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会社を辞めて起業する手順

この記事の結論
  • 有給休暇は労働基準法39条により発生し、退職前に消化するのが原則(買取は原則不可)
  • 会社は離職日の翌日から10日以内に雇用保険被保険者資格喪失届をハローワークへ提出する義務がある(雇用保険法施行規則7条)
  • 期間の定めのない雇用契約は、退職の意思表示から2週間で法律上終了する(民法627条1項)
  • 合同会社の設立日は登記を申請した日であり(会社法579条)、退職前に急いで登記する法的な理由はない
この記事の内容
  1. 結論:退職前にやることは3つだけ
  2. 退職前にしかやりにくいこと3つ
    1. 信用情報が絡む契約を整えておく
    2. 就業規則・誓約書を確認しておく
    3. 有給消化と退職日を交渉しておく
  3. 会社設立の登記は退職後でいい理由
  4. 起業すると失業保険はどうなるか
  5. 比較表:退職前と退職後でやること一覧
  6. 実体験:退職前に何もしなかったこと
  7. 次にやること

この記事は、会社を辞めて起業しようとしていて、何を辞める前にやっておくべきか、何は辞めてからでいいのかが整理できていない人に向けて書いています。 結論から言うと、退職前にしかやりにくいことは「信用情報が絡む契約」「就業規則・誓約書の確認」「有給消化の交渉」の3つだけです。会社設立の登記そのものは、急いで退職前に済ませる法的な理由がありません。以下、それぞれの理由と、退職後にやることの一覧を並べます。

こんな状態ではありませんか
  • 起業のために会社を辞めようとしているが、退職前と退職後、どちらで何をすべきか順番がわからない
  • 会社設立の手続きは退職前にやるべきなのか、退職してからでいいのか判断がつかない
  • 退職前にやり忘れると取り返しがつかないことがあるなら、先に知っておきたい

結論:退職前にやることは3つだけ

会社を辞めて起業する場合、退職前にしかやりにくいことは次の3つに絞れます。

  1. 信用情報が絡む契約を整えておく:個人名義のクレジットカードなど
  2. 就業規則・誓約書を確認しておく:競業避止義務・秘密保持義務の有無
  3. 有給消化と退職日を交渉しておく:在職中でなければ交渉できない

それ以外――会社設立の登記、税務署への届出、社会保険の切替、屋号や事業目的の最終決定――は、すべて退職後でも間に合います。 むしろ在職中の副業規定に抵触するリスクを避けるために、退職後にやったほうが安全な手続きもあります。次の見出しから、それぞれの理由を説明します。

退職前にしかやりにくいこと3つ

信用情報が絡む契約を整えておく

クレジットカードやカードローンの新規契約は、一般的に、無職や独立直後の個人事業主・法人代表よりも、会社員として在職中のほうが審査に通りやすいとされています。具体的な審査基準は各カード会社が公表していないため断定はできませんが(2026年8月時点で個別の審査基準を公表しているカード会社は確認できませんでした)、クレジットカード会社自身が「開業前(会社員のうち)にカードを作っておくとよい」と案内しているケースがあります(JCB公式サイトの個人事業主向け案内など)。起業後に法人カードを作るつもりがあっても、個人名義のカードは在職中に整えておいたほうが選択肢が広がります。

就業規則・誓約書を確認しておく

多くの会社では、就業規則や入社時・退職時の誓約書に、退職後一定期間の競業避止義務(同業種での起業・転職を制限する条項)や秘密保持義務が定められています。これらの条項がどこまで法的に有効かは、制限の期間・地域・職種の範囲や、代償措置の有無など個別の事情によって判断が分かれます(経済産業省「競業避止義務契約の有効性について」)。起業する事業が前職と近い分野になる場合は、退職前に自分の誓約書の内容を確認し、不安があれば弁護士に相談してください。(条項の有無・内容は会社ごとに異なるため、一般論としての注意喚起にとどめます)

有給消化と退職日を交渉しておく

年次有給休暇は労働基準法39条に基づいて発生する権利で、原則として本人が請求した時季に取得できます。退職が決まってからでも、残っている有給を消化する権利は変わりません。ただし、有給消化の交渉は在職中にしかできません。 退職日をいつにするかで、次に説明する登記のタイミングや、社会保険の空白期間の長さが変わってくるため、辞める意思を伝える段階で退職日と有給消化の希望をまとめて伝えておくと後がスムーズです。なお、期間の定めのない雇用契約は、退職の意思表示から2週間が経過すれば法律上終了します(民法627条1項)。会社の承諾がなくても、この期間を過ぎれば退職自体は成立します。

会社設立の登記は退職後でいい理由

「起業するなら、会社設立の手続きも退職前から進めておくべきでは」と考える人もいますが、急ぐ必要はありません。理由は2つあります。

1つ目は、在職中の会社設立が就業規則の副業・兼業規定に抵触する可能性があることです。 会社の代表者や役員に就任すること自体を副業禁止規定の対象に含めている会社もあります。在職中に法人を設立したい場合は、事前に会社の規定を確認する必要があります。

2つ目は、合同会社・株式会社とも、設立日は法務局に登記を申請した日であることです(会社法は、株式会社について49条で、合同会社を含む持分会社について579条で、それぞれ「本店の所在地において設立の登記をすることによって成立する」と定めています)。 定款の内容を検討したり、資本金の額や決算月を決めたりする準備自体は退職前から進められますが、実際に登記を申請する行為そのものを退職前に急ぐ法的な理由はありません。定款の書き方や資本金の決め方は、別記事[合同会社設立の全手順]や[資本金はいくらにするか]で扱っています。

起業すると失業保険はどうなるか

退職後に起業を考えている人が気になるのが、失業保険(雇用保険の基本手当)との関係です。ハローワークの案内では、会社・団体の役員に就任している場合、原則として失業給付(基本手当)を受け取ることができないとされています(東京労働局ハローワーク渋谷「雇用保険求職者給付(失業保険)についてお問合せが多い項目(Q&A)」)。会社の設立登記や役員就任は「就職」とみなされる扱いになるということです。ただし、一定の条件を満たせば再就職手当のような給付を受けられる可能性があります。この記事では詳しく扱いません。制度の詳細は別記事[失業保険をもらいながら起業準備はできるか]で整理します。

比較表:退職前と退職後でやること一覧

区分 やること 理由・根拠
退職前 個人名義のクレジットカードを整えておく 在職中のほうが審査に通りやすい傾向があるとされる(各社の基準は非公開)
退職前 就業規則・誓約書の競業避止/秘密保持条項を確認する 起業する事業が前職と競合する場合、契約上の制約になりうる
退職前 有給消化の希望と退職日を伝える 労働基準法39条(年次有給休暇)。交渉できるのは在職中だけ
退職前 離職票が必要なことを会社に伝えておく 会社は離職日の翌日から10日以内に資格喪失届を提出する義務がある(雇用保険法施行規則7条)
退職後でいい 定款作成〜法務局への登記申請 設立日=登記申請日(会社法49条・579条)。副業規定に抵触するリスクを避けられる
退職後でいい 税務署・都道府県税事務所などへの各種届出 法人設立後にしか提出できない書類のため
退職後でいい 社会保険の切替(国民健康保険 or 任意継続) 退職後の手続き。期限の詳細は別記事[会社設立後の社会保険手続き]で扱う
退職後でいい 屋号・事業目的の最終決定 検討自体は退職前からできるが、決定を急ぐ必要はない

実体験:退職前に何もしなかったこと

私の場合

私自身は2026年6月末に前職を退職しました(会社都合退職)。独立・起業を前提にした退職でしたが、正直に言うと、退職前の段階で会社設立に向けた具体的な準備――定款の内容、資本金の額、決算月など――にはほとんど手を付けていませんでした。退職前にやったのは、有給消化の調整と、離職票が必要になることを会社に伝えておいたことの2点だけです。

離職票は退職日から3日後に届き、その後ハローワークで手続きを進めました(この経緯は別記事[会社を辞めたあと、何をいつまでにやるか]で詳しく書いています)。一方、個人名義のクレジットカードなど、在職中の信用情報を活かせたはずの手続きは、結果として何もしないまま退職日を迎えてしまいました。

この記事を書いている2026年8月31日時点でも、会社の登記はまだ完了していません(別記事[合同会社設立の全手順]でも同じことを正直に書いています)。振り返って「やっておけばよかった」と感じているのは、この記事の「退職前にしかやりにくいこと3つ」に挙げた項目そのものです。登記自体を焦る必要はありませんでしたが、信用情報が絡む手続きだけは在職中に済ませておくべきでした。

次にやること

まず、自分の就業規則と退職時の誓約書を読み返し、競業避止義務や秘密保持義務の条項がないか確認してください。 条項が無ければ、退職日と有給消化の希望を会社に伝える段階に進めます。会社設立の準備(定款の内容や資本金の額)は、退職を待たずに並行して検討を始めて構いません。定款や資本金の決め方をまだ固めていない場合は、次に[合同会社設立の全手順]を読んでください。

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※本記事は2026年8月時点の法令に基づく情報整理と、筆者個人の状況に基づくものです。就業規則の競業避止義務・秘密保持義務の有効性は個別の事情によって判断が分かれるため、内容に不安がある場合は弁護士など専門家に確認してください。社会保険の切替手続きの期限は一次情報未確認のため、別記事での確認まで具体的な日数は本記事に記載していません。

出典 - 労働基準法 第39条(年次有給休暇) - 民法 第627条1項(期間の定めのない雇用の解約の申入れ) - 雇用保険法施行規則 第7条(資格喪失届の提出期限) - 会社法 第49条(株式会社の成立)・第579条(持分会社の成立) - 東京労働局 ハローワーク渋谷「雇用保険求職者給付(失業保険)についてお問合せが多い項目(Q&A)」(役員就任時の失業給付の扱い、2026年8月確認) - JCB公式サイト「個人事業主がクレジットカードを開業前に作るメリットと事業用カードの選び方」(在職中のカード契約に関する案内、2026年8月確認) - 経済産業省「参考資料5 競業避止義務契約の有効性について」(競業避止義務の有効性判断基準)

当サイト運営者

会社を辞めて、会社をつくる準備をしている当事者です

執行役員として6年、会社の管理部門を統括する立場にいました。2026年に退職し、いまは求職活動と並行して、会社を立ち上げる準備を検討している段階です。まだ登記はしていません。調べて確かめたことだけを書き、済んでいない手続きは「これから」と正直に書きます。体験のふりをしません。

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