法人の予定納税とは
この記事の内容
事業年度が6か月を超える法人は、決算を待たずに「予定納税」を求められることがある。前期に税額が出た会社が対象で、当期の業績が悪化していても前期基準の金額をそのまま納めることになりがちだ。この記事は、いつ義務が生じるか、前年基準と仮決算のどちらを選ぶべきかを、条文の数字と計算例で示す。
法人の「予定納税」は正式には中間申告という
個人事業主の予定納税に当たる仕組みは、法人税では「中間申告」と呼ぶ。事業年度が6か月を超える普通法人は、原則として事業年度開始の日以後6か月を経過した日から2か月以内に、その事業年度の前半6か月分について中間申告書を提出し、納税する義務がある(法人税法71条1項、76条)。
中間申告には2種類あり、どちらか一方を選ぶ。
- 前年基準(予定申告):前事業年度の確定法人税額をもとに機械的に計算する方法(法人税法71条1項1号)
- 仮決算:事業年度開始から6か月間を1つの事業年度とみなして仮に決算を組み、その期間の実際の所得から税額を計算する方法(法人税法72条)
中間申告が必要になるのはどんな会社か
すべての法人に中間申告義務があるわけではない。前事業年度の確定法人税額を前事業年度の月数で割り、6を掛けて算出した金額(予定申告税額)が10万円以下の場合は、中間申告そのものが不要になる(法人税法71条1項ただし書)。
また、次のいずれかに当たる法人も対象外になる。
| 条件 | 中間申告の要否 |
|---|---|
| 前事業年度の確定法人税額×6÷前事業年度の月数が10万円超 | 必要 |
| 同上が10万円以下 | 不要 |
| 設立第1期(前事業年度が存在しない) | 不要 |
| 事業年度が6か月以下 | 不要 |
設立したばかりの会社は前事業年度の実績がないため、そもそも前年基準の計算ができず、中間申告は発生しない。義務が生じるのは2期目以降で、かつ前期に一定額以上の法人税を納めた会社に限られる。
前年基準(予定申告)とは|計算はこの1本の式だけ
前年基準を選ぶ場合、税務署から送られてくる予定申告書に前期実績をもとにした金額があらかじめ印字されており、自分で申告書を作成しなくても納付書のとおりに納めれば手続きが済む。計算式は次のとおり(法人税法71条1項1号)。
予定申告税額 = 前事業年度の確定法人税額 ÷ 前事業年度の月数 × 6
前期が12か月(通常の1年決算)であれば、前期の確定法人税額の半分をそのまま納めることになる。
計算例|前期の法人税額から中間納付額を出す
前提:前事業年度は12か月、前事業年度の確定法人税額は800万円だった会社の場合。
- 予定申告税額 = 800万円 ÷ 12 × 6 = 400万円
この400万円を、事業年度開始日から6か月を経過した日の翌日から2か月以内に納める。3月決算(4月〜翌3月)の会社であれば、上半期は9月末で終わり、申告・納付の期限は11月末になる。
同じ考え方で、義務があるかどうかも判定できる。前提:前事業年度は12か月、前事業年度の確定法人税額は15万円だった会社の場合。
- 予定申告税額 = 15万円 ÷ 12 × 6 = 7万5,000円 → 10万円以下のため中間申告は不要
前期の確定法人税額が20万円を超えるかどうかが、12か月決算の会社にとっての分かれ目になる(20万円÷12×6=10万円ちょうどとなり、これ以下なら中間申告は不要。20万円を超えれば必要になる)。
仮決算による中間申告とは|前年より業績が悪化した年に使う
前年基準は前期の実績だけを見るため、当期の業績が前期より落ち込んでいても、前期と同じ水準の税額を納めることになる。 ここで資金繰りに影響が出る場合に選べるのが仮決算による中間申告である。
事業年度開始から6か月間を1つの事業年度とみなして実際に決算を組み、その期間の所得に基づいて法人税額を計算し直す。当期の上半期が赤字、または前期より利益が小さければ、前年基準より納税額を抑えられる(法人税法72条)。
ただし決算そのものをもう一度組む作業になるため、前年基準に比べて事務負担と税理士報酬が発生する点は差し引いて考える必要がある。
前年基準と仮決算、どちらを選ぶべきか
| 比較項目 | 前年基準(予定申告) | 仮決算 |
|---|---|---|
| 手続きの手間 | 送付された納付書どおりに納めるだけ | 6か月分の決算を実際に組む必要がある |
| 当期業績が前期並み・好調 | 有利(手間がかからない) | 手間の割にメリットが薄い |
| 当期業績が前期より悪化 | 前期水準の税額をそのまま納める | 実際の業績に応じて減らせる可能性がある |
| 税理士費用 | 追加費用なし(通常は) | 中間決算の分だけ追加費用が発生しやすい |
判断の軸は単純で、前期より当期の業績が明らかに落ちていて、かつ決算を組む手間を払っても資金繰り上のメリットが大きいときだけ仮決算を検討する。業績が前期並みなら、何もせず前年基準の納付書どおりに納める方が合理的なことが多い。
仮決算を選べない場合がある
仮決算にはひとつ注意点がある。仮決算で計算した法人税額が、前年基準で計算した予定申告税額を超える場合、仮決算による中間申告書は提出できない(法人税法72条)。
つまり仮決算は「前期より業績が良くなっていて、前年基準よりも税額が増えてしまう」ケースでは使えない。この制限は、仮決算を使って本来より少ない額を先に申告し、後で調整するような使い方を防ぐための規定である。仮決算を検討する前に、当期上半期の業績が本当に前期を下回っているかを税理士と確認しておく必要がある。
中間申告書を出し忘れたらどうなるか
中間申告義務がある会社が、期限までに中間申告書を提出しなかった場合、税務署長に対して前年基準(予定申告)による中間申告書の提出があったものとみなされる(法人税法73条、みなし申告)。つまり「出し忘れたから中間申告そのものが消える」ということはなく、黙っていても自動的に前年基準の金額で申告したことになる。
ただし、みなし申告はあくまで申告書の扱いの話であり、納税義務そのものはなくならない。期限までに納付しなければ延滞税の対象になる(国税通則法60条)。仮決算のほうが有利だと分かっていても、申告期限までに仮決算の中間申告書を提出しなければ、自動的に前年基準の金額の適用に切り替わってしまう。仮決算を選ぶと決めたら、期限内に申告書を提出するところまでが1セットになる。
消費税にも中間申告があるが、基準は別建て
法人税とは別に、消費税及び地方消費税にも中間申告制度がある。直前の課税期間の確定消費税額(年税額)が48万円を超えると年1回、400万円を超えると年3回、4,800万円を超えると年11回の中間申告・納付が必要になる(国税庁タックスアンサーNo.6609)。判定基準も回数も法人税とは別建てのため、法人税の中間申告が不要でも消費税の中間申告義務だけが発生することがある。この記事では法人税の中間申告に絞って扱い、消費税側の詳しい計算は別途確認が要る。
次にやること
前期の確定申告書を開き、法人税額を12(前事業年度の月数)で割って6を掛けた金額が10万円を超えているかを確認する。超えていれば中間申告義務があるということなので、当期上半期の業績が前期より明らかに悪化していないかを税理士に相談し、前年基準のまま納めるか仮決算に切り替えるかをそこで決める。