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合同会社から株式会社への組織変更

この記事の結論
  • 合同会社から株式会社への変更は「組織変更」と呼ばれ、会社を解散して新設するのではなく同一の法人格を保ったまま形態を変える手続きである(会社法第2条第26号)
  • 組織変更をする合同会社は組織変更計画を作成し、そこに定める事項が定められている(会社法第746条)
  • 効力発生日の前日までに総社員の同意を得る必要がある。定款に別段の定めがある場合を除く(会社法第781条第1項)
  • 債権者保護手続きとして、1か月以上の期間を定めて異議を述べることができる旨を官報公告し、知れている債権者には個別に催告する必要がある(会社法第781条第2項による第779条第2項の準用)
  • 官報公告に加えて定款の定めに従い日刊新聞紙または電子公告を行えば、個別催告を省略できる(会社法第779条第3項)
  • 効力発生日から2週間以内に、株式会社の設立登記と合同会社の解散登記を連件で申請する必要がある(会社法第920条)
  • 株式会社の設立登記の登録免許税は資本金の額の1000分の1.5(3万円に満たないときは3万円。組織変更前の資本金額を超える部分は1000分の7)で、合同会社の解散登記は3万円である(登録免許税法別表第一・二十四・(一)・ホおよび・レ)
  • 官報公告の掲載料は1行3,947円(税込・2026年4月1日改定、全国官報販売協同組合・官報公告オンラインの料金表による)で、実際の行数は公告文の内容によって変わり、行数自体の全国一律の目安を示す公的資料は確認できなかった(2026年9月6日確認)
この記事の内容
  1. 結論:会社は解散しない。組織変更計画→同意→公告→登記の順
  2. 組織変更とは何か|会社の同一性を保ったまま形態を変える
  3. 手続きの流れ|組織変更計画の作成から登記完了まで
  4. 最大の関所は債権者保護手続き|官報公告1か月以上
  5. かかる期間|最短でも1.5〜2か月
  6. かかる費用|登録免許税・官報公告・司法書士報酬
  7. なぜ株式会社に変えるのか
  8. 実体験について、正直に書きます
  9. 次にやること

この記事は、合同会社として起業した後、対外的な信用や資金調達のために株式会社への変更を検討している人に向けて書いています。 結論から言うと、合同会社から株式会社への変更は「組織変更」という会社法上の手続きで可能ですが、廃業して新しく会社を作り直すわけではありません。債権者保護手続き(官報公告)が必須で、最短でも1.5〜2か月、登録免許税だけで最低6万円、司法書士に依頼すれば合計で数十万円かかります。以下、手続きの流れ、かかる期間、かかる費用の順に整理します。

こんな状態ではありませんか
  • 合同会社で起業したが、取引先や金融機関から「株式会社の方が信用される」と言われた
  • 組織変更にどれくらいの時間とお金がかかるのか見当がつかない
  • 会社をいったんたたんで株式会社を作り直す必要があるのか不安

結論:会社は解散しない。組織変更計画→同意→公告→登記の順

合同会社から株式会社への変更は、会社法上「組織変更」と呼ばれる手続きです。会社をいったん解散して株式会社を新設するのではなく、同一の法人格を保ったまま、会社の種類だけを変える扱いになります(会社法第2条第26号)。

要点は次の4つです。

  • 組織変更をする合同会社は組織変更計画を作成する必要がある(会社法第746条)
  • 効力発生日の前日までに総社員の同意を得る必要がある(会社法第781条第1項)
  • 1か月以上の期間を定めて債権者に異議を述べる機会を与える「債権者保護手続き」が必須(会社法第781条第2項による第779条の準用)
  • 効力発生日から2週間以内に、株式会社の設立登記と合同会社の解散登記を連件で申請する(会社法第920条)

この4つのうち、最も時間がかかるのは債権者保護手続きです。 官報公告の期間だけで1か月以上を要するため、組織変更全体のスケジュールはこの期間に律速されます。

組織変更とは何か|会社の同一性を保ったまま形態を変える

「組織変更」は、合同会社(持分会社)と株式会社という会社法上まったく別の種類の会社の間で、会社の種類を変更する手続きを指す会社法上の用語です(会社法第2条第26号)。似た言葉に「組織再編」がありますが、合併や会社分割とは異なり、他の会社と一つになったり事業を切り出したりするわけではありません。

社名(商号)、事業目的、資本金の額などは、組織変更計画の中でそのまま引き継ぐことも、変更することも選べます。 合同会社の「業務執行社員」が組織変更後に自動的に株式会社の「取締役」になるわけではなく、組織変更計画の中で取締役となる者を新たに定める必要があります(会社法第746条第3号)。実務上は業務執行社員がそのまま取締役に就くことが多いものの、機関設計(取締役会を置くかどうかなど)も含めて、この計画の中であらためて決めることになります。

手続きの流れ|組織変更計画の作成から登記完了まで

組織変更の手続きは、大きく分けて次の順序で進みます。

順序 やること 根拠条文
1 組織変更計画の作成(商号・目的・発行可能株式総数・効力発生日などを定める) 会社法第746条
2 総社員の同意を得る(効力発生日の前日まで) 会社法第781条第1項
3 債権者保護手続き(官報公告・知れている債権者への個別催告) 会社法第781条第2項・第779条
4 効力発生日の到来 会社法第747条
5 株式会社の設立登記・合同会社の解散登記を連件で申請(効力発生日から2週間以内) 会社法第920条
ここが要点

総社員の同意は「原則として全員一致」です。 定款に別段の定め(多数決で足りる旨の定め)がある場合を除き、社員が1人でも反対すれば組織変更はできません(会社法第781条第1項)。一人合同会社であれば自分一人の同意で足りますが、複数の社員がいる合同会社では、この同意の取り付けが最初の関門になります。

最大の関所は債権者保護手続き|官報公告1か月以上

組織変更をする合同会社は、組織変更をする旨と、1か月を下らない期間内に異議を述べることができる旨を官報に公告し、かつ知れている債権者には個別に催告する必要があります(会社法第781条第2項による第779条第2項の準用)。

定款の定めに従って日刊新聞紙への掲載または電子公告を官報公告に加えて行えば、知れている債権者への個別の催告は不要になります(会社法第779条第3項)。個別催告の手間を省きたい場合に使われる方法ですが、その分だけ追加の公告費用がかかります。

期間内に債権者から異議が述べられた場合、組織変更をしても債権者を害するおそれがないときを除き、弁済・担保提供・財産の信託のいずれかを行う必要があります(会社法第779条第5項の準用)。この債権者保護手続きが効力発生日の前日までに終わっていない場合は、効力発生日そのものを変更する必要があります(会社法第781条第2項による第780条の準用)。

かかる期間|最短でも1.5〜2か月

債権者保護手続きの官報公告期間が1か月以上必須であるため、組織変更計画の作成から登記完了までは、最短でも1.5〜2か月程度を見込む必要があるとされています(RSM汐留パートナーズ司法書士法人・マネーフォワード クラウド会社設立の解説による)。公告の申し込みから実際の掲載までにも数日〜1週間程度のタイムラグがあるため、余裕を持ったスケジュールが必要です。

効力発生日から2週間以内に設立登記・解散登記を申請する義務がある一方(会社法第920条)、組織変更は登記が効力発生要件ではなく組織変更計画で定めた日に効力が生じるため、効力発生日そのものは法務局が閉まっている土日祝日を指定することも可能とされています(RSM汐留パートナーズ司法書士法人の解説による)。登記申請自体は平日に行う前提で、効力発生日と登記申請日を分けて計画する必要があります。

かかる費用|登録免許税・官報公告・司法書士報酬

自分ですべて手続きする場合と、司法書士に依頼する場合とで、かかる費用の内訳は次のように整理できます(※2026年9月時点の調査)。

費目 金額の目安 根拠・出典
株式会社設立登記の登録免許税 資本金の額の1000分の1.5(3万円未満は3万円) 登録免許税法別表第一・二十四・(一)・ホ
合同会社解散登記の登録免許税 3万円 登録免許税法別表第一・二十四・(一)・レ
官報公告掲載料 3〜4万円程度(1行3,947円税込・2026年4月1日改定の単価×行数) 全国官報販売協同組合・官報公告オンラインの料金表(単価は公表されているが、行数は公告文の内容によって変動するため全国一律の目安を示す公的資料は見当たらなかった。2026年9月6日確認)
司法書士報酬(依頼する場合) 10〜20万円台 複数の司法書士事務所の解説による

登録免許税だけで見ても、資本金の額によって金額が変わります。 資本金が少額(目安として資本金の額×0.15%が3万円を下回る水準)であれば、設立登記分は最低額の3万円になります。解散登記の3万円と合わせると、登録免許税だけで最低6万円が必要です。なお、組織変更にあわせて増資を行い、資本金の額が組織変更前の合同会社の資本金額を超える場合、その超過部分については税率が1000分の7に上がります(登録免許税法別表第一・二十四・(一)・ホ)。資本金額を変えずに組織変更するだけであれば、この上乗せは発生しません。これに官報公告費用と、司法書士に依頼する場合の報酬が加わります。

自分で手続きを進めれば司法書士報酬10〜20万円台を節約できますが、組織変更計画の作成や債権者保護手続きの実務は、通常の会社設立より難易度が高いとされています。 書類に不備があると債権者保護手続きをやり直す必要が生じ、かえって期間が延びるリスクがある点は考慮が必要です。

なぜ株式会社に変えるのか

組織変更を検討する理由として一般に挙げられるのは、次のような点です(複数の司法書士事務所・行政書士事務所の解説による)。

  • 株式会社の方が社会的な認知度が高く、取引先の与信審査や公共入札で有利になる場合がある
  • 金融機関からの融資審査で、株式会社の方が心証がよいとされる場合がある
  • 将来的に株式による資金調達(第三者からの出資)を予定している

「合同会社のままでは融資が受けられない」という事実はありません。 融資審査は会社の形態だけでなく、事業計画や財務状況で判断されます。組織変更には期間と費用がかかるため、変更する目的が明確でない場合は、まず合同会社のまま事業を進め、必要になった段階で検討するという順番でも遅くないと考えられます。

実体験について、正直に書きます

私の場合

正直に書きます。私自身は2026年に前職を退職し、法人設立の準備を進めている当事者ですが、検討しているのは合同会社での設立であり、株式会社への組織変更を実際に経験したことはありません。この記事は、将来的に組織変更が選択肢になり得ることを見越して、会社法の条文と複数の専門家の解説を調べてまとめたものです。合同会社と株式会社のどちらで始めるかを迷っている段階であれば、最初から株式会社で設立するのと、合同会社で始めて後から組織変更するのとでは、総費用も判断のタイミングも変わってきます。 この違いは、これから起業する人にとって、組織変更の手続き自体よりも先に考える価値がある論点だと感じました。

次にやること

まず、組織変更が本当に必要かどうかを、目的(信用力の向上・資金調達の予定など)に照らして確認してください。 目的が明確であれば、次に自社の定款を確認し、総社員の同意の要件(全員一致か、別段の定めがあるか)と、知れている債権者の範囲を洗い出してください。その上で、司法書士に依頼するかどうかを、報酬10〜20万円台と自分で対応する場合の手間・リスクを比較して判断し、依頼する場合は複数の事務所から見積もりを取ることをおすすめします。


※本記事は2026年9月6日時点で調査した内容と、筆者個人の状況に基づくものです。組織変更の手続き・費用は会社の資本金額・社員数・定款の内容によって異なるため、実際の手続きに際しては司法書士にご確認ください。

出典 - 会社法第2条第26号(組織変更の定義)、第746条(組織変更計画で定める事項)、第747条(効力発生日) - 会社法第780条(組織変更の効力発生日の変更)、第781条(組織変更計画の承認等・第2項により第779条〔第2項第2号を除く〕および第780条を準用)、第779条(債権者の異議) - 会社法第920条(組織変更の登記) - 登録免許税法別表第一・二十四・(一)・ホ(組織変更による株式会社の設立登記の税率。資本金額の0.15%、組織変更前の資本金額を超える部分は0.7%、最低3万円)、同・二十四・(一)・レ(合同会社の解散登記の税率。3万円) - 全国官報販売協同組合:官報公告掲載料金官報公告オンライン:官報公告掲載料金(2026年9月6日確認。会社等の各種公告は1行3,947円税込・2026年4月1日改定。これ以前の記事で見られる「1行3,524円」等の数字は改定前または出所不明のため使わない) - RSM汐留パートナーズ司法書士法人:組織変更の手続き(合同会社から株式会社へ)(2026年9月6日確認。手続きの流れ、効力発生日を土日祝日にできる点を確認) - マネーフォワード クラウド会社設立:合同会社から株式会社に変更するには?(2026年9月6日確認。期間・登録免許税・総費用の目安を確認) - GVA 法人登記:商業・法人登記の登録免許税一覧(2026年9月6日確認。組織変更による株式会社の設立登記が登録免許税法別表第一・二十四・(一)・ホ〔資本金額の0.15%、組織変更前の資本金額を超える部分は0.7%、最低3万円〕、解散登記が同・二十四・(一)・レ〔3万円〕であることを確認) - 官報公告の行数は公告文の記載内容(社名・代表者の人数など)によって変動する。全国官報販売協同組合・官報公告オンラインの料金ページを確認したが、1行あたりの単価は公表されているものの、行数そのものの全国一律の目安を示す公的資料は見当たらなかった(2026年9月6日確認。司法書士事務所の記載例では9行という例もあるが、個別の記載例であり一般的な水準かどうかは確認できていない) - 司法書士報酬の相場は依頼先によって変動するため、本記事では複数の解説記事が共通して示す目安(10〜20万円台)のみ記載

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会社を辞めて、会社をつくる準備をしている当事者です

執行役員として6年、会社の管理部門を統括する立場にいました。2026年に退職し、いまは求職活動と並行して、会社を立ち上げる準備を検討している段階です。まだ登記はしていません。調べて確かめたことだけを書き、済んでいない手続きは「これから」と正直に書きます。体験のふりをしません。

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