適格請求書の書き間違いを直す
- 適格請求書発行事業者は、交付した適格請求書等の記載事項に誤りがあった場合、相手方に修正した適格請求書等を交付する義務を負う(消費税法57条の4第4項・第5項)
- 交付方法は、国税庁が例として挙げる「誤りを修正し記載事項の全てを改めて記載したものを交付する方法」と「当初交付したものとの関連性を明らかにし修正した事項を明示したものを交付する方法」の2つ(国税庁インボイスQ&A問33、令和3年7月追加・令和5年10月改訂)
- 修正版を交付した発行事業者は、当初交付分の写しと修正した適格請求書等の写しの両方を保存する義務を負う(消費税法57条の4第6項)。保存期間は交付した日の属する課税期間の末日の翌日から2か月を経過した日から7年間(消費税法施行令70条の13第1項、同Q&A問79)
- 受け取った側(買手)は、原則として記載事項を自分で追記・修正することはできず、発行事業者に修正版の交付を求めてそれを保存する必要がある(国税庁インボイスQ&A問92、令和3年7月追加・令和6年4月改訂)。例外として、買手が仕入明細書等を作成し発行事業者の確認を受けた場合は、それも仕入税額控除の要件を満たす書類になる(消費税法30条9項3号)
この記事の内容
この記事は、自社が発行した適格請求書(インボイス)に金額や税率の記載ミスが見つかった代表者、または取引先から受け取った適格請求書に誤りを見つけた代表者に向けて書いています。 結論から言うと、直す義務があるのは発行した側であり、受け取った側は原則として自分で書き直せません。誰が・どんな形で・どこまで保存するかを、国税庁のインボイスQ&Aに基づいて整理します。
- 自分が出した請求書の金額を間違えていたことに、取引先からの指摘で気づいた
- 取引先から届いた適格請求書の税率区分が明らかにおかしいが、自分で赤字修正して保存していいのか分からない
- 修正した請求書を、もとの間違った請求書と一緒に残すべきか、差し替えて捨てていいのか分からない
結論:直すのは発行した側。受け取った側は自分で書き直せない
適格請求書発行事業者は、交付した適格請求書・適格簡易請求書・適格返還請求書の記載事項に誤りがあったとき、その書類を交付した相手方に対して、修正した適格請求書等を交付しなければならない、と定められています(消費税法57条の4第4項・第5項)。つまり、直す責任と義務は発行した側にあります。
一方、受け取った側(買手)は、届いた適格請求書に誤りを見つけても、原則として自分で追記や修正を行うことはできません(国税庁インボイスQ&A問92)。取引先に修正版の交付を求め、それを受け取って保存する、という流れが基本になります。
自分が発行した側なら「修正版をどう作って渡すか」、受け取った側なら「どう求めて何を保存するか」。この記事はこの2つを分けて説明します。
なぜ受け取った側は自分で直してはいけないのか
適格請求書は、発行事業者の登録番号や税率区分など、発行した側の情報と判断が乗っている書類です。受け取った側が中身を書き換えてしまうと、その書類が本当に発行事業者の意思を反映したものかどうか、誰にも確認できなくなります。仕入税額控除の根拠になる書類なので、発行元の関与を切り離せないのだと考えられます(この理由づけはQ&Aの文言ではなく、本記事の整理です。受け取った側は原則として自ら追記や修正を行えない、という扱い自体は国税庁インボイスQ&A問92に書かれています)。
例外はあります。買手が自分で気づいた誤りを修正し、その修正した事項について発行元の確認を受ければ、その書類は「修正した事項を明示した仕入明細書等」として扱われ、保存の要件を満たします(同問92、消費税法30条9項3号)。ポイントは「自分だけで直して終わり」にせず、必ず発行元の確認という一手間を挟む点です。この方法は後の章で詳しく扱います。
修正した適格請求書等の交付方法は、国税庁が例示する2つ
発行した側が修正版を交付する方法として、国税庁のインボイスQ&A(問33)は「例えば」として次の2つを挙げています(原文は「などが考えられます」で、この2つに限ると書いてはいません)。
| 方法 | 内容 |
|---|---|
| ①全部を改めて交付する方法 | 誤りがあった事項を直し、記載事項の全てを改めて記載した請求書を新規に作り直して交付する |
| ②差分だけを明示して交付する方法 | 当初交付したものとの関連性が分かるようにしたうえで、修正した事項だけを記載した書類(例:「〇年〇月〇日付4月分請求書について、下記のとおり誤りがありましたので修正いたします」という文言と、誤りと正しい数字の対比)を交付する |
②の場合、国税庁の例では「当初の適格請求書と合わせて保存願います」という一文が添えられています。つまり②は単体では完結せず、当初の書類とセットで初めて修正の中身が分かる形になる、という前提です(同問33)。
なお、当初の書類を電磁的記録(PDFなど)で提供していた場合も、誤りがあれば修正版を交付する義務の対象に含まれます(同問33、消費税法57条の4第4項・第5項)。
保存はどうなるか|発行した側と受け取った側で違う
保存の扱いは、発行した側と受け取った側で別のルールになります。
| 立場 | 保存するもの | 根拠 |
|---|---|---|
| 発行した側(売手) | 当初交付した適格請求書の写し、および修正した適格請求書等(①または②)の写しの両方 | 消費税法57条の4第6項、国税庁インボイスQ&A問33 |
| 受け取った側(買手) | 発行元から交付を受けた修正後の適格請求書等 | 国税庁インボイスQ&A問92 |
発行した側は「間違ったものを捨てて修正版だけ残す」ことができません。当初のものと修正後のものを両方残して初めて、記録として成立します(同問33)。
保存期間は、交付した日または提供した日の属する課税期間の末日の翌日から2か月を経過した日から7年間、納税地またはその取引に係る事務所等の所在地で保存する必要があります(消費税法施行令70条の13第1項、国税庁インボイスQ&A問79)。修正版だけ短く保存すればよい、という扱いにはなっていません。
なお「写し」は、交付した書類そのものの複写に限らず、記載事項が確認できる程度の一覧表や明細表の保存でも足りるとされています(同Q&A問78)。自己が一貫して電子計算機で作成した適格請求書であれば、その写しを電磁的記録のまま保存することも認められています(同問78・問80)。
発行元の対応が遅いときの代替策|仕入明細書等を自分で作る
取引先(発行元)に修正を依頼しても、すぐに動いてもらえないことがあります。このとき、受け取った側にも打てる手があります。
一定事項が記載された仕入明細書等を自分で作成し、発行事業者の確認を受ければ、その書類は仕入税額控除の適用に必要な請求書等として扱われます(消費税法30条9項3号、国税庁インボイスQ&A問92)。具体的には、受け取った適格請求書に不足していた事項(例:軽減税率対象品目である旨)を買手側で補い、その補った内容について発行元に確認をもらう、という進め方です。国税庁の例では、書類に「訂正事項につき〇月〇日先方確認済み」と一言添えるだけの簡単な形が示されています。
ただしこの方法を使った場合でも、発行元は当初交付した適格請求書の写しを保存する義務を免れません(消費税法57条の4第6項)。「買手側で処理したから発行元は何もしなくていい」わけではなく、発行元の保存義務はそのまま残る点に注意してください。
文例:発行元に修正版の交付を依頼する言い方
請求書の誤りに気づいたとき、取引先にそのまま送れる依頼文です。メールでコピーして使えます。
件名:請求書の記載内容についてご確認のお願い
〇〇株式会社
〇〇様
お世話になっております。株式会社△△の〇〇です。
〇年〇月〇日付でいただいた請求書(4月分)について、
10%対象の金額と消費税額の記載に誤りがあるようです。
【誤】10%対象 売上金額(税抜) 100,000円 消費税額等 10,000円
【正】10%対象 売上金額(税抜) 110,000円 消費税額等 11,000円
お手数をおかけしますが、修正した適格請求書の交付をお願いできますでしょうか。
当方の帳簿の保存に必要なため、恐れ入りますがご対応いただけますと幸いです。
何卒よろしくお願いいたします。
数字の部分は自社の状況に置き換えて使ってください。誤りの箇所を先方が特定しやすいよう、日付と項目を具体的に書くのがポイントです。
チェックリスト:修正版を受け取ったときに確認すること
修正した適格請求書等が届いたら、保存する前に次を確かめてください。
- □ 記載事項の全てが改めて記載された①の形式か、差分だけを示す②の形式かを確認した
- □ ②の形式の場合、当初交付された適格請求書との関連性(日付・請求書番号など)が明示されているか確認した
- □ ②の形式の場合、当初の適格請求書と合わせて保存する必要があることを社内の担当者に共有した
- □ 修正後の金額・税率区分が、実際の取引内容と一致しているか確認した
- □ 自社が発行した側の場合、当初交付分の写しを廃棄せずに残しているか確認した
- □ 保存期間(交付日の属する課税期間の末日の翌日から2か月を経過した日から7年間)を会計ソフトや保存フォルダのルールに反映しているか確認した
間違いに気づいたとき、責めなくていい
自分が発行した請求書の間違いに気づいたときも、取引先から届いた請求書の誤りに気づいたときも、最初に浮かぶのは「面倒な連絡をしなければならない」という気の重さだと思います。特に自分が出した側の間違いだと、取引先に指摘されて初めて気づくことも多く、ばつの悪さを感じやすい場面です。
ただ、記載ミスは珍しいことではありません。国税庁が交付方法の例と書式の例まで示しているのは、記載ミスが起こりうることを前提にしているからだと読めます。直し方が決まっている以上、必要なのは「正しい手順を踏む」ことだけで、必要以上に恐縮する場面ではありません。
やることは、間違いに気づいた時点で、発行した側なら修正版を作って送ること、受け取った側なら発行元に修正版を求めることの1つだけです。
実体験について、正直に書きます
正直に書きます。適格請求書の記載ミスを自社で修正した、または取引先に修正を依頼した具体的な記録は、今のところ手元にありません。この記事は、消費税法・国税庁のインボイスQ&Aの公開情報をもとにした整理です。今後、実際に修正のやり取りが発生した場合は、その経緯をこの記事に追記します。
次にやること
まず、直近で自社が発行した請求書と、取引先から受け取った請求書を見直し、金額・税率区分に誤りがないか確認してください。 誤りを見つけたら、自社発行分は上の①②いずれかの形式で修正版を作り、当初分と合わせて保存します。取引先発行分は、上の文例を使って修正版の交付を依頼し、届いたら修正後の書類を保存してください(国税庁Q&A問92が求めているのは修正後の書類の保存です。当初の書類も、経緯が分かるよう捨てずに残しておくと安心です)。仕入明細書等による代替対応を検討する場合や、電磁的記録での保存方法に迷う場合は、顧問税理士に個別に確認することをおすすめします。
※本記事は2026年10月に確認した消費税法の条文および国税庁インボイスQ&A(問33・問92・問78〜80は原文を確認)の公開情報をもとにした整理です。個別の取引における修正方法・保存方法の適否は、最終的に顧問税理士にご確認ください。この記事は一般的な整理であり、個別の税務相談の代わりにはなりません。
出典 - 消費税法第57条の4第4項・第5項・第6項(適格請求書発行事業者の義務) - 消費税法第30条第9項第3号(仕入明細書等の取扱い) - 消費税法施行令第70条の13第1項(適格請求書の写しの保存期間) - 国税庁「消費税の仕入税額控除制度における適格請求書等保存方式に関するQ&A」問33(修正した適格請求書等の交付方法)(2026年10月確認) - 同Q&A問92(交付を受けた適格請求書に誤りがあった場合の対応)(2026年10月確認) - 同Q&A問78・問79(適格請求書等の写しの保存)(2026年10月確認)