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法人成り初年度の確定申告

この記事の結論
  • 法人成りした年も、廃業日までの所得については通常どおり所得税の確定申告が必要で、申告期限は翌年3月15日(所得税法120条ほか、国税庁「No.2020 確定申告」)
  • 個人が消費税の課税事業者だった場合、廃業年分の消費税の確定申告も別途必要で、期限は所得税より遅い翌年3月31日(消費税法19条・45条ほか、国税庁「No.6601」)
  • 新しく設立した法人は、資本金の額が1,000万円未満であれば原則として設立1期目・2期目は消費税の納税義務が免除されるが、資本金1,000万円以上の新設法人は1期目から免除されない(消費税法2条・9条・12条の2、国税庁「No.6531」)
  • 法人税・法人の消費税の確定申告期限は、いずれも事業年度終了の日の翌日から2か月以内(法人税法74条、消費税法45条ほか、国税庁「No.6610」)
  • 法人の事業年度は、定款などで1年を超える期間を定めても税務上は1年ごとに区分される(法人税法13条)ため、決算月の設定次第で個人の申告期限と法人の初年度申告期限が数か月のうちに重なることがある
この記事の内容
  1. 結論:法人成りした年は個人分と法人分、申告が2つある
  2. まず切り分ける:誰の・いつからいつまでの所得か
  3. 個人分の申告:廃業日までの所得税・消費税
  4. 法人分の申告:設立日から決算日までの初年度決算
  5. 見落としがちな注意点:資本金1,000万円で消費税の扱いが変わる
  6. 段取りを計算する【計算例】
  7. 自分の状況を確かめるチェックリスト
  8. 税理士に相談する文例
  9. 次にやること

この記事は、年の途中で個人事業から法人成りした人に向けて書いています。 結論から言うと、法人成りした年は「廃業日までの個人の確定申告」と「新しい法人の初年度の決算・申告」の2つが両方必要で、しかも出す先も期限も別です。以下、それぞれの期限と、実際にどのくらい日程が詰まるのかを、具体的な数字で整理します。

こんな状態ではありませんか
  • 法人を作ったので、もう自分の確定申告はしなくていいと思っていたら違った
  • 個人と法人、それぞれの申告の期限がいつなのか整理できていない
  • 税理士に頼むにしても、何をいつまでに準備すればいいのか分からない

結論:法人成りした年は個人分と法人分、申告が2つある

法人成りは、個人事業を廃業して法人を新しく設立する手続きです。この「廃業」と「設立」がひとつの年の中で同時に起きるため、申告の義務もそれぞれ別に発生します。個人事業主だった期間の所得については、通常どおり所得税の確定申告が必要です(所得税法120条ほか、国税庁「No.2020 確定申告」)。そして新しく設立した法人にも、設立日から最初の決算日までを対象にした決算・法人税申告が発生します(法人税法74条)。「法人にしたから個人の申告は終わり」ではなく、その年に限って両方をこなす必要がある、というのがこの記事の出発点です。

まず切り分ける:誰の・いつからいつまでの所得か

法人成りの年に起きる申告を整理すると、対象になる期間と主体は次のように分かれます。

申告の種類 主体 対象期間 期限
所得税の確定申告 個人 その年の1月1日〜廃業日 翌年3月15日
消費税の確定申告(個人が課税事業者だった場合) 個人 同上(課税期間は暦年) 翌年3月31日
法人税・地方税の確定申告 法人 設立日〜最初の決算日 決算日の翌日から2か月以内
消費税の確定申告(法人が課税事業者に該当する場合) 法人 同上 決算日の翌日から2か月以内

見た目は4行ですが、実務上つまずきやすいのは「期限がバラバラなうえ、個人分が終わってから法人分の決算作業に入る時間が意外と短い」という点です。この時間の詰まり具合は後述の計算例で数字にします。

個人分の申告:廃業日までの所得税・消費税

法人成りしても個人事業の廃業手続き(税務署への届出、青色申告のとりやめ、資産の引き継ぎなど)は別途必要ですが、この記事では申告の期限だけに絞ります。廃業した年についても、通常どおり所得税の確定申告が必要です。期限を早める規定はなく、翌年2月16日から3月15日までの通常の申告期間の中で提出します(所得税法120、121、123、203の7、措法41の2の2、国税庁「No.2020 確定申告」)。

見落とされやすいのが消費税です。個人が消費税の課税事業者(インボイス発行事業者を含む)だった場合、廃業年分についても消費税の確定申告が別途必要です。個人の消費税の課税期間は暦年(1月1日〜12月31日)が原則で、廃業しても短縮されません。そして提出期限は所得税より遅く、翌年3月31日です(消費税法19条、45条、45条の2、46条、47条、49〜51条、租税特別措置法86条の4、国税庁「No.6601」)。所得税の申告だけで満足してしまい、消費税の申告を忘れる、という抜けがここで起きます。

法人分の申告:設立日から決算日までの初年度決算

法人の最初の事業年度は、設立日から定款で定めた決算日までの期間になります。法人税法上、定款などで定めた会計期間が1年を超える場合は、その開始日から1年ごとに区分した期間が事業年度とみなされるため(法人税法13条)、最初の事業年度は実質的に最長でも12か月です。決算月をいつに設定するかによって、初年度が数か月の短い決算になることも、ほぼ12か月に近い決算になることもあります。

決算日が確定したら、その翌日から2か月以内に法人税の確定申告書を提出します(法人税法74条)。消費税についても、課税事業者に該当する法人であれば同じく決算日の翌日から2か月以内が期限です(消費税法45条、45条の2ほか、国税庁「No.6610」)。この「2か月以内」という期限は、個人の確定申告の期限(3月15日・3月31日)とは連動していません。決算月の決め方次第で、個人分の申告を終えた直後に法人の決算作業へなだれ込む年もあれば、半年以上間が空く年もあります。

見落としがちな注意点:資本金1,000万円で消費税の扱いが変わる

ここが要点

新しく設立した法人は、基準期間(前々事業年度)の課税売上高がないため、原則として消費税の納税義務が免除されます。ただし、事業年度開始時点の資本金の額が1,000万円以上ある新設法人は、この免除の対象外です(消費税法2条、9条、12条の2、国税庁「No.6531」)。資本金をいくらにするかを決算月と同じタイミングで決める人が多いため、「資本金を1,000万円ちょうどにしたら初年度から消費税の申告義務が発生した」という組み合わせのミスが起きやすい箇所です。

資本金1,000万円未満で設立した場合でも、特定期間(法人の設立第1期の場合は原則として設立から6か月間)の課税売上高またはその期間の給与等支払額が1,000万円を超えると、2期目から課税事業者になることがあります(消費税法9条の2、国税庁「No.6531」)。個人事業時代に消費税の課税事業者だったかどうかと、法人としての判定は別物です。ここは自己判断せず、資本金額と設立時期を決める前に、税理士か税務署へ確認することをおすすめします。

段取りを計算する【計算例】

具体的な日付を仮置きして、実際にどれだけ日程が詰まるかを計算してみます。

前提

  • 個人事業を2026年6月30日付で廃業し、同日に法人成り(法人の設立日は2026年7月1日)
  • 個人は消費税の課税事業者だった(インボイス発行事業者)
  • 法人の決算月は3月に設定(第1期は2026年7月1日〜2027年3月31日の9か月決算)
  • 法人の資本金は300万円(1,000万円未満)

計算

  1. 個人の所得税確定申告(2026年1月1日〜6月30日の所得)の期限:2027年3月15日
  2. 個人の消費税確定申告(同期間分、課税期間は暦年扱い)の期限:2027年3月31日 → 所得税の期限からの猶予は16日
  3. 法人の第1期決算日:2027年3月31日。法人税の確定申告期限は決算日の翌日から2か月以内 → 2027年5月31日
  4. 個人の消費税申告(3月31日)を終えてから、法人の申告期限(5月31日)までの日数:4月30日+5月31日=61日
  5. 資本金300万円(1,000万円未満)のため、法人は原則として設立1期目・2期目は消費税の免税事業者に該当し、今回のケースでは法人分の消費税申告は発生しない見込み

このケースでは、2027年1月〜3月に個人分の申告2件(所得税・消費税)を終え、そこから61日の間に法人の初年度決算と法人税申告を仕上げる、という段取りになります。決算月を個人の申告期限に近い月(2〜4月)に設定すると、この61日という余裕はさらに短くなります。逆に決算月を秋以降に設定すれば、個人分と法人分の作業時期を離すこともできます。

自分の状況を確かめるチェックリスト

  • □ 個人事業の廃業日は確定しているか
  • □ 廃業日までの所得について、青色申告特別控除の要件(帳簿の作成・期限内提出)を満たせる見込みか
  • □ 個人が消費税の課税事業者だった場合、廃業年分の消費税申告(期限3月31日)を予定に入れているか
  • □ 法人の決算月をいつに設定したか、第1期が何か月の決算になるか計算したか
  • □ 法人の資本金は1,000万円未満か(未満なら原則1〜2期目免税、以上なら1期目から課税事業者)
  • □ 個人分・法人分それぞれの申告作業を、自分でやるか税理士に依頼するか決めたか

税理士に相談する文例

法人成りの初年度は、個人分と法人分の両方を同時に見てもらえる税理士を探しておくと段取りが楽になります。問い合わせの文例です。

お世話になっております。
[氏名]と申します。

[個人事業を廃業した日]に個人事業を廃業し、同日付で
[法人名]を設立(設立日:[設立日])いたしました。

つきましては、
・廃業日までの所得税・消費税の確定申告(個人分)
・法人の初年度決算および法人税・消費税の申告(法人分)
の両方について、ご相談・ご依頼が可能かご案内いただけますでしょうか。

法人の決算月は[決算月]、資本金は[資本金額]を予定しております。

お忙しいところ恐れ入りますが、
費用の目安とあわせてご返信いただけますと幸いです。

次にやること

まず、個人事業の廃業日と法人の決算月を確定させ、それぞれの申告期限をカレンダーに書き出してください。 期限を先に並べてみることで、個人分の申告と法人の初年度決算の間にどれだけ余裕があるか(あるいは無いか)が見えます。余裕が少ないと分かった場合は、早めに税理士への相談を進めるのが安全です。


※本記事は2026年9月時点で国税庁公式サイトを確認した内容に基づく一般的な情報整理です。個々の状況(決算月・資本金・課税事業者の判定など)によって扱いが変わるため、実際の申告前には国税庁ホームページまたは税理士・所轄の税務署で最新情報を確認してください。個別の税務判断は税理士にご相談ください。

出典 - 国税庁「No.2020 確定申告」(2026年9月8日確認) https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2020.htm - 国税庁「No.6601 申告と納税」(2026年9月8日確認) https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shohi/6601.htm - 国税庁「No.6610 法人に係る消費税の確定申告書の提出期限について」(2026年9月8日確認) https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shohi/6610.htm - 国税庁「No.6531 新規開業又は法人の新設と消費税」(2026年9月8日確認) https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shohi/6531.htm - 国税庁「法人税基本通達 第2節 事業年度」(法人税法13条関連、2026年9月8日確認) https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/hojin/01/01_02.htm

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会社を辞めて、会社をつくる準備をしている当事者です

執行役員として6年、会社の管理部門を統括する立場にいました。2026年に退職し、いまは求職活動と並行して、会社を立ち上げる準備を検討している段階です。まだ登記はしていません。調べて確かめたことだけを書き、済んでいない手続きは「これから」と正直に書きます。体験のふりをしません。

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