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失業保険をもらいながら起業準備はできるか

この記事の結論
  • 失業保険(基本手当)は起業準備の間は受給を続けられるが、法人設立登記・代表取締役就任・個人事業の開業をもって「就職」とみなされ受給資格を失う運用が一般的(ハローワークの取扱い)
  • 再就職手当は雇用保険法第56条の3に基づく給付で、支給残日数が所定給付日数の3分の1以上あれば対象になりうる(3分の2以上で給付率70%・3分の1以上3分の2未満で60%、複数の解説記事で一致・一次資料は未到達)
  • 自己都合退職は雇用保険法第33条により給付制限(原則2ヶ月、5年間で2回まで・3回目以降3ヶ月)がかかるが、会社都合退職にはこの制限がない
  • 給付制限がある人は待期(雇用保険法第21条・7日間)満了後1ヶ月間はハローワーク紹介の就職に限り再就職手当の対象になる
この記事の内容
  1. 結論:境目は「事業を始めた日」
  2. なぜ「準備」と「開始」で扱いが変わるのか
  3. 失業保険の基本の流れ:待期・給付制限・自己都合と会社都合の違い
  4. 再就職手当とは何か:起業でももらえる一時金
  5. 再就職手当をもらうための条件
  6. 満額受給を待つか、早く起業して再就職手当を取るか
  7. 実体験:会社都合退職で給付制限がなかったこと
  8. 次にやること

この記事は、会社を辞めて起業しようとしていて、失業保険(雇用保険の基本手当)をもらいながら準備を進められるのか気になっている人に向けて書いています。 結論から言うと、「準備」をしている間は受給を続けられますが、法人登記や開業届の提出など「事業を始めた日」に受給資格を失います。そして、早めに事業を始めても、一定の条件を満たせば「再就職手当」という一時金を受け取れる可能性があります。この記事では、その境目と、再就職手当の条件を整理します。

こんな状態ではありませんか
  • 起業準備を進めたいが、失業保険をもらいながらでも大丈夫なのか不安
  • 会社を設立したら失業保険はいつ止まるのか知らないまま準備を進めている
  • 満額もらいきるまで待つべきか、早く起業したほうが得なのか判断できない

結論:境目は「事業を始めた日」

失業保険(雇用保険の基本手当)は、「就労の意思と能力があり、求職活動をしている」人に支給される給付です。市場調査や事業計画書の作成、資金調達の検討といった起業の「準備」をしている段階は、この求職活動と両立できるとされています。しかし、法人であれば法務局への設立登記や代表取締役への就任、個人事業であれば実際の事業開始をもって、ハローワークは「就職した」とみなす運用が一般的です。この時点で基本手当の受給資格を失います(この運用そのものを明文化した厚生労働省の公表資料は確認できておらず、複数の会計・社労士事務所の解説記事で共通していた内容です)。

つまり、「起業準備中に失業保険が止まるかどうか」の境目は、準備の中身ではなく「事業を始めたかどうか」そのものです。そして、事業を始めるタイミングと残りの給付日数の組み合わせ次第では、「再就職手当」という一時金の対象になります。この2つの制度を知っているかどうかで、同じ「起業のために退職した人」でも受け取れる金額が変わってきます。

なぜ「準備」と「開始」で扱いが変わるのか

失業保険の受給資格は、ハローワークでの求職活動の実績(月2回以上の活動報告など)によって毎回の失業認定日に確認されます。起業の準備段階――情報収集、事業計画の検討、資金計画の立案――は、この求職活動の一環として扱われうる一方、実際に事業を開始すると「もう求職中ではない」と判断されます。

ここが要点

起業の意思を隠したまま準備を進めるのは避けてください。 求職活動の報告時に起業準備を進めている事実を正直に申告し、いつ・どの段階から「事業を開始した」と扱われるのかをハローワークの窓口で確認しておくと、後から「不正受給ではないか」と指摘されるリスクを避けられます。

失業保険の基本の流れ:待期・給付制限・自己都合と会社都合の違い

起業のタイミングを考える前に、失業保険がいつから・どのくらいの期間もらえるのかを整理します。

区分 内容 根拠
待期期間 求職の申込みをした日から通算7日間は、失業していても基本手当は支給されない 雇用保険法第21条
給付制限(自己都合退職の場合) 待期期間満了後、原則1ヶ月間は基本手当が支給されない(離職日が2025年4月1日以降の場合。退職日から遡って5年間のうちに2回以上、正当な理由のない自己都合退職をしている場合や、重大な自己の責めに帰すべき理由による解雇の場合は3ヶ月) 雇用保険法第33条、令和7年4月1日から適用(厚生労働省・群馬労働局・ハローワーク)
給付制限(会社都合退職の場合) 給付制限はかからず、待期期間満了の翌日から基本手当の対象になる 雇用保険法第33条(重大な自己の責めに帰すべき理由または正当な理由のない自己都合の場合のみが対象)

自己都合か会社都合かで、実際にお金が入り始めるタイミングが原則1ヶ月変わります(離職日が2025年4月1日以降の場合)。 起業のタイミングを検討する際は、まず自分の離職理由がどちらに該当するかを離職票で確認してください。

再就職手当とは何か:起業でももらえる一時金

再就職手当は、基本手当の受給資格がある人が、給付日数を一定以上残した状態で「安定した職業」に就いた場合に支給される一時金で、雇用保険法第56条の3(就業促進手当)に基づく給付です。この「安定した職業に就く」には、会社員として再就職する場合だけでなく、個人事業主として開業する場合や、法人を設立して事業を始める場合も含まれます。

満額受給を待たずに早く動いた分、基本手当を最後まで受け取るよりも総額は少なくなりますが、まとまった一時金を早いタイミングで受け取れるという意味があります。

再就職手当をもらうための条件

厚生労働省・都道府県労働局・ハローワークが配布するリーフレット「再就職手当のご案内」で確認できた条件は次のとおりです。正確な金額や自分のケースへの当てはめは、必ず管轄のハローワークで確認してください。

  • 待期期間(7日間、雇用保険法第21条)が満了した後に事業を開始していること
  • 給付制限がある人(自己都合退職など)は、待期満了後さらに1ヶ月間は、ハローワークまたは職業紹介事業者の紹介による就職に限られる。1ヶ月を過ぎれば、自分で見つけた就職や自営の開業も対象になる
  • 就職日(事業を開始した日)の前日時点で、基本手当の支給残日数が所定給付日数の3分の1以上あること(雇用保険法第56条の3)
  • 過去3年以内の就職について、再就職手当または常用就職支度手当の支給を受けたことがないこと(事業開始にかかる再就職手当も含む)
  • 1年を超えて事業を継続できる見込みがあると認められること(自営業の場合、事業計画書や契約書・売上の記録などで説明を求められることがある)

支給率は、支給残日数が所定給付日数の3分の2以上残っていれば70%3分の1以上残っていれば60%です(厚生労働省・都道府県労働局・ハローワーク・地方運輸局「再就職手当のご案内」、2026年8月31日確認)。

ここが要点

給付制限がある人は「1ヶ月ルール」に注意してください。 待期満了直後にハローワークの紹介を経ずに自分で開業してしまうと、この1ヶ月ルールに引っかかり再就職手当の対象から外れる可能性があります。給付制限がある場合は、開業日を待期満了から1ヶ月以上あとに設定するか、事前にハローワークで相談してから動くことをおすすめします。

満額受給を待つか、早く起業して再就職手当を取るか

どちらが得かは、残っている給付日数と、事業をどれだけ早く始めたいかのバランスで決まります。考え方を整理すると次のようになります。

選択肢 メリット 注意点
基本手当を満額受給してから起業 所定給付日数の分、毎月まとまった金額を受け取れる 事業開始が遅くなる。準備期間中は「起業ではなく準備」の範囲を超えないよう求職活動の報告が必要
早めに起業して再就職手当を受け取る 一時金として早いタイミングでまとまった金額を受け取れる。事業を早く始められる 支給残日数が所定給付日数の3分の1未満だと対象外になる。給付制限がある人は1ヶ月ルールにも注意が必要

残りの給付日数が少ない人ほど、早く起業して再就職手当を狙う選択肢が現実的になります。 逆に、まだ給付日数が多く残っていて、準備にも時間をかけたい場合は、満額受給を待つ選択肢も十分に成り立ちます。

実体験:会社都合退職で給付制限がなかったこと

私の場合

正直に書きます。私自身は2026年6月末に前職を退職しました。退職理由は会社都合退職で、別記事[会社を辞めて起業する手順]にも書いたとおり、離職票は退職日から3日後に届き、その後ハローワークで手続きを進めました。会社都合退職だったため、上の表で説明した「給付制限」はかからず、待期期間の満了後すぐに基本手当の対象になっています。

この記事を書いている2026年8月31日時点では、会社の登記はまだ完了しておらず、再就職手当を実際に申請した経験もありません。そのため、この記事は再就職手当を受け取った体験談ではなく、制度を調べて整理したものです。この点は正直に書いておきます。実際に開業・登記のタイミングを決め、再就職手当を申請するかどうかを判断した段階で、一次情報として別記事にまとめる予定です。

次にやること

まず、自分の離職票で「自己都合」か「会社都合」かを確認し、給付制限の有無を把握してください。 そのうえで、残っている基本手当の支給日数を管轄のハローワークで確認し、満額受給を待つか、再就職手当の対象になるタイミングで起業するかを判断する材料にしてください。会社設立の登記自体を急ぐ必要がない理由は、別記事[会社を辞めて起業する手順]でも整理しています。


※本記事は2026年8月時点の法令・制度に基づく情報整理と、筆者個人の状況に基づくものです。自分のケースへの具体的な当てはめは、申請前に必ず管轄のハローワークで最新の要件を確認してください。

出典 - 雇用保険法 第21条(待期) - 雇用保険法 第33条(給付制限) - 雇用保険法 第56条の3(就業促進手当・再就職手当) - 厚生労働省・群馬労働局・ハローワーク「『給付制限期間』が短縮又は解除されます令和7年4月1日から適用」PDF(離職日が2025年4月1日以降は給付制限が原則1か月、5年間のうちに2回以上正当な理由のない自己都合退職または重責解雇の場合は3か月、2026年8月31日確認) - 厚生労働省・都道府県労働局・ハローワーク・地方運輸局「再就職手当のご案内」PDF(支給率・支給要件①〜⑧を本文で確認、2026年8月31日確認) - マネーフォワード クラウド会社設立「失業保険をもらいながら起業準備はできる?受給条件や金額、再就職手当についても解説」(2026年8月31日確認) - マネーフォワード クラウド会社設立「個人事業主・フリーランスも再就職手当をもらえる?受給条件、開業届のタイミング、申請方法を解説」(2026年8月31日確認) - 補助金ポータル「再就職手当の支給要件と計算方法 いつもらえるのか解説」(2026年8月31日確認)

当サイト運営者

会社を辞めて、会社をつくる準備をしている当事者です

執行役員として6年、会社の管理部門を統括する立場にいました。2026年に退職し、いまは求職活動と並行して、会社を立ち上げる準備を検討している段階です。まだ登記はしていません。調べて確かめたことだけを書き、済んでいない手続きは「これから」と正直に書きます。体験のふりをしません。

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