設立のあとまで分かる会社設立ガイド 決める前の疑問から、設立のあとの手続きまで
ホーム › 法人の実印・銀行印はどこまで必要か

法人の実印・銀行印はどこまで必要か

この記事の結論
  • 会社の代表者印(いわゆる法人の実印)を登記所へ届け出ること自体は2021年2月15日の商業登記規則改正で任意化されている(法務省)
  • 銀行印は法律上の届出制度ではなく、法人口座を開く金融機関ごとの取り決めで、口座開設時には必ず登録が必要になる
  • 角印(社印)は請求書・領収書に押す認印で、法的な届出制度も義務もない
  • 印鑑証明書は代表者印を登記所に届け出た場合に登記所(法務局)で取得できる
  • 代表者印を紛失・盗難した場合は改印の届出が必要になる(商業登記規則)
この記事の内容
  1. 結論:法律上の必須は0本、実務上はほぼ2本
  2. 会社の実印(代表者印)とは何か
  3. 銀行印とは何か
  4. 角印(社印)とは何か
  5. 実印の届出は本当に必要か(2021年改正の中身)
  6. 実印と銀行印は同じにするか分けるか
  7. 比較表:3つの印鑑の違い
  8. 実体験について、正直に書きます
  9. 次にやること

この記事は、会社設立にあたって印鑑を何本用意すればいいのか分からず、「実印」「銀行印」「角印」という言葉が混ざって不安な人に向けて書いています。 結論から言うと、法律上の届出が必須な印鑑は実は1本もありません。ただし法人口座を開設したり、契約書を交わしたりする実務の場面では、代表者印(実印)と銀行印の2本は事実上ほぼ必須になります。以下、3種類の印鑑がそれぞれ何のためにあるのか、どこまで必要かを整理します。

こんな状態ではありませんか
  • 「実印」「銀行印」「角印」の違いがよく分からず、何本作ればいいのか分からない
  • 会社の実印は必ず登記所に届け出なければいけないと思い込んでいる
  • 印鑑を1本にまとめて節約していいのか、分けたほうがいいのか判断がつかない

結論:法律上の必須は0本、実務上はほぼ2本

会社設立で名前が挙がる印鑑は、主に次の3種類です。

  1. 実印(代表者印):登記所(法務局)に届け出る、会社の実印にあたる印鑑
  2. 銀行印:法人口座を開設するときに金融機関へ登録する印鑑
  3. 角印(社印):請求書や領収書に押す、会社名だけが彫られた認印

このうち法律上の届出が義務になっているものは、2026年8月時点で1本もありません。代表者印の登記所への届出は、2021年2月15日施行の商業登記規則改正(令和3年1月29日法務省令第2号)により、登記の申請をオンラインで行う場合に限り任意になっています(法務省)。登記の申請を書面で行う場合は、申請書に登記所へ提出済みの印鑑を押す必要があるため、従来どおり印鑑の届出が必要です。「届出が任意」というのは制度上の話で、実務では法人口座の開設や不動産契約などで実印と印鑑証明書の提出を求められる場面が多く、結局は代表者印と銀行印の2本を用意することがほとんどです。 角印は完全に任意で、無くても事業は続けられます。

会社の実印(代表者印)とは何か

会社の実印は、正式には「代表者印」と呼ばれます。個人の実印を市区町村役場に登録するのと同じように、会社の代表者印を登記所に届け出ておくと、その印影について印鑑証明書を発行してもらえるようになります。

印鑑証明書は、法人口座の開設・不動産の賃貸借契約・大口の取引契約など、「この印鑑を押したのは間違いなくこの会社の代表者である」ことを第三者に証明したい場面で求められます。実印そのものより、この印鑑証明書を発行できる状態にしておくことが実務上の目的です。

銀行印とは何か

銀行印は、法人名義の口座を開設するときに、その金融機関に登録する印鑑です。登記所への届出のような法律上の制度ではなく、各金融機関が口座管理のために独自に求めているものです。口座からの出金や各種手続きの際に、この印鑑との照合が行われます。

法律上の届出義務がある実印と違い、銀行印は「その金融機関に口座を持つ限り、実務上ほぼ例外なく必要になる」という位置づけです。実印と銀行印を同じ印鑑にすることも、別の印鑑にすることも可能で、どちらを選ぶかは次の見出しで整理します。

角印(社印)とは何か

角印は、会社名だけが四角い枠の中に彫られた印鑑で、請求書・領収書・見積書といった日常の書類に押す認印です。実印や銀行印と違い、法的な届出制度も、法律上の義務もありません。 無くても契約や取引は成立しますが、請求書に社判が押されているかどうかで取引先からの見え方が変わる、という実務上の理由で用意されている印鑑です。

実印の届出は本当に必要か(2021年改正の中身)

会社の代表者印を登記所に届け出る制度は、以前は商業登記法・商業登記規則上の要件でしたが、2021年2月15日施行の同規則改正(令和3年1月29日法務省令第2号)により、オンラインで登記を申請する場合に限り届出が任意になっています(法務省「商業登記規則が改正され、オンライン申請がより便利になりました」)。書面で登記を申請する場合は、申請書に登記所へ提出済みの印鑑を押す必要があるため、従来どおり印鑑の届出が必要です。

ここが要点

「届出が任意」であることと、「実務で不要になる」ことは別の話です。 印鑑証明書は代表者印を登記所に届け出て初めて発行できるようになるため(印鑑の提出手続きは商業登記規則第9条。交付の根拠は商業登記法第12条「印鑑を登記所に提出した者は、手数料を納付して、その印鑑の証明書の交付を請求することができる」。e-Govの条文で確認、2026年9月1日)、法人口座の開設や大きな契約を控えているなら、届出をしない選択肢は現実的には取りにくいというのが実情です。

実印と銀行印は同じにするか分けるか

実印と銀行印を同じ1本の印鑑にまとめることは制度上できます。費用を抑えたい一人起業のケースでは、この選択も検討の対象になります。一方で、次のようなリスク分散の考え方から、あえて分ける会社も少なくありません。

  • 銀行印は日常的な取引で持ち歩く・保管場所を分ける機会が実印より多くなりがちで、紛失・盗難のリスクが実印より高くなりやすい
  • 1本にまとめている場合、その1本を紛失すると法人口座の手続きと登記関連の手続きの両方が同時に止まる
  • 分けておけば、どちらか一方に何かあってももう一方には影響しない

どちらが正解というものではなく、印鑑にかける初期費用と、紛失時に止まる業務の範囲をどこまで許容できるかのトレードオフです。分けて用意する場合は、実印・銀行印・角印の3本セットで販売されていることが多く、1本ずつ個別に発注するより割安になるケースがあります(主要な印鑑通販サイト4社(ハンコヤドットコム・印鑑の匠ドットコム・印鑑市場・Yinkan)を確認した範囲では、3本セットの実勢価格は素材・ケースの有無により1万円前後〜9万円台まで幅があり、柘や黒水牛など標準的な素材では1万円台〜3万円台、チタンでは3万円台〜9万円台が目安です。4社のうち1社(Yinkan)は本象牙素材も扱っており、これを選ぶと12万円台〜22万円台まで上がります。店舗・素材により幅があるため、発注時は各社サイトで確認してください。※2026年9月1日時点の調査)。

比較表:3つの印鑑の違い

項目 実印(代表者印) 銀行印 角印(社印)
法律上の届出義務 オンライン申請なら任意、書面申請なら必須(2021年2月15日施行・商業登記規則改正・法務省) 届出制度自体がない 届出制度自体がない
届出・登録先 登記所(法務局) 口座を開く金融機関 なし
主な使用場面 印鑑証明書が必要な契約・登記手続き 法人口座の出金・各種銀行手続き 請求書・領収書・見積書
用意しなくても事業は続けられるか 実務上はほぼ必須(証明書が発行できない) 口座を持つ金融機関の運用次第でほぼ必須 任意(無くても成立する)
紛失・盗難時の対応 登記所へ廃止・再提出の届出が必要(商業登記規則第9条。実務上「改印届」と呼ばれる) 金融機関ごとの手続きで再登録 作り直すだけで手続きは不要

実体験について、正直に書きます

私の場合

正直に書きます。タイトルには「作った物と使った場面」とありますが、この記事を書いている2026年8月31日時点で、私自身はまだ定款の作成にも着手しておらず([合同会社設立の全手順]の記事で書いた通りです)、実印・銀行印・角印のいずれもまだ発注していません。

そのため、この記事の内容は実際に印鑑を作った・使った記録ではなく、商業登記規則や法務省の公開情報を基にした「調査した範囲では」の整理です。実際に印鑑を発注し、法人口座の開設で使う段階になったら、何本セットで注文したか、どの場面で提示を求められたかを、この記事に実額と一緒に追記します。

次にやること

まず、実印(代表者印)と銀行印の2本は用意する前提で、印鑑証明書が必要になりそうな場面(法人口座の開設・契約予定のある取引先)を先に書き出してください。 角印は必須ではないため、請求書のやり取りが発生するタイミングまで後回しにしても支障はありません。実印を登記所に届け出るかどうかは、オンラインで登記を申請する場合に限り任意です(書面申請なら従来どおり必須)。法人口座の開設を控えているなら、届出をする前提で準備を進めることをおすすめします。次は、実際に口座を開くネット銀行の審査に関する記事も確認してください。

freee会社設立


※本記事は2026年8月時点の法令・法務省の公開情報に基づく情報整理と、筆者個人の状況に基づくものです。印鑑の要否や印鑑証明書の取得手続きは金融機関・登記所の運用により変わることがあるため、実際の手続き前には管轄の法務局、または司法書士・行政書士に最新情報を確認してください。印鑑証明書の交付の根拠条文は商業登記法第12条であることをe-Govの条文で確認しています(2026年9月1日)。

出典 - 法務省「商業登記規則が改正され、オンライン申請がより便利になりました(令和3年2月15日から)」 https://www.moj.go.jp/MINJI/minji06_00070.html (2026年9月1日確認。オンライン申請の場合に限り印鑑届出が任意になる旨を明記。書面申請は従来どおり届出必須。改正の根拠は令和3年1月29日法務省令第2号〔第1条〕・令和3年2月15日施行) - 商業登記規則第9条(印鑑の提出手続き。同条第7項に印鑑の廃止の届出、実務上は廃止・再提出をまとめて「改印届」と呼ぶ) - 商業登記法(e-Gov法令検索)第12条(印鑑を提出した者は手数料を納付して印鑑証明書の交付を請求できる。2026年9月1日確認) - 3本セットの実勢価格(2026年9月1日確認):ハンコヤドットコム https://www.hankoya.com/shop/houjin_set_c/c_set.html (21,010円〜82,080円)/印鑑の匠ドットコム https://www.inkan-takumi.com/catecorset/3hon_set.html (10,230円〜54,510円)/印鑑市場 https://www.inkan-ichiba.com/kaisyainkan3set-jgk/index.php (21,260円〜85,980円)/Yinkan https://www.yinkan.com/categories/houjin-set3 (9,240円〜228,400円、本象牙を含む)

当サイト運営者

会社を辞めて、会社をつくる準備をしている当事者です

執行役員として6年、会社の管理部門を統括する立場にいました。2026年に退職し、いまは求職活動と並行して、会社を立ち上げる準備を検討している段階です。まだ登記はしていません。調べて確かめたことだけを書き、済んでいない手続きは「これから」と正直に書きます。体験のふりをしません。

あわせて読みたい