一人社長に税理士は必要か
- 税務代理・税務書類の作成・税務相談の3つは税理士(または税理士法人)にしかできない独占業務で、税理士でない者が行うと税理士法第52条違反となり、同法第59条により2年以下の懲役または100万円以下の罰金の対象になる(国税庁)
- 法人の顧問契約の月額相場は複数の会計事務所・比較サイトの調査で月2万〜5万円程度(公的統計なし、2026年8月時点の民間調査)
- 決算申告のみをスポットで依頼する場合の相場は年15万〜25万円程度とする調査が複数ある(公的統計なし、2026年8月時点の民間調査)
- 記帳代行のみの相場は月6,000円〜40,000円程度で仕訳数により変動する(公的統計なし、2026年8月時点の民間調査)
- freee申告など一部のクラウド会計ソフトは決算データの連携から法人税申告書の作成・電子申告までを税理士なしで行える機能を提供している(freee公式)
この記事の内容
この記事は、一人で会社を経営していて、税理士と契約すべきかどうか決めかねている人に向けて書いています。 結論から言うと、税理士との契約は法律上の義務ではありませんが、税務代理・税務書類の作成・税務相談の3つは税理士にしかできない独占業務で、ここだけは自分では代われません。以下、税理士にしかできない業務の範囲、顧問契約・決算申告のみ・記帳代行のみそれぞれの費用相場、自分でやる場合に必要な条件の順に整理します。
- 一人社長でも税理士と契約するのが当たり前だと思っていたが、本当に必要なのか分からない
- 顧問料が高いと聞くが、決算だけ・記帳だけといった頼み方ができるのか知りたい
- 自分で申告までやってみたいが、どこまでが法律上許されるのか判断がつかない
結論:契約は義務ではないが、税理士にしかできない業務がある
会社を作ったら税理士と顧問契約するもの、というイメージを持っている人は多いですが、法律上、法人が税理士と契約すること自体は義務ではありません。 日々の記帳や決算書類の作成そのものは、社長自身が行っても違法ではありません。
ただし、税務代理・税務書類の作成・税務相談の3つは、税理士(または税理士法人)にしかできない独占業務と税理士法で定められています(税理士法第2条、国税庁)。この境界を越えて自分で税務署とやり取りしようとすると、法律に触れる可能性が出てきます。「税理士は必要か」という問いは、実務上は「顧問契約を結ぶか」「独占業務の部分だけスポットで頼むか」「その部分まで自分の知識でカバーできるか」の3択の話です。
税理士にしかできない業務とそうでない業務の境界(税理士法)
税理士法第2条は、税理士の業務を次の3つと定めています(国税庁)。
- 税務代理:税務官公庁に対する申告・申請・不服申立てなどを、本人に代わって行うこと
- 税務書類の作成:申告書・不服申立書などの税務書類を作成すること
- 税務相談:税務に関する事項について相談に応じること
この3つは、税理士または税理士法人でなければ行ってはならないと定められています(税理士法第52条)。違反した場合は、同法第59条により2年以下の懲役または100万円以下の罰金の対象になります(税理士法、国税庁「にせ税理士にご注意」)。無償で行った場合でも適用の対象になる点には注意が必要です。
裏を返せば、この3つに当たらない業務、たとえば日々の帳簿への記帳・領収書の整理・会計ソフトへの入力は、税理士でなくても社長本人が行うことができます。「税理士が必要かどうか」を考えるときは、まず自分の会社で発生する作業のどこからが独占業務に当たるのかを線引きすることが出発点になります。
顧問契約の相場
税理士との顧問契約は、月々の記帳・相談対応と、年1回の決算申告をセットにした契約形態です。日本税理士会連合会は10年に一度「税理士実態調査」を実施しており、この調査には法人の月額顧問料の分布データも含まれています。ただしこの報告書は税理士会員専用ページで公開される内部資料であり、一般には公表されていません(日本税理士会連合会「第7回税理士実態調査報告書」、2026年9月1日確認。会員専用ページのため本文は未確認)。
参考情報として、この調査の第6回(平成26年実施)の結果を引用した業界メディアの記事によれば、法人の月額顧問料の分布は「1万円以下」7.7%、「1万円超3万円以下」52.5%、「3万円超5万円以下」27.7%、「5万円超7万円以下」5.6%、「7万円超10万円以下」4.0%、「10万円超20万円以下」1.6%、「20万円超30万円以下」0.4%、「30万円超」0.5%とされています(ジャスネットキャリア「『税理士実態調査』分析」記事が第6回税理士実態調査を引用、2026年9月1日確認。最新の第7回調査での数値更新は未確認)。これによると、月5万円以下に収まる法人が全体の約9割を占めています。
以下は2026年8月時点で複数の会計事務所・比較サイトを調査した範囲の目安です(※2026年8月時点の調査。日本税理士会連合会の実態調査とは別の、民間の比較サイト・会計事務所による調査)。
- 法人の月額顧問料の目安は月2万〜5万円程度とする調査が複数ある
- 一人社長で取引件数が少ない法人の場合、月2万〜3万円程度に収まるケースが多いとする調査がある
- 顧問料とは別に、決算申告料(年1回、決算月にまとめて発生)が加算されることが一般的
- 年間の総額(顧問料+決算申告料)の目安を50万〜90万円程度とする調査がある
いずれも会計事務所ごとの料金体系・依頼する業務範囲によって幅が大きいため、契約前には複数の事務所から見積もりを取ることをすすめます。
顧問契約を結ばず、決算申告だけ頼む場合の相場
日々の記帳は自分で行い、決算申告(独占業務にあたる部分)だけをスポットで税理士に依頼するという頼み方もあります。顧問契約を結ばない分、費用は年間の総額で見て抑えられる傾向にあります。
複数の会計事務所・比較サイトの調査では、決算申告のみのスポット依頼の費用相場は年15万〜25万円程度とされています(※2026年8月時点の調査。会社の売上規模・取引の複雑さ・仕訳数によって変動)。顧問契約(年間50万〜90万円程度)と比べると低く抑えられる一方、記帳を自分で行う手間と、税務相談を都度スポットで頼む場合の追加費用は別途かかる点は踏まえておく必要があります。
「決算だけ頼めるか」は事務所ごとの方針次第です。 顧問契約が前提で、決算のみのスポット依頼を受け付けていない事務所もあります。問い合わせの段階で確認しておくと、依頼先選びの手戻りを防げます。
記帳代行だけ頼む場合の相場
逆に、日々の記帳作業だけを税理士(または記帳代行業者)に依頼し、決算申告は自分で行う、あるいは別の税理士にスポットで頼むという組み合わせもあります。
記帳代行のみの費用相場は、複数の調査で月6,000円〜40,000円程度とされています(※2026年8月時点の調査)。仕訳数が少ない一人社長の会社であれば低い側、取引件数が多い会社では高い側に寄る傾向があります。なお、記帳代行を税理士事務所に依頼する場合は、原則として顧問契約とセットになっていることが一般的で、記帳代行の契約だけを単独で結べるとは限らない点も、依頼前に確認しておく必要があります。
比較表:契約形態ごとの費用感
| 契約形態 | 費用感(2026年8月時点の民間調査) | 向いているケース |
|---|---|---|
| 顧問契約(記帳〜決算申告まで一括) | 月2万〜5万円+決算申告料(年間総額50万〜90万円程度) | 経理・税務にかける時間を最小限にしたい。相談相手を常に確保したい |
| 決算申告のみスポット | 年15万〜25万円程度 | 記帳は自分でできるが、独占業務(申告書作成・税務代理)だけは任せたい |
| 記帳代行のみ | 月6,000円〜40,000円程度(仕訳数による) | 記帳の時間を確保できないが、申告は自分または別途依頼で対応する |
| 自分で記帳から申告まで完結 | 税理士費用は0円(会計ソフト費用のみ) | 会計・税務の知識があり、税務調査等のリスクを自分で引き受けられる |
自分でやる場合に必要な条件
税理士を頼まず、法人の決算・申告まで自分で完結させることは、法律上は可能です。ただし、独占業務(税務代理・税務書類の作成・税務相談)に当たらない範囲であれば誰でも行えるという建前と、実際にミスなく行えるかどうかは別の話です。
一部のクラウド会計ソフトは、日々の記帳データから決算書類・法人税申告書の作成、電子申告までを一気通貫でサポートする機能を提供しています(freee公式)。ただし、誤った経費計上や科目判断のミスに気づけないまま申告してしまうと、税務調査での修正申告や追徴課税につながる可能性がある、と会計ソフト提供元自身が注意喚起しています(freee公式)。自分で完結させる場合に必要になるのは、主に次の条件です。
- 日々の記帳を継続できる時間と、簿記の基礎知識がある
- 法人特有の税務(法人税・消費税・地方税の申告書類、減価償却などの処理)を自分で調べながら進められる
- 判断に迷う場面が出たときに、税務署への確認や、スポットでの税理士相談で補う準備がある
これらが揃わない状態で無理に進めると、申告のやり直しや追徴課税という形で、結果的に税理士費用より高くつくこともあり得ます。自分でやる・任せるの判断は、目先の費用だけでなく、この後戻りのリスクまで含めて考える必要があります。
一人社長ならどう選ぶか
一人社長で自己資金のみで会社を経営する場合、実務上の判断の順番は次のとおりです。
- 自分の時間と会計知識の水準を確認する:記帳を継続できる時間があるか、簿記・税務の基礎知識があるか
- 時間・知識のどちらかが不足するなら、その部分だけを外注する範囲を決める:記帳だけ頼むか、決算申告だけ頼むか、両方顧問契約にするか
- どちらも十分にあり、税務調査等のリスクを自分で引き受ける覚悟があるなら、自分で完結させる選択肢も検討する
「税理士は必要か」という問いに一律の正解はなく、独占業務の部分をどう埋めるかという組み合わせの問題です。全部を任せる・全部を自分でやる、の二択ではなく、記帳と申告を分けて考えると選択肢が広がります。
実体験について、正直に書きます
正直に書きます。私自身は2026年に前職を退職し、合同会社の設立準備を進めている当事者ですが、この記事を書いている時点で、税理士とはまだ契約していません。記帳から申告までを自分でどこまで対応するか、決算申告だけをスポットで依頼するかについても、現時点では決めていません。
そのため、この記事は税理士法の条文と、複数の会計事務所・比較サイトの公開情報を基にした調査整理であり、実際に自分が支払った顧問料や、依頼した税理士とのやり取りの記録ではありません。この点は正直に書いておきます。契約する段階、あるいは自分で申告まで完結させると決めた段階で、実額と経緯をこの記事に追記します。
次にやること
まず、自分の会社で発生する作業を「税務代理・税務書類の作成・税務相談(税理士でなければできない部分)」と「記帳・入力(自分でもできる部分)」に分けて書き出してください。 そのうえで、自分の時間と会計知識で記帳部分をカバーできそうなら決算申告のみのスポット依頼、時間が取れないなら顧問契約という順に検討すると判断しやすくなります。自分で記帳から申告までを試してみたい場合は、freee会社設立のように会計・申告機能まで一体になったサービスで、まずは記帳の負担がどの程度か試算してみることをすすめます。
※本記事は2026年9月時点の税理士法の条文・国税庁の公開情報と、筆者個人の状況に基づくものです。顧問料・決算申告料・記帳代行料の相場について、日本税理士会連合会の「税理士実態調査」には法人の月額顧問料の分布データが含まれますが、報告書は税理士会員専用の内部資料であり一般には公表されていないため、複数の民間の会計事務所・比較サイトの情報を基にした目安として記載しています。実際の費用は依頼先・業務範囲によって大きく変わるため、契約前には複数の税理士事務所から見積もりを取ることをすすめます。税理士が必要かどうかの最終判断は、税理士または税務署にご確認ください。
出典 - 税理士法 第2条(税理士業務の定義:税務代理・税務書類の作成・税務相談) - 第2条《税理士業務》関係|国税庁(2026年9月1日確認。税務代理・税務書類の作成・税務相談の3つが税理士業務であることを確認) - 税理士法 第52条(税理士業務の制限:税理士・税理士法人以外はこれらの業務を行ってはならない) - 税理士法 第59条(第52条違反の罰則:2年以下の懲役または100万円以下の罰金) - No.9204 にせ税理士にご注意|国税庁(2026年9月1日確認。無資格での税理士業務が有償・無償を問わず処罰の対象になる旨を確認) - 第7回税理士実態調査報告書|日本税理士会連合会(2026年9月1日確認。法人の月額顧問料の分布データを含む調査が実施されていることを確認。報告書本体は税理士会員専用ページで公開される内部資料のため、本文は未確認) - 「税理士実態調査」分析 顧問料の低落でさらに付加価値が求められる|ジャスネットキャリア(2026年9月1日確認。日本税理士会連合会「第6回税理士実態調査」(平成26年実施)の法人月額顧問料の分布データを引用している記事として参照。最新の第7回調査での数値更新は未確認) - 顧問料・決算申告のみ・記帳代行のみの費用相場:複数の税理士事務所・会計事務所・比較サイトの公開情報を基にした目安(2026年8月時点の調査。日本税理士会連合会の実態調査は税理士会員専用の内部資料のため、一般に公表された正確な相場を示す統計は確認できていません) - 法人決算は自分でできる?税理士なしでの流れや必要書類について解説|freee(クラウド会計ソフトでの決算・申告連携機能、自分で行う場合の税務調査リスクへの言及を確認) - 会社を設立する時に税理士は必要?|freee(税理士を雇わない場合に自分でできる範囲、誤った経費計上のリスクへの言及を確認)