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下請法は一人会社にも関係あるか

この記事の内容
  1. 下請法は一人会社の発注にもかかるか
  2. 資本金1,000万円以下の会社が「親事業者」にならない理由
  3. 下請法の対象から外れても安心できない理由
  4. フリーランス新法は一人会社にも及ぶか|2つの定義がカギになる
  5. 従業員ゼロの一人会社が個人に外注するとき、義務はどこまであるか
  6. 自分が「特定業務委託事業者」に当たるかのチェックリスト
  7. 取引条件を明示する文例|フリーランス新法3条通知のひな形
  8. 違反したらどうなるか
  9. 次にやること

一人会社を作ると、いずれデザインやシステム開発、事務作業などを個人のフリーランスに外注する場面が出てくる。そのとき自分が「発注する側」として下請法の義務を負うのかどうかは、多くの場合気にしていない。この記事は、下請法が資本金でどう線引きされているか、そして下請法の対象から外れても別の法律(フリーランス新法)で義務が生じる場合があることを、条文の数字とあわせて示す。

下請法は一人会社の発注にもかかるか

下請法(下請代金支払遅延等防止法)は、すべての外注取引に適用されるわけではない。発注する側(親事業者)と受注する側(下請事業者)の資本金の組み合わせで適用の有無が決まる(下請代金支払遅延等防止法2条7項・8項)。なお、この法律は2026年1月1日施行の改正により、正式名称が「製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律」、通称「中小受託取引適正化法(取適法)」に変わっている(公正取引委員会)。本記事ではこれまで通りの通称「下請法」の表記で説明するが、この改正で資本金基準に加えて従業員基準も新設され、親事業者側の常時使用従業員数が一定数を超える場合も対象になる点には注意が要る(詳細は次の節)。

委託の種類 親事業者となる資本金 下請事業者となる資本金
情報成果物作成委託(プログラム作成を除く)・役務提供委託(運送・倉庫保管・情報処理等を除く) 5,000万円超 5,000万円以下(個人を含む)
同上 1,000万円超5,000万円以下 1,000万円以下(個人を含む)
製造委託・修理委託・プログラム作成に係る情報成果物作成委託・運送/倉庫保管/情報処理に係る役務提供委託 3億円超 3億円以下(個人を含む)
同上 1,000万円超3億円以下 1,000万円以下(個人を含む)

デザインやライティングなどの外注は上段の「情報成果物作成委託(プログラム作成を除く)・役務提供委託」に当たることが多い。システム開発の外注(プログラム作成)や、運送・倉庫保管・情報処理の委託は下段の、製造委託と同じ3億円ラインが適用される点に注意する。ここを取り違えると「自分は対象外」と思い込んだまま義務を見落とす。

2026年1月1日施行の改正では、資本金基準に加えて従業員基準(親事業者側の常時使用従業員数が、製造委託等は300人超、情報成果物作成委託・役務提供委託の多くは100人超)が新設され、資本金基準・従業員基準のどちらか一方でも該当すれば対象になる(公正取引委員会「下請法・下請振興法改正法の概要」)。この基準の追加は、資本金を低く抑えたまま人員だけ多い企業を対象から漏らさないための改正で、後述のとおり一人会社の結論そのものには影響しない。

資本金1,000万円以下の会社が「親事業者」にならない理由

表を見て分かる通り、どの委託類型でも、資本金1,000万円以下の事業者は「親事業者」の側に入らない。 一人会社(特に合同会社)の資本金は数十万円〜数百万円程度で設立することが多く、1,000万円を超えるケースは少ない。資本金を1,000万円以上にすると消費税の免税期間が使えなくなるなど別のデメリットも生じるため、実務上もそこまで積み増す一人会社は多くない。2026年1月1日施行で追加された従業員基準(300人超・100人超)も、従業員が0人〜数名の一人会社では到底届かない水準のため、この基準でも「親事業者」には該当しない。

つまり、資本金・従業員数のいずれも一般的な水準の一人会社は、個人のフリーランスに外注しても下請法上の「親事業者」にはならないのが通常である。将来増資して資本金が1,000万円を超えた場合や、人を多数雇って従業員基準に達した場合は話が変わるため、そのタイミングでは改めて確認が要る。

下請法の対象から外れても安心できない理由

下請法の対象から外れると、外注先への支払いや発注内容について何の法律も関係しないように見える。しかし2024年11月1日に施行された別の法律が、この隙間を埋めている(特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律、通称フリーランス新法・フリーランス・事業者間取引適正化等法。公正取引委員会・中小企業庁「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律(フリーランス・事業者間取引適正化等法)説明資料」令和6年11月1日施行)。

この法律は下請法と違い、発注する側の資本金を問わない。 一人会社であっても、フリーランスに業務委託をする以上は関係してくる。

フリーランス新法は一人会社にも及ぶか|2つの定義がカギになる

フリーランス新法には、下請法の「親事業者・下請事業者」とは別の2つの言葉が出てくる。

  • 特定受託事業者:業務委託の相手方(受注する側)で、従業員を使用しない者。個人事業主、または代表者1人だけで役員も従業員もいない法人が当たる
  • 特定業務委託事業者:特定受託事業者に業務委託をする者(発注する側)で、従業員を使用する者

「従業員」とは、1週間の所定労働時間が20時間以上、かつ継続して31日以上雇用されることが見込まれる労働者を指す(フリーランス・事業者間取引適正化等法における定義。公正取引委員会・中小企業庁の説明資料による)。

ここが一人会社にとっての分かれ目になる。発注する側の一人会社に従業員が1人もいなければ、その会社は「特定業務委託事業者」には当たらない。 特定業務委託事業者だけに課される一部の義務(後述)は、この場合は課されない。一方、外注先が個人や一人法人であれば、発注する側の規模や従業員の有無を問わず課される義務も別にある。

従業員ゼロの一人会社が個人に外注するとき、義務はどこまであるか

条文ごとに、義務の対象が「業務委託をするすべての事業者」なのか「特定業務委託事業者(従業員がいる発注者)」だけなのかが分かれる。

条文 義務の内容 従業員ゼロの一人会社にも課されるか
3条 取引条件(業務内容・報酬額・支払期日等)を書面またはメール等で明示する 課される(発注者の規模・従業員の有無を問わない)
4条 報酬の支払期日を、給付を受領した日から60日以内のできる限り短い期間内に設定し、期日内に支払う 課されない(特定業務委託事業者のみが対象)
5条 受領拒否・報酬減額・返品・買いたたき等の禁止行為(契約期間1ヶ月以上の継続的業務委託が対象) 課されない(特定業務委託事業者のみが対象)
13条 育児介護等と業務の両立への配慮(契約期間6ヶ月以上の継続的業務委託が対象) 課されない(特定業務委託事業者のみが対象)
14条 ハラスメント対策の体制整備 課されない(特定業務委託事業者のみが対象)
16条 契約の中途解除・不更新の30日前までの予告(契約期間6ヶ月以上の継続的業務委託が対象) 課されない(特定業務委託事業者のみが対象)

※ 条文の区分は公正取引委員会・中小企業庁「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律(フリーランス・事業者間取引適正化等法)説明資料」による(2026年9月確認)。

まとめると、従業員を1人も雇っていない一人会社が個人のフリーランスに外注する場合、必ず課されるのは3条の取引条件の明示義務だけで、支払期日の60日ルールや禁止行為の規制、中途解除の予告などは、発注する側に従業員がいて初めて課される。人を雇った時点でこの表の「課されない」が「課される」に変わるため、初めて人を雇うタイミングでは改めて確認する。

自分が「特定業務委託事業者」に当たるかのチェックリスト

外注を始める前に、次を1つずつ確かめる。

  • □ 発注しようとしている相手は、個人事業主か、代表者1人だけの法人(従業員も他の役員もいない)か
  • □ 自分の会社(発注する側)に、週20時間以上・31日以上雇用見込みの従業員が1人でもいるか
  • □ 従業員がいる場合:4条(60日以内の支払期日)・5条(禁止行為)・13条(育児介護配慮)・14条(ハラスメント対策)・16条(中途解除予告)の対象になる
  • □ 従業員がいない場合でも:3条(取引条件の明示)は対象になる
  • □ 契約期間が1ヶ月以上続く継続的な外注か、単発の外注かを確認したか(1ヶ月以上・6ヶ月以上で義務が増える)

取引条件を明示する文例|フリーランス新法3条通知のひな形

従業員がいない一人会社でも3条の明示義務は課されるため、外注時に次のような内容を書面かメール、チャットの文面で残しておく。

件名: 業務委託のご依頼内容について(○○様)

○○様

このたびは業務委託をお願いいたします。取引条件は以下の通りです。

・業務委託事業者の名称: (自社名)
・業務の内容: (具体的な作業内容)
・報酬の額: (金額、消費税の扱い)
・報酬の支払期日: (年月日、または「納品確認後◯日以内」等)
・支払方法: (銀行振込等)
・給付を受領する期日・場所・検査完了日(ある場合)

ご確認のうえ、ご返信いただけますと幸いです。

金額や納期などの必須項目に漏れがないかは、依頼のたびにこの型を使い回して確認する。

違反したらどうなるか

フリーランス新法に違反した場合、公正取引委員会・中小企業庁・厚生労働省が助言、指導、報告徴収・立入検査、勧告、公表、命令の順で行政指導を行う。命令に違反した場合や、立入検査を拒否・妨害した場合、虚偽の報告をした場合は50万円以下の罰金の対象になる(同法24条1項)。両罰規定(同法25条)があり、違反した従業員本人だけでなく事業主の法人も罰金の対象になりうる。14条のハラスメント対策に関する報告拒否・虚偽報告には20万円以下の過料が定められている(同法26条)。

調査した範囲では、いきなり命令や罰則に至るケースは多くなく、まずは行政からの指導・勧告の段階で是正を求められる流れが一般的とされている。とはいえ、外注が常態化してから条件を整理し直すのは手間が増える。外注を始める最初の1件から、3条の明示だけは型にしておくと後で困らない。

次にやること

外注する予定の業務内容と、外注先が個人か法人か、自社に従業員がいるかどうかを整理し、上のチェックリストで自分がどの条文の対象になるかを確認したうえで、最初の依頼から3条の取引条件明示文を使い回せる形にしておく。

当サイト運営者

会社を辞めて、会社をつくる準備をしている当事者です

執行役員として6年、会社の管理部門を統括する立場にいました。2026年に退職し、いまは求職活動と並行して、会社を立ち上げる準備を検討している段階です。まだ登記はしていません。調べて確かめたことだけを書き、済んでいない手続きは「これから」と正直に書きます。体験のふりをしません。

この記事の作り方: 下書きにAIを使い、法令の条文と官公庁の公式ページに照らして事実確認したうえで公開しています。確認の取れない記述が残る記事は公開せず、一次資料が見つからない箇所は本文にそう書いています。確認の手順を見る →

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