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決算月前にできる節税・できない節税

この記事の結論
  • 経営セーフティ共済の前納掛金は、支払った事業年度に12か月分まで損金算入できる(租税特別措置法第66条の11、独立行政法人中小企業基盤整備機構公表)
  • 40万円未満(2026年3月31日以前の取得は30万円未満)の減価償却資産は、青色申告の中小企業者等なら年300万円まで取得価額を全額損金算入できる(法人の根拠条文は租税特別措置法第67条の5。適用期限は令和11年〈2029年〉3月31日まで、e-Gov法令検索の現行条文で確認)
  • 1年以内の前払費用は、支払った事業年度に全額損金算入できる(法人税基本通達2-2-14)
  • 役員報酬(定期同額給与)は事業年度開始から3か月以内の改定でなければ、増額分が損金不算入になる(法人税法第34条第1項第1号)
この記事の内容
  1. 結論:決算前にできるのは「支払いの前倒し」だけ
  2. 比較表:決算前にできる節税・できない節税
  3. できる1:経営セーフティ共済の掛金を前納する
  4. できる2:40万円未満の備品を少額減価償却資産の特例で全額損金にする
  5. できる3:1年以内の前払費用を短期前払費用として計上する
  6. できない1:役員報酬の増額|3か月ルールに間に合わない
  7. できない2:資本金の変更・無駄遣い・架空経費
  8. 実体験について、正直に書きます
  9. 次にやること

この記事は、決算月が近づいてきて「今からできる節税はないか」を探している一人社長・法人代表に向けて書いています。 結論から言うと、決算月前にできる節税は「支払うタイミングを前倒しできるお金」に限られます。逆に、役員報酬の増額や資本金の変更のように、決算月直前では法律上間に合わない・損金にならない対策もあります。この2つを混同すると、期末に慌てて動いた分だけ現金が減り、税金は変わらないという結果になりかねません。

こんな状態ではありませんか
  • 決算月が近づいてきて、今から間に合う節税策を知りたい
  • 「期末に何か買えば節税になる」と聞いたが、本当に効果があるのか分からない
  • 役員報酬を増やして節税、という話を聞いたが決算前でも間に合うのか知りたい

結論:決算前にできるのは「支払いの前倒し」だけ

決算月前にできる節税策には共通点があります。それは、どのみち近いうちに払う予定だったお金を、今期の経費として前倒しで支払うという形になっている点です。

  • 経営セーフティ共済の掛金を1年分前納する
  • 40万円未満(2026年4月1日以後の取得分。それ以前の取得は30万円未満)の備品を今期中に買って全額損金にする
  • 来期分の家賃・保険料などを今のうちに1年分前払いする

一方で「できない節税」は、決算月直前に手続きしようとしても、法律上のルールで間に合わない、あるいはそもそも効果がないものです。役員報酬の増額、資本金の変更、期末の無駄な買い物などがこれにあたります。次の比較表で全体像を整理します。

比較表:決算前にできる節税・できない節税

対策 決算月前でも間に合うか 理由
経営セーフティ共済の掛金前納 できる 支払った事業年度に12か月分まで損金算入できる(租税特別措置法第66条の11)
40万円未満の備品購入(少額減価償却資産の特例。2026年3月31日以前の取得は30万円未満) できる 取得し事業の用に供した年度に全額損金算入できる。年300万円が上限(租税特別措置法第67条の5)
1年以内の家賃・保険料の前払い(短期前払費用) できる 支払った事業年度に全額損金算入できる。継続適用が条件(法人税基本通達2-2-14)
役員報酬(定期同額給与)の増額 できない 事業年度開始の日から3か月を経過する日までの改定でなければ、増額分は損金不算入(法人税法第34条第1項第1号、法人税法施行令第69条第1項第1号)
資本金の増減(減資) 事実上できない 債権者異議申述期間だけで1か月以上必要(会社法第449条2項)、加えて登記申請も必要で、決算月直前の申し込みでは通常間に合わない
期末の駆け込み無駄遣い 節税にならない 経費は増えるが現金も同額出ていく。税額の減少分より支出のほうが大きい
架空経費・水増し請求 違法 法人税法上の不正行為(重加算税・刑事罰の対象になり得る)

できる1:経営セーフティ共済の掛金を前納する

経営セーフティ共済(中小企業倒産防止共済)は、取引先の倒産による連鎖倒産を防ぐための共済制度で、独立行政法人中小企業基盤整備機構が運営しています。月々の掛金は5,000円〜20万円の範囲で自由に選べ、累計800万円まで積み立てられます。

決算前の節税策として使われるのは、この掛金の前納です。1年分(最大240万円)をまとめて前納すると、その支払った事業年度において、前納した12か月分まで必要経費または損金に算入できます(独立行政法人中小企業基盤整備機構の解説、租税特別措置法第66条の11「特定の基金に対する負担金等の損金算入の特例」)。前納の期間が1年を超える場合は、超えた分は期間の経過に応じて按分し、各事業年度末に損金算入する扱いになります。

ここが要点

令和6年度税制改正により、令和6年10月1日以後に共済契約を解除し、その解除の日から2年を経過する日までの間に再加入して支出した掛金は、必要経費または損金に算入できなくなりました(中小企業庁「中小企業倒産防止共済制度の不適切な利用への対応について」令和6年1月公表資料、複数の税理士事務所の解説記事でも解除日の起算が一致)。過去に一度解約したことがある会社は、再加入時にこのルールに該当しないか先に確認してください。また、掛金は将来解約した際、任意解約で加入期間40か月以上であれば掛金全額が「解約手当金」として支給され、法人の益金に算入されるため(独立行政法人中小企業基盤整備機構「共済契約の解約」の支給率表を確認。39か月以下は80〜95%と逓減し、40か月以上で100%)、節税というより「税金の支払いを将来に繰り延べる制度」である点も理解しておく必要があります。

できる2:40万円未満の備品を少額減価償却資産の特例で全額損金にする

通常、パソコンや什器などの固定資産は、耐用年数に応じて数年に分けて経費計上(減価償却)します。しかし、青色申告書を提出している中小企業者等(資本金1億円以下などの要件を満たす法人)であれば、取得価額40万円未満(2026年3月31日以前に取得した資産は30万円未満)の減価償却資産を、事業の用に供した事業年度に全額損金算入できます(租税特別措置法第67条の5「中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例」。法人はこの条文が根拠で、個人事業主向けの同法第28条の2とは条文が異なる点に注意。国税庁の同条通達で内容を確認)。令和8年度税制改正で取得価額基準が30万円未満から40万円未満に引き上げられ、適用期限は令和11年3月31日(2029年3月31日)まで延長されています(改正反映後の租税特別措置法67条の5の条文原文をe-Gov法令検索で確認)。

ただし上限があり、1事業年度あたりの合計額が300万円を超える場合、300万円に達するまでの部分しか対象になりません(国税庁 No.5408)。決算月前に必要な備品(パソコン、事務機器など)を前倒しで購入する場合に使える対策ですが、あくまで「近いうちに必要になる予定だったもの」を前倒しする話であり、不要なものを買って節税にはなりません。

できる3:1年以内の前払費用を短期前払費用として計上する

家賃、保険料、サーバー利用料など、契約に基づいて継続的にサービスの提供を受けるものについて、支払った日から1年以内に提供を受ける役務であれば、その支払った事業年度に全額を損金算入できます(法人税基本通達2-2-14「短期の前払費用」)。これを「短期前払費用の特例」と呼びます。

例えば、決算月の直前に事務所家賃の1年分を前払いすれば、通常なら来期に按分される家賃を今期の経費にできます。適用の条件は次の2点です。

  • 契約そのものが「継続的な役務提供」であること(単発の取引や、借入金を運用に回すための支払利子などは対象外)
  • 一度この処理を選んだら、翌期以降も継続して同じ処理をすること(今期だけ前払いして来期はやめる、という使い方は認められません)

一時的な節税目的だけで導入すると、毎期その支払いが発生し続けることになるため、資金繰りへの影響も合わせて検討する必要があります。

できない1:役員報酬の増額|3か月ルールに間に合わない

「決算前に自分の役員報酬を上げて経費を増やす」という発想は、法人税法上ほぼ機能しません。役員報酬(定期同額給与)が損金算入されるための条件の一つに、事業年度開始の日から3か月を経過する日までに改定することがあります(法人税法第34条第1項第1号、法人税法施行令第69条第1項第1号。国税庁 No.5211・質疑応答事例)。

この期限を過ぎてから役員報酬を増額すると、増額した分(改定前の支給額を上回る部分)は損金不算入になります。つまり、決算月の直前に役員報酬を上げても、法人税の計算上は経費として認められず、単に手取りが増えるだけ(その分、個人の所得税・住民税・社会保険料は増える)という結果になります。役員報酬を見直すなら、次の事業年度が始まってから3か月を経過する日までに判断する必要があります。

できない2:資本金の変更・無駄遣い・架空経費

決算月の直前に検討されがちな、しかし実際には効果がない・間に合わない対策を3つ挙げます。

  • 資本金の増減:資本金を減らす(減資する)場合、株主総会決議に加えて、債権者が異議を述べられる期間を官報公告等で設けなければならず、この期間は1か月を下ることができません(会社法第449条2項)。この公告・催告期間だけで最低1か月かかるうえ、その後の登記申請も必要になるため、「決算までに資本金を減らして均等割を下げよう」といった対策は、決算月の直前に思い立っても物理的に間に合わないことがほとんどです。検討するなら決算の数か月前から動く必要があります。
  • 期末の駆け込み無駄遣い:「経費を使えば税金が減る」という理由だけで不要な物品を購入しても、経費計上額の税率分しか税金は減りません。中小法人(資本金1億円以下)の法人税率は所得800万円以下の部分が15%、800万円超の部分が23.2%(国税庁 No.5759)で、これに地方法人税・法人住民税・事業税等を加えた実効税率は、所得800万円以下の部分ではおおむね20%台前半、800万円超の部分ではおおむね33〜34%程度になる、というのが複数の税理士事務所の解説記事に共通する目安です(正確な税率は資本金・所在地の地方税率・所得水準により変動するため、自社の実効税率は顧問税理士に確認してください)。目安として概ね30%前後としても、100万円を無駄遣いすれば、税金は減っても現金は70万円前後減った状態になります。事業に本当に必要な支出かどうかを先に判断すべきです。
  • 架空経費・水増し請求:実態のない経費を計上する行為は、税務調査で発覚した場合に重加算税の対象となり、悪質な場合は刑事罰(法人税法違反)の対象にもなり得ます。節税ではなく脱税であり、対策として検討すべきものではありません。

実体験について、正直に書きます

私の場合

正直に書きます。私自身は2026年に前職を退職し、起業準備を進めている当事者ですが、この記事を書いている時点ではまだ会社の設立登記を完了しておらず、実際に自社の決算を迎えた経験はありません。経営セーフティ共済の前納や少額減価償却資産の特例についても、自分が実際に判断した記録ではなく、独立行政法人中小企業基盤整備機構や国税庁の公表情報を調査した範囲での整理です。この点は正直に書いておきます。実際に法人を設立し、初めての決算を迎えた段階で、自社がどの対策を選んだか、その判断の理由を一次情報として別記事にまとめる予定です。

次にやること

まず、今期の利益見込みと手元資金を確認したうえで、経営セーフティ共済の前納・少額減価償却資産の特例・短期前払費用の3つのうち、自社の資金繰りに無理のないものから検討してください。 役員報酬の増額や資本金の変更は決算月前には間に合わないため、次の事業年度が始まったタイミングで改めて検討する対策として切り分けておくと、毎年同じ時期に慌てずに済みます。金額が大きい判断になる場合は、実行前に顧問税理士に相談することを勧めます。


※本記事は2026年9月時点の国税庁・独立行政法人中小企業基盤整備機構等の公表情報の調査整理と、筆者個人の状況に基づくものです。税額・制度は法改正で変わることがあるため、実際に対策を実行する前には税理士または管轄の税務署に必ず確認してください。

出典 - 独立行政法人中小企業基盤整備機構:前納した掛金を必要経費または損金に算入できますか。公式サイト(前納掛金が支払った事業年度に12か月分まで損金算入できることを確認。2026年9月1日確認) - 独立行政法人中小企業基盤整備機構:掛金の前納|経営セーフティ共済公式サイト(掛金の月額上限20万円・累計上限800万円、前納制度の仕組みを確認。2026年9月1日確認) - 独立行政法人中小企業基盤整備機構:掛金の納付・金額変更|経営セーフティ共済公式サイト(掛金月額が5,000円〜20万円の範囲(5,000円単位)で選べることを確認。2026年9月6日確認) - 独立行政法人中小企業基盤整備機構:共済契約の解約|経営セーフティ共済公式サイト(任意解約の解約手当金支給率は掛金納付月数12か月未満0%・12〜39か月80〜95%・40か月以上100%であることを確認。2026年9月6日確認) - 国税庁:No.5408 中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例公式サイト(取得価額30万円未満・年300万円上限、令和8年3月31日(2026年3月31日)までの適用期限を確認。2026年9月1日確認) - 国税庁:第67条の5《中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例》関係公式サイト(法人向けの根拠条文が租税特別措置法第67条の5であり、個人事業主向けの第28条の2とは別条文であることを確認。2026年9月6日確認) - 国税庁:短期前払費用の取扱いについて公式サイト(1年以内の前払費用を支払時に全額損金算入できる要件・継続適用の条件、関係法令が法人税基本通達2-2-14であることを確認。2026年9月1日確認) - 国税庁:定期給与の額を改定した場合の損金不算入額(定期同額給与) / 国税庁:No.5211 役員に対する給与公式サイト(事業年度開始の日から3か月を経過する日までの改定でなければ増額分が損金不算入になること、関係法令が法人税法第34条第1項第1号・法人税法施行令第69条第1項第1号であることを確認。2026年9月1日確認) - 中小企業庁:中小企業倒産防止共済制度の不適切な利用への対応について公式サイト(令和6年10月1日以後の解除から2年以内の再加入は掛金が損金算入できなくなる改正内容を確認。2026年9月1日確認) - 会社法第449条第2項(減資時の債権者異議申述期間が1か月を下ることができないと規定していることを確認。2026年9月1日確認) - e-Gov法令検索:法人税法で第34条第1項第1号(役員給与の損金不算入・定期同額給与の定義)の条文原文を直接確認済み(2026年9月1日確認)。租税特別措置法第66条の11(経営セーフティ共済の掛金)、同法第67条の5(少額減価償却資産の特例、法人向け)は、e-Gov法令検索の法令API(laws.e-gov.go.jp)で条文原文を直接確認しました(2026年9月6日確認)。第66条の11は第1項2号に中小企業倒産防止共済の掛金の損金算入が、第2項に共済契約の解除後の掛金の適用除外が規定されていること、第67条の5は令和8年度税制改正反映後の条文に取得価額「四十万円未満」・適用期限「令和十一年三月三十一日まで」が規定されていることを確認済みです。なお、初稿では法人向けの根拠条文を個人事業主向けの租税特別措置法第28条の2(中小事業者の少額減価償却資産の取得価額の”必要経費算入”の特例)と誤記していたため、法人向けの正しい条文である第67条の5(中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の”損金算入”の特例)に訂正した(国税庁の同条通達ページのタイトルと内容を確認。2026年9月6日確認)。 - 法人の実効税率は、中小法人(資本金1億円以下)の場合で所得800万円以下の部分がおおむね20%台前半、800万円超の部分がおおむね33〜34%程度という、複数の税理士事務所の解説記事に共通する目安です(法人税率自体は国税庁No.5759で15%/23.2%と確認済み。地方税を含めた実効税率の公式な確定値は自治体の税率にも左右されるため、自社の正確な税率は税理士に確認する必要があります)。

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会社を辞めて、会社をつくる準備をしている当事者です

執行役員として6年、会社の管理部門を統括する立場にいました。2026年に退職し、いまは求職活動と並行して、会社を立ち上げる準備を検討している段階です。まだ登記はしていません。調べて確かめたことだけを書き、済んでいない手続きは「これから」と正直に書きます。体験のふりをしません。

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