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役員社宅で節税する仕組み

この記事の結論
  • 役員社宅は法人が家賃を全額損金算入し、役員から「賃貸料相当額」を徴収することで役員への給与課税を避ける仕組み(国税庁タックスアンサーNo.2600)
  • 節税が生まれるのは「会社が家賃を経費で払う」からではなく「役員報酬という額面を下げられる」からで、額面が下がれば所得税・住民税・社会保険料(労使双方)が連動して下がる
  • 賃貸料相当額は床面積132㎡以下(木造等)・99㎡以下(鉄筋コンクリート等)の「小規模な住宅」なら固定資産税の課税標準額を基準にした計算式で決まり、一般的な賃貸物件では家賃の1〜3割程度になることが多い(国税庁の計算式に基づく傾向であり金額は物件ごとに異なる)
  • 徴収額が賃貸料相当額を下回ると差額は役員の経済的利益(現物給与)として課税される(所得税法36条)
  • 社会保険料は将来の厚生年金額の計算にも使われるため、報酬を下げることは将来の年金額を下げることと表裏一体(日本年金機構)
この記事の内容
  1. 結論:節税が生まれるのは「額面が下がる」から
  2. なぜ額面を下げられるのか|賃貸料相当額という下限
  3. 効果の目安を試算する
  4. 家賃を全額経費にできるわけではない理由
  5. デメリット|将来の年金額が下がる
  6. 自宅の賃貸契約を会社名義にする実務
  7. 実体験について、正直に書きます
  8. 次にやること

この記事は、一人社長として会社を経営していて、自宅の家賃を会社契約に切り替えると節税になると聞いたが、何がどう得になるのか具体的な仕組みが分からない人に向けて書いています。 結論から言うと、役員社宅で得をするのは「会社が家賃を経費で払えるから」ではありません。役員報酬という額面を下げても生活の実質は変わらないようにできるので、額面に連動する税金と社会保険料が下がる、というのが仕組みの本体です。この記事では、その理由と効果の目安、家賃を全額経費にできるわけではない理由を整理します。

こんな状態ではありませんか
  • 「社宅にすると節税になる」と聞くが、会社の経費が増えるだけで得している実感が湧かない
  • 家賃を全額会社の経費にできると思っていたが、実際には自己負担が発生すると聞いて混乱している
  • どのくらいの金額が浮くのか、目安すら分からないまま検討している

結論:節税が生まれるのは「額面が下がる」から

役員社宅の仕組みを図式にすると、次のようになります。

  1. 会社が家賃を全額支払い、法人の経費(地代家賃)にする
  2. 会社は役員から「賃貸料相当額」という一定額を家賃として徴収する
  3. 役員は、会社から受け取る役員報酬(額面)を、その分だけ低く設定し直す

ポイントは3です。 会社が家賃を負担してくれる分、役員報酬の額面を下げても、役員が自由に使える金額(住居費を引いた後の実質的な手取り)は大きく変わりません。そして所得税・住民税・社会保険料はいずれも役員報酬の額面に対してかかるため、額面が下がれば、そこにかかる税・社会保険料もまとめて下がります。 これが「役員社宅は節税になる」と言われる理由の中身です。会社の経費が増えたこと自体が節税ではなく、経費が増えた分だけ額面を圧縮できることが節税の本体です。

なぜ額面を下げられるのか|賃貸料相当額という下限

役員報酬をどこまで下げられるかは、会社が役員から徴収しなければならない「賃貸料相当額」によって決まります。これは国税庁が定める計算式で決まる金額で、床面積が「小規模な住宅」(法定耐用年数30年以下の木造家屋などは132㎡以下、法定耐用年数30年を超える鉄筋コンクリート造などは99㎡以下)にあたる場合、次の3項目の合計です(国税庁 タックスアンサーNo.2600)。

  1. その年度の建物の固定資産税の課税標準額 × 0.2%
  2. 12円 × (その建物の総床面積(㎡) ÷ 3.3㎡)
  3. その年度の敷地の固定資産税の課税標準額 × 0.22%

固定資産税の課税標準額は、実際の家賃相場よりかなり低く算定されることが一般的です。国税庁は賃貸料相当額が家賃の何割になるかという目安は公表しておらず(あくまで物件ごとの計算式のみが示されています)、複数の税理士事務所の解説記事にあたっても、実際の家賃に対する割合は物件ごとにばらつきが大きく、共通した目安と呼べる数字はありませんでした。たとえば家賃20万円のマンションで賃貸料相当額が月7,000円台(家賃の4%弱)という実例を示す事務所もあれば、月2万〜4万円(家賃の1〜2割)という実例を示す事務所もあります(2026年9月確認)。つまり物件によっては、会社が家賃15万円を全額負担しても、役員から徴収する必要があるのは数千円〜3万円台程度で済むケースがある、というのが実態に近い言い方です。徴収額さえ確保していれば、差額分は役員への給与課税なしで会社の経費にできる、という仕組みです。

ここが要点

賃貸料相当額は「家賃の何割」という決まった率ではありません。 物件の固定資産税の課税標準額で決まるため、正確な金額は物件ごとに計算する必要があります。課税標準額は固定資産税の納税通知書や、家主・管理会社への照会で確認します。

効果の目安を試算する

数字のイメージをつかむため、簡単な試算をします。以下は制度の仕組みを説明するための概算です。実際の税額・社会保険料は個人の状況や自治体・保険者によって変わるため、実行前に税理士へ個別の試算を依頼してください。

前提: 役員報酬40万円/月、家賃15万円/月の賃貸物件に自分で住んでいるケースを、社宅方式に切り替えるとします。仮に賃貸料相当額が2万円だったとすると、役員報酬を13万円下げて27万円にしても、住居にかかる自己負担は「家賃15万円」から「社宅の自己負担2万円」に減るため、生活の実質はむしろ改善します。

項目 社宅方式なし(報酬40万円で家賃を自分で払う) 社宅方式あり(報酬27万円+社宅自己負担2万円)
役員報酬(額面) 40万円/月 27万円/月
住居費の自己負担 家賃15万円/月(手取りから支払う) 社宅の賃貸料相当額2万円/月(給与天引き等)
所得税・住民税の課税対象 40万円ベース 27万円ベース
社会保険料の算定基礎 40万円ベース 27万円ベース

額面が年156万円(13万円×12ヶ月)下がることで、所得税・住民税・社会保険料(本人負担分)がまとめて軽くなります。社会保険料の本人負担は厚生年金保険料率18.3%の折半分9.15%+協会けんぽ健康保険料率の2026年度全国平均9.90%の折半分4.95%を合算した概算で、合計約14%になるため、額面が156万円下がれば本人負担の社会保険料はおおむね22万円前後軽くなります。所得税・住民税の減少幅は、給与所得控除・社会保険料控除・扶養控除の有無によって課税所得の圧縮幅が変わるため、一律の割合では示せません。自分の条件での減少額は、扶養の状況と現在の報酬額を添えて税理士に試算を依頼して確認してください。 税・社会保険料をまとめた年間の負担軽減額も、この所得税・住民税の減少幅が確定しないと算出できないため、現時点では出せません。この試算は仕組みを理解するための概算であり、実際の効果は役員報酬の水準、扶養家族の有無、加入している健康保険組合の保険料率などによって変わるため、税理士による個別試算が必要です。

会社側にもメリットがあります。社会保険料は会社と本人が折半で負担するため、額面が下がれば会社が負担する保険料も同じように軽くなります。

家賃を全額経費にできるわけではない理由

ここまでの試算を見ると「家賃15万円を会社の経費にできて、しかも自己負担は2万円で済む」というお得な話に見えますが、正確には会社の経費(15万円)と役員の実質負担(役員報酬の減少13万円+自己負担2万円=15万円相当)は、形を変えているだけでほぼ一致しています。 家賃そのものが消えてなくなるわけではありません。

得をしているのは、家賃の支払いの器を「役員報酬から払う」から「会社が負担して役員報酬を圧縮する」に変えたことで、額面にかかる税・社会保険料の分だけ実質的な負担が軽くなるという点に限られます。「社宅にすれば家賃がタダになる」という理解は誤りで、正しくは「同じ家賃負担でも、税・社会保険料の分だけ手元に残るお金が増える」という制度です。

徴収額が賃貸料相当額を下回ると、その差額は役員に対する経済的利益(現物給与)とみなされ、給与として所得税・住民税の課税対象になります(所得税法36条、国税庁タックスアンサーNo.2600)。「役員報酬を下げたのに、徴収額の設定を誤って結局給与課税される」という失敗もあるため、賃貸料相当額の計算は正確に行う必要があります。

デメリット|将来の年金額が下がる

額面を下げることで得られる節税効果には、裏返しのデメリットがあります。厚生年金の受給額は、加入期間中の報酬(標準報酬月額)を基に計算されるため、役員報酬を下げれば、将来受け取る厚生年金の額もその分下がります(日本年金機構)。目先の税・社会保険料の負担軽減と、将来受け取る年金額のどちらを重視するかは個人の考え方次第であり、社宅方式が一方的に得な制度というわけではありません。

また、住宅ローンや将来の借入審査では、報酬の額面(標準報酬月額や源泉徴収票上の金額)が基準になる場面があります。役員報酬を下げることが、こうした場面で不利に働く可能性がある点も、実行前に考慮すべき点です。

自宅の賃貸契約を会社名義にする実務

社宅方式を使うには、現在個人名義になっている賃貸契約を、法人名義に切り替えるか、個人契約のまま法人へ転貸する形に変える必要があります。この手続きには家主の承諾と、法人としての保証会社の再審査という実務上のハードルがあり、設立直後の法人はここでつまずくことがあります。賃貸料相当額の計算方法や、契約切り替えの具体的な進め方は自宅兼事務所の家賃は経費にできるか|法人の場合の整理にまとめています。

役員報酬をどこまで下げられるかは、社宅の自己負担分だけでなく、生活費全体・将来の年金額・住宅ローンの見込みなど複数の要素で決まるため、役員報酬の決め方|社会保険料と税金のバランスと合わせて検討することをおすすめします。

実体験について、正直に書きます

私の場合

正直に書きます。この記事を書いている2026年9月1日時点で、私自身はまだ合同会社の設立準備の段階にあり、役員報酬をいくらに設定するか、社宅方式を使うかどうかもまだ決めていません。現在住んでいる賃貸物件を法人名義に切り替えられるかどうかも、家主・管理会社に相談していない段階です。

そのためこの記事の試算は、国税庁の計算式と一般的な税率・社会保険料率のイメージを基にした「仕組みを理解するための概算」であり、自分の会社で実際に運用した結果ではありません。登記後、実際に賃貸料相当額を計算し、役員報酬の設定をどう決めたかを、この記事に追記する予定です。

次にやること

まず、今住んでいる賃貸物件の固定資産税の課税標準額を、家主か管理会社に照会してください。 課税標準額が分かれば、国税庁の計算式で自分の物件の賃貸料相当額をおおよそ算出できます。その金額と、下げられる役員報酬の幅が見えたら、税理士に正確な節税効果と社会保険料への影響を試算してもらい、契約の法人名義への切り替えが可能かを家主に相談する、という順番で進めてください。


※本記事は2026年9月1日時点で調査した法令・国税庁・日本年金機構の公開情報を基にした一般的な仕組みの説明であり、筆者個人が実際に運用した結果ではありません。試算に用いた税率・社会保険料率は目安であり、実際の金額は個別の状況によって異なります。実行の判断・正確な金額の計算は税理士にご確認ください。

出典 - No.2600 役員に社宅などを貸したとき|国税庁(令和7年4月1日現在法令等。賃貸料相当額の計算式・小規模住宅の定義の根拠。2026年9月5日確認) - 所得税法第36条(経済的利益の収入金額算入。2026年9月5日確認) - 法人税法第22条第3項(損金の額に算入すべき金額。2026年9月5日確認) - 厚生年金保険の保険料|日本年金機構(厚生年金保険料率18.3%で固定・事業主と被保険者で半分ずつ負担=本人負担9.15%。2026年9月5日確認) - 老齢厚生年金の受給要件・支給開始時期・年金額|日本年金機構(「厚生年金に加入していた時の報酬額や加入期間等に応じて年金額が計算されます」との記載が、厚生年金の受給額が加入期間中の報酬額を基に計算される根拠。2026年9月5日確認) - 令和8年度保険料率のお知らせ|全国健康保険協会都道府県毎の保険料率|全国健康保険協会(2026年度全国平均9.90%・労使折半で本人負担4.95%。都道府県ごとに料率が異なり最高は佐賀県10.55%・最低は新潟県9.21%。2026年9月5日確認) - 実際の家賃に対する賃貸料相当額の割合は、国税庁の公式資料には記載がありません。複数の税理士事務所の解説記事を確認したところ、家賃20万円のマンションで賃貸料相当額が月7,000円台(家賃の4%弱)という実例と、月2万〜4万円(家賃の1〜2割)という実例の両方があり、共通した目安と呼べる数字は見当たりませんでした(2026年9月5日確認) - 本記事は自宅兼事務所の家賃は経費にできるか役員報酬の決め方一人社長の節税策を効果順に並べるの各記事と内容が関連しています

当サイト運営者

会社を辞めて、会社をつくる準備をしている当事者です

執行役員として6年、会社の管理部門を統括する立場にいました。2026年に退職し、いまは求職活動と並行して、会社を立ち上げる準備を検討している段階です。まだ登記はしていません。調べて確かめたことだけを書き、済んでいない手続きは「これから」と正直に書きます。体験のふりをしません。

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