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病気で働けない一人社長の備え

この記事の内容
  1. 結論:法人で健康保険に入っていれば傷病手当金は使える。ただし役員報酬を払い続けると出ない
  2. 働けないうえに、お金の心配まで来るのは、きつくて当たり前
  3. 傷病手当金はいくらもらえて、いつまで続くのか
  4. 傷病手当金の「代わり」になるものは何があるか
  5. 役員報酬を下げて手当金をもらう作戦には、税金の壁がある
  6. 計算例:2か月休むと、いくら足りなくなるか
  7. チェックリスト:働けなくなる前に確かめること
  8. 次にやること

自分ひとりで会社を回している社長が、病気やケガで働けなくなったとき、収入はどうなるのか。この記事は、法人を作って健康保険に入っている一人社長に向けて、傷病手当金が使える条件と、使えない場合の「代わり」を整理する。最後に、2か月休んだときにいくら足りなくなるかを、仮の数字で計算する。

結論:法人で健康保険に入っていれば傷病手当金は使える。ただし役員報酬を払い続けると出ない

一人社長でも、会社が健康保険(協会けんぽなど)に入っていて自分が被保険者なら、傷病手当金の対象になりうる(健康保険法99条)。協会けんぽの公式ページに書かれている条件は次の4つだ(2026年9月確認)。

条件 公式ページの表現
1 業務外の事由による病気やケガの療養のための休業であること
2 仕事に就くことができないこと
3 連続する3日間を含み4日以上仕事に就けなかったこと
4 休業した期間について給与の支払いがないこと

4つ目が一人社長のつまずきどころになる。給与が出ている間は傷病手当金は出ず、給与が手当金より少ないときは差額だけが出る、と公式ページにある。会社員は「会社が給与を止める」で済むが、一人社長は給与を止めるかどうかを自分で決める。

なお、公式ページには役員や事業主についての記載はなかった(2026年9月確認)。役員が休業中に、どこまでの仕事をすると「働けない」に当たらなくなるかは、協会けんぽの窓口で確認する必要がある。【各自確認:役員が休業中にどこまでの業務を行うと「働けない」に当たらなくなるか。加入している協会けんぽの窓口で確認】

個人事業主が入る国民健康保険には、傷病手当金がないと言われることが多い。【各自確認:加入している国民健康保険(自治体や国保組合)に傷病手当金の制度があるか、加入先の窓口で確認】この記事は、法人化して社会保険に入っている人向けである。

働けないうえに、お金の心配まで来るのは、きつくて当たり前

体が動かないときに、売上と請求と固定費のことが頭を離れない。一人社長には、代わりに動いてくれる人がいない。これは弱さではなく、仕組みの問題だ。

そして、備えていなかった自分を責めなくてよい。傷病手当金の説明は会社員向けに書かれていて、役員の扱いは探さないと出てこない。分からなかったのは、あなたの怠慢ではない。

やることは、体を休めることが先で、お金の整理はその次でよい。心身の不調が続くときは、まず医師に相談してほしい。この記事は医療の判断をしない。

傷病手当金はいくらもらえて、いつまで続くのか

公式ページによると、待期(連続3日)の後、4日目以降の仕事に就けなかった日に対して支給される。待期には有給休暇や公休日も含まれる。支給期間は、支給を開始した日から通算して1年6か月である。

1日あたりの額は、標準報酬月額を30で割った額の3分の2が目安になる(公式ページには月額17万円で日額3,780円の記載例がある)。

ここで一人社長に効いてくるのが、標準報酬月額は役員報酬から決まるという点だ。税金を軽くするために役員報酬を低く設定していると、傷病手当金も同じ割合で低くなる。

標準報酬月額 1日あたりの目安(÷30×2/3)
30万円 約6,667円
15万円 約3,333円

報酬を下げて手元に残す形は、病気のときに手当金が小さくなる形でもある。

傷病手当金の「代わり」になるものは何があるか

傷病手当金が使えない、または足りないときの選択肢を並べる。どれも万能ではない。

選択肢 中身 注意点
就業不能保険・所得補償保険(民間) 働けない期間に給付金が出る商品 待つ日数や給付の条件は商品ごとに違う。加入前の健康状態で断られることもある【各自確認:検討する保険会社の商品パンフレットや公式サイトで、待機日数・給付条件・健康告知の基準を確認】
高額療養費(健康保険法115条) 医療費の自己負担に上限が設けられる 生活費の代わりではなく、医療費の負担を抑える制度
小規模企業共済 疾病などで事業をやめる場合にも共済金が出る仕組みがある 対象となる会社の規模や、共済金の種類・金額は条件がある【各自確認:自分の会社の規模区分と、該当する共済金の種類・金額を中小機構の公式サイトで確認】
障害年金 病気やケガが長引いて一定の状態になったとき 初診日にどの年金に入っていたかで受け取れる種類が変わる【各自確認:自分の初診日にどの年金制度に加入していたかを年金事務所で確認】
生活防衛資金 自分で貯めておく現金 制度に頼れないときの最後の支え

労災保険は、役員は原則として対象外である。中小事業主等が入れる特別加入という仕組みはあるが、加入していなければ使えない(厚生労働省)。

つまり、一人社長の「代わり」は、傷病手当金を土台にして、民間の保険と現金で足りない分を埋める形になりやすい。

役員報酬を下げて手当金をもらう作戦には、税金の壁がある

給与が出ていると傷病手当金が出ない。それなら休業中は役員報酬をゼロにしたい、と考えるのは自然だ。ただ、役員報酬は毎月同じ額を払わないと、経費(損金)にならない部分が出る(定期同額給与。法人税法34条1項1号)。

期の途中で額を変えて認められる場合は、法人税法施行令69条に決められている。病気による休業が、そこにある「臨時改定事由」に当たるかどうかは、調べた範囲では言い切れる資料を確認できていない。【各自確認:病気休業を理由とした期中の役員報酬の減額が「臨時改定事由」に当たるか、顧問税理士に確認】

もう一つ、報酬をゼロにすると、社会保険の被保険者資格に影響が出るおそれがある。傷病手当金は被保険者であることが前提なので、ここは年金事務所で先に確認したい。【各自確認:役員報酬をゼロにした場合に社会保険の被保険者資格が維持されるか、年金事務所で確認】

計算例:2か月休むと、いくら足りなくなるか

次の仮の前提で計算する。あなたの数字に置き換えて使ってほしい。

前提

  • 一人社長。協会けんぽ加入。標準報酬月額は30万円
  • 2026年10月1日から休業。10月1〜3日が待期、4日目の10月4日から支給対象
  • 休業は11月29日までの60日間。休業中の役員報酬はゼロ、売上もゼロ
  • 会社の固定費は月に、家賃8万円・顧問料3万円・通信やソフト2万円・社会保険料(会社分+本人分)
  • 社会保険料は30万円×(健康保険料率9.85%+子ども・子育て支援金率0.23%+厚生年金保険料率18.3%)で概算。料率は協会けんぽ東京支部の令和8年度保険料額表(健康保険料率は令和8年3月分から、支援金率は令和8年4月分から適用。2026年10月4日確認)のもの。日本年金機構の「保険料の免除等」に載っている免除は産前産後休業・育児休業の期間だけで、病気による休業は挙がっていない(2026年10月4日確認)。この計算でも免除なしとする
  • 本人の生活費は月25万円

入ってくるお金

項目 計算 金額
1日あたりの額 30万円 ÷ 30 × 2/3 6,667円
支給対象日数 60日 − 待期3日 57日
傷病手当金 6,667円 × 57日 380,019円

出ていくお金(2か月分)

項目 計算 金額
社会保険料 30万円 ×(9.85%+0.23%+18.3%)=85,140円/月 85,140円
家賃・顧問料・通信など 8万+3万+2万 130,000円
会社の固定費(月) 85,140円+130,000円 215,140円
会社の固定費(2か月) 215,140円 × 2 430,280円
本人の生活費(2か月) 25万円 × 2 500,000円
合計 430,280円+500,000円 930,280円

足りない額

930,280円 − 380,019円 = 550,261円

2か月休むと、約55万円を貯えから出す計算になる。ここに、傷病手当金が振り込まれるまでの時間差が加わる。申請してから支給されるまでの日数は、この計算に入れていない。

1日あたりの額の端数の処理も、この計算では四捨五入している。実際の扱いは公式に確認していない。

チェックリスト:働けなくなる前に確かめること

□ 会社が入っている健康保険は協会けんぽか、国保か(国保には傷病手当金がない) □ 自分の標準報酬月額はいくらか(保険料の通知書か年金事務所で確認した) □ 役員報酬が低めのとき、傷病手当金の日額がいくらになるか計算した □ 休業中に役員報酬を止められるか、税理士に「期中の減額」を聞いた □ 役員報酬をゼロにした場合の社会保険の資格を、年金事務所に確認した □ 毎月の固定費と生活費を書き出し、貯えで何か月耐えられるかを出した □ 民間の就業不能保険・所得補償保険の給付条件を、1社以上で確認した

次にやること

体調がある程度落ち着いていて、動けるなら、まず自分の標準報酬月額を確認して、傷病手当金の日額を出す。それを使って、上の計算例の表に自分の数字を入れ、貯えで何か月耐えられるかを1つの数字にする。そのうえで税理士に「病気休業中の役員報酬を期中に変えられるか」を1問だけ聞く。

当サイト運営者

会社を辞めて、会社をつくる準備をしている当事者です

執行役員として6年、会社の管理部門を統括する立場にいました。2026年に退職し、いまは求職活動と並行して、会社を立ち上げる準備を検討している段階です。まだ登記はしていません。調べて確かめたことだけを書き、済んでいない手続きは「これから」と正直に書きます。体験のふりをしません。

この記事の作り方: 下書きにAIを使い、法令の条文と官公庁の公式ページに照らして事実確認したうえで公開しています。確認の取れない記述が残る記事は公開せず、一次資料が見つからない箇所は本文にそう書いています。確認の手順を見る →

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