電子契約サービスの選び方
- 電子署名法3条は、本人だけが行うことができる方法で行われた電子署名(固有性の要件)がある電子文書を真正に成立したものと推定する(電子署名法3条、総務省・法務省・経済産業省「利用者の指示に基づきサービス提供事業者自身の署名鍵により暗号化等を行う電子契約サービスに関するQ&A(電子署名法第3条関係)」)
- 印紙税の課税対象は紙などの用紙に記載された文書に限られ、電磁的記録はこれに当たらないため電子契約に印紙税はかからない(印紙税法、国税庁「取引先にメール送信した電磁的記録に関する印紙税の取扱い」)
- クラウドサインの無料プランは1名・月2件まで、GMOサインのお試しフリープランは1名・月5件まで(立会人型のみ)送信できる(各社公式サイト、2026年9月時点の調査)
- freeeサインには無料プラン自体が無く、最安のStarterプランは月額7,180円(月払い)から、電子サイン無料枠は月50通(freee公式サイト、2026年9月時点の調査)
この記事の内容
この記事は、電子契約サービスの種類が多すぎてどれを選べばいいか分からない一人会社・小規模事業者に向けて書いています。 結論から言うと、判断の軸は「月に何件契約書をやり取りするか」と「当事者型が必要な取引が含まれるか」の2つだけで、一人会社であれば無料プランのある立会人型サービスで足りることがほとんどです。以下、電子契約の仕組み、印紙税がかからない理由、主要4サービスの比較、当事者型が必要になる場面の順に整理します。
- 電子契約サービスが多すぎて、何を基準に選べばいいか分からない
- 「当事者型」「立会人型」という言葉が出てくるが、自分にどちらが必要か判断できない
- 契約件数が少ない一人会社でも、いきなり有料プランを契約する必要があるのか知りたい
結論:一人会社は無料プランの立会人型で足りることが多い
一人会社・小規模事業者が電子契約サービスを検討する場合、判断の軸は2つだけです。①月に何件契約書をやり取りするか、②当事者型が必要になる取引が含まれるか。 月数件程度でBtoBの通常取引が中心なら、無料プランのある立会人型サービスで足りるケースが多く、最初から有料プランを契約する必要はありません。
一人会社が最初に決めるべきは「どのサービスが一番機能が多いか」ではなく「月に何件、誰と契約するか」です。ここが決まれば、選択肢は自然に絞られます。
電子契約とは何か:当事者型と立会人型の違い
電子契約は、紙の契約書に押印する代わりに、電子署名法(電子署名及び認証業務に関する法律)にもとづく電子署名を使って契約を締結する仕組みです。同法3条は、本人だけが行うことができる方法で行われた電子署名(固有性の要件)がある電子文書について、真正に成立したものと推定するとしています(電子署名法3条、総務省・法務省・経済産業省「利用者の指示に基づきサービス提供事業者自身の署名鍵により暗号化等を行う電子契約サービスに関するQ&A(電子署名法第3条関係)」)。ただし「誰が署名するか」によって方式が2つに分かれます。
| 方式 | 仕組み | 証拠力の考え方 | 相手側の準備 |
|---|---|---|---|
| 当事者型(電子署名) | 契約の当事者本人が、認証局から発行された電子証明書で直接署名する | 本人による固有性の要件を満たしやすく、3条の推定効が及びやすいとされる | 相手も電子証明書の取得が必要になる場合がある |
| 立会人型(電子サイン・事業者署名型) | サービス事業者が、メールアドレス確認等で本人性を確認したうえで代わりに電子署名する | 通常の商取引であれば十分に有効とされるが、当事者型ほど固有性の立証はしやすくない | 相手はメールのリンクから同意するだけで、アカウント登録は原則不要 |
現在普及している電子契約サービスの多くは「立会人型」が標準です。クラウドサイン(弁護士ドットコム)は自らの名義で署名する立会人型を基本の仕組みとしています(クラウドサイン公式サイト)。一人会社が最初に触れるのは、まずこちらだと考えて差し支えありません。
電子契約なら印紙税がかからない理由
紙の契約書のなかには、契約金額に応じて収入印紙を貼る必要がある「課税文書」があります(印紙税法)。しかし印紙税の課税対象は紙などの用紙に記載された文書に限られ、電磁的記録(電子データ)はこの「課税文書」に当たらないとされています。国税庁の質疑応答事例でも、注文請書をメールでPDF送信した場合について、課税文書の作成には該当せず印紙税は不要という見解が示されています(国税庁「取引先にメール送信した電磁的記録に関する印紙税の取扱い」)。
注意点が1つあります。電子データで送ったあとに、同じ内容の紙の現物を別途相手に渡すと、その現物には印紙税がかかります。 電子契約に切り替える場合は、紙の現物を重ねて渡さないよう運用を統一する必要があります。
高額な請負契約書や不動産の契約書ほど収入印紙の金額も大きくなるため、こうした契約が多い事業ほど電子契約に切り替えるメリットは大きくなります。
主要4サービスの比較
2026年9月時点で各社公式サイトを確認した、代表的な電子契約サービス4社の料金と方式は次のとおりです(※2026年9月時点の調査。プラン内容・料金は変更される場合があるため、契約前に必ず公式サイトで最新情報を確認してください)。
| サービス | 無料プラン | 有料プラン最安の目安 | 対応方式 | 特徴 |
|---|---|---|---|---|
| クラウドサイン | 1名・月2件まで | ライト 月額12,100円(税込)+送信1件あたり220円(税込242円) | 立会人型が基本 | 送信件数ごとの従量課金。有料プランではユーザー数・送信件数の上限が撤廃される |
| GMOサイン | お試しフリープラン・1名・月5件まで(立会人型のみ) | ライト 月8,800円(年契約、税込9,680円) | 立会人型(100円/件)・当事者型(300円/件)を選べる(有料プランのみ) | 無料プランでは当事者型は使えない |
| freeeサイン | 無料プラン自体は無し | Starter 月額7,180円(月払い)、無料枠は月50通 | 同一アカウント内で立会人型・当事者型を使い分け可能 | ユーザー数は無制限 |
| マネーフォワード クラウド契約 | 無料プランの記載は確認できず | スタンダード 法人2,480円/月〜 | 立会人型・当事者型を選べる(ハイブリッド型も可) | 送信件数・保管件数に上限なし |
当事者型が必要になるのはどんな場面か
一人会社の通常の取引であれば、立会人型で困る場面は多くありません。ただし次のような場面では、当事者型(またはそれに準じる高い証拠力)を検討する価値があります。
- 融資契約や保証契約など、金融機関が当事者型を指定してくる場合
- 不動産の売買・賃貸借契約など、高額かつ後日の紛争リスクを重く見る取引
- 相手方の社内規定で、当事者型でなければ電子契約を認めていない場合
これらに当てはまらない、通常のBtoB業務委託契約や秘密保持契約(NDA)程度であれば、立会人型で足りると判断して差し支えありません。法人の実印を契約でどこまで使うことになるかは法人の実印・銀行印はどこまで必要か|作った物と使った場面でも整理しています。
一人会社ならどれを選ぶか
月間の契約件数から逆算すると、判断は次の順番になります。
- 月2件以内の見込みなら:クラウドサインの無料プランで様子を見る
- 月3〜5件程度の見込みなら:GMOサインのお試しフリープラン(立会人型のみ)で足りるか確認する
- 月5件を超える、または当事者型も使い分けたいなら:freeeサインのStarter(無料枠月50通)かマネーフォワード クラウド契約のスタンダードプランを比較する。すでに会計ソフトでどちらかの系列を使っている場合は、同じ系列を選ぶと管理画面が一本化される
いずれの場合も、まず無料プランやお試し枠で自社の契約フローに合うかを確認してから、有料プランへの移行を判断するのが実務的です。
実体験について、正直に書きます
正直に書きます。私自身は2026年に前職を退職し、合同会社の設立準備を進めている当事者ですが、この記事を書いている時点で、まだ電子契約サービスをどれか1つに決めて使い始めてはいません。想定している契約件数は月数件程度で、当事者型が必須になる取引(不動産・金融機関との契約等)は今のところ見込んでいないため、まずは無料プランのある立会人型サービスから試すつもりです。実際に使い始めた段階で、選んだサービスと理由をこの記事に追記します。
次にやること
まず、直近3か月に自分が交わした(または今後交わす予定の)契約書を数え、月あたりの平均件数を出してください。 月2件以内ならクラウドサインの無料プラン、月5件程度まではGMOサインのお試しフリープランで足り、それを超えるならfreeeサインかマネーフォワード クラウド契約の有料プランを比較する、という順番で選べば、いきなり高いプランを契約せずに済みます。
※本記事は2026年9月1日時点で各社公式サイト・国税庁公表情報・電子署名法関連Q&Aを調査した内容と、筆者個人の状況に基づくものです。契約方式の選択が法的に問題ないかどうかの個別判断は、実際の契約内容に応じて弁護士・司法書士等の専門家にご確認ください。料金・プラン内容は変更される場合があるため、契約前に必ず各社公式サイトで最新情報を確認してください。
出典 - 電子署名及び認証業務に関する法律(電子署名法) 第2条・第3条 - 印紙税法(課税文書の定義) - 利用者の指示に基づきサービス提供事業者自身の署名鍵により暗号化等を行う電子契約サービスに関するQ&A(電子署名法第3条関係)|経済産業省(総務省・法務省・経済産業省連名、固有性の要件・推定効の考え方を確認) - 取引先にメール送信した電磁的記録に関する印紙税の取扱い|国税庁(電磁的記録が課税文書に当たらないことを確認) - 料金プラン|クラウドサイン(無料プラン・有料プランの料金を2026年9月1日に確認) - 料金プラン|GMOサイン(お試しフリープラン・立会人型/当事者型の単価を2026年9月1日に確認) - freeeサイン|freee株式会社(Starterプランの料金・無料枠を2026年9月1日に確認) - マネーフォワード クラウド契約(スタンダードプランの料金・送信件数無制限であることを2026年9月1日に確認)