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起業したら配偶者の扶養はどうなるか

この記事の結論
  • 健康保険の被扶養者の認定基準は年収130万円未満(60歳以上または一定の障害がある場合は180万円未満)かつ被保険者の年収の2分の1未満(全国健康保険協会)
  • 個人事業主(自営業者)が被扶養者認定を受ける場合の「年収」は、確定申告の所得金額ではなく、事業の総収入から原材料費・仕入れ費など「その経費がなければ事業が成り立たない直接的必要経費」を差し引いた額で判定されるとする解説が複数の社会保険労務士事務所・健康保険組合の案内ページで共通して説明されている(所得税法上の必要経費より狭い範囲)。従業員を1人でも雇っていると被扶養者として認定されないとする解説もある
  • 国民年金第3号被保険者になるには配偶者が第2号被保険者(会社員・公務員)である必要がある(国民年金法第7条第1項第3号)
  • 配偶者控除の対象となる配偶者の合計所得金額は令和7年分58万円以下(給与収入のみなら123万円以下)、令和8年分以後62万円以下に引き上げ(国税庁タックスアンサーNo.1191、財務省「令和8年度税制改正の大綱」)。この所得金額は所得税法上の必要経費を通常どおり差し引いた額で、社会保険の「直接的必要経費」より広い経費を差し引ける
この記事の内容
  1. 結論:社保の壁と税の壁は基準額も判定方法も別物
  2. 壁は2つ、金額がそもそも違う
  3. 自分が起業する側の場合:社保の壁は「経費を引いた額」で判定される
  4. 配偶者を自分の扶養に入れている場合
  5. なぜ2つの壁はズレるのか
  6. 比較表:社保の壁と税の壁
  7. 実体験について、正直に書きます
  8. 次にやること

この記事は、起業を考えていて「配偶者の扶養」がどう変わるか調べている人に向けて書いています。 結論から言うと、扶養には「社会保険の壁」と「税金の壁」という2つの別の壁があります。基準額も、収入の数え方も、判定するタイミングも別々です。どちらか一方だけ確認して安心すると、もう一方で想定外の負担が発生します。

こんな状態ではありませんか
  • 起業したら配偶者の扶養がどうなるのか、社会保険と税金がごちゃ混ぜのまま調べている
  • 自分が起業する側で、配偶者(会社員)の扶養に入れるかどうかを知りたい
  • 逆に配偶者を自分の扶養に入れていて、起業後もそれが続くのか不安
  • 「103万円の壁」「130万円の壁」など数字が色々出てきて、どれがどの制度の話か整理できていない

結論:社保の壁と税の壁は基準額も判定方法も別物

「扶養の壁」と呼ばれるものは、中身が2つに分かれています。

  1. 社会保険の壁:健康保険の被扶養者になれるか、国民年金の第3号被保険者になれるか。基準は年収130万円未満(全国健康保険協会「被扶養者とは」)
  2. 税金の壁:配偶者控除・配偶者特別控除を受けられるか。基準は配偶者の合計所得金額(令和7年分は58万円以下、給与収入のみなら123万円以下。国税庁タックスアンサーNo.1191)

この2つは制度も判定機関も別で、片方が使えても、もう片方は使えないことが普通にあります。 さらに起業して個人事業主になると、社会保険の「年収」は税金の「所得」と数え方が違うため、同じ稼ぎ方をしていても2つの壁への当たり方が変わってきます。以下、順番に整理します。

壁は2つ、金額がそもそも違う

まず数字だけ並べると、こうなります。

  • 社会保険の壁:年収130万円未満(60歳以上または一定の障害がある場合は180万円未満)、かつ被保険者(配偶者)の年収の2分の1未満であること(全国健康保険協会「被扶養者とは」)。この130万円・180万円という金額自体は健康保険法の条文には明記されておらず、昭和52年4月6日付の行政通達(庁保発第9号・保発第9号「収入がある者についての被扶養者の認定について」)が根拠です。国民年金の第3号被保険者(保険料負担のない加入区分。配偶者が第2号被保険者であることが要件〈国民年金法第7条第1項第3号〉)になれるかどうかも、実務上は同じ130万円基準に連動する運用がとられています
  • 税金の壁:配偶者の合計所得金額58万円以下(給与収入のみなら123万円以下。令和7年分、国税庁タックスアンサーNo.1191)。この基準額は改正が続いており、令和8年分以後は合計所得金額62万円以下(給与所得控除の引き上げにより給与収入換算で令和8・9年分136万円以下、令和10年分以後131万円以下)になります(財務省「令和8年度税制改正の大綱」)

この時点で、社会保険は130万円、税金は令和7年分なら123万円と、既に金額が違います。 さらに次の章で説明する通り、起業して個人事業主になると「年収」「所得」の数え方自体が制度ごとに変わるため、単純に「稼ぎがいくら以下ならセーフ」とは言えなくなります。

自分が起業する側の場合:社保の壁は「経費を引いた額」で判定される

起業して個人事業主になる本人が、配偶者(会社員・公務員)の扶養に入れるかどうかを考えるケースです。

国民年金の第3号被保険者になれるのは、配偶者が第2号被保険者(会社員・公務員として厚生年金に加入している人)である場合に限られます(国民年金法第7条第1項第3号)。個人事業主自身が第1号被保険者・第2号被保険者どちらでもない立場である点は、税金の扶養の要件とは関係のない年金独自のルールです。

年収要件そのものは健康保険と同じく「年収130万円未満・配偶者の年収の2分の1未満」ですが、個人事業主の場合、この「年収130万円」の数え方が、確定申告で計算する所得金額とは違うという点が実務上の分かれ目になります。複数の社会保険労務士事務所・健康保険組合の案内ページが共通して説明しているのは、被扶養者認定における自営業者の年収は、事業の総収入から売上原価と「直接的必要経費」(その経費がなければ事業が成り立たない、原材料費・仕入れ費など)を差し引いた額で計算されるという点です。所得税の確定申告で認められる必要経費(通信費・地代家賃・減価償却費など)より狭い範囲しか差し引けないとされています。

ここが要点

確定申告上は経費として認められる項目でも、社会保険の被扶養者認定では経費として扱われないことがあります。その結果、確定申告の所得は130万円未満でも、社会保険の判定基準に置き換えると130万円を超えてしまう、という逆転が起こり得ます。従業員給与の扱いは特に保険者(協会けんぽか、加入する健康保険組合か)によって差が大きい項目です。クボタ健康保険組合の案内ページは、雇用の恒常性を問わず従業員給与を直接的必要経費として一切認めない運用を示しています。一方、川崎重工業健康保険組合の案内ページは、恒常的に人を雇っている場合は認めないものの、一時的・臨時的な手伝いの謝礼等に限り認める運用を示しており、同じ「従業員を雇っている」状態でも保険者によって収入計算上130万円を超えるかどうかの結論が変わり得ます。実際の認定可否は、加入予定の健康保険の窓口に個別の事業内容を伝えて確認する必要があります。

一方、税金の配偶者控除は、事業所得者であれば所得税法上の必要経費(通常の確定申告と同じ範囲)を差し引いた合計所得金額で判定されます(所得税法第2条第1項第33号)。社会保険より広い経費が認められるため、「税金の扶養には入れるが、社会保険の扶養には入れない」という状態が起こり得ます。

配偶者を自分の扶養に入れている場合

逆に、自分が起業して、これまで配偶者を自分の健康保険・年金の扶養に入れていた場合はどうなるかは、起業の形態(個人事業主か法人化か)によって結論が変わります。個人事業主として国民健康保険に加入すると、被扶養者という制度自体がなくなり(国民健康保険法第5条・第6条)、配偶者も個別に国民健康保険・国民年金第1号被保険者への加入が必要になります。法人を設立して役員報酬を受け取り厚生年金・健康保険に加入し続ける場合は、配偶者の年収要件を満たせば扶養は継続できます。 この論点は起業したら妻の扶養はどうなるかの記事で、健康保険・年金・税金それぞれの手続きの流れまで詳しく整理しています。本記事では「壁」の金額と判定方法の違いに絞って説明します。

なぜ2つの壁はズレるのか

社会保険の壁と税金の壁がズレる理由は、大きく2つあります。

  1. 判定する「収入」の範囲が違う。 社会保険(健康保険の被扶養者認定)は、個人事業主の場合、直接的必要経費しか差し引けない狭い基準で年収を計算します。税金(配偶者控除)は、確定申告と同じ所得税法上の必要経費を差し引いた合計所得金額で判定します。同じ売上・同じ経費でも、制度によって手元に残る「収入」の数字が変わります
  2. 判定するタイミングが違う。 社会保険の被扶養者認定は、年間の見込み収入で随時判定されるのに対し、税金の配偶者控除は暦年(1月〜12月)の確定した所得で判定します。年の途中で収入が増減した場合、社会保険の扶養資格を先に外れて、税金の控除は年末の所得次第、という時間差が生じることがあります

起業直後は特にこのズレが表面化しやすい局面です。 開業して間もない時期は売上が安定せず、月によって収入が大きく変動しがちです。社会保険の扶養は「今後の見込み収入」で随時判定されるため、一時的に収入が増えた月があると、その時点で扶養資格の確認を求められることがあります。

比較表:社保の壁と税の壁

項目 社会保険の壁 税金の壁
制度 健康保険の被扶養者・国民年金第3号被保険者 配偶者控除・配偶者特別控除
基準額 年収130万円未満(60歳以上等は180万円未満)、かつ配偶者の年収の2分の1未満 合計所得金額58万円以下(令和7年分、給与収入のみ123万円以下)。令和8年分以後62万円以下
個人事業主の場合の収入計算 総収入-直接的必要経費(狭い範囲) 総収入-所得税法上の必要経費(通常の確定申告と同じ範囲)
判定するタイミング 見込み収入で随時判定 暦年(1〜12月)の確定した所得で判定
判定する窓口 加入する健康保険(協会けんぽ・健康保険組合) 税務署(確定申告・年末調整)
出典 健康保険法第3条第7項、昭和52年庁保発第9号・保発第9号、全国健康保険協会、国民年金法第7条第1項第3号 所得税法第2条第1項第33号・第83条・第83条の2、国税庁タックスアンサーNo.1191

実体験について、正直に書きます

私の場合

正直に書きます。私自身は2026年6月末に前職を退職し、合同会社の設立準備を進めている当事者です。この記事を書いている時点では、配偶者の健康保険・年金・税金いずれの扶養手続きも実際には行っていません。

そのため、この記事の内容は自分が手続きを終えた記録ではなく、法令・国税庁と全国健康保険協会の公式情報、および複数の社会保険労務士事務所・健康保険組合の解説を基にした「調査した範囲では」の整理です。特に個人事業主の「直接的必要経費」の扱いは保険者ごとに運用が分かれており、本文で挙げたクボタ健康保険組合と川崎重工業健康保険組合のように、公式案内どうしでも従業員給与の扱いの結論が異なります。自分の場合の判定は、加入予定の健康保険の窓口に事業内容を伝えて直接確認してください。実際に手続きを行う段階になったら、確認した内容をこの記事に追記する予定です。

次にやること

まず、自分の起業の形態(個人事業主か法人化か)と、配偶者が会社員か個人事業主かの組み合わせを先に確定させてください。 この組み合わせによって、社会保険の壁と税金の壁それぞれの結論が変わります。そのうえで、社会保険の扶養に入れるかどうかを個人事業主として試算する場合は、確定申告の所得ではなく「直接的必要経費」を差し引いた狭い基準で年収を見積もり、その数字と保険者の運用を、加入予定の健康保険の窓口(協会けんぽまたは健康保険組合)に個別に確認してください。税金の配偶者控除の基準額は年によって変わるため、確定申告を行う年の国税庁の最新情報を都度確認してください。

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※本記事は2026年9月時点の法令・公的機関の公式情報、および複数の社会保険労務士事務所・健康保険組合の解説記事と、筆者個人の状況に基づくものです。社会保険・税金いずれについても、個別の判定は収入の見込みや事業内容、加入する保険者によって変わるため、実際の手続き前には加入予定の健康保険の窓口・年金事務所・税務署または税理士に最新情報を確認してください。

出典 - 健康保険法 第3条第7項(被扶養者の定義。「主として被保険者により生計を維持する」という要件のみを定めており、年収130万円等の具体的な金額は本条には明記されていない) - 「収入がある者についての被扶養者の認定について」(昭和52年4月6日 庁保発第9号・保発第9号)(年収130万円未満・60歳以上または一定の障害がある場合は180万円未満という金額基準の行政通達上の根拠) - 被扶養者とは?|全国健康保険協会(被扶養者の認定基準:年収130万円未満〈60歳以上・一定の障害がある場合は180万円未満〉かつ被保険者の年収の2分の1未満。2026年9月確認) - 国民年金法 第7条第1項第3号(第3号被保険者の定義。配偶者が第2号被保険者であることが要件) - 国民健康保険法 第5条(都道府県内に住所を有する者を被保険者とする規定)・第6条(健康保険等の被保険者を国民健康保険の適用から除外する規定)。この条文構成により、健康保険のような被扶養者という区分がなく、配偶者も個別に被保険者となる - 所得税法 第2条第1項第33号(同一生計配偶者の定義。控除対象配偶者は同項第33号の2)、第83条(配偶者控除)、第83条の2(配偶者特別控除) - 国税庁タックスアンサー No.1191「配偶者控除」(令和7年分の所得要件:配偶者の合計所得金額58万円以下、給与収入のみの場合123万円以下。2026年9月確認) - 令和8年度税制改正の大綱|財務省(同一生計配偶者・扶養親族の合計所得金額要件を58万円以下→62万円以下に引き上げ、給与所得控除の最低保障額65万円→69万円に引き上げ〈令和8・9年分はさらに5万円の特例加算〉。これらを合算した給与収入換算の上限は令和8・9年分136万円以下、令和10年分以後131万円以下。2026年9月確認) - 個人事業主の社会保険被扶養者認定基準|鈴木英示会計事務所(自営業者の被扶養者認定における「年収」は、確定申告の所得金額ではなく、総収入から直接的必要経費を差し引いた額で判定されるとする解説。所得税法上の必要経費より狭い範囲。2026年9月確認) - 個人事業主となった奥様等が社会保険上の被扶養者でいられるかどうかの判断基準について|BPS国際税理士法人(同旨の解説。※本記事に従業員雇用に関する言及はなし。2026年9月確認) - 自営業者の認定について|クボタ健康保険組合(健康保険組合の案内ページにおける自営業者の収入計算の説明。売上原価・直接的必要経費以外(公租公課・宣伝費等)は控除対象外、従業員給与も認められないとする解説。2026年9月確認) - 自営業・個人事業主の被扶養者認定について|川崎重工業健康保険組合(給料賃金の欄について、恒常的に人を雇っている場合は経費として認めず、一時的・臨時的な手伝いの謝礼等に限り認める運用を示す解説。2026年9月確認) - 参考記事:起業したら妻の扶養はどうなるか(個人事業主・法人化それぞれの場合の手続きの流れを詳しく解説)

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会社を辞めて、会社をつくる準備をしている当事者です

執行役員として6年、会社の管理部門を統括する立場にいました。2026年に退職し、いまは求職活動と並行して、会社を立ち上げる準備を検討している段階です。まだ登記はしていません。調べて確かめたことだけを書き、済んでいない手続きは「これから」と正直に書きます。体験のふりをしません。

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