定款の変更手続き
- 定款の変更は株主総会の特別決議による(会社法466条、309条2項11号)
- 定款変更の議事録自体に公証人の認証や手数料は不要
- 本店移転の登録免許税は同一法務局管内なら3万円、管轄外(法務局が変わる)なら旧所在地・新所在地の両方で計6万円(登録免許税法別表第一 二十四(一))
- 目的変更の登録免許税は3万円(同)
- 本店移転と目的変更を同時に登記申請しても、登録免許税の区分が別なので原則それぞれの税額が合算される
- 定款に本店所在地を最小行政区画(市区町村)までしか定めていない会社は、同一市区町村内の移転なら株主総会決議は不要で取締役(会)の決定で足りる
この記事の内容
この記事は、会社を移転させたい・事業目的を増やしたいが、定款変更にいくらかかるのか分からず不安な人に向けて書いています。 結論から言うと、定款の変更そのもの(株主総会での決議)に費用はかかりません。費用が発生するのは、その変更を法務局に届け出る「変更登記」の段階です。本店移転は3万円か6万円、目的追加は3万円の登録免許税が法律で決まっており、司法書士に依頼する場合はこれに報酬が上乗せされます。以下、手続きの流れと費用の内訳を整理します。
- 定款変更にどれくらいお金がかかるのか見当がつかない
- 本店移転の費用が「3万円」とも「6万円」とも書かれていて、どちらが自分のケースか分からない
- 自分で手続きすれば安くなるのか、司法書士に頼むと何が変わるのか分からない
結論:定款変更は無料、変更登記に費用がかかる
定款の変更は、株主総会で決議するだけの手続きであり、この決議自体に法律上の費用はかかりません。会社の設立時に作る「原始定款」は公証人の認証が必要ですが、設立後に内容を変更する場合、その変更に公証人の認証は不要です(会社法上、定款変更に認証を義務づける規定はなく、実務上も変更後の定款を公証役場へ持ち込む必要はありません)。
費用が発生するのは、変更した内容が登記事項(本店の所在地・事業目的など)にあたる場合の変更登記です。会社は登記事項に変更が生じたときは、変更の日から2週間以内に変更登記をしなければならないと会社法915条1項で定められており、この登記の申請時に登録免許税がかかります。本店移転と目的追加はどちらも登記事項の変更にあたるため、以下で内訳を見ていきます。
定款変更の手続き:株主総会の特別決議が必要
定款を変更するには、株主総会の決議が必要です(会社法466条)。しかも普通決議ではなく、特別決議という、より重い要件の決議によらなければなりません(会社法309条2項11号)。
特別決議の要件は、議決権を行使できる株主の議決権の過半数(3分の1以上の割合を定款で定めた場合はその割合以上)を有する株主が出席し、出席した株主の議決権の3分の2以上(これを上回る割合を定款で定めた場合はその割合以上)にあたる多数で決議することです(会社法309条2項柱書)。一人会社(株主が自分1人)であれば、この要件は実質的に自分の意思決定だけで満たせます。
決議したら、株主総会議事録を作成して保管します。この議事録が、後の変更登記申請の添付書類になります。
本店移転の費用:管轄内3万円・管轄外6万円
本店移転の登録免許税は、移転先がどの法務局の管轄になるかで金額が変わります。
- 同一法務局の管轄内での移転:登録免許税3万円(登記申請は1件)
- 管轄が変わる移転(別の法務局のエリアに移す場合):登録免許税6万円(旧所在地の法務局・新所在地の法務局それぞれに申請が必要なため、3万円+3万円)
これは登録免許税法別表第一 二十四(一)に定められた「本店又は主たる事務所の移転の登記」の税額(1件につき3万円)が、申請件数分そのままかかる仕組みです。管轄が変わる移転は、旧本店所在地の登記所を経由して新本店所在地の登記所に申請する形式になり、結果として登記申請が2件扱いになるため2倍の6万円になります。
司法書士に依頼する場合はこれに報酬が加わり、目安として管轄内は登録免許税3万円+報酬4万円台〜、管轄外は登録免許税6万円+報酬6万円台〜という水準が複数の司法書士事務所のサイトで案内されています(※2026年9月時点の調査)。
目的追加の費用:登録免許税3万円+司法書士報酬
事業目的の追加(または変更・削除)も、登記事項の変更にあたるため変更登記が必要です。登録免許税は3万円(登録免免許税法別表第一 二十四(一))で、本店移転のように管轄内外で金額が変わることはありません。
司法書士に依頼する場合、報酬の目安は2万円台〜3万円台とされ、登録免許税と合わせた総額はおおむね5万円前後が一つの目安として案内されています(※2026年9月時点の調査。事務所により幅があります)。自分で申請書を作成して法務局に提出すれば、この司法書士報酬部分はかからず、登録免許税3万円の実費のみで済みます。
目的追加自体に審査や許可は不要です(飲食業・古物商など、追加した目的に基づく事業を始める段階で別途の許認可が必要になるケースはありますが、それは登記とは別の手続きです)。「目的を追加しないまま事業を始めてしまい、あとから追加した」という順番でも登記上は問題ありませんが、金融機関や取引先から登記簿上の目的と実際の事業の整合性を確認されることがあるため、事業を始める前に追加しておくのが無難です。
同一市区町村内の移転なら株主総会決議は不要な場合がある
本店移転について、実務上よく使われる節約ポイントがあります。会社法上、本店の所在地は定款の絶対的記載事項です(会社法27条3号)が、多くの会社は定款に「当会社は、本店を東京都渋谷区に置く」のように最小行政区画(市区町村・特別区)までしか記載していません。
この場合、同じ市区町村内での移転であれば、そもそも定款を変更する必要がなく、株主総会の決議も不要です。取締役会設置会社なら取締役会の決議、非設置会社なら取締役の過半数の一致で本店移転を決定できます(会社法348条2項)。定款変更(=株主総会特別決議)が必要になるのは、次のいずれかの場合です。
- 移転先が別の市区町村になる場合
- 定款に番地まで本店所在地を記載している場合(この場合はどこに移っても定款変更が必要)
つまり「定款変更の手続きが必要かどうか」自体が、自社の定款の書き方次第で変わります。まず自社の定款で本店所在地がどこまで書かれているかを確認するのが最初のステップです。
本店移転と目的追加を同時にやると安くなるか
本店移転と目的追加を同じタイミングで決議し、同じ登記申請書でまとめて申請することは可能です。ただし、登録免許税は原則としてそれぞれの区分ごとに計算され、合算されます。 本店移転(管轄内なら3万円)と目的変更(3万円)を同時に申請しても、合計6万円かかるのが基本で、まとめて申請したからといって登録免許税そのものが安くなるわけではありません。
同時に行う実質的なメリットは、株主総会を1回で済ませられること、司法書士に依頼する場合は書類作成や申請の手間が1回分にまとまり、報酬が別々に依頼するより抑えられることがあることです。移転と目的追加の両方を控えているなら、時期を合わせて検討する価値はあります。
自分でやるか司法書士に頼むか
変更登記は自分で申請することもできます。法務局の窓口やオンライン申請システム(登記・供託オンライン申請システム)を使えば、司法書士報酬をかけずに登録免許税の実費のみで済ませられます。一方、申請書の様式や添付書類(株主総会議事録・定款・委任状など)に不備があると補正(法務局からの訂正指示)がかかり、手続きが長引くことがあります。
- 自分でやる:費用は登録免許税の実費のみ(本店移転3万円または6万円、目的追加3万円)。時間と手間はかかる
- 司法書士に依頼する:登録免許税に加えて報酬(数万円)がかかるが、書類作成・法務局とのやり取りを任せられる
会社設立の登記を自分で行った経験がある場合は、変更登記も同じ要領で進めやすくなります。逆に設立時から司法書士に依頼していた場合は、変更登記も引き続き同じ司法書士に相談するケースが多いようです。
比較表:定款変更にかかる費用の内訳
| 手続き | 登録免許税 | 株主総会決議 | 司法書士報酬の目安(依頼時) |
|---|---|---|---|
| 本店移転(同一法務局管内) | 3万円 | 定款の記載次第で不要な場合あり(同一市区町村内かつ最小行政区画までの記載時) | 4万円台〜(※2026年9月時点の調査) |
| 本店移転(管轄外) | 6万円(旧・新それぞれ3万円) | 必要(定款変更にあたる) | 6万円台〜(※2026年9月時点の調査) |
| 目的追加 | 3万円 | 必要(定款変更にあたる) | 2万円台〜3万円台(※2026年9月時点の調査) |
| 定款変更の決議そのもの | 0円(公証人の認証不要) | — | — |
実体験について、正直に書きます
正直に書きます。この記事を書いている2026年9月1日時点で、私自身はまだ合同会社の設立登記すら完了しておらず、本店移転や目的追加を実際に経験したことはありません。
そのため、この記事の内容は自分で手続きした記録ではなく、会社法・登録免許税法の条文と、複数の司法書士事務所・法人登記サービスが公開している情報を突き合わせて整理したものです。実際に本店を移転したり、事業目的を追加したりする段階になったら、申請書の書き方や窓口でのやり取り、実際にかかった日数を、この記事に追記します。
次にやること
まず、自社(または設立予定の会社)の定款で「本店の所在地」がどこまで書かれているか(番地までか、市区町村までか)を確認してください。 これによって、同じ市区町村内の移転なら株主総会決議が不要になるかどうかが決まります。本店移転や目的追加を予定しているなら、登録免許税(3万円か6万円か)を先に把握したうえで、自分で申請するか司法書士に依頼するかを、手間とかけられる時間で判断してください。次は、設立時に決めた事業目的の書き方に関する記事も確認してください。
freee会社設立
※本記事は2026年9月時点の会社法・登録免許税法の条文と、司法書士事務所・法人登記サービスの公開情報に基づく情報整理です。司法書士報酬は事務所により幅があり、実際の手続き前には管轄の法務局、または司法書士に最新の金額を確認してください。
出典 - 会社法466条(定款の変更は株主総会の決議による) - 会社法309条2項11号・柱書(定款変更は特別決議事項、特別決議の定足数・可決要件) - 会社法27条1号・3号(目的・本店の所在地は定款の絶対的記載事項) - 会社法915条1項(登記事項に変更が生じたときは2週間以内に変更登記) - 会社法348条2項(取締役会非設置会社における業務執行の決定) - 登録免許税法別表第一 二十四(一)(本店移転登記・その他の変更登記の税額 各3万円) - 国税庁 No.7191「登録免許税の税額表」(本店又は支店の移転の登記=1箇所につき3万円、登記事項の変更・消滅・廃止の登記=1件につき3万円) https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/inshi/7191.htm (2026年9月1日確認) - GVA法人登記「本店移転登記の費用・登録免許税を解説」 https://corporate.ai-con.lawyer/articles/company-transfer/38 (2026年9月1日確認) - GVA法人登記「本店移転で株主総会決議が必要になるパターンとは」 https://corporate.ai-con.lawyer/articles/company-transfer/70 (2026年9月1日確認) - GVA法人登記「本店移転時に定款変更は必要?」 https://corporate.ai-con.lawyer/articles/company-transfer/13 (2026年9月1日確認) - GVA法人登記「目的変更登記にかかる費用・登録免許税を解説」 https://corporate.ai-con.lawyer/articles/company-purpose-change/13 (2026年9月1日確認) - ひとでき「本店移転の登録免許税が3万から6万に?管轄外移転で費用が倍になる理由と具体例」 https://www.hitodeki.com/column/alter/office/honten-iten-kankatsu-basics.php (2026年9月1日確認) - 比較ビズまとめ「本店移転登記の費用は?管轄外・内の登録免許税や申請書作成方法解説」 https://www.biz.ne.jp/matome/2005043/ (2026年9月1日確認)