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株式の譲渡制限とは

この記事の結論
  • 譲渡制限株式とは、譲渡による株式の取得についてその株式会社の承認を要する旨を定款で定めた株式のこと(会社法第107条第1項第1号、種類株式の場合は第108条第1項第4号)
  • 発行する全部または一部の株式に譲渡制限の定めを設けていない会社は「公開会社」に区分され(会社法第2条第5号)、公開会社は取締役会の設置が義務になる(会社法第327条第1項第1号)
  • 譲渡制限の承認機関は取締役会設置会社では取締役会、それ以外では株主総会が原則だが、定款で代表取締役など別段の定めを置くこともできる(会社法第139条第1項)
  • 承認請求から2週間以内(定款でこれより短く定めた場合はその期間)に会社が通知しないと承認したものとみなされる(会社法第145条第1号)
  • 非公開会社は取締役の任期を定款で最長10年まで伸長できる(会社法第332条第2項、監査等委員会設置会社・指名委員会等設置会社を除く)、株主総会の招集通知期限も公開会社の2週間前に対し原則1週間前でよい(書面・電磁的方法による議決権行使を定めた場合は2週間前。会社法第299条第1項)
この記事の内容
  1. 結論:譲渡制限を定める理由は株主構成を守るため
  2. 株式の譲渡制限とは何か
  3. なぜ定款に譲渡制限を書くのか(理由)
  4. 定款に書かないとどうなるか(公開会社になる)
  5. 比較表:譲渡制限あり・なしで何が変わるか
  6. 文例:定款に譲渡制限を定める条項
  7. チェックリスト:譲渡制限を定めるかどうかの判断
  8. 次にやること

この記事は、これから会社を設立する人、または既存の定款を見直したい人に向けて書いています。 結論から言うと、株式の譲渡制限とは「株主が株式を第三者に売るとき、会社の承認を必要とする」旨を定款に定める制度です。書かない場合は「公開会社」という区分になり、取締役会の設置義務や取締役の任期など、複数の規律が厳しくなります。この記事では、制度の中身、書く理由、書かないときの影響、そして定款への記載例を順番に整理します。

こんな状態ではありませんか
  • 「譲渡制限株式」という言葉の意味が分からない
  • 定款に譲渡制限を書くかどうか、何を基準に決めればいいのか分からない
  • 書かなかった場合に、具体的に何が変わるのか分からない

結論:譲渡制限を定める理由は株主構成を守るため

株式会社は、発行する株式について「譲渡による当該株式の取得について当該株式会社の承認を要すること」を定款で定めることができます(会社法第107条第1項第1号)。これが「株式の譲渡制限」で、この定めを設けた株式が「譲渡制限株式」です。種類株式を発行していて一部の種類にだけ譲渡制限を付ける場合は、根拠条文が会社法第108条第1項第4号に変わります。

譲渡制限を定款に書く一番の理由は、知らない相手が勝手に株主になるのを防ぐためです。 定めを置かない場合、会社は「公開会社」に区分され(会社法第2条第5号)、取締役会の設置が義務になるなど(会社法第327条第1項第1号)、機関設計の自由度が下がります。設立時にどちらを選ぶかで、その後の運営コストが変わるため、仕組みを理解してから決めるのが安全です。

なお、この記事で挙げる会社法の条文番号と内容は、e-Gov法令検索の会社法(平成17年法律第86号)で2026年10月に確認しています。

株式の譲渡制限とは何か

会社法上、株式は本来、株主が自由に譲渡できるのが原則です(会社法第127条)。譲渡制限は、この原則に対する例外として、定款に定めることで初めて効力を持ちます。

条文上の位置づけは次の2つに分かれます。

  • 発行する全部の株式に譲渡制限を付ける場合: 会社法第107条第1項第1号(定款で定める内容は同条第2項第1号)
  • 一部の種類の株式にだけ譲渡制限を付ける場合(種類株式発行会社): 会社法第108条第1項第4号(定款で定める内容は同条第2項第4号)

発行する株式すべてに譲渡制限を付ける第107条のパターンで、この定めがある会社は「株式譲渡制限会社」「非公開会社」などと呼ばれます(「非公開会社」は会社法の条文には出てこない用語で、条文上は「公開会社でない株式会社」と書かれています。公開会社でない会社を指す通称として実務でよく使われます。e-Gov法令検索の会社法全文で2026年10月に確認)。

登記の面でも扱いがあり、株式の譲渡制限に関する規定を定款に置いた場合、その規定は「発行する株式の内容」として登記事項になります(会社法第911条第3項第7号)。設立登記や定款変更登記の際に、登記簿にも反映される点は覚えておく必要があります。

なぜ定款に譲渡制限を書くのか(理由)

譲渡制限を定款に書く理由は、主に次の3つです。

1. 望まない相手が株主になることを防ぐ 譲渡制限がない株式は自由に売買できるため、株主から第三者へ株式が渡ると、会社の意思と関係なく新しい株主が現れる可能性があります。知らない第三者や、場合によっては競合他社が株式を取得するリスクを避けたい場面で譲渡制限が使われます。

2. 機関設計の自由度を保つ 非公開会社(発行する全部の株式に譲渡制限のある会社。一部の株式にしか譲渡制限がなければ公開会社になります。会社法第2条第5号)は、取締役会を置かない機関設計を選べます(取締役会の設置義務は公開会社などに課されるもので、会社法第327条第1項)。設立直後で役員が少ない会社にとって、取締役会の設置義務がないことは運営の負担を下げます。

3. 取締役の任期を伸ばせる 公開会社でない株式会社は、定款によって取締役の任期を選任後10年以内に終了する事業年度の定時株主総会の終結時まで伸長できます(会社法第332条第2項。監査等委員会設置会社・指名委員会等設置会社を除く)。公開会社の取締役任期は原則2年で、これより長くはできません。役員変更登記の手間を減らしたい小規模会社にとって、この差は実務上のコストに直結します。

定款に書かないとどうなるか(公開会社になる)

譲渡制限を定款に定めない場合、その会社は会社法上「公開会社」に分類されます。公開会社の定義は「発行する全部又は一部の株式の内容として譲渡による当該株式の取得について株式会社の承認を要する旨の定款の定めを設けていない株式会社」です(会社法第2条第5号)。発行する株式の一部にでも譲渡制限のない株式があれば、公開会社に該当する点に注意が必要です(上場企業を指す一般的な「公開会社」のイメージとは範囲が異なります)。

公開会社になると、次の点で非公開会社より規律が厳しくなります。

  • 取締役会の設置が義務になる(会社法第327条第1項第1号)。取締役は3人以上(会社法第331条第5項)、監査役(または監査等委員会・指名委員会等)の設置も原則必要になります(会社法第327条第2項。公開会社でない会計参与設置会社は例外)
  • 取締役の任期は原則2年までで、非公開会社のように10年まで伸ばせない(会社法第332条第1項・第2項)
  • 株主総会の招集通知は、開催日の2週間前までに発送する必要がある。非公開会社は原則1週間前でよい(会社法第299条第1項)。ただし、書面や電磁的方法で議決権を行使できると定めた場合は、非公開会社でも2週間前が必要です(会社法第299条第1項、第298条第1項第3号・第4号)。取締役会を置かない会社は、定款で1週間より短くすることもできます ## 譲渡承認は誰が決めるか、手続きはどう進むか {#j5}

譲渡制限株式を譲渡するには、会社の承認が必要です。承認するかどうかを決める機関は、原則として次のとおりです(会社法第139条第1項)。

  • 取締役会を設置している会社: 取締役会
  • 取締役会を設置していない会社: 株主総会

ただし同項には「定款に別段の定めがある場合は、この限りでない」とあり、定款で代表取締役を承認機関とするなど、別の定めを置くこともできます。 小規模な会社で、譲渡のたびに取締役会や株主総会を開く手間を省きたい場合は、この定めを活用するケースがあります。

手続きの流れは、株主(または株式取得者)が会社に譲渡承認請求を行い(会社法第136条・第137条)、会社が承認機関の決定を経て、請求者に結果を通知する、という順番です。ここで実務上重要なのは、会社が請求日から2週間以内に承認・不承認の通知をしないと、承認したものとみなされるルールです(会社法第145条第1号。定款でこれより短い期間を定めた場合はその期間。会社と請求者の合意で別の定めをしたときは、この限りでない)。通知を失念すると、望まない相手への譲渡を拒めなくなるため、譲渡承認請求を受けたら早めに機関決定を行う必要があります。

比較表:譲渡制限あり・なしで何が変わるか

項目 譲渡制限あり(非公開会社) 譲渡制限なし(公開会社)
取締役会の設置 任意 義務(会社法第327条第1項第1号)
取締役の任期 定款で最長10年まで伸長可(会社法第332条第2項) 原則2年(会社法第332条第1項)
株主総会の招集通知期限 原則1週間前(書面・電磁的方法による議決権行使を定めた場合は2週間前。会社法第299条第1項) 2週間前(会社法第299条第1項)
株式の譲渡 会社の承認が必要(会社法第107条第2項第1号。承認の請求は第136条) 原則自由(会社法第127条)
登記事項 譲渡制限に関する規定を「発行する株式の内容」として登記(会社法第911条第3項第7号) 該当なし

文例:定款に譲渡制限を定める条項

発行する株式すべてに譲渡制限を定める場合の、定款の記載例です。承認機関を取締役会とするパターンと、取締役会を置かない会社で代表取締役とするパターンの2つを示します。実際の定款に使う際は、会社の機関設計に合わせて調整し、公証人や司法書士に確認してから使ってください。

(株式の譲渡制限)
第○条 当会社の株式を譲渡により取得するには、取締役会の承認を受けなければならない。

取締役会を置かず、代表取締役を承認機関とする場合の例です。

(株式の譲渡制限)
第○条 当会社の株式を譲渡により取得するには、代表取締役の承認を受けなければならない。

チェックリスト:譲渡制限を定めるかどうかの判断

以下の項目に当てはまる数が多いほど、譲渡制限を定款に定める(非公開会社を選ぶ)メリットが大きいと考えられます。

  • □ 株主を経営者本人、または信頼できる少数の関係者だけにしたい
  • □ 取締役会を置かず、機関設計をシンプルにしたい
  • □ 役員変更登記の頻度を減らしたい(取締役任期を伸ばしたい)
  • □ 将来、株式を使った資金調達(第三者割当増資など)で株主が増える可能性があり、増えた株主を会社側でコントロールしたい
  • □ 上場を目指しておらず、株式の自由な流通を必要としていない

逆に、将来的に上場を目指す、または不特定多数からの出資を広く募る計画がある場合は、譲渡制限を設けるかどうかを、事業計画とあわせて専門家(司法書士・弁護士)に相談してから決めるのが安全です。

次にやること

自分の会社の定款(または設立予定の定款案)を開き、「株式の譲渡制限」に関する条項があるか、あるとすれば承認機関がどこに指定されているかを確認してください。まだ定款がない場合は、この記事の文例を叩き台に、司法書士または公証役場に相談して条項を確定させることが次の一歩になります。

当サイト運営者

会社を辞めて、会社をつくる準備をしている当事者です

執行役員として6年、会社の管理部門を統括する立場にいました。2026年に退職し、いまは求職活動と並行して、会社を立ち上げる準備を検討している段階です。まだ登記はしていません。調べて確かめたことだけを書き、済んでいない手続きは「これから」と正直に書きます。体験のふりをしません。

この記事の作り方: 下書きにAIを使い、法令の条文と官公庁の公式ページに照らして事実確認したうえで公開しています。確認の取れない記述が残る記事は公開せず、一次資料が見つからない箇所は本文にそう書いています。確認の手順を見る →

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