | 楽天銀行法人ビジネス - 法人ビジネス口座開設の流れ | 楽天銀行法人ビジネス(申込から180日以内の書類到着期限を記載)