会社の決算月はいつにするか
- 決算期(事業年度)は法人税法上の「会計期間」であり、定款等に定めがあればそれによる(法人税法13条)
- 確定申告書の提出期限は事業年度終了の日の翌日から2か月以内(法人税法74条、国税庁)
- 資本金1,000万円未満の新設法人は設立第1期・第2期は原則として消費税の納税義務が免除され、設立日の前月を決算月にすると第1期の期間(免税期間)が最も長くなる(消費税法12条の2第1項、国税庁)
- 事業年度(決算期)は株式会社・合同会社いずれも登記事項に含まれておらず(会社法911条3項、914条)、決算月の変更は登記不要・登録免許税もかからない
この記事の内容
この記事は、会社設立の手続きを進めていて、決算月(事業年度の区切り)をいつにすればいいのか決めかねている一人起業の人に向けて書いています。 結論から言うと、決算月に法律上の決まりは無く、①消費税の免税期間を最大化できるか、②本業の繁忙期と申告作業が重ならないか、③納税資金を用意しやすい時期かの3つの軸で決めるのが実務上の考え方です。以下、それぞれの軸と、後から変更する場合の手続きを整理します。
- 決算月を何月にすればいいのか、決める基準が分からない
- 「3月決算が多い」とは聞くが、自分も合わせるべきか判断できない
- 一度決めたら変更できないのではないかと不安
結論:決算月に法律上の決まりは無い
会社の決算月(事業年度の終了月)は、何月でなければならないという法律上の決まりがありません。事業年度は会計期間として、定款等に定めがあればそれに従うとされているだけです(法人税法13条)。多くの会社が3月・12月・9月あたりに決算月を置いています(国税庁「統計年報」の決算期別法人数でも3月決算が最多)が、これは慣習や取引先・親会社との合わせが理由であり、一人起業が同じにする義務はありません。
決算月は「好きに決めていい」からこそ、基準が無いと決めにくい数字です。 この記事では、消費税・申告作業の繁忙期・資金繰りという3つの実務上の軸から、逆算して決める考え方を示します。
決算月とは何か:確定申告の起点になる期間
決算月とは、会社の会計期間(事業年度)が終わる月のことです。たとえば決算月を3月に設定すると、事業年度は「4月1日〜翌年3月31日」になります。この事業年度終了日を起点に、確定申告書の提出期限は事業年度終了の日の翌日から2か月以内と法律で定められています(法人税法74条、国税庁)。つまり決算月を何月にするかで、毎年の申告作業が発生する時期が自動的に決まります。
軸1:消費税の免税期間を最大化する
資本金1,000万円未満で会社を設立する場合、新設法人には消費税の計算に使う「基準期間」が無いため、設立第1期・第2期は原則として消費税の納税義務が免除されます(消費税法12条の2第1項、国税庁)。
この免税期間の長さは、設立第1期をどれだけ長く取れるかで変わります。 事業年度は1年を区切りとするため、設立日から最も遠い月を決算月にする、つまり「設立日の前月」を決算月に設定すると、第1期がほぼ12か月になり、免税期間(第1期+第2期)が最も長くなります。
逆に、設立日の翌月あたりを決算月にすると、第1期はごく短い期間(1〜2か月)で終わってしまい、免税の恩恵を受けられる期間全体が短くなります。資本金1,000万円未満で免税のメリットを取りたい場合、決算月は「設立月の前月」を軸に検討するのが基本の考え方です。特定新規設立法人に該当する場合はこの限りではないため、出資者が別にいる場合は確認が必要です(国税庁「特定新規設立法人の納税義務免除の特例」)。
軸2:本業の繁忙期と申告作業を重ねない
確定申告書の作成・提出は、決算月の2か月後が期限になります(法人税法74条)。この期限までに、決算整理・試算表の作成・申告書作成という作業が発生します。この作業が本業の繁忙期と重なると、両方が中途半端になるリスクがあります。
たとえば年末年始に受注が集中する事業であれば、決算月を12月にすると1〜2月の申告作業と繁忙期が丸ごと重なります。この場合、決算月を6月や9月などにずらし、本業が落ち着いている時期に申告作業を置くほうが、実務上は無理がありません。税理士に依頼する予定がある場合、税理士事務所の繁忙期(3月決算の申告が集中する2〜5月ごろ)と自社の決算・申告時期が重ならないようにすると、相談への対応が早くなりやすいという声が複数の税理士事務所の解説記事にあります。ただし、対応速度を事務所横断で数値化した公的な統計は見当たりませんでした(国税庁・日本税理士会連合会の公表資料には該当データなし)。事務所ごとの体感差が大きい点として参考にしてください。
軸3:納税資金を用意しやすい時期にする
法人税・消費税(課税事業者になった後)・法人住民税(均等割を含む)は、決算月の2か月後にまとめて納税が発生します。この納税のタイミングが、資金的に苦しい時期と重なっていないかも確認しておく事項です。
たとえば賞与を支払った直後や、大型の設備投資・仕入れの支払いが集中する月の2か月後を決算にすると、納税資金の確保が難しくなる場合があります。売上が安定して入ってくる時期の少し後を決算月にすると、納税資金を用意しやすくなります。なお、事業年度が1年未満(第1期など)の場合、法人住民税の均等割は事業年度の月数で按分計算されます(月数は暦に従い計算し、1か月に満たない端数は切り捨て。地方税法52条・312条)。
設立日別・第1期の長さ早見表
免税期間を最大化する軸(軸1)を優先した場合、設立日と決算月の組み合わせで第1期の長さがどう変わるかを一覧にします。
| 設立日 | 決算月(軸1優先) | 第1期の期間(目安) |
|---|---|---|
| 4月1日 | 3月 | 約12か月(4/1〜翌3/31) |
| 4月20日 | 3月 | 約11か月強(4/20〜翌3/31) |
| 9月10日 | 8月 | 約11か月強(9/10〜翌8/31) |
| 12月25日 | 11月 | 約11か月強(12/25〜翌11/30) |
いずれの場合も「設立日の前月」を決算月にすることで、第1期を最大限に近い長さで確保できます。軸2(繁忙期)・軸3(資金繰り)を優先する場合は、この早見表の期間より免税期間が短くなる代わりに、実務上の負担が軽くなる決算月を選ぶことになります。
決算月は後から変更できる
決算月は一度決めたら固定というわけではなく、後から変更できます。 事業年度(決算期)は、株式会社・合同会社のいずれにおいても登記事項には含まれていません(会社法911条3項、914条)。つまり決算月の変更は法務局への変更登記が不要で、登録免許税もかかりません。
変更に必要なのは次の手続きです。
| 手続き | 株式会社 | 合同会社 |
|---|---|---|
| 定款変更の意思決定 | 株主総会の特別決議(会社法309条2項11号、466条) | 総社員の同意(定款に別段の定めがなければ。会社法637条) |
| 税務署等への届出 | 異動届出書を納税地の所轄税務署等へ提出(国税庁) | 同左 |
| 登記 | 不要 | 不要 |
費用がかからず、社内の意思決定と届出書の提出だけで完結するため、設立時に完璧な決算月を選べなくても、事業の状況が変わった段階で見直すことができます。ただし、変更した年度は変則的な期間(1年未満)になる点、消費税の課税事業者になった後は免税のメリットが無くなっている点には注意が必要です。
一人起業ならどう決めるか
一人起業で自己資金のみで会社を作る場合、実務上の考え方は次の順番になります。
- 資本金が1,000万円未満なら、まず「設立月の前月」を決算月の候補にする(軸1、消費税免税期間の最大化)
- その決算月の2か月後(申告時期)が、本業の繁忙期と重ならないか確認する(軸2)
- その申告時期に、納税資金を用意できる資金繰りになっているか確認する(軸3)
3つの軸が衝突する場合、免税のメリットは第1期・第2期の一時的なものである一方、繁忙期や資金繰りは毎年繰り返される負担のため、軸2・軸3を優先して決算月を1〜2か月ずらすのも現実的な判断です。
実体験について、正直に書きます
正直に書きます。この記事を書いている2026年8月31日時点で、私自身はまだ合同会社の設立登記が完了しておらず、決算月も最終的には確定していません。ここまでに書いた3つの軸のうち、消費税の免税期間を最大化する軸(軸1)を優先する方向で検討している段階ですが、本業の繁忙期がまだ読み切れていない部分があり、最終決定はこれからです。
決算月を確定させたら、どの軸を最終的にどう優先したか、その理由の内訳をこの記事に実体験として追記します。
次にやること
まず、設立予定日を仮に決めたら、その前月を決算月の第一候補として置いてください。 そのうえで、その決算月の2か月後(申告時期)が自分の本業の繁忙期や資金繰りと衝突しないかを確認し、衝突するようなら決算月を1〜2か月ずらす、という順番で検討すると、3つの軸を漏らさず判断できます。決算月を含む事業年度の設定は、freee会社設立のような設立サービスの入力フォームでも仮シミュレーションできるので、自分で日数計算するのが手間な場合は活用してください。
※本記事は2026年8月時点の法令・国税庁公式情報と、筆者個人の状況に基づくものです。決算月の最適な選択は事業内容・取引先・資金計画によって変わるため、実際に決定する前には税理士・司法書士などの専門家に確認してください。税理士事務所の繁忙期が実務上の相談のしやすさにどの程度影響するかは、国税庁・日本税理士会連合会の公表資料には統計が無く、事務所ごとの体感差によるものであることを確認した上で、一般論として記載しています(一次情報なし)。
出典 - 法人税法 第13条(事業年度の意義) - 法人税法 第74条(確定申告) - 消費税法 第12条の2第1項(基準期間がない法人の納税義務の免除の特例) - 会社法 第911条3項、第914条(株式会社・合同会社の登記事項) - 会社法 第309条2項11号、第466条(株式会社の定款変更・特別決議) - 会社法 第637条(持分会社の定款の変更) - 地方税法 第52条、第312条(道府県民税・市町村民税の均等割の月割計算) - No.6503 基準期間がない法人の納税義務の免除の特例|国税庁 - 特定新規設立法人の納税義務免除の特例|国税庁 - C1-8 異動事項に関する届出|国税庁 - 国税庁統計年報|国税庁