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一人社長の節税策を効果順に並べる

この記事の結論
  • 資本金1,000万円未満の新設法人は設立第1期・第2期の消費税が原則免除される(消費税法12条の2第1項、国税庁)
  • 小規模企業共済は掛金月額1,000〜70,000円が全額所得控除になる(小規模企業共済等掛金控除、中小機構)
  • 出張旅費規程の日当は所得税非課税(所得税法9条1項4号)かつ法人の損金算入(法人税法22条3項)という二重の効果を持つ
  • 中小企業者等の少額減価償却資産の特例は取得価額40万円未満(2026年3月31日以前の取得は30万円未満)の資産を年300万円まで即時償却できる(租税特別措置法67条の5、国税庁タックスアンサーNo.5408。適用期限は令和11年〈2029年〉3月31日までであることを改正後の条文原文で確認)
  • 経営セーフティ共済は「継続して1年以上事業を行っている」ことが加入条件で設立直後は使えない(中小機構)
  • 法人契約の生命保険は令和元年(2019年)の法人税基本通達改正で多くの商品の損金算入割合が制限された(法人税基本通達9-3-5)
  • 青色申告法人の欠損金は10年繰り越せる(法人税法57条)
この記事の内容
  1. 結論:9つの節税策を効果順に並べた
  2. 並べ方の基準|3つの軸で評価する
  3. 一覧表:効果順の9施策
  4. すぐに使える施策(1〜4位)
  5. 条件が整えば使える施策(5〜7位)
  6. 慎重に検討すべき施策(8〜9位)
  7. 節税策ではないが資金計画に入れておくもの
  8. 実体験について、正直に書きます
  9. 次にやること

この記事は、一人社長として会社を経営している、またはこれから設立する人で、「節税策はいろいろ聞くが、結局どれからやればいいのか」を整理したい人に向けて書いています。 結論から言うと、節税策は「誰でもすぐ使えて効果が大きいもの」から「条件がそろわないと使えないもの」まで幅があり、同じ土俵で比べられるものではありません。この記事では、役員報酬の決め方から共済・特例・保険まで9つを、効果の大きさ・条件のハードル・リスクと手間の3軸で並べ替えました。

こんな状態ではありませんか
  • 節税策の名前はいくつも聞くが、優先順位をどうつければいいか分からない
  • 全部やろうとすると手間もリスクも大きそうで、何から手を付けていいか迷う
  • 「節税になる」と聞いた話が、自分の会社にも当てはまる条件なのか判断できない

結論:9つの節税策を効果順に並べた

一人社長が検討する節税策には、大きく3つの層があります。1つ目は、会社を作った以上ほぼ全員が判断を迫られ、追加コストなしで効果が出る「役員報酬の決め方」。2つ目は、条件を満たせば誰でも使えるが、場面やタイミングが限られる「共済・特例・規程」。3つ目は、制度改正で効果が縮んだり条件のハードルが高かったりして慎重な検討が必要なものです。この3層を意識せずに片っ端から試すと、条件を満たさず使えなかったり、手間の割に効果が小さかったりします。

並べ方の基準|3つの軸で評価する

この記事では、次の3つの軸で9施策を評価し、順位を付けています。

  1. 効果の大きさ:節税額そのものが大きいか、対象になる金額の範囲が広いか
  2. 使える条件のハードル:設立直後から使えるか、一定の実態(出張・雇用・不動産契約など)が必要か
  3. リスクと手間:規程作成・契約変更・解約時の元本割れなど、実行に伴うコストや将来の制約

効果が大きくても条件のハードルが高い、または手間とリスクが大きい施策は順位を下げています。 たとえば経営セーフティ共済は掛金の損金算入という効果自体は大きいですが、設立から1年間は加入できないため優先順位を下げています。

一覧表:効果順の9施策

順位 施策 効果の目安 使える条件 注意点
1 役員報酬の決め方 個人差が大きいが全判断の土台 期首3か月以内に決定(法人税法34条) 原則1年間変更不可
2 小規模企業共済 掛金上限(年84万円)まで積立てた場合、所得税率10〜23%+住民税率10%の前提で目安年17万〜28万円程度の節税(中小機構の掛金全額所得控除の仕組みを基にした試算) 設立直後から加入可(建設業・製造業など常時使用従業員20人以下、商業(卸売業・小売業)・サービス業(宿泊業・娯楽業を除く)は5人以下) 納付240か月未満の解約は元本割れ
3 出張旅費規程 日当は損金算入かつ受取側は非課税 規程の作成と、同業他社比で相当な金額 出張実態の記録が必要
4 資本金・決算月の設計 消費税の納税義務が最大2期間免除 設立時にしか決められない一回きり 特定期間の売上・給与要件に注意
5 少額減価償却資産の特例 40万円未満の資産を年300万円まで即時償却(2026年4月から拡大) 青色申告の中小企業者等が対象(従業員400人以下) 適用期限は令和11年(2029年)3月31日まで
6 家族への給与支払い 所得を分散し世帯の税率を抑えられる 実際に働いてもらう実態が前提 過大な給与は不算入、社保負担も増
7 社宅方式 家賃の全額を損金算入できる 契約を法人名義に切替、または転貸 家主の承諾・保証会社の審査が壁
8 経営セーフティ共済 掛金全額を損金・必要経費に算入 継続1年以上の事業実績が条件 解約後2年以内の再加入は不算入
9 法人契約の生命保険 商品により損金算入割合が制限 商品ごとの損金算入割合の確認必須 2019年改正で効果縮小の商品が多い

すぐに使える施策(1〜4位)

1位の役員報酬の決め方は、節税策というより「節税の土台」です。 上げれば法人税は減り個人の所得税・住民税・社会保険料は増え、下げればその逆が起きます。詳しくは役員報酬の決め方|社会保険料と税金のバランス

2位の小規模企業共済は、設立直後から使える中で最も効果が確実です。 掛金は月額1,000円から70,000円まで自由に設定でき、全額が所得控除になります。加入条件と元本割れの基準は小規模企業共済|中小機構の公式ページで確認できます。

3位の出張旅費規程は、出張が発生する会社なら手間の割に効果が出やすい施策です。 規程に基づく日当は会社の経費にでき、受け取る本人には所得税がかからず(所得税法9条1項4号)、社会保険料の計算からも外れると解されています。日本年金機構の公式ページでは、標準報酬月額の対象は「労働の対償として経常的かつ実質的に受けるもの」とされ、「臨時に受けるもの」は対象外とされていますが、出張旅費・日当を名指しした記載までは見当たりません(2026年9月確認)。実費弁償にあたるため対象外という整理は複数の税理士解説で共通していますが、この点は一次資料での明記までは確認できていません。ただし出張の実態が前提で、金額は同業他社と比べて相当な範囲に限られます。詳しくは出張旅費規程で節税|一人社長でも作れる

4位の資本金・決算月の設計は、設立時にしか決められない一回きりの節税策です。 資本金1,000万円未満の新設法人は、原則として設立第1期・第2期の消費税の納税義務が免除されます(消費税法12条の2第1項)。ただし設立1期目の最初の6か月間の課税売上高・給与等支払額がいずれも1,000万円を超えると、2期目は免除されません(消費税法9条の2)。やり直しがきかないので設立前の段階でこそ見落とせません。

条件が整えば使える施策(5〜7位)

5位の少額減価償却資産の特例は、取得価額40万円未満のパソコン・什器などを、年300万円を上限に取得した年に全額損金算入できる制度です(租税特別措置法67条の5、国税庁タックスアンサーNo.5408)。2026年4月1日以後に取得する資産から取得価額の基準が30万円未満から40万円未満に引き上げられ、対象法人も常時使用従業員500人以下から400人以下に絞られました(令和8年度税制改正の大綱、財務省)。年300万円という年間の上限額はこの改正でも変わっていません。対象は青色申告書を提出する中小企業者等(資本金1億円以下など)に限られ、この改正で適用期限は3年延長されました。財務省の大綱原文には「その適用期限を3年延長する」とのみ書かれていますが、改正反映後の租税特別措置法67条の5の条文原文(e-Gov法令検索、2026年9月6日時点)には「平成十八年四月一日から令和十一年三月三十一日までの間に取得し」と明記されており、満了日は令和11年(2029年)3月31日で確定しています。設備投資の予定があるタイミングで使うと効果が出やすい施策です。

6位の家族への給与支払いは、所得を複数人に分散できる分、世帯全体の税負担を抑えられる可能性がある施策です。 ただし実際に業務を行っている実態が前提で、役員なら不相当に高額な役員給与の規定(法人税法34条2項、施行令70条)、従業員なら過大な使用人給与の規定(法人税法36条、施行令72条の2)がそれぞれ及びます。社会保険の加入対象になれば会社側の負担も増えるため、「効果はあるが実態とコストが伴う」施策として6位に置いています。

7位の社宅方式は、家賃を法人の経費にできる効果自体は大きいものの、実務上のハードルが高い施策です。 家賃の全額を経費にする代わりに役員から一定額(賃貸料相当額)を徴収する必要があり、賃貸契約を法人名義に切り替えるには家主の承諾や保証会社の再審査が必要になります。詳しくは自宅兼事務所の家賃は経費にできるか|法人の場合の整理

慎重に検討すべき施策(8〜9位)

8位の経営セーフティ共済は、掛金を全額損金・必要経費に算入できる効果自体は大きい制度ですが、「継続して1年以上事業を行っている」ことが加入条件のため設立直後は原則加入できません(中小機構)。事業が1年続いた時点で改めて検討する制度です。解約した金額は将来受け取るときに課税されるため、恒久的な節税ではなく「課税の繰延べ」である点も踏まえる必要があります。2024年10月以降、解約後2年以内の再加入は掛金を損金・必要経費に算入できない改正も入りました。

9位の法人契約の生命保険は、かつては保険料を全額損金にできる商品を使った節税スキームが広く使われていましたが、令和元年(2019年)6月の法人税基本通達改正で、多くの定期保険・第三分野保険は最高解約返戻率の区分に応じて損金算入できる割合が制限されるようになりました(法人税基本通達9-3-5)。「保険に入れば節税になる」という発想は現在の制度では通用せず、商品ごとの設計を個別確認する必要があるため最下位に置いています。

節税策ではないが資金計画に入れておくもの

このランキングには含めていませんが、知っておくべき項目が2つあります。法人住民税の均等割は、最低区分でも赤字であろうと年7万円が必ず発生します(地方税法第52条1項・第312条1項)。節税で回避できず、固定費として資金計画に組み込む項目です。詳しくは法人住民税の均等割|赤字でも年7万円かかる仕組み青色申告法人の欠損金の繰越控除(法人税法57条、10年繰越可)は、赤字が出た場合の保険的な仕組みで、赤字を出すために使う施策ではありません。

実体験について、正直に書きます

私の場合

正直に書きます。私自身は2026年に前職を退職し、合同会社の設立準備を進めている当事者ですが、この記事を書いている時点ではまだ登記が完了しておらず、ここに挙げた9つの節税策のどれも実行していません。この記事は各制度を調査した結果を「効果・条件・リスク」の3軸で並べ替えたものであり、自分の会社で運用した結果ではありません。登記後に実際どう決めたかを、この記事に追記する予定です。

次にやること

まず、自分の会社が「設立前」「設立直後」「設立から1年以上」のどの段階にあるかを確認してください。 設立前なら資本金・決算月の設計、設立直後なら役員報酬と小規模企業共済、1年以上経過していれば経営セーフティ共済も検討対象に入ります。詳しい条件はこの記事内でリンクした各記事で確認し、最終的な金額の判断は税理士に相談してください。


※本記事は2026年9月時点で調査した法令・国税庁・中小機構の公開情報と、筆者個人の状況に基づくものです。保険の損金算入割合は商品ごとに異なるため個別確認が必要です。実際の実行・金額の判断は税理士にご確認ください。

出典 - 法人税法 第34条・第36条・第57条、法人税法施行令 第70条・第72条の2 - 消費税法 第12条の2第1項・第9条の2 - 法人税基本通達9-3-5(定期保険等の保険料の取扱い) - 地方税法 第52条1項・第312条1項(均等割) - No.5408 中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例|国税庁(租税特別措置法67条の5。2026年9月時点、40万円未満・従業員400人以下への改正は反映されていない版が公開されている) - 令和8年度税制改正の大綱|財務省(少額減価償却資産の特例:40万円未満への引き上げ・従業員400人以下・適用期限3年延長) - 租税特別措置法|e-Gov法令検索(第67条の5の現行条文に取得価額「四十万円未満」・適用期限「令和十一年三月三十一日まで」の改正が反映されていることを法令APIで確認、2026年9月6日確認) - 小規模企業共済の掛金月額(1,000〜70,000円・500円単位)・全額所得控除・加入資格(建設業・製造業等は常時使用従業員20人以下、商業(卸売・小売業)・サービス業(宿泊業・娯楽業を除く)は5人以下)・解約手当金の算定方法(納付月数240か月未満の任意解約は元本割れ)|小規模企業共済|中小機構加入資格|中小機構 - 経営セーフティ共済の加入資格(継続して1年以上事業を行っていること)|加入資格|中小機構、2024年10月改正(解約後2年以内の再加入は掛金を損金・必要経費に算入不可)|税制の特例に関する内容の変更について|中小機構 - 所得税法9条1項4号、法人税法22条3項(出張旅費規程関連)、標準報酬月額の対象となる報酬の範囲(日本年金機構。出張旅費・日当を名指しした記載は確認できず、「臨時に受けるもの」の除外規定からの整理) - 本記事は役員報酬の決め方出張旅費規程で節税法人住民税の均等割自宅兼事務所の家賃は経費にできるか設立から2年間の消費税免税の各記事の内容を、優先順位の観点で再整理したものです

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会社を辞めて、会社をつくる準備をしている当事者です

執行役員として6年、会社の管理部門を統括する立場にいました。2026年に退職し、いまは求職活動と並行して、会社を立ち上げる準備を検討している段階です。まだ登記はしていません。調べて確かめたことだけを書き、済んでいない手続きは「これから」と正直に書きます。体験のふりをしません。

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