設立のあとまで分かる会社設立ガイド 決める前の疑問から、設立のあとの手続きまで
ホーム › 休眠会社にする手続き

休眠会社にする手続き

この記事の結論
  • 休眠会社にする手続きは、税務署・都道府県・市区町村への異動届出書(休業する旨の届出)が中心で、登記は不要なため登録免許税がかからない
  • これに対し会社をたたむ(解散・清算)には解散登記・清算人選任登記・清算結了登記の登録免許税(登録免許税法別表第一の法定額で合計4万1千円。2026年9月確認)と、官報への解散公告費用(全国官報販売協同組合の掲載料金に基づく目安で3万円台〜8万円程度。2026年9月確認)がかかる
  • 休眠中も法人住民税の均等割は原則発生し続け、資本金1,000万円以下・従業員50人以下の最低区分で道府県民税2万円+市町村民税5万円の合計年7万円が標準税率(地方税法第52条1項、第312条1項)
  • 株式会社は最後の登記から12年間登記がないと、法務大臣による官報公告後2ヶ月以内に届出等をしなければ解散したものとみなされる(会社法第472条1項)。持分会社(合同会社等)にはこのみなし解散の規定はない
この記事の内容
  1. 結論:初期費用は休眠の方が安いが、放置には限りがある
  2. 休眠会社とは何か
  3. 休眠にする手続き|どこに何を出すか
  4. たたむ(解散・清算)にかかる費用
  5. 休眠と解散・清算、費用を比べる
  6. 休眠を続けてもゼロにならないコスト
  7. 12年放置するとどうなるか|みなし解散
  8. 実体験について、正直に書きます
  9. 次にやること

この記事は、事業を続けられなくなったが、会社をすぐに畳む(解散・清算する)べきか、休眠にして様子を見るべきか迷っている一人社長に向けて書いています。 結論から言うと、休眠にする手続き自体は税務署等への届出だけで済み、登記費用がかからない分だけ、解散・清算より初期費用は安く済みます。ただし休眠中も税金がゼロになるわけではなく、放置し続けられる期間にも限りがあります。以下、休眠にする手順、解散・清算との費用比較、休眠を続けた場合にかかり続けるコストを順番に整理します。

こんな状態ではありませんか
  • 事業をやめたいが、解散・清算の費用が高そうで踏み切れない
  • 「休眠会社」という言葉は聞いたことがあるが、具体的に何をすればいいか分からない
  • 休眠にすれば税金や手続きから完全に解放されると思っていたが、本当にそうなのか不安

結論:初期費用は休眠の方が安いが、放置には限りがある

会社を休眠にする手続きは、税務署・都道府県・市区町村へ「事業を休止する」旨の届出(異動届出書)を出すことが中心で、登記そのものは発生しません。これに対して会社をたたむ(解散・清算する)には、解散登記・清算人選任登記・清算結了登記という複数の登記と、債権者への官報公告が必要になり、登録免許税と公告費用がかかります。

つまり、目の前の出費だけを比べれば、休眠の方が安く済みます。 ただし休眠にしても、法人住民税の均等割など毎年発生し続ける税金があり、また株式会社には「最後の登記から12年」という放置の上限もあります。どちらが得かは、休眠する期間の見込みによって変わります。

休眠会社とは何か

休眠会社とは、法人格(会社としての登記)は残したまま、実際の事業活動を停止している会社のことです。解散・清算のように会社そのものを消滅させるのではなく、いったん事業を止めて、再開の可能性を残しておく状態と言えます。

事業を再開する予定がある、あるいは再開するかどうかまだ判断できない一人社長にとっては、いったん休眠にしておき、状況が変わった時点で事業を再開する(または改めて解散・清算を検討する)という選択肢になります。

ここが要点

「休眠会社」という言葉自体は法律用語としても使われますが、意味が2つあります。1つはここで説明する「事業を止めている会社」という一般的な意味、もう1つは会社法472条が定義する「最後の登記から12年経過した株式会社」という意味です。後者は次の見出し以降で改めて扱います。

休眠にする手続き|どこに何を出すか

休眠にするために最低限行う届出は、次の3か所です。

提出先 提出するもの 備考
税務署 異動届出書(事業を休止する旨を記載) 国税庁の様式。休業開始日・事由を記載する
都道府県税事務所 異動届出書(自治体様式) 名称・様式は自治体により異なる
市区町村役場 異動届出書(自治体様式) 名称・様式は自治体により異なる

従業員を雇用していた場合は、これに加えて日本年金機構への健康保険・厚生年金の適用事業所全喪届、雇用保険の適用事業所廃止届なども必要になります。一人社長で従業員がいない場合はこの手続きは発生しません。

休業届を出しても、会社としての登記(商号・本店・役員など)はそのまま残ります。 登記を変更・抹消する手続きではないため、法務局への申請は不要です。この「登記に手を付けない」点が、解散・清算との一番の違いです。

たたむ(解散・清算)にかかる費用

会社を完全にたたむ(解散・清算する)場合は、次の登記と公告が必要になります。

手続き 内容 費用の目安
解散登記 会社を解散する旨の登記 登録免許税(法定額)
清算人選任登記 清算事務を行う清算人を選任する登記 登録免許税(法定額)
清算結了登記 清算が終わったことを確定させる登記 登録免許税(法定額)
官報公告 債権者に対する解散公告(会社法第499条、2ヶ月以上の公告期間が必要) 掲載料(文字数等による)

登録免許税は登記1件ごとに法定額が定められており、解散登記が3万円、清算人選任登記が9千円、清算結了登記が2千円で、3件合計4万1千円です(登録免許税法別表第一の法定額。法務局の登記申請書サンプル、複数の司法書士サイトで金額が一致していることを確認。2026年9月確認)。官報への解散公告の掲載料は、全国官報販売協同組合の公表料金で1行3,589円(税別・22文字詰め)で、会社名等を含めると解散公告は10行前後になることが多く、目安は3万円台〜8万円程度です(全国官報販売協同組合公式サイト。2026年9月確認)。

これに加えて、司法書士に登記手続きを依頼する場合は別途の報酬が発生します。自分で申請すれば報酬部分はかかりませんが、必要書類の作成・法務局への申請には相応の時間がかかります。

休眠と解散・清算、費用を比べる

ここまでの内容を、初期費用の面だけで比較します。

休眠にする たたむ(解散・清算)
登記 不要 必要(解散・清算人選任・清算結了の3件)
登録免許税 かからない 3件合計4万1千円(登録免許税法別表第一の法定額)
官報公告 不要 必要(3万円台〜8万円程度、全国官報販売協同組合の掲載料金に基づく目安)
会社の存続 残る(再開の余地あり) 消滅する
司法書士報酬(依頼する場合) 発生しにくい 発生する

初期費用だけを見れば、休眠にする方が明らかに安く済みます。 ただしこれは「今すぐの出費」を比べただけの話で、休眠を続ける期間が長くなるほど、次の見出しで説明する毎年のコストが積み重なっていきます。

休眠を続けてもゼロにならないコスト

休業届を出しても、会社の法人格自体は残っているため、次の税金・義務は原則として発生し続けます。

  • 法人住民税の均等割:所得の有無に関わらず発生する定額の税金です。資本金1,000万円以下・従業員50人以下という最低区分でも、道府県民税均等割が年2万円(地方税法第52条1項)、市町村民税均等割が年5万円(同第312条1項)で、合計年7万円が標準税率です(詳しくは別記事「032:法人住民税の均等割|赤字でも年7万円かかる仕組み」を参照してください)。
  • 法人税・消費税の確定申告義務:事業を休止していても、法人税法第74条に基づく確定申告書の提出義務そのものはなくなりません。所得がなければ税額は原則0円ですが、申告書の提出自体は必要です。

自治体によっては、休業届を出した会社について均等割の減免を認める制度を設けている場合がありますが、これは各自治体の条例に基づく個別の制度であり、全国一律の免除ではありません(実施の有無・条件は自治体ごとに確認が必要)。

つまり「休眠にすれば税金や手続きから完全に解放される」というのは誤りです。 少なくとも年7万円前後の均等割と、確定申告の手間は、休眠を続ける限り毎年発生します。

12年放置するとどうなるか|みなし解散

株式会社については、会社法第472条1項が「休眠会社」という言葉を別の意味で定義しています。最後の登記があった日から12年を経過した株式会社は、法務大臣が官報に公告した後2ヶ月以内に、何らかの登記がされないか、または「まだ事業を廃止していない」旨の届出をしない場合、その2ヶ月の期間満了時に解散したものとみなされます。

取締役の任期は原則2年ですが、非公開会社(公開会社でない株式会社)であれば定款によって最長10年まで伸長できます(会社法第332条1項・2項)。一人社長の会社ではこの10年まで伸長しているケースが多く、通常は12年も登記をしないままにはなりにくいのですが、任期を10年に伸長したうえで役員変更の登記を怠り続けた場合には、この「みなし解散」の対象になり得ます。

持分会社(合同会社等)については、会社法上このみなし解散の規定はありません。 合同会社は株式会社のような役員任期の定めがなく、登記事項の変更が起きにくいことも背景にあると考えられます(条文上の根拠は会社法472条が株式会社のみを対象としている、という条文の適用範囲の事実であり、合同会社に別の類似規定があるかどうかまでは、この記事の調査範囲では確認できていません)。

みなし解散になった場合でも、解散したものとみなされた日から3年以内であれば、株主総会の特別決議により会社を継続させる(事業を再開する)ことができます(会社法第473条)。ただし継続の手続きにも登記・費用が発生するため、休眠を続けるつもりであれば、少なくとも役員変更登記だけは期限内に行っておく方が、後の手間を減らせます。

実体験について、正直に書きます

私の場合

正直に書きます。私自身は2026年に前職を退職し、合同会社の設立準備を進めている当事者ですが、この記事を書いている時点ではまだ設立登記が完了しておらず、会社を休眠にした経験も、解散・清算した経験もありません。そのため、この記事は自分の手続き記録ではなく、会社法・地方税法・法人税法の条文、法務局・全国官報販売協同組合等の公式情報、複数の専門家サイトの公開情報をもとにした「調査した範囲では」の整理です。

将来、実際に休眠や解散・清算を検討する場面があれば、その時の判断と実際にかかった費用を、この記事に実体験として追記します。

次にやること

まず、自分の会社を休眠にするのか、それとも解散・清算までするのかを、事業を再開する見込みの有無で判断してください。 再開の可能性が少しでもあるなら、税務署・都道府県・市区町村への異動届出書の提出だけで済む休眠を選ぶ方が、初期費用を抑えられます。ただし休眠中も法人住民税の均等割(年7万円前後が標準)と確定申告の義務は残るため、何年休眠を続けるかの見込みも合わせて考えてください。再開の見込みがまったくないなら、早い段階で解散・清算の手続きに進み、毎年の均等割負担を止める方が、長期的な出費は抑えられます。判断に迷う場合は、税理士または司法書士に、自社の状況(資本金・役員構成・再開の見込み)を伝えたうえで相談することをおすすめします。


※本記事は2026年9月3日時点で調査した内容に基づくものです。登録免許税は登録免許税法に基づく法定額、官報公告費用は全国官報販売協同組合の公表料金に基づく目安であり、実際の金額は個別の事情(行数・自治体の運用等)により変わることがあるため、実際の手続き前には必ず税理士・司法書士または管轄の税務署・法務局に最新情報を確認してください。

出典 - 会社法第472条(休眠会社のみなし解散)、第473条(会社の継続) - 会社法第332条1項・2項(取締役の任期) - 会社法第499条(債権者に対する公告等) - 地方税法第52条1項(道府県民税均等割の税率)、第312条1項(市町村民税均等割の税率) - 法人税法第74条(確定申告義務) - 登録免許税法別表第一(解散登記3万円・清算人選任登記9千円・清算結了登記2千円の法定額。法務局の登記申請書サンプル、複数の司法書士サイトで金額一致を確認。2026年9月確認) - 全国官報販売協同組合「官報公告掲載料金」(1行3,589円・税別。2026年9月確認) - 国税庁「異動届出書」様式

当サイト運営者

会社を辞めて、会社をつくる準備をしている当事者です

執行役員として6年、会社の管理部門を統括する立場にいました。2026年に退職し、いまは求職活動と並行して、会社を立ち上げる準備を検討している段階です。まだ登記はしていません。調べて確かめたことだけを書き、済んでいない手続きは「これから」と正直に書きます。体験のふりをしません。

この記事に関係する無料の道具(登録不要・その場で使える)
あわせて読みたい