輸入物販の法人化
この記事の内容
個人事業主として海外から商品を仕入れて売っている人が、会社(法人)を作ったあとに、通関業者へ何を伝えれば輸入名義が切り替わるのか、輸入のときに払う消費税がどう変わるのかを書く。「個人のまま輸入した分は法人の経費になるのか」「法人にしたら輸入消費税は免除されるのか」に答える。最後に、通関業者へ送る文例と、切り替え前に確かめる□のチェックリスト、消費税の計算例を付ける。
法人を作ったのに、荷物の宛名も通関の名義もまだ個人のまま。次の仕入れを入れていいのか、順番が見えなくて手が止まっている人もいると思う。輸入は税関で税金を払う場面が入るので、一つずつ分けて見ていく。
結論:輸入の名義は法人に切り替える。輸入消費税は、課税事業者なら取り戻せる
先に答えを言う。国税庁と税関の公式ページ(2026年9月21日確認)を読む限り、次の4点が土台になる。
- 輸入消費税を仕入れの税額として引けるのは、貨物を引き取った者、つまり輸入申告を行った者。輸入手続を代行業者に任せた場合も、控除できるのは輸入申告をした本人で、代行した側ではない(消費税法30条、国税庁 質疑応答事例「輸入取引に係る輸入手続を委託した場合の仕入税額控除の取扱いについて」)
- 法人番号を持つ法人は、輸出入申告に法人番号を使える。税関発給コードの新規申請は、法人番号を記載することで済むとされている(税関「税関発給コード申請手続き」)
- 輸入消費税は、免税事業者でも輸入した人が納める(国税庁 No.6133)
- 輸入消費税を売上の消費税から引けるのは、課税事業者になっている場合
つまり、「輸入者名義を法人にする」と「法人が課税事業者か確かめる」の2つが要る。
個人名義のままだと、法人の仕入れにならない
法人ができても、これまでの輸入の名義が自動で法人に移るわけではない。
国税庁の質疑応答事例(2026年10月3日確認)には、輸入消費税の仕入税額控除を受けるのは、消費税法30条にもとづき課税貨物を引き取った者、つまり輸入申告を行った者で、輸入代行者ではない、と書かれている。また国税庁(No.6497)は、控除の証拠として、税関長から交付を受ける輸入許可書などの保存を挙げている。法人化の場面に置き直すとこうなる。
| 輸入のときの名義 | 輸入申告を行った者 | 輸入消費税の控除ができる人 |
|---|---|---|
| 個人のまま | 個人(あなた個人) | 個人事業のほう |
| 法人で申告 | 法人 | 法人のほう |
法人で売る在庫を個人名義で輸入すると、輸入消費税を引ける側と売る側の名義が食い違う。あとから帳簿で直せるかは、この記事では確認していない。切り替えの日を先に決め、その日以降の輸入から法人名義にするのが安全だ。すでに輸送中の荷物や個人の手持ち在庫の扱いは別の論点なので、到着日を伝えて税理士と通関業者に相談してほしい。
通関業者には、法人の名前とコードを伝える
通関業者に伝えるのは、輸入者が個人から法人に変わること、法人名・所在地・法人番号、荷物と請求書の宛名も法人に揃えること。税関側の扱いは、公式ページ(2026年9月21日確認)でこうなっている。
| 相手 | 使うコード | 公式ページでの扱い |
|---|---|---|
| 法人番号を持つ法人 | 法人番号 | 事前の登録手続きなしに、輸出入申告に使える |
| 法人番号を持たない個人(個人事業主を含む) | 税関輸出入者コード | 税関に申請して発給を受ける |
個人事業主のときの税関輸出入者コードを法人が引き継ぐという記載は、確認したページの範囲では見つからなかった(2026年9月21日確認)。法人番号で輸入する前提で、通関業者に話すのが自然だ。
通関業者ごとに、取引先の登録や委任の書類の形が違う。何を求められるかは、この記事では確認していない。最初のメールで聞いてしまうのが早い。国際宅配便で届く荷物の宛名の扱いも、運送会社の案内が正になるので、窓口に聞いておく。
文例:通関業者へ送る、名義切り替えの連絡メール
そのまま貼って、◯◯を埋めれば使える形にした。宛先は、いま使っている通関業者。
件名:輸入者名義の変更のご相談(◯◯屋 → 株式会社◯◯)
◯◯通関株式会社
◯◯ご担当者様
いつもお世話になっております。
個人事業「◯◯屋」の◯◯です。
このたび法人を設立し、◯年◯月◯日以降の輸入は、
下記の法人を輸入者として行いたく、ご連絡いたしました。
・法人名:株式会社◯◯
・所在地:◯◯県◯◯市◯◯
・法人番号:◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯
・代表者:◯◯ ◯◯
・電話:◯◯◯-◯◯◯◯-◯◯◯◯
つきましては、次の点を教えてください。
1. 輸入者を法人に変更するために必要な書類と、提出の期限
2. 輸入申告に使うコード(法人番号でよいか)
3. 現在、輸送中の荷物(◯月◯日到着予定・◯◯社発)について、
個人名義のまま通関するか、法人名義にできるか
4. 輸入許可書の受け取り方法(原本・データのどちらか)
お手数ですが、よろしくお願いいたします。
株式会社◯◯
◯◯ ◯◯
3の「輸送中の荷物」は、先に聞いておく価値が高い。
法人にしても、輸入消費税は免除にならない
国税庁(No.6133、2026年9月21日確認)は、輸入の納税義務者は国内取引のように事業者に限られず、事業者免税点制度などの規定も設けられていない、と説明している。免税事業者でも、輸入すれば消費税を払う。
計算のもとになる金額(課税標準)は、国税庁(No.6563)によると、関税の課税価格(CIF価格)に、関税額と、消費税以外の個別消費税額を足した金額。税率は、標準税率で消費税7.8%、地方消費税2.2%(消費税額の22/78)、合わせて10%。飲食料品には軽減税率(消費税6.24%、地方消費税1.76%、合わせて8%)がかかる(税関 カスタムスアンサー1111)。この記事の輸入品は飲食料品ではない前提で、標準の10%で計算する。
払うのは貨物を引き取るとき。担保を提供すれば、担保の額の範囲内の消費税額について、最長3か月の納期限の延長が認められる(国税庁 No.6563)。担保の出し方は通関業者に聞く。
課税事業者と免税事業者、どちらで輸入するか
輸入消費税を払うのは同じでも、そのあと取り戻せるかどうかが分かれる。
| 課税事業者 | 免税事業者 | |
|---|---|---|
| 売上にかかる消費税 | 納める | 納めない |
| 輸入消費税 | 納めたあと、仕入税額として引ける | 納めっぱなしで戻らない |
| 輸入が多く売上が少ない期 | 引ききれない分が還付になる | 還付はない |
新しく作った会社は、資本金で最初の扱いが変わる。国税庁(No.6503、2026年9月21日確認)は、事業年度開始の日の資本金が1,000万円以上の法人は、その課税期間の納税義務は免除されない(課税事業者になる)としている。1,000万円未満の場合の判定は、この記事では扱わない。税理士に確かめてほしい。
免税事業者のままでも、届出を出せば課税事業者になれる。国税庁(No.6501、2026年9月21日確認)を読む限り、こうなる。
- 課税事業者選択届出書は、原則として、提出した課税期間の翌課税期間から効力が出る
- 事業を開始した日の属する課税期間などは、提出した課税期間から課税事業者になれる場合がある
- 一度選ぶと、原則として課税事業者となった日から2年を経過する日の属する課税期間の初日以後でなければ、やめる届出ができない
輸入が始まる期に間に合うか、日付で確かめておく。
計算例:輸入消費税は、いくら払って、いくら戻るか
条件を仮に置いて、数字を出してみる。実際の関税率や端数の処理は品目で変わるので、あくまで考え方を見るための例。
前提
- 法人が、商品を1回輸入する
- CIF価格:1,000,000円
- 関税率:5%(仮置き)
- 消費税の税率:標準の10%(国7.8%+地方2.2%)
- 期内の売上(税抜)は、A:在庫の一部が売れて800,000円、B:全部売れて2,200,000円の2通りで見る
輸入のときに払う金額(税関で納める)
| 項目 | 計算 | 金額 |
|---|---|---|
| CIF価格 | 1,000,000円 | |
| 関税 | 1,000,000 × 5% | 50,000円 |
| 課税標準 | 1,000,000 + 50,000 | 1,050,000円 |
| 消費税(国) | 1,050,000 × 7.8% | 81,900円 |
| 地方消費税 | 81,900 × 22 ÷ 78 | 23,100円 |
| 輸入消費税 合計 | 81,900 + 23,100 | 105,000円 |
期末に課税事業者として計算したとき
| A:一部が売れた期 | B:全部売れた期 | |
|---|---|---|
| 売上にかかる消費税(税抜売上 × 10%) | 80,000円 | 220,000円 |
| 引ける輸入消費税 | 105,000円 | 105,000円 |
| 差引 | −25,000円(還付) | 115,000円(納付) |
Aは、売上より輸入のほうが大きいので、25,000円が戻る。Bは、売上のほうが大きいので、差の115,000円を納める。
免税事業者のままだった場合
- A:輸入消費税105,000円は戻らず、売上の消費税80,000円は納めなくてよい。手元の差引は −25,000円
- B:輸入消費税105,000円は戻らず、売上の消費税220,000円は納めなくてよい。手元の差引は +115,000円
在庫を積んで売り切っていないAの期は課税事業者が有利で、売り切ったBの期は免税事業者が有利になる。年間の見込みで比べるとよい。インボイス制度の登録の判断は、この記事では扱っていない。
1万円以下の荷物は免税になるのか
税関のカスタムスアンサー1006(2026年9月21日確認)によると、課税価格の合計額が1万円以下の物品の輸入は、関税と消費税が免税になる。酒税、たばこ税など消費税以外の内国消費税がかかる物品は、その税は免税にならない。さらに次の注意がある。
- 1申告の課税価格の合計で判断する。1インボイスの貨物を分けて申告しても、そのインボイス全部を合計する
- 「関税を免税しない物品」として定められた革製のカバンやハンドバッグ、編物製衣類(Tシャツ、セーター等)、革靴などは、税関で個人的使用と認められる贈与品の場合を除き、1万円以下でも免税にならない(関税定率法施行令16条の3)
商用の仕入れで免税を当てにしすぎず、対象かどうかは通関業者に貨物の内容を伝えて確かめる。
チェックリスト:法人での輸入に切り替える前の確認
次の項目を、上から順に□で確かめていく。
□ 法人の設立日と、法人番号が手元にある □ 切り替えの日(「この日以降の輸入は法人名義」)を決めた □ 通関業者に、輸入者が個人から法人に変わることを伝えた(上の文例) □ 通関業者から、必要書類と提出の期限を聞いた □ 輸送中の荷物について、個人名義のまま通関するか、法人にできるかを確認した □ 海外の仕入先に、請求書(インボイス)の宛名を法人名に直してもらうよう頼んだ □ 法人が課税事業者か免税事業者かを、資本金と設立日から確かめた □ 免税事業者になる場合、課税事業者選択届出書を出す時期を、税理士と決めた □ 輸入許可書を、通関業者から受け取って保存する場所を決めた
手続きが一度に増えて、手が止まるのは普通のこと
法人を作ると、名義、コード、消費税、届出と、個人事業のときに見なくてよかった手続きが一度に来る。手が止まるのは、内容が難しいというより順番が見えていないからだと思う。
調べた範囲では、通関業者への連絡は「法人名・法人番号・切り替えの日」を渡すところから始まる。全部を理解してから動かなくていい。通関業者と税理士に「いつまでに何が要るか」を聞くだけで、半分は前に進む。
次にやること
今日、通関業者に上の文例を送る。荷物の到着予定日と法人番号を入れて。